骨粗鬆症

骨粗鬆症

「骨粗鬆症(こつそしょうしょう・骨粗しょう症)」とは、骨の主成分であるカルシウムなどの総量(骨量)が低下して全身の骨が弱くなる病気です。女性ホルモンとの関わりが深く、閉経を迎えた50歳以降の女性に多く見られ、症状がないまま進行し、骨折して初めて気づくことが多いのが特徴です。骨粗鬆症により転倒骨折や圧迫骨折を起こすと痛みなどから寝たきりを招くこともあるため、日頃から対策を行い、骨の健康を維持することが大切です。

監修プロフィール
対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿理事長 つしま・るりこ 対馬 ルリ子 先生

産婦人科医・医学博士。1984年弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室助手、東京都立墨東病院総合周産期センター産婦人科医長などを経て、2002年に「ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック」を開院。女性のための総合医療を実現するためにNPO法人「女性医療ネットワーク」を設立(現理事長)。様々な情報提供、啓発活動、政策提言などを行っている。

骨粗鬆症について知る


骨粗鬆症の原因

骨粗鬆症の主な原因は「加齢」と「閉経」

骨は一生の間、破骨細胞が古くなった骨を溶かし(骨吸収)、骨芽細胞が新しい骨をつくる(骨形成)という作業を繰り返す骨代謝を行い、丈夫な骨を保っています。ところが、このバランスが崩れ、骨形成よりも骨吸収の働きの方が上回ると、骨量が減少して「鬆(す)」が入った状態に。これが骨粗鬆症です。骨粗鬆症は主に、「加齢」と「閉経による女性ホルモンの減少」によって起こります。

骨がつくられる仕組み
  • 骨粗しょう症の原因①:加齢
     年齢と共に骨の組織や細胞自体が老化し、腸でのカルシウム吸収は低下。さらに運動量も減ってくるので、徐々に骨量が減少していく。これは男性でも起こる。
  • 骨粗しょう症の原因②:女性ホルモンの減少
     女性ホルモンには、骨吸収を抑制し、骨形成を促進する働きがある。ところが閉経前後に女性ホルモンの分泌が減少してくると、これらの作用が低下するため骨密度が低下してくる。50代で骨密度は急激に下がることが分かっている。

栄養不足、運動不足も骨粗鬆症のリスクに

その他、カルシウムやタンパク質、ビタミンD不足などの「栄養不足」、骨に負荷がかかることで骨を強くする「運動の不足」、ステロイドの使用や糖尿病なども骨粗鬆症の原因となります。

  • 骨粗しょう症のリスク①:カルシウム不足
     体内のカルシウムの99%は骨に、1%は血中に存在している。カルシウム摂取量が不足すると、全身の臓器の機能を正常に保つ働きをしている血中カルシウムの濃度が下がらないように骨のカルシウムが溶け出すため、骨が弱くなる。
  • 骨粗しょう症のリスク②:ビタミンD不足
     ビタミンDが不足すると、腸でのカルシウム吸収率が低下して骨が弱くなる。ビタミンDは、食事で摂る他にも、日光を浴びると皮膚でつくられる。
  • 骨粗しょう症のリスク③:運動不足、低体重
     骨は、体重と運動量に応じた強度を保っている。運動不足や低体重によって骨にかかる負荷が減ると、その分、骨が弱くなる。
  • 骨粗しょう症のリスク④:喫煙
     喫煙は血流を悪くし、腸でのカルシウム吸収や女性ホルモンの分泌を妨げてしまう。
  • 骨粗しょう症のリスク⑤:過度な飲酒
     過度な飲酒は胃腸の粘膜を荒らしてカルシウムの吸収を妨げたり、利尿作用によってカルシウムの尿への排出を促してしまう。
  • 骨粗しょう症のリスク⑥:糖尿病や腎臓病
     骨を構成するタンパク質が不足・変質させてしまい、骨量が減少する。

骨粗鬆症の症状

ちょっとした転倒で骨折し、寝たきりにつながる

骨粗鬆症になると、ちょっとしたつまずきや転倒などで次の部位を骨折しやすく、再骨折も起こしやすくなります。大腿骨頸部や椎骨の骨折は、寝たきりを招く原因にもなります。

  • 骨粗しょう症による骨折①:手首
     つまずいたり転倒したりして、手をついた時に骨折してしまう。
  • 骨粗しょう症による骨折②:太ももの付け根(大腿骨頸部)
     段差でつまずく、階段を踏み外す、自転車で転ぶなどして尻もちをついた時に骨折の危険性がある。長期間歩けない状態が続くことから、筋力や骨量の低下、さらには寝たきりを招く原因に。
  • 骨粗しょう症による骨折③:背骨(椎体)
     体の重みや乗り物の振動、せき、くしゃみなどの小さな負荷が背骨にかかった時に、椎体がつぶれて圧迫骨折を起こす。複数の椎体で圧迫骨折を起こすと、背中や腰の痛みから寝込みがちになり、寝たきりを招く原因となる。
骨粗しょう症における骨折

