腟カンジダ

膣カンジダ

腟カンジダの多くはカンジダ・アルビカンス菌という真菌(かび)が増殖して起こる腟炎で、「カンジダ性腟炎」または「腟カンジダ症」とも呼ばれます。女性の5人に1人が経験するともいわれ、抵抗力が落ちた時などに起こりやすく、一度かかると再発を繰り返す人が多いのが腟カンジダの特徴です。

監修プロフィール
芝大門 いまづクリニック院長 いまづ・よしひろ 今津嘉宏先生

1988年藤田保健衛生大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室助手、同大学医学部漢方医学センター助教、WHO intern、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、北里大学薬学部非常勤講師、首都大学東京非常勤講師などを経験。2013年芝大門 いまづクリニック開設。北里大学薬学部非常勤教員。著書に『風邪予防、虚弱体質改善から始める 最強の免疫力』(ワニブックス)など。

腟カンジダについて知る


腟カンジダの原因

腟内のバランスが乱れることで腟カンジダが発症する

カンジダ菌は、もともと健康な人の皮膚や腟内にいる常在菌の一種です。腟内は、乳酸菌の一種であるデーデルライン桿菌(かんきん)によって弱酸性に保たれ、他の細菌の侵入を防いでいます(自浄作用)。しかしこのバランスが崩れると、カンジダ菌が増殖して腟カンジダが発症します。バランスが崩れるきっかけとなるのは、疲労やストレスなどで抵抗力が低下した時や妊娠時、抗生物質やステロイド剤を服用した時などで、汗をかいてむれやすい夏場などにも腟カンジダは起こりやすくなります。

腟カンジダの原因①:抵抗力の低下

疲れやストレスなどで抵抗力が落ちると、カンジダ菌が異常増殖してしまうため、腟カンジダを発症しやすくなる。免疫力が衰えやすい妊娠初期にも発症しがち。

▼抵抗力が落ちているとき
疲れやストレスなどで抵抗力が落ちると、常在菌に感染しやすくなる。

抵抗力が落ちているとき

腟カンジダの原因②:抗生物質の服用

抗生物質により、雑菌の侵入を防いでくれるデーデルライン桿菌の数まで少なくなってしまうため、自浄作用が低下して、腟カンジダを発症する。

▼抗生物質をのんでいるとき
抗生物質が雑菌の侵入を防ぐよい菌まで殺してしまい、自浄作用が低下する。

抗生物質をのんでいるとき

腟カンジダの原因③:高温多湿の環境

通気性のよくない下着や、ナプキンやおりものシートの長時間使用などで高温多湿の状態が続くと、菌が増殖しやすくなり、腟カンジダを発症する。

▼抗生物質をのんでいるとき
抗生物質が雑菌の侵入を防ぐよい菌まで殺してしまい、自浄作用が低下する。

通気性の悪い下着やおりものシート

腟カンジダの症状

腟カンジダは、強いかゆみやおりものの異常が起こる

外陰部の強いかゆみとはれ、カッテージチーズ状やヨーグルト状のおりものが出るのが特徴です。カンジダ菌に感染し腟内に炎症が起こると、異常分泌物が増えます。腟の周辺の皮膚に炎症が広がり外陰炎を起こすと、かゆみの症状が出ます。腟カンジダの主な症状は次の通りです。かゆみだけでなく、色や匂いのあるおりものを伴う場合は、他の感染症を疑ったほうがよいでしょう。

  • 外陰部や腟のかゆみ……かゆみが強くて、じっとしていられないことがある
外陰部や腟のかゆみ
  • 粘度の高い、白い酒粕(カッテージチーズ、ヨーグルト)状のおりもの
粘度の高い、白い酒粕(カッテージチーズ、ヨーグルト)状のおりもの
  • 腟のヒリヒリ感、熱感
  • 外陰部の発疹や発赤
  • 排尿時の痛み

腟カンジダと似た症状を伴う感染症

女性のデリケートゾーンに起こる感染症で最も多いのは腟カンジダですが、それ以外にもかゆみやおりものの異常が現れる感染症があります。クラミジア感染症に女性が感染すると、自覚症状がなくても不妊症や子宮外妊娠の原因になるなど、いずれの感染症も放置しておくのは危険です。

  • 細菌性腟炎
     大腸菌などの常在菌により炎症が起こり、悪臭を伴うおりものが増える。性交渉により感染することも。
  • クラミジア
     性交渉などによるクラミジア細菌の感染で起こる。おりものが増え、不正出血が見られることも。女性が感染した場合は、自覚症状が出ないことが多い。
  • 毛ジラミ症
     強いかゆみが特徴。性交渉やプールなどで、毛ジラミに感染して起こる。
  • トリコモナス腟炎
     性交渉などによるトリコモナスという寄生虫の感染で起こる。黄色い膿(うみ)、泡立ったような悪臭のあるおりもの、外陰部のただれなどが生じる。
  • 淋(りん)菌性腟炎
     性交渉などによって、淋菌という細菌に感染して起こる。おりものの量が増え、黄色い膿のようなおりものが出たり、下腹部の痛みや発熱を伴ったりすることもある。

腟カンジダの対策

腟カンジダは放置せず、病院を受診すること

腟カンジダを疑う症状が現れたら、婦人科を受診しましょう。検査は、問診、内診、おりもの検査が行われます。問診では「腟の入り口がピリピリする」「外陰部がむずがゆい」など、場所や症状を具体的に伝えましょう。内診では、まず外陰部にかぶれや炎症がないかをチェックし、次に腟鏡で内部を診ます。その際に腟炎が疑われたら、専用の綿棒でおりものを少量取り、菌の存在を確認する検査を行います。腟カンジダと診断されると、抗真菌剤の腟坐薬や塗り薬が処方されます。これによりかゆみは数日で治まり、1週間程度で治ります。


腟カンジダが再発した場合は市販薬が活用できる

腟カンジダは一度発症すると、再発を繰り返す人が多いのが特徴です。再発してしまったら、症状を長引かせないためにも早めに対処しましょう。病院でも使われている抗真菌成分が配合された、市販の腟カンジダ再発治療薬を使用することもできます。こうした市販薬は、腟カンジダと診断されたことがある人で、前回と同じ症状が出た時に限り使えます。


腟カンジダの予防

健康的な生活&腟環境を良好に保つことが大事

腟カンジダの発症や再発は、抵抗力が落ちた時に起こります。睡眠不足、栄養不足、ストレス、疲労などがあれば改善方法を考え、健康的な生活を心がけましょう。他にも、次のことに注意しましょう。

  • 腟カンジダの予防①:通気性のよい服装・下着を選ぶ
     腟カンジダは暑くて湿気の多い夏に発症・再発しやすい。スキニーパンツのようなデリケートゾーンが蒸れやすい服装を控え、スカートなど風通しのよいファッションを心がける。下着はコットンのような通気性のある素材で、締め付けないものを選ぶとよい。
  • 腟カンジダの予防②:ナプキンやおりものシートはこまめに変える
     生理時のナプキンやおりものシートの長時間使用は、雑菌を繁殖しやすくするのでこまめに変える。
  • 腟カンジダの予防③:デリケートゾーンを洗い過ぎない
     デリケートゾーンを必要以上に石けんでゴシゴシ洗い過ぎると、粘膜を傷つけてしまったり、自浄作用が落ちて菌が繁殖しやすくなったりするので注意する。

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