集中力を高めるカギは栄養にあり! 受験生のいる家庭にもおすすめの食事や暮らしのコツ

集中力を高めるカギは栄養にあり! 受験生のいる家庭にもおすすめの食事や暮らしのコツ

受験生を持つ親御さんにとって、お子さんの集中力をいかに高め、維持するかは気になるところでしょう。集中力には睡眠や生活環境なども関係しますが、実は食事もとても大事な要素。集中力を高めるためにおすすめの栄養素や食事の際の留意点などについて、これまで数多くのトップアスリートの栄養指導に携わってきた石川三知先生に教えていただきました。

監修プロフィール
Office LAC-U 代表 Body Refining Planner いしかわ・みち 石川 三知 先生

これまでに、フィギュアスケート荒川静香選手、髙橋大輔選手、全日本男子バレーボールチームなど多くのメダリストやオリンピアンを栄養面からサポート。2022年現在は、J1浦和レッズ、東海大学附属大阪仰星高校ラグビー部、山梨学院大学陸上部(短距離・フィールドパート)のサポートを行う。八王子スポーツ整形外科栄養管理部門スタッフ、中央大学商学部兼任講師(スポーツ科学)を務める。著書に『世界のピークパフォーマーが実践する 脳を操る食事術」(SBクリエイティブ)など多数。生涯学習のユーキャンでは、「スポーツ栄養プランナー講座」を監修。

集中力を高めるために、まず、体の仕組みを知っておきましょう

集中力を高め、最高のパフォーマンスを発揮したいと思うことは、だれでも生活のいろいろなシーンであるはずですが、いったい私たちの体はどのような状態の時に最も集中できるのでしょうか。まず初めに、集中するための条件について考えてみましょう。

●睡眠不足では集中できない

睡眠不足では集中できない

勉強や仕事に集中しなければいけないのに、眠くて頭に入らない……こんな時、あなたならどうしますか? ブラックコーヒーを飲んで頑張る? 冷たい水で顔を洗う? 体操をして気合を入れる? どれも間違った方法ではありませんが、最も正しい答えは、「寝る」です。眠くなるのは、体や脳が休息を欲しているサイン。無理に続けるよりも、15分でも仮眠すれば脳がリフレッシュされ、その後の集中力が高まり効率も上がります。
そして睡眠は、体や脳を休めるだけでなく、記憶を定着させるためにも重要な時間といわれています。そのため睡眠をしっかり確保することは、受験生だけでなく、スキルを身につけ、仕事やスポーツでよいパフォーマンスを発揮したい人にとっても大切なのです。

●集中力を高めるためには、交感神経と副交感神経の切り替えが大事
自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、交感神経は活動時や緊張している時などに活発に働き、副交感神経はリラックスしている時に活発に働きます。基本的に集中力が高まるのは交感神経が優位な時で、眠い時は副交感神経が優位になっているため集中力が低下します。食事のあとに眠くなるのは、胃に血流が集中し、消化管を働かせようとして副交感神経が優位になるためです。脳を働かせて集中するためには交感神経を優位にする必要があり、栄養をしっかり吸収するためには副交感神経を優位にしてリラックスした状態で食事を摂る必要があります。この2つは同時には両立しないので、ながら食べは避けましょう。

●血糖値の乱れは集中力に大きく影響する
もう一つ集中力に影響するのが、血糖値です。血糖値とは血液中のブドウ糖のこと。砂糖やご飯、パン、麺類などに多く含まれる糖質は、脳のエネルギーとなりますが、摂り過ぎてしまうと、血糖値を上げる原因になります。そして最もよくないのが、血糖値が急激に上がったり下がったりすることです。集中力を保つためには、血糖値を急上昇させやすいドカ食いや早食いをせず、血糖値の上昇を緩やかにする食物繊維も摂るなどして血糖値を安定した状態で維持することが大切になります。

●集中力を高めるために、頭脳労働にも正しい姿勢が欠かせない

正しい姿勢

正しい姿勢は、実は受験生や頭脳労働をする人にも大切なポイントです。筋肉や骨格を本来のポジションに置いてあげることで、集中力を高めることができます。姿勢が悪ければ、神経や血管などが圧迫されて脳への血流が悪くなる上に、肩が凝ったり気分が悪くなったりし、集中力も低下してしまうことに。椅子に浅く座り、両足の裏をきちんと床につける姿勢をとってみてください。背筋が伸びて、頭が正しい位置に収まります。
食事や栄養だけではなく、こうした集中するための体の仕組みを知っておくことはとても大切なことです。

