しっかり保湿していますか? 冬の肌荒れ対策

肌荒れは、皮膚が乾燥することで起こりやすくなります。特に空気が乾燥する冬は、保湿ケアをしっかりして肌荒れ対策を心がけましょう。またかゆみや炎症は治療薬で改善し、悪化させないことが大切です。治療薬は症状や塗布する部位によって使い分けましょう。

監修プロフィール
よしき皮膚科クリニック銀座 院長 よしき・のぶこ 吉木 伸子 先生

1993年横浜市立大学医学部卒業。慶應義塾大学病院皮膚科学教室に入局後、浦和市立病院(現さいたま市立病院)、米国オハイオ州クリーブランドクリニック形成外科、日本漢方研究財団附属渋谷診療所などを経て、98年よしき皮膚科クリニック銀座開業。著書に『噂の女医がこっそり教える女の不調が消える本』(主婦の友社)、『素肌美人になれる 正しいスキンケア事典』(高橋書店)などがある。

まずは、皮膚の潤いを保つ「角質層」の構造を知っておこう

皮膚の潤いは、表皮の一番上にある「角質層」の状態と関係しています。角質層はセラミドなどの保湿物質が水分を保持すると共に、外部から刺激や異物が侵入するのを防ぐバリアの役目も果たしています。また、角質層の水分は次の3つの保湿物質によって保たれています。

●セラミド・・・角質細胞の間にある脂質の一つ。水分を閉じ込める力が最も強い。

●天然保湿因子・・・アミノ酸が主成分。角質細胞の中で水分を保持する力がある。
●皮脂・・・汗と混じって皮脂膜を形成。角質層の表面を覆い、水分蒸発を防いでいる。

角質層の構造

冬の皮膚は、角質層の水分が失われ、刺激を受けやすい状態です

健康な角質層には約20パーセントを占める水分が含まれています。その水分は皮膚がつくり出すセラミドなどの保湿物質によって保持されていますが、加齢と共に保湿物質をつくる力が弱まってくると、水分が蒸発しやすくなります。湿度が下がり空気が乾燥する冬は、皮膚から奪われる水分量が増加。皮脂膜もつくられにくくなります。こうして角質層の乾燥が進むと、角質細胞が縮んだりはがれたりしてすき間ができます。このすき間からさらに皮膚内部の水分が蒸発すると、ほこりや細菌、紫外線といった異物や刺激が侵入し、肌荒れの原因になります。

冬場は気候の影響だけでなく、職場や家庭でもエアコンを使用することが多いため、室内は常に乾燥状態に。その他、電気毛布や電気カーペットなどを使うことでも角質層の水分は蒸発し、皮膚の乾燥が進みやすくなります。

乾燥した冬の皮膚

加齢と共にセラミドが減少し、乾燥しやすくなります

皮膚の潤いを保つ保湿物質の中で、大きな役割を果たしているセラミドは皮膚の新陳代謝の過程でつくられます。最も生産量が多いのは乳児の頃で、それ以降、セラミドの生産量はどんどん減少傾向に。このため、人間の皮膚は高齢になるほど水分を保つ力が弱まり、「乾燥肌」になりやすくなります。顔や体を洗った後に皮膚がつっぱるのは乾燥肌のサイン。日頃から保湿して、乾燥肌をケアしましょう。

冬に起こりやすい肌荒れは、乾燥による「かゆみ」や「湿疹」

乾燥によって起こりやすい冬の肌荒れには、主に次のようなものが挙げられます。

●皮脂欠乏症・皮脂欠乏性湿疹・・・皮膚がカサカサになり粉が吹いたような状態。かゆみを感じることもある(皮脂欠乏症)。かき過ぎると湿疹ができ、皮脂欠乏性湿疹となる。乾燥しやすい脚や腰などに起きやすく、冬の肌荒れで最も多く見られる。
●貨幣状湿疹・・・主に脚にコイン状の丸い湿疹ができ、強いかゆみを伴う。高齢者のすねにできやすい。
●進行性指掌角皮症(主婦湿疹)・・・手や手のひらが乾燥して皮がむけ、かゆみや湿疹が生じる。深くひび割れて、ピリピリとした痛みが起こること(あかぎれ)や、水疱ができることもある。水や洗剤を使う仕事の人に多く見られ、冬場は悪化しやすい。

