溶連菌感染症

溶連菌感染症

溶連菌感染症は、溶血性連鎖球菌(ようけつせいれんさきゅうきん:略して溶連菌)という細菌がのどに感染して起こる病気で、5~15歳を中心に、幼児・学童期に多く発症します。春から夏にかけてと、冬に流行しやすい病気です。 溶連菌感染症に感染すると、始めに咽頭炎(いんとうえん)や扁桃炎(へんとうえん)といった、のどのかぜ症状と、39℃前後の急な発熱があります。発熱に続いてかゆみをもった小さな赤い発疹が出ることもあります。その後、舌がイチゴのように赤くブツブツした状態になる「イチゴ舌」の症状が現れます。幼児・学童期の場合は比較的重い症状が出ますが、3歳以下の子どもの場合、軽いかぜ症状で済むことも多い病気です。 溶連菌感染症はウイルス性のかぜとは違い、細菌が原因のため、自然に治ることはありません。抗菌薬を用いた治療が必要です。2日以上のどが腫れて痛んだりした時や高熱、発疹が出たりした場合は、溶連菌感染症の疑いがあるので必ず病院を受診しましょう。溶連菌感染症は繰り返しかかることがあり、大人でもかかる病気です。

監修プロフィール
こどもとおとなのクリニック パウルーム 院長 くろき・はるお 黒木 春郎先生

千葉大学医学部卒業。医学博士。千葉大学医学部臨床教授。公認心理師。千葉大学医学部小児科医局に所属し、関連病院勤務を経て、1998年千葉大学医学研究院小児病態学教官。2005年外房こどもクリニック開業(千葉県いすみ市)を経て、08年医療法人社団嗣業の会理事長、23年より「図書室のなかのクリニック」をコンセプトにした、こどもとおとなのクリニック パウルームを東京都港区に開業。日本小児科学会専門医・指導医。日本感染症学会専門医・指導医・評議員。日本遠隔医療学会理事。著書に『駆け抜けた17年』(幻冬舎)、『プライマリケアで診る小児感染症 7講』(中外医学社)、共著『最新感染症ガイド R-Book 2018-2021』(日本小児医事出版社)ほか多数。

溶連菌感染症について知る


溶連菌感染症の原因

多くの種類がある溶連菌の中でも、溶連菌感染症の9割はA群が原因

溶連菌は誰もがのどや鼻の穴にもっている常在菌のひとつですが、A群、B群、C群、G群などと多くの種類があります。このうち溶連菌感染症の原因の約9割を占めるのがA群です。溶連菌感染症というのは一般名称で、詳しい病名は「A群β溶血性レンサ球菌咽頭炎」といいます。飛沫感染と接触感染でうつり、2~5日程度の潜伏期間があった後に発症します。

溶連菌感染症

溶連菌感染症の症状

溶連菌感染症は突然39℃前後の高熱が出て、のどが赤く腫れて痛む

溶連菌感染症は、突然39℃前後の高い熱が出て、咽頭炎や扁桃炎のような「のどのかぜ」の症状が出ます。口蓋垂(こうがいすい)や扁桃(へんとう)部分が赤く腫れ、強い痛みがあります。咳や鼻水など、他のかぜ症状が少ないことも特徴です。

溶連菌感染症のよるのどの腫れ

頭痛や嘔吐、中耳炎を合併することもあります

溶連菌感染症は発熱やのどの痛みのほか、頭痛や倦怠感があったり、嘔吐、腹痛、下痢などの胃腸症状を伴ったりすることもあります。また、筋肉痛や関節痛が出ることもあります。のどの炎症に関連して、首のリンパ節が腫れたり、中耳炎や副鼻腔炎を合併したりすることもあります。


赤くてザラザラとした、かゆみのある小さな発疹が出ることも

高熱とのどの症状に続いて、赤くザラザラした小さな発疹が首や胸、手首、足首に出て、全身に広がることがあります。発疹の出方や程度はさまざまですが、かゆみを伴います。1週間ほどで発疹は治まりますが、その後、指先の皮膚がむけてきます。こちらも3週間程度で治まります。