脳の働きや集中力を高める栄養素

栄養素は互いに協力し合って働くため、特定の栄養素だけを大量に摂っても体の中でうまく利用されません。そのため全ての栄養素をバランスよく摂ることが最も大切なのですが、ここでは特に脳の働きとかかわりが深い栄養素をご紹介します。

脳の働きや集中力を高める栄養素

●カルシウム・マグネシウム
カルシウムとマグネシウムは、どちらも日本人に不足しがちなミネラルです。脳内では神経伝達物質を介して情報伝達を行っていますが、カルシウムやマグネシウムが不足すると神経細胞間の情報伝達が安定せず、情報がきちんと伝わらなくなってしまい、集中力や記憶力の低下を招くことがあります。カルシウムは乳製品や小松菜、モロヘイヤ、干しエビ、ウナギ、サバなど、マグネシウムは豆腐や納豆、きな粉などの大豆加工品、あおさやわかめなどの海藻類、ゴマやアーモンドなどのナッツ類、さつまいも、ほうれん草などに多く含まれます。そのまま食べられるチーズやヨーグルトなどの乳製品や、下ごしらえが不要な魚の水煮缶などが活用しやすいでしょう。きな粉や乾燥わかめを常備しておき、いろいろなものにちょっとプラスするのもよい方法です。

●ビタミンB群(ビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)
ビタミンB群は、食事で摂った糖質、タンパク質、脂質などを活動のエネルギーに変えるために欠かせない栄養素で、体内の様々な化学反応にかかわっています。例えばビタミンB1は脳のエネルギー源となる糖質の代謝に、ビタミンB2は細胞の再生と成長に、ビタミンB6やB12、葉酸は神経機能を正常に保つために重要です。ビタミンB群は互いに補い合って働くため、単独で摂るよりも一緒に摂ったほうがより高い効果を得ることができます。複合的に含まれるのは、牛肉や豚肉、レバー、ウナギ、マグロ、カツオなどの動物性食品。植物性食品では、玄米、雑穀米、豆類などから摂ることができます。ビタミンB群は水溶性のため、新鮮な食品を生で摂るか、スープやシチューなど煮汁ごと摂れる料理がおすすめです。

●レシチン
レシチンは、神経伝達物質のアセチルコリンの材料になる物質で、記憶の定着に欠かせません。レシチンが豊富なのは、卵黄、大豆、イカ、サバ、ウナギ、ニシンなど。卵は朝食からおやつまでいろいろな料理に使いやすく、手頃で優秀な食材です。

●DHA・EPA
DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、どちらも青魚の油に多く含まれるn-3系脂肪酸です。“魚を食べると頭がよくなる”といわれるのは、この脂肪酸のため。DHAは脳内の神経細胞を保護したり、細胞間の情報のやりとりを活性化させたりします。またEPAは体内の炎症を抑える働きや血液をサラサラにする働きで知られています。効率的に摂るには、鮮度がよく脂ののったサバ、イワシ、サンマ、マグロ、ブリなどを刺身やカルパッチョなどで食べるのがおすすめです。

●チロシン
チロシンは、非必須アミノ酸の1つで、集中力や興奮に関与する神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリン、自律神経の調整にかかわり集中力に関与する甲状腺ホルモンの原料になります。チーズ、大豆製品、ナッツ類、バナナなどに含まれています。

●食物繊維は多めに、白砂糖や油は控えめに
これらの栄養素に加え、しっかり補給したいのが食物繊維です。三大栄養素の1つである炭水化物は、糖質と食物繊維から成ります。このうち糖質は血糖値を上昇させますが、食物繊維には血糖値の急激な上昇を抑える働きがあり、脳のエネルギー源の安定的な供給に役立ちます。また、腸内細菌のエサになるので、腸内環境を整えるためにも食物繊維は十分な摂取が必要です。精製度の低い玄米、雑穀、全粒粉や、豆類、いも類、海藻類、きのこ類、緑黄色野菜などを積極的に食卓に乗せるようにしましょう。

逆に控えたほうがよいのが、白砂糖と油です。白砂糖は糖質以外の栄養素をほとんど含んでいないため、たくさん摂るとその糖質の代謝のためにビタミンB群やマグネシウムなどが消費されてしまいます。油に含まれる脂質は糖質と共に体にとって大切なエネルギー源で、なかにはDHAやEPAのように体によい働きをするものもあります。しかし、大量に摂ればそれを燃焼するためにたくさんのビタミンやミネラルを消費してしまいます。糖質や脂質はスナック菓子や菓子パンなどに多く含まれているので食べ過ぎないよう注意しつつ、摂り過ぎがよくない理由をお子さんにもきちんと理解させることも大切です。

