下痢

下痢

下痢は、消化不良や食中毒などによる「急性下痢」と、ストレスなどによる「慢性下痢」とに大別されます。このうち慢性下痢は3週間以上続いたり、再発を繰り返したりする下痢で、大腸がんや潰瘍性大腸炎などの病気が原因で起こっている場合もあり注意が必要です。近年増えている、過敏性腸症候群の可能性もあります。下痢が起こる原因を知り、適切に対処しましょう。

監修プロフィール
江田クリニック院長 えだ・あかし 江田 証 先生

自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器病学会認定専門医、日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医、日本抗加齢医学会専門医、米国消化器病学会国際会員。『新しい腸の教科書』(池田書店)他著書多数。

下痢について知る


下痢の原因・症状

「急性下痢」は消化不良や食中毒、ウイルス感染が原因

急性下痢は主に、暴飲暴食・早食いなどによる消化不良、冷たい物の飲み過ぎ、寝冷えなどが原因で、突然の腹痛と共に下痢が起こります。この他、食中毒などウイルス感染によっても下痢は起こります。食中毒などの感染性の下痢の場合は、腹痛の他、吐き気や嘔吐、発熱を伴い、一度排便しても腹痛が治らないのが特徴です。


「慢性下痢」はストレスが原因に。大腸がんなどの病気の可能性も

慢性下痢は主に、ストレス、不規則な生活や睡眠不足が原因で起こります。排便を起こす大腸のぜん動運動は自律神経によってコントロールされているため、ストレスや乱れた生活習慣によって自律神経の働きに乱れが生じると、大腸の働きにも悪影響を及ぼします。具体的には、大腸のぜん動運動が活発になり過ぎてしまい、便が直腸へ運ばれるまでの間に水分が十分に吸収されず、水様便や泥状便といった下痢を引き起こしてしまいます。

慢性下痢

慢性下痢は、大腸がんやポリープ、潰瘍性大腸炎などの病気が原因で起こる場合もあります。症状は病気によって異なりますが、下痢の他に、便に血が混じる、熱が続く、体重が減少するなどの症状が見られることも。これらの症状を伴う場合は速やかに医療機関を受診しましょう。


慢性的な下痢は「過敏性腸症候群」が疑われる場合も

下痢が慢性的に続く場合は、「過敏性腸症候群」の可能性も考えられます。過敏性腸症候群になりやすいタイプとしては、繊細で几帳面な性格の人、不安・緊張などのストレスを発散できずにため込んでしまう人などが挙げられます。過敏性腸症候群の場合、通勤や通学の途中など特定の状況に限って起こる場合と、日常生活の様々な場面で起こる場合とがあります。

過敏性腸症候群が疑われる場合は、まず消化器内科を受診し、大腸を含む消化管に器質的異常がないかどうか検査を受けましょう。

過敏性腸症候群の疑い

下痢の対策

市販の「下痢止め薬」を適切に選んで活用しよう

下痢の症状をひとまず和らげるには、活発になり過ぎた腸のぜん動運動を抑える市販薬などを用いるのもよいでしょう。下痢止め薬といっても、消化管機能を調整する薬の他、食あたりなどに使う殺菌作用のある薬や整腸剤など、症状と目的によって様々な種類があり、作用も効き方も異なります。市販薬を使用する場合には、薬剤師に相談して症状に合った薬を選ぶことが大切です。

ただし、下痢の原因が食中毒だと疑われる場合には、下痢止め薬によって細菌や毒素が腸内にとどまってしまい、症状を悪化させてしまうことがあるので、市販の薬はのまずに医療機関を受診しましょう。薬をのんでしまった場合は、その薬を持参して診察を受けるようにしてください。

▼市販薬を上手に活用
下痢止め薬は、腸の蠕動運動を抑える薬など種類がいろいろあるので、薬剤師に相談して選ぶ。

市販薬を上手に活用

腸を刺激し過ぎないよう食事の工夫は必須

下痢が続いているときは特に、冷たい飲食物、スパイス類、炭酸、カフェイン、アルコール、油脂分の多い料理やお菓子は腸を刺激するため控えるようにしましょう。食事の量もコントロールが必要です。一度に多く食べ過ぎると腸の負担になってしまうため、少量ずつ回数を分けて食べるようにしましょう。また、食べ物の消化をよくするためにも、よくかんで食べることが大切です。

●食事は消化のよいものを

食事は消化のよいものを

●脂っぽいもの、刺激の強いものは避ける

脂っぽいもの、刺激の強いものは避ける

下痢の予防法

規則正しい生活で自律神経を整えよう

例えば、深夜まで仕事やSNSなどをして起きている、夜遅い時間に飲食をして朝食を抜くといった生活を送っていると心身へのストレスをさらに強め、自律神経のバランスを崩してしまいます。その結果、下痢を始めとする便通異常も起こりやすくなります。

毎日の起床・就寝の時間、1日3回の食事の時間をできる限り一定にして規則正しい生活を送りましょう。生活のリズムが整うと自律神経が安定し、排便のリズムも整います。


朝は時間に余裕をもち、トイレタイムをつくろう

食べ物が胃に入ると便意が起こることを「胃・大腸反射」といい、朝はこの反射が最も起こりやすい時間帯です。この時間帯を活用して朝はきちんと朝食を食べ、ゆっくりトイレに行く時間をとるようにしましょう。朝に排便を済ませておけば、日中の突然の便意も起こりにくくなります。

朝のトイレタイムは大切

食物繊維をしっかり摂ろう

食物繊維の摂取は下痢の予防につながります。通常の便は70〜80%が水分で、残りが食物繊維、腸内細菌、老廃物などでできています。食物繊維は便の骨組みになると同時に、余分な水分を吸収し、ほどよい硬さの便を形づくるうえで欠かせない成分です。玄米などの穀類、きのこ、海藻、野菜を積極的に摂るようにしましょう。

ただし、過敏性腸症候群の人では、ごぼうなどは発酵性の糖質を多く含む食品(高FODMAP食品)として症状を悪化させてしまう場合もあります。

食物繊維の多い食品を摂る

リラックスタイムを意識的に設け、ストレスを和らげよう

ストレス対策も日頃から心がけるようにしましょう。最も大切なのは、リラックスする時間をつくること。特別につくろうとしなくても、普段の生活の中で少し意識すればよいのです。例えば入浴は絶好のリラックスタイム。38〜41℃のぬるめの湯に浸かることでリラックス効果が高まります。寝る前に自分が心地よいと感じる音楽を聴いたり、ラベンダーなどリラックス効果のある精油の香りを嗅いだりするのもおすすめです。


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