膠原病(こうげんびょう)とは、自己免疫の異常によって血管や皮膚、筋肉、関節、内臓など全身の結合組織に炎症が起こる病気の総称です。膠原病の代表的なものには関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症、シェーグレン症候群がありますが、これらは全て親戚関係にある自己免疫異常で、現れ方や現れる臓器に違いがあるのみです。女性が男性よりも自己免疫疾患のリスクがかなり高いのは、妊娠出産に関わる機能と免疫機能に深い関わりがあるためです。つまり、胎児を子宮内で守る機能が、妊娠以外の時、何らかのきっかけで(ストレスや冷えなど)、自分を攻撃する異常に変わってしまうことがあるのです。それが自己免疫疾患です。女性のもつ体質的な弱点とも考えられ、よくなったり悪くなったりを慢性的に繰り返すので、膠原病は症状をコントロールしながら長く付き合っていく必要がある病気です。
産婦人科医・医学博士。1984年弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室助手、東京都立墨東病院総合周産期センター産婦人科医長などを経て、2002年に「ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック」を開院。女性のための総合医療を実現するためにNPO法人「女性医療ネットワーク」を設立(現理事長)。様々な情報提供、啓発活動、政策提言などを行っている。
膠原病は、免疫機能の異常により全身の結合組織に炎症が起こる自己免疫疾患のこと。免疫は「抗体」をつくって体内に侵入した異物から体を守りますが、免疫機能に異常が起こると、誤って自己組織を攻撃する「自己抗体」が産生され、その攻撃によって発生した炎症物質が全身の結合組織を傷つけ、炎症を起こすのです。
免疫機能の異常は、遺伝やストレス、女性ホルモンが関与して起こります。中でも女性ホルモンの低下は、自己抗体だけでなく炎症物質も活性化させると考えられており、膠原病は出産後や閉経前後の30〜50代女性に発症や憎悪のポイントがあります。
膠原病はそれぞれの病気によって、現れる症状や部位は異なります。ただし、発症の初期には共通して、原因不明の発熱、倦怠感、食欲不振、湿疹、関節痛、リンパ節の腫れ、皮膚の発赤や炎症などが現れます。
膠原病が疑われる場合、まずは血液検査を行い、自己抗体の有無を調べます。自己抗体には様々な種類がありますが、膠原病では特に「リウマトイド因子(RF)」と「抗核抗体(ANA)」が多く見られるため、スクリーニング検査として利用されます。シェーグレン症候群では、「抗SS-A抗体」や「抗SS-B抗体」なども調べます。膠原病の診断には、血液検査での抗体や補体の測定と、炎症反応、自覚症状や他覚初見の確認、骨や臓器に異常がないかを確認する画像でのMRIやX線検査など、詳しい検査をした上で、診断基準に基づいて診断されます。
膠原病の治療では主に、ステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)やNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、免疫抑制剤を服用して、炎症や免疫の異常を抑制しながら症状をコントロールしていくことが基本になります。近年ではこれに生物学的製剤という新しい治療法が加わっています(関節リウマチ)。炎症や痛みを抑えるだけでなく、関節破壊の進行を止める作用が証明され、画期的な薬といえます。ただし、薬剤費がやや高額になります。
また、低用量ピルで女性ホルモンの変動を抑えたり、冷えやストレス、紫外線を避けることなども大事な再発・憎悪の予防になります。
膠原病は、妊娠可能な年代の女性がかかりやすい病気。病状が安定していれば妊娠・出産も可能です。抗リン脂質抗体症候群といって、自己抗体により胎児や胎盤を攻撃して血栓をつくり、流産や死産になってしまう病気もあり、流産を繰り返す場合には、血液をサラサラにして血栓をつくりにくくするアスピリンやヘパリンを使って妊娠するなどの対応が必要です。内科(できたら母性内科)と産科の連携が必要です。 いずれにせよ、「プレコンセプションケア=妊娠前からの健康管理」は若い女性たちにとって重要です。妊娠前にトータルドック(プレママドック)を受け、体質的な弱点を見つけ、早めに手当てをしながら妊娠に向かいましょう。