「身長が縮んだ」は骨粗鬆症が進行しているサイン

骨粗鬆症が進行して背骨の圧迫骨折が起こると、次のような症状が見られます。当てはまるものが1つでもあったら早めに受診しましょう。

  • 身長が縮んだ

背骨を構成する椎体がつぶれると、その分、身長が縮む。若い頃と比べて3㎝以上縮んだら要注意。

身長が縮んだ
  • 背中や腰が丸くなってきた

複数の椎体がつぶれたり、椎体の前面がつぶれたりすると、前かがみの姿勢になって、背中や腰が曲がってくる。

背中や腰が丸くなってきた
  • 背中や腰が痛む

椎体のつぶれを放置していると、周囲の筋肉が緊張したままで鈍い痛みが続く。立ち上がる時や、重い物を持つ時に背中や腰に痛みがある場合は、気づかないうちに圧迫骨折をしている可能性がある。

背中や腰が痛む

骨粗鬆症の対策

5年に一度の定期検査で早期発見を

骨粗鬆症は、できるだけ早い段階で気づき、治療して骨折しにくい状態にすることが大切です。女性は40歳前後、男性は60歳前後で一度、骨密度の検査を受けましょう。もともと女性はPBM(ピークボーンマス:最大骨量)が低いので、30代で自分のPBMを測っておくことも大切です。骨密度は、整形外科やレントゲン撮影装置のある医療機関などで測定できます。その後の定期検査は5年に一度、女性は50代で急激に低下が進むので、2〜3年に一度、骨粗鬆症と診断された人は半年に一度が目安です。


「生活指導」と「薬物療法」が治療の基本

検査で骨粗鬆症と診断された人や、つまずきや転倒などで骨折した人は、骨粗鬆症の治療を始めましょう。ただし、治療で骨折が治ったとしても骨粗鬆症が治るわけではありません。今後の骨折を予防するためにも自己判断で治療を中止せず、医師の指示に従って少なくとも2〜3年は継続することが大切です。骨粗鬆症の治療は、「生活指導」と「薬物療法」を同時に行います。

  • 骨粗しょう症の治療①:生活指導
     骨量を増やすための食事や運動を積極的に取り入れる。禁煙する、過度な飲酒も控える。
  • 骨粗しょう症の治療②:女性ホルモン補充療法(HRT)
     HRTを受けている人は、骨量減少が遅く、骨折率が4割減少するという報告もある。
  • 骨粗しょう症の治療③:薬物療法
     60代ではHRTの代わりにSERMという、女性ホルモンを骨にのみ作用するようにしたものも使用するとよい。また、60代以上では、活性型ビタミンD₃製剤やテリパラチドなどの「骨をつくる作用を助ける薬」や、ビスフォスフォネート製剤などの「骨を壊す作用を抑える薬」などを用いる。

骨粗鬆症の予防法

女性ホルモンの低下を放置しない

まず大切なのは、10〜40代で月経不順や無月経の状態を放置せず、低用量ピルの服用などでしっかりと治療をしておくことです。女性ホルモンの低下を改善することが、骨粗鬆症の予防につながります。


骨を強くする栄養素を毎日しっかり摂る

丈夫な骨づくりのカギとなるのが、骨の主要な構成成分である「カルシウム」、骨の土台となる「タンパク質」、そしてカルシウムの吸収を助ける「ビタミンD」の3つです。

この他、骨の健康をサポートする栄養素として、ビタミンK、マグネシウム、亜鉛、カリウム、葉酸、ビタミンB₆、B₁₂なども必要です。特に日本人は現在全てのミネラル不足が深刻です。マルチミネラルサプリの摂取などで補うことがすすめられます。

  • 骨を強くする栄養素①:カルシウム
     乳製品、小魚、大豆製品、青菜など。乳製品は含有量だけでなく吸収率も高い。

骨を強くする栄養素②:タンパク質
 肉、魚、乳製品、大豆製品などからバランスよく摂取。

骨を強くする栄養素③:ビタミンD
 サケやウナギなどの魚やきのこ類に多く含まれる。きのこは天日干しにすると含有量がアップ。


適度な運動と日光浴で骨を強化

骨を強くするために、骨に適度な負荷をかける有酸素運動や筋肉トレーニングを毎日30分程度行いましょう。有酸素運動は、血液の循環をよくし骨代謝を活発にします。また、手のひらと同じくらいの面積の皮膚を15分間日光に当てるだけで、1日分のビタミンDがつくられるといわれています。日中、買い物に出かける程度の日光浴でも、骨の健康維持につながるのです。

適度な運動と日光浴で骨を強化

子どもの頃からの運動と食事が骨の健康につながる

骨量が増えていくのは、10〜20代までです。中でも女性は9〜12歳、男性は12〜15歳の頃に、骨量が最も増加するといわれています。骨の成長期であるこの頃までに、積極的な運動と十分なカルシウム摂取を行い、PBM(最大骨量)を上げておくことが大切です。

若い女性の「やせ」が増えていますが、タンパク質やカルシウム、鉄、葉酸不足も顕著です。骨に必要な栄養素を摂る習慣もしっかり身につけておきましょう。


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