溶連菌感染症による発疹

白いコケに覆われた舌が、2~5日後には赤くブツブツした「イチゴ舌」に

溶連菌感染症を発症した直後は、舌が白いコケで覆われたような状態になります。それから2~5日後に赤くブツブツした「イチゴ舌」と呼ばれる状態になるのが溶連菌感染症の特徴です。同時に唇の端(口角)も荒れてきます。

溶連菌感染症によるイチゴ舌

発症から2~3週間後に、リウマチ熱や急性腎炎を合併することがあります

まれに、溶連菌感染症を発症して2~3週間が経過したのちに、心臓弁膜に障害を起こす恐れのある「リウマチ熱」や「急性糸球体腎炎(きゅうせいしきゅうたいじんえん)」という腎臓の病気を発症することがあります。 溶連菌感染症の治療では、抗菌薬を5~10日間という比較的長期にわたって服用しますが、それはこの合併症を防ぐためです。溶連菌感染症は、症状が消えても体内にはまだ菌が残っており、合併症を引き起こすことがあるのです。そのため、もらった薬は最後までのみ切るようにしてください。


溶連菌感染症の対策

溶連菌感染症かどうかを検査して診断し、抗菌薬で治療します

溶連菌感染症かどうかは、のどの奥の粘液を採取して検査をします。簡易検査では15分ほどで診断されます。血液検査をすることもあります。 溶連菌感染症と診断されると、抗菌薬を5~10日間程度服用することになります。のみ始めて1~2日で熱も下がり、のどの痛みも和らいで、発疹も快方に向かいます。


合併症を防ぐため、抗菌薬は最後までのみ切りましょう

抗菌薬によって数日で溶連菌感染症の症状は治まっても、溶連菌は体内から完全に消えたわけではなく、すぐに再発してしまうことがあります。また、「リウマチ熱」や「急性糸球体腎炎」を合併することもあるため、症状がよくなったからといって薬の服用を勝手にやめてしまわず、必ず医師の指示に従ってのみ切るようにしてください。 薬をのみ始めて2~3日経っても熱が下がらず、のどの痛みもよくならない場合は再度受診しましょう。5日以上たっても発熱やのどの痛みが続く場合は「川崎病」の可能性があります。また、2~3週間経ってから顔や手足のむくみ、尿が出ないなどの症状がある場合は、腎炎の合併症が起きている恐れがあるので、必ず病院を受診してください。

溶連菌感染症の対策

水分をよく摂り、発疹が出た場合は爪を短く切ってかき壊しを防ぐ

溶連菌感染症にかかった時のホームケアは、脱水症状を防ぐために水分をよく摂り、のどに刺激を与えない消化のよい食べ物を食べさせるようにしましょう。また、発疹にはかゆみがあるため、かいて皮膚を傷つけてしまわないよう、爪を短く切るようにしましょう。


溶連菌感染症の予防法

溶連菌感染症は、こまめな手洗いなどで、家庭内感染を防ぎましょう

溶連菌感染症は感染力の強い病気で、何度も感染します。また、大人も感染します。感染経路は飛沫感染と接触感染です。以下のポイントを参考に、こまめな手洗いなどを心がけ、家族や兄弟に感染が広がらないようにしましょう。抗菌薬を服用して24時間で、人にうつらないほどに感染力は弱まります。

<溶連菌感染症の感染経路と予防のポイント>

  • 飛沫感染

発症者の唾液などに含まれた菌を吸い込むことで感染します。看護する家族はマスクを着用しましょう。

  • 接触感染

溶連菌がついた手指で触ったタオルやドアノブなどに触れ、その手で口や鼻を触ることで感染します。発症者と家族のタオルの共有は避けましょう。ペーパータオルを使うことも一案です。また薬用せっけんと流水でこまめに手洗いを行いましょう。触れた物をアルコール消毒することも有効です。

溶連菌感染症の予防法

何度もかかる場合は、兄弟を含めて検査をすることも

溶連菌感染症は、菌に感染しても症状が出ない(不顕性感染)という人もいます。そのため、兄弟のうち1人だけが繰り返しかかる場合は、症状が出ていない兄弟が菌をもっており、それによって再感染している疑いもあるので、兄弟も同時に検査をすることがあります。


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