吐き気・嘔吐

吐き気・嘔吐

吐き気は、腹部に不快感があり、気持ち悪くなって吐きそうになることをいい、実際に吐くことを嘔吐といいます。吐き気や嘔吐は、乗り物酔いや食中毒、胃腸の病気など様々な原因によって起こり得ますが、中でも特に危険なのが、くも膜下出血や脳腫瘍といった脳の病気によって起こる場合です。素早く適切に対処する必要があります。

監修プロフィール
江田クリニック院長 えだ・あかし 江田 証 先生

自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器病学会認定専門医、日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医、日本抗加齢医学会専門医、米国消化器病学会国際会員。『新しい腸の教科書』(池田書店)他著書多数。

吐き気・嘔吐について知る


吐き気・嘔吐の原因・症状

乗り物酔いによる吐き気・嘔吐は子どもに多い

慣れない乗り物の揺れやスピードに脳が混乱してしまうと、自律神経が乱れて吐き気や嘔吐などを引き起こします。これが、乗り物酔いです。乗り物酔いを起こしやすいのは、4〜12歳の頃。この頃は前庭小脳が発達し始める年齢のため、外部からの刺激に敏感に反応してしまうからです。

一般的には20歳前後になると前庭小脳の老化が始まり、刺激への反応が鈍くなるうえに、年齢を重ねるにつれて揺れやスピードに慣れてくることもあって、大人は乗り物酔いをしにくくなります。もし20歳を過ぎても酔いやすい場合は、内耳の機能障害(メニエール病、突発性難聴など)や脳の損傷(脳動脈硬化、脳出血)などの別の病気が潜んでいる可能性が考えられます。

乗り物酔いと年齢

食中毒による嘔吐は、下痢止めの服用がNGの場合も

食中毒を起こす細菌やウイルスを口に入れてしまうと、嘔吐や下痢、腹痛、発熱などの症状が現れます。倦怠感や微熱感があるなどの前駆症状の後に、それぞれの症状が顕著になるものもあります。食品を食べて吐き気や嘔吐など食中毒の症状が出るまでの潜伏期間は、原因となる細菌・ウイルスの種類や、どのくらいの量を食べたかによって異なります。

食中毒による嘔吐の場合、自己判断で下痢止めの薬や解熱鎮痛剤をのまないこと。下痢止め薬をのむと、細菌・ウイルスや毒素を腸内にとどめてしまい、症状を悪化させるケースがあります。薬をのんでしまった場合は診察を受ける際、その薬を持参するようにしましょう。

下痢止めの薬 解熱鎮痛剤は飲まない

吐き気や嘔吐は、急性胃炎や胃潰瘍など消化器の病気の症状として現れる

暴飲暴食、栄養バランスの悪い食事、喫煙、ストレスなど、胃粘膜にダメージを与える生活を送っていると、胃の粘膜に炎症が起こり、粘膜がただれたり、はがれたりすることで急性胃炎が起こり、それに伴って吐き気・嘔吐、みぞおちあたりの強い痛みや焼けるような感覚(灼熱感)が現れます。

腸閉塞、虫垂炎、胆石症といった消化器系の疾患でも、吐き気・嘔吐が現れます。


吐き気や嘔吐は、危険な脳疾患の症状の場合も

最も危険なのが、くも膜下出血、脳梗塞、脳腫瘍など、命にかかわる脳の病気によって吐き気・嘔吐が起こっている場合です。くも膜下出血では、嘔吐の他に激しい頭痛や意識障害などを伴い、脳梗塞では、片側の手足や顔面の麻痺、意識障害なども伴います。脳腫瘍では、頭痛、吐き気・嘔吐の他、腫瘍ができた位置によっては視力障害などの症状も現れます。なお、脳腫瘍は、吐き気はなかったのに突然嘔吐することもあります。


赤ちゃんの嘔吐はしっかり見極めを

赤ちゃんの胃袋は吐きやすくできているため、生後3カ月頃まではミルクを飲んでもすぐに吐き出してしまったりします。これが習慣になっていても、赤ちゃんの体調がよく、体重も増えているようでしたら心配ありません。3カ月を過ぎると自然と吐かなくなります。

けれども度々嘔吐し、嘔吐してもすっきりすることはなく、顔色も悪く、元気がない場合は、別の病気が疑われます。最も緊急を要するのが、腸管の一部が後ろの腸管の中に入り込んで重なってしまう「腸重積症」です。腹痛が周期的に起こるので、数分、あるいは数十分間隔で不機嫌になるなど、いつもと様子が違うと感じたら速やかに病院に連れて行ってください。

嘔吐の他に、発熱がある場合は「髄膜炎」や「中耳炎」、下痢も起きている場合は、「乳幼児嘔吐下痢症」の可能性があります。これは冬に流行し、主にロタウイルスによる感染症です。


吐き気・嘔吐の対策

嘔吐は我慢せず、吐きたいだけ吐く

吐き気・嘔吐がある時は、ビニール袋や洗面器などを用意し、吐きたいだけ吐くようにしましょう。吐瀉物は病気の原因を特定する手がかりになることもあるので、できれば色やにおい、胃液がたくさん混じっているかなど、しっかり観察しておいてください。

家族などへの二次感染を防ぐためにも、吐瀉物の処理は手袋やマスクを着用し、速やかに廃棄しましょう。吐瀉物が付着した衣類などは塩素系漂白剤などで消毒する必要があります。


水分を補給し、吐きやすい体位で寝る

嘔吐の際に注意しなければならないのが、脱水症状と、吐いた物がのどに詰まるのを防ぐことです。脱水症の予防には水やお茶、スポーツ飲料などで水分の補給を。吐いた物が気管支に詰まると呼吸困難や肺炎を起こすことがあるので、吐きやすいよう顔を横向きにして寝るようにしましょう。

脱水症を起こさないように注意する
嘔吐による呼吸困難や肺炎を防ぐため、吐きやすい体位にさせる

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