集中力を高めるために、食事の摂り方はこんな工夫を

食事は内容だけでなく、摂り方も重要です。食事で摂った栄養素を効率的に利用し、最高のパフォーマンスを発揮するために、次のような工夫をしましょう。

食事の摂り方の工夫

●1日3食で生活のリズムを整える
体の中では1日24時間休むことなく代謝活動が行われています。そのため十分なエネルギーを安定的に供給する必要があり、1食でも欠けると脳をはじめ体のいろいろな働きが低下してしまいます。また、食事は栄養摂取だけでなく、生活のリズムを整えるためにも大切な行為です。朝食は脳と体にスイッチを入れるもの。体温を上げて集中力を高めるためにも糖質だけでなく乳製品や肉、魚、卵などタンパク質も摂るようにしましょう。昼食は午後の活動のために、バランスがよくボリュームのある食事を。夕食は質のよい睡眠を妨げないように、消化によい物を適量摂るのがポイントです。

●一度にたくさん食べずに分食する
アスリートと同じように少しずつ補給するという食べ方は受験生にもおすすめです。活動するためには交感神経が優位になっていることが必要であり、集中して勉強しなければならない時は、副交感神経が優位にならないように、一度に食べる量を少なくして、その分、回数を多く摂るようにするとよいでしょう。ただし、食事の回数を増やすことでトータルな摂取量が増えてしまわないように気をつけてください。運動することと頭を使うことは一見違うように思われるかもしれませんが、能力を出し続ける環境をいかに整えるかという点では同じなのです。

●よくかんで食べる
よくかめば唾液が出て胃液などの消化酵素の分泌も促され、栄養の吸収がよくなります。また、かむという運動で脳内の血流が増えて神経活動が活発になり、脳を活性化させるので、学習効果を高めるために役立ちます。よくかむための食事の工夫としては、繊維質の食材を取り入れる、食材を大きく切る、乾物や豆類などかたい物を取り入れるなどがあります。足りない栄養を補う補食を摂る場合も、菓子パンのようにやわらかく食べやすい物より、ナッツやじゃこ、リンゴのようなある程度かたさのある物がおすすめです。

●バリエーション豊かな食卓を
食べ物からの情報で脳に刺激を与えましょう。1食の中に、味付けやその濃さ、食感、温度、香り、色などでできるだけ異なるバリエーションを取り揃えると脳への刺激になります。

栄養ドリンクやエナジードリンクはOK?

市販の栄養ドリンクの中には、ビタミンB1・B2・B6などを含み「集中力の維持・改善」を効能として表示している物もあります。これらは常飲する物ではありませんが、中高生なら用法・用量の範囲内で利用する分には問題ありません。なかには「15歳以上」とされている物もあるので、購入時にパッケージの表示をしっかり確認してください。受験生の使い方としては、空腹時に飲むより、食後に飲むか、補食とセットで飲んだほうがよいでしょう。ビタミンB群が、食事で摂った糖質やタンパク質などの代謝を助けます。

一方、エナジードリンクは清涼飲料水であり、医薬品や医薬部外品の栄養ドリンクのような働きは期待できません。また、一般的なエナジードリンクにはカフェインや糖類が多く含まれているため、飲み過ぎないように注意が必要です。

集中力を維持するためのリフレッシュ法

最後に、食事以外に集中力を高めたり維持したりするためのヒントをご紹介します。

●集中力維持のリフレッシュ法:視覚情報を変える

集中力維持のリフレッシュ法:視覚情報を変える

私たちは外から取り入れる情報の多くを視覚から得ていますが、集中している時は視野やピントが固定化しがちに。視野を広げ、ピントの距離を変えて、視覚から得る情報を意識的に変えることで、脳はリフレッシュされます。例えば、空や雲を見る、高い場所に行って町を見下ろす、など。夜暗くなってからなら、星を見上げるのもおすすめです。

●集中力維持のリフレッシュ法:能動的な行動をとる

集中力維持のリフレッシュ法:能動的な行動をとる

やる気が起きず勉強に取り組めない時や集中力を維持できない時は、勉強からちょっと離れて全く違うことをしてみましょう。一番手軽でおすすめなのは、歌を歌うこと。声を出すことは脳への刺激になるだけでなく、深い呼吸を促し全身を活性化してくれます。また、冷たい物や温かい物を摂ったり、手に持ったりという温度による刺激も有効です。冬なら、部屋の窓を開けて冷たい空気を入れるのもよいでしょう。


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