胸やけ

胸やけ

みぞおちのあたりがムカムカする、胸がやけるような感じがする、といった症状が胸やけです。胸やけは胃の入り口である噴門の締まりが緩んで、過剰な胃酸が食道へ逆流することが主な原因です。加齢や肥満、食べ過ぎ、寝る直前の多量の飲食、ストレスなどが原因ではないかと考えられています。胸やけを引き起こす「逆流性食道炎」は、ストレス過多や脂質過多の食事に変わってきた生活習慣により、近年増えている胃の病気です。

監修プロフィール
江田クリニック院長 えだ・あかし 江田 証 先生

自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器病学会認定専門医、日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医、日本抗加齢医学会専門医、米国消化器病学会国際会員。『新しい腸の教科書』(池田書店)他著書多数。

胸やけについて知る


胸やけの原因

出過ぎた胃酸によって炎症が生じ、胸やけが起こる

胃は食べ物を消化するために非常に強い酸である胃酸を出します。けれども胃の粘膜からは、ムチンから成る胃粘液が分泌されており、胃壁が傷つかないよう保護しています。しかし、胃酸が過剰になり過ぎると胃粘膜を荒らして炎症を起こしたり(胃炎、胃・十二指腸潰瘍)、食道に逆流したりすることで(逆流性食道炎)胃の不快症状を感じるのです。

近年増えている「逆流性食道炎」は、食道と胃を区切っている下部食道括約筋食の閉じ方が不十分なために、食道に胃酸が逆流して炎症が生じ、胸やけの症状を引き起こしてしまいます。 逆流性食道炎は内視鏡検査で下部食道粘膜に明らかな粘膜傷害が確認できますが、胸やけなどの不快な症状があっても、内視鏡検査で粘膜障害がない場合は、「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」といいます。

胃の仕組みと働き

ストレスが胸やけの原因にもなる

ストレスが過多になると自律神経が乱れて、胃酸の分泌が過剰になったり、粘膜を保護する粘液の分泌が減少したりし、胃のトラブルが起こりやすくなります。過剰に分泌された胃酸が食道に逆流することでも胸やけの症状が現れます。

ストレスと胃のトラブルの関係

暴飲暴食、脂っこい物の食べ過ぎも胸やけの原因

高脂肪や消化のしにくい物を多く食べたり飲んだりすると、胃酸が大量に分泌されます。同時に食道と胃のつなぎ目を閉じている下部食道括約筋が緩んでしまい、大量の胃酸が食道に逆流して胸やけが起こりやすくなります。

暴飲暴食

胸やけは高齢になると発症しやすい

高齢になると体全体の筋力が衰えてきますが、下部食道括約筋も同様に筋力が低下し閉まりが悪くなってきます。このため、食道に胃酸が逆流することが多くなり、胸やけの症状が多発します。


肥満の人や横になった時にも胸やけを発症しやすい

腹圧が高いことでも胃酸の逆流が起こります。肥満の人は腹圧が強くかかるため、胃の内容物が押し上げられて逆流が起こり、胸やけを感じやすくなります。腰や背中が曲がっていても腹圧は高くなってしまいます。また、食事をしたすぐ後に、横になったり眠ったりすれば、胃酸が逆流しやすい姿勢をとっていることになります。


胸やけの症状

胸部のやけるような痛み、みぞおちの痛みも含め「胸やけ」

胸がやけるような感じや痛み、胃から酸っぱいものがこみ上げてくる、みぞおちの痛みや違和感、吐き気、食後の胃もたれなど、こんな表現が胸やけの症状を表します。胸やけは健康な人でも起こりますが、食べ過ぎた後などに起こる一時的な症状は、時間の経過と共に治まっていきます。しかし、胸やけ症状が慢性的に起こるようであれば、「慢性胃炎」や「胃・十二指腸潰瘍」、「逆流性食道炎」の疑いがあります。