主な冬の肌荒れ

肌荒れが長引くと、慢性的に炎症が続くことで体に有害な活性酸素が発生し、皮膚の老化の原因となります。これを「炎症老化」といいます。日頃から乾燥対策を心がけ、肌荒れを防ぐことがアンチエイジングにもつながります。

「毎日の保湿」と「体を洗いすぎない」ことが肌荒れを防ぐセルフケアのコツ

冬の肌荒れを予防するには、角質層を乾燥させないケアが欠かせません。そのためにも、次のことに取り組みましょう。

●毎日保湿ケアをする・・・不足したセラミドを補う。
●体の洗い過ぎを控える・・・セラミドなどの保湿物質が流出するのを防ぐ。

いくら皮膚に水分をなじませても角質層の保湿物質が不足していては、潤いを保つことができません。そこでポイントとなるのがセラミドです。保湿物質の中で最も水分保持力が高いので、セラミドを配合した市販の保湿剤を毎日塗布して、角質層の保湿機能を回復させましょう。  

皮膚がカサカサしていなくても、空気の乾燥が気になったら、保湿ケアを始めることをおすすめします。保湿剤はパッケージに記載された量を手にとり、腰や脚など乾燥しやすい部位やカサカサしている所に入念に塗ります。人によって皮膚の状態や乾燥の度合いが違うので、塗布後、24時間がたたないうちに乾燥してしまう場合は量を増やして、自分に合う適量を見つけましょう。
また体の洗い過ぎにより角質層にあるセラミドが流れ出してしまうため、注意が必要です。体や手を洗う時は、主に次のことを心がけましょう。

●刺激の少ない綿素材のタオルなどを使用する。
●力を入れず、優しく洗う。


首から下の体は皮脂が少なく乾燥しやすい部位。このため、カサカサやかゆみが気になる場合は、毎日石けんをつけて洗う必要はありません。汗や汚れはお湯だけでも十分に洗い落とせます。入浴後は保湿ケアをして、失ったセラミドを補いましょう。

セルフケアのポイント

その他にも、加湿器を活用したり、冬でも皮膚の乾燥に影響する紫外線対策をしたりして、皮膚を乾燥から守りましょう。

日常での留意点

肌荒れの手当てのポイントは?

肌荒れを放置していると、皮膚の新陳代謝がうまくいかず、治りにくくなってしまいます。このため、かゆみが出てきたら早めに手当てすることが大切です。
ひどいかゆみや湿疹など炎症が起きている場合は、まず治療薬で炎症を抑えるのがポイント。炎症が治まるとかゆみが和らぐため、かき過ぎて症状を悪化させてしまう悪循環を断ち切れます。その上で保湿剤を塗り、皮膚の乾燥を改善していきましょう。

保湿剤や治療薬は医療機関で処方を受けられますが、薬局やドラッグストアでも手に入ります。市販の治療薬は症状や使用する部位によって使い分けると効果的です。購入する際は、薬剤師または登録販売者に相談して選ぶとよいでしょう。主な治療薬のタイプと使い分けは次の通りです。

●クリームタイプ・・・べたつかずのびがよいので、主に背中、腰、脚など患部が広い場合に最適。
●軟膏タイプ・・・密着度が高く水や汗で落ちにくいので、外部の刺激から患部を保護するのに有効。かき壊しがある場合や、指先、手のひらなどよく使う部位におすすめ。

市販薬の使い分け

また、症状の改善を促すためには、次のような対処法が挙げられます。

●爪を切る・・・患部を爪で傷つけたり、かき壊したりしないようにする。
●治療薬を塗った患部を手袋や靴下で覆う・・・患部を保護する他、治療薬の浸透を促す。
●水仕事の時はゴム手袋などを使用・・・水や洗剤の刺激を避け、手を保護する。

手当ての工夫

市販薬を使用しても改善しない時は受診を

皮膚の乾燥対策や、市販の治療薬を5~7日使用しても症状が治まらない場合は、薬の使用を中止して、皮膚科を受診しましょう。ただし、我慢できないほどの激しいかゆみは、別の疾患が原因のこともあるので、すぐに受診してください。
受診する際は、使用していた市販の治療薬や保湿剤を持参します。また、使用期間や回数を記録したメモも用意すると、医師とのコミュニケーションがスムーズに進み、診療にも役立ちます。

受診時は使用した薬を持参

空気の乾燥が気になったら、すぐに保湿ケアを始めることが肌荒れを起こさないコツ。皮膚がカサカサし始める前に、先手の保湿対策を行っていきましょう。


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