腸のぜん動運動は自律神経によってコントロールされています。自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経が腸の動きを抑えるのに対して、副交感神経は腸の動きを活発にします。ストレスを受けると、この自律神経のバランスが悪くなり、交感神経が優位になっている仕事中でも腸の動きが盛んになり過ぎたり、けいれんのような動きをしたりするのです。食べ物が胃に入ると大腸のぜん動運動が起こりますが、この動きが盛んになりすぎると下痢に。逆に腸のぜん動運動が起こらず、腸がけいれんするように動き、便が腸の中に留まってしまうと便秘になります。これはまさに自律神経の失調状態。腸だけでなく頭痛やめまいなど、様々な症状が現れることもあります。
過敏性腸症候群の症状は大きく分けて「下痢型」「便秘型」「混合型」の3タイプあります。いずれのタイプも、下痢や便秘などの症状の他、排便をしてもスッキリしない、お腹が張るなどの症状を伴うことが多いです。
過敏性腸症候群によって腸が敏感な状態だと痛みを強く感じる上に、脳にも過剰な刺激が伝わってストレスを増幅させるので、さらに便通異常や腹痛といった症状が悪化するといった悪循環に陥ってしまいます。自律神経の乱れから、頭痛、だるさ、めまい、耳鳴りといった症状を伴うこともあります。常にお腹の不調を抱えていれば、憂うつになったりイライラしたりし、抑うつ状態にまでなってしまうことも。お腹だけでなく全身や心の健康にも影響を及ぼし、生活の質(QOL)を低下させてしまいます。
自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器病学会認定専門医、日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医、日本抗加齢医学会専門医、米国消化器病学会国際会員。『新しい腸の教科書』(池田書店)他著書多数。