胸やけ症状があると、食事が十分に楽しめない、ぐっすり眠れないなど、仕事のパフォーマンスが下がるなど日常生活の質(QOL)が低下する傾向があります。

胸やけと症状

胸やけの対策

胃酸の分泌を正常な状態に近づけよう

慢性化した胸やけである逆流性食道炎は、胃酸の過剰な分泌と下部食道括約筋の緩みが主な原因です。加齢による衰えは取り戻すことはできませんが、胃酸の分泌を正常な状態に取り戻すことはできます。まずは胃に負担をかけない食事や生活改善に加えて市販の胃腸薬で様子を見て、治まらないようなら受診をしましょう。


胃に負担をかけない優しい食事のコツ

胸やけがする時は、暴飲暴食を避けて、以下の点に気をつけましょう。

  • おかゆ、うどんなど消化のよい物を食べる
  • 脂肪分の多い食事は控える
  • 香辛料やカフェイン、アルコールなどの刺激物を避ける
  • 熱すぎる物、冷た過ぎる物を避ける
  • 炎症を悪化させる塩分を控える
  • 和やかに楽しく、規則正しく食べる
  • 摂り過ぎないほうがよい物

    食後すぐに横にならない

    食後すぐに横になると食道と胃の位置が水平になって、胃酸が逆流しやすくなり、胸やけを起こしやすくなります。横になる場合は、上半身を少し上げるような体勢を取ります。また夕食後、すぐに寝ることも逆流性食道炎の危険性を高めてしまいますので、就寝は3時間以上経過してからがよいでしょう。


    胃酸の分泌を抑える胃腸薬を選ぶ

    胸やけ症状がある時には胃酸過多の状態となっているので、市販の胃腸薬を使用する場合には、胃酸の分泌を調整する種類を選びます。購入の際には、薬剤師に相談してください。

    • 胸やけに効果的な薬①:H2ブロッカー
       胃酸の過剰な分泌を抑え、胃酸過多による胸やけや胃痛を緩和する。
    • 胸やけに効果的な薬②:制酸剤
       過剰に分泌された胃酸を中和して弱った胃腸機能を改善し、胸やけ、胃もたれ、むかつき、胃痛などを和らげる。
    • 胸やけに効果的な薬③:胃粘膜修復薬
       傷ついた胃粘膜を保護・修復し、胃痛、胸やけなどの症状を改善する。

    胃の本来の働きを取り戻し、機能全体を回復させたい場合には、生薬を主成分にした漢方系胃腸薬を飲んでみるのもいいでしょう。

    症状と原因に応じた市販薬の選び方

    症状が改善しない場合は医療機関を受診する

    生活改善を行ったり市販の胃腸薬を数日間使用しても胸やけの症状が続く、症状が悪くなる、日常生活に支障を来すような場合は、早めに内科や胃腸科、消化器科を受診し、検査と治療を受けるようにしましょう。胸やけの症状に加えて強いストレスを感じている人は、心療内科に行くのもよいでしょう。

    受診が必要なケース

    胸やけの予防法

    胃酸の過剰な分泌を抑えるライフスタイルを

    胸やけの予防の基本は、胃酸の過剰な分泌を抑えることです。そのためには胃の働きをつかさどっている自律神経の働きを整えることと、胃に負担をかけない生活を送るようにします。


    自律神経を乱さない生活を送る

    自分の生活にリズムをつくってルーチン化すること、これが自律神経の乱れを防ぐのにとても大切なことなのです。もちろん生活リズムは人それぞれ。規則正しく自分の生活ペースに合わせた食事、運動、睡眠を行うことはストレス解消につながっていきます。自律神経が整ってくれば、胃はもちろん体全体が改善していきます。また、ストレスに感じること(ストレッサー)から上手に距離を置くことを心がけ、日常の中に非日常を取り入れる工夫をしてみるなど、自分なりのストレス解消法を楽しみながら見つけ、身につけていってください。

    胃に優しい生活を送るために

    胃にオーバーワークをさせない

    日頃から胃酸過多となるような食事は避け、腹八分目を心がけます。脂肪分の多い食材はなるべく避け、栄養バランスのよい食事が大切です。食後には胃の消化活動を活発にさせるために、体と心に休憩時間を設けることも必要です。


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