乗り物酔い

乗り物酔い

慣れない乗り物の揺れやスピードに脳が混乱してしまうと、自律神経が乱れて吐き気や嘔吐、めまいなどの不快な症状を引き起こしてしまいます。これが乗り物酔いです。一度乗り物酔いを経験すると苦手意識などをもつようになってしまいますが、市販薬の活用も含め、心と体を正しくケアしていれば、防げる可能性があります。なお、乗り物酔いは大人になるに従い症状も現れにくくなります。

監修プロフィール
芝大門 いまづクリニック院長 いまづ・よしひろ 今津嘉宏先生

1988年藤田保健衛生大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室助手、同大学医学部漢方医学センター助教、WHO intern、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、北里大学薬学部非常勤講師、首都大学東京非常勤講師などを経験。2013年芝大門 いまづクリニック開設。北里大学薬学部非常勤教員。著書に『風邪予防、虚弱体質改善から始める 最強の免疫力』(ワニブックス)など。

乗り物酔いについて知る


乗り物酔いの原因・症状

乗り物酔いは、揺れなどの刺激で脳が混乱するのが原因

乗り物に乗ると通常、私たちの内耳、目、筋肉・関節が刺激をキャッチし、その刺激が神経を通じて小脳の一部にある前庭小脳に伝わります。
前庭小脳は体のバランス感覚をコントロールする機関で、内耳などから伝わってきた刺激を適度に調節し、大脳に情報を伝達する役目があります。しかし、激しい揺れやスピードなど経験したことがないような刺激が加わると、前庭小脳が混乱、うまく調節できなくなってしまいます。そして、混乱したままの情報を受け取った大脳が「不快」と判断し、それに脳の視床下部が反応して自律神経の働きが乱されます。
自律神経は、血圧や呼吸、胃腸の働きなどをつかさどっているため、一時的に「吐き気・嘔吐」「めまい」「顔面蒼白」「頭痛」といった、乗り物酔いの不快な症状が現れてしまいます。これらの症状は、乗り物から降りると短時間で回復します。


乗り物酔いのメカニズム

4〜12歳頃の子どもは酔いやすい

4〜12歳の頃は乗り物酔いを起こしやすい年齢です。この頃は前庭小脳が発達し始める年齢のため、外部からの刺激に敏感に反応してしまうからです。0〜3歳くらいまでの乳幼児は前庭小脳が未発達なため、乗り物酔いすることはほとんどありません。
一般的には20歳前後になると前庭小脳の老化が始まり、刺激への反応が鈍くなるうえに、年齢を重ねるにつれて揺れやスピードに慣れてくることもあって、大人は乗り物酔いしにくくなります。


体質や体調不良などで乗り物酔いしてしまうことも

揺れやスピードなど乗り物に乗ることで受ける刺激の限界は人それぞれ、その時々で異なります。低血圧や、前庭小脳をコントロールする力が不安定な体質、睡眠不足や疲労などの体調不良も、乗り物酔いの要因となってしまいます。また、乗り物に対する苦手意識や緊張感からくるストレスなども乗り物酔いにつながってしまいます。


頻繁に乗り物酔いで嘔吐する場合は別の病気の可能性も

頻繁に乗り物に酔って嘔吐する場合や、20歳を過ぎても酔いやすい場合は、別の病気が潜んでいる可能性があります。乗り物酔いを招く病気の代表には、内耳と脳の病気が挙げられます。内耳の機能障害(メニエール病、突発性難聴など)や脳の損傷(脳動脈硬化、脳出血)があると、めまいやふらつきが現れ、酔いにつながります。その他にも低血圧やぜんそく、アレルギー性鼻炎などのアレルギーをもっている人は、乗り物酔いを起こしやすい傾向があります。


乗り物酔いの対策

乗り物酔いしたら乗り物から降りて気分を落ち着かせよう

乗り物酔いを起こしてしまったら、まずは乗り物を降りて外の空気を吸い、気分を落ち着かせましょう。激しい揺れやスピードから解放されると、過剰な刺激による脳の混乱も治まり、徐々に症状が和らぎます。また、吐き気がある場合は我慢せず、吐いたほうがが楽になります。
すぐに乗り物から降りられない場合は、ズボンのベルトを外すなどし、着ている衣類を緩めましょう。窓が開閉できる場合は、こまめに窓を開けて換気し、新鮮な空気を取り入れましょう。


脳への刺激をコントロールしよう

乗り物酔いの症状の改善策として、ガムをかむのは一案。咀嚼により脳を刺激してリラックスさせる効果があります。また、目から入る刺激を抑えるためにも、車中で読書やゲームはしないこと。頭はできるだけ動かさずに進行方向を見るようにしましょう。


乗り物酔いの予防法

乗り物に乗る前は体調を整えよう

睡眠不足や疲労があると自律神経は乱れやすくなります。乗り物で出かける前は十分に睡眠をとるようにしましょう。また、自律神経の乱れにつながるため、空腹や満腹の状態で乗り物に乗るのも避けたいもの。乗車前の食事は軽めに済ますようにしましょう。
不安感も自律神経を乱す要因となります。「酔わない」「大丈夫」と自分に暗示をかけ、緊張をとることも大切です。


乗り物酔い止めの市販薬を活用

乗り物酔い止めの薬には、自律神経の興奮を抑え、嘔吐などの不快な症状を予防したり和らげたりする成分が含まれています。乗り物に乗る30分前の服用が有効ですが、酔ってからでも効果のある薬もあります。薬の服用は実際の薬効に加え、心理的な効果も期待できます。薬をのんだことによる安心感が、乗り物酔い防止につながるというデータもあります。
なお、子ども用の乗り物酔い薬としては、3歳から服用できる錠剤や液剤、ラムネのように飲みやすいタイプなど様々。子どもがのみやすい物を選ぶとよいでしょう。


お役立ちコラム

乗り物酔いを克服する日々のエクササイズ

乗り物酔いを克服するには、揺れやスピードに慣れることとバランス感覚を鍛えることが大切です。子どもの場合は、滑り台やブランコなど体に動きを与える遊具でトレーニングするのも一案。この他、前転・後転運動や四股(しこ)を踏むといったエクササイズも、体のバランス感覚を鍛えるのにおすすめです。

乗り物酔いを克服する日々のエクササイズ

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