自律神経の乱れが原因?春の疲れは“ゆっくり”で解消

忙しい毎日に加え、春は不安定な天候や生活環境の変化などで緊張や不安、ストレスなどを抱えがちです。精神的に落ち着かない状態が続くと、自律神経が乱れ心身の不調につながります。
更年期を迎える40代からは特に“ゆっくり”を意識して、疲れにくい体を手に入れましょう。

監修プロフィール
順天堂大学医学部 教授 こばやし・ひろゆき 小林 弘幸 先生

1987年順天堂大学医学部卒業。同大学大学院医学研究科(小児外科)修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科などに勤務後、順天堂大学医学部小児外科学講師・助教授などを歴任し、現在に至る。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。自律神経研究の第一人者であり、多くのアスリートの指導にかかわっている。また順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した‟腸のスペシャリスト“としても活躍。著書に『一流の人をつくる 整える習慣』『自律神経を整える「あきらめる」健康法』(KADOKAWA)、『自律神経が整う時間コントロール術』(小学館)、『聞くだけで自律神経が整うCDブック』(アスコム)、『小林弘幸式2週間プログラム 朝だけ腸活ダイエット』(ワニブックス)など多数。YouTubeチャンネル「ドクター小林の健康塾」で健康情報を発信している。

体がだるくて気力が湧かない……は、自律神経のバランスの乱れが原因かも?

自律神経は、内臓の働きや血管、呼吸などをコントロールしている神経で、交感神経と副交感神経の2つがあります。この両方が互いにバランスを取り合いながら、心身を調節しています。
しかし、年齢を重ねると共に自律神経の働きは衰えてきます。近年の研究では、特に副交感神経の働きが低下してくることが分かってきました(下記グラフ参照)。

男女別・年齢別副交感神経機能の比較

これには、ストレスはもちろん、運動不足や性ホルモンの影響など、様々な要因が関係しています。副交感神経の働きが低下し、交感神経が優位な状態が続くと、血管が収縮したままで血流は悪化。このように、自律神経の乱れによる血流障害が、「だるい」、「気力が湧かない」といった“疲れ”を招くのです。

【ポイント】 交感神経と副交感神経とは?
交感神経と副交感神経は、車で例えるとアクセルとブレーキのような関係で、心身の状態に合わせて切り替わります。血管を収縮させて血圧や心拍数を上げる、胃腸の働きを抑制するといった働きは、交感神経によるもの。一方、副交感神経は、血管を拡張させて血圧や心拍数を下げる、胃腸の働きを促進させるなど、交感神経と相反する働きをします。アクティブに活動している時や緊張・不安な状態の時は交感神経が優位になり、リラックスしている時や眠っている時は副交感神経が優位になります。

自分は交感神経が優位なのか、副交感神経が優位なのか次のチェックリストでセルフチェックしてみましょう。

自律神経のバランスをセルフチェック!

春は、気圧や生活環境の変化が自律神経に影響を与えやすい季節

不安定な天候になりがちな春は、転勤や転居など、環境が変わることも多い時期です。また、環境の変化に慣れてきた頃に大型連休があり、生活のリズムを崩してしまうことも少なくありません。
このような気温・気圧の変動や環境の変化、生活のリズムを崩すことも自律神経を乱し、疲れを招くのです。連休明けにやる気が出ない、だるいなど、“五月病“を訴える人が増えるのも、こういった要因が関係しています。
休日であっても起床・就寝時間や食事の回数を変えないようにするなど、生活のリズムを崩さないようにすると自律神経は整いやすく、五月病の予防にもなります。また新緑などの四季の自然に触れると心が落ち着き、乱れた自律神経を整えるのに効果的です。

自律神経を乱さないために、“ゆっくり”を意識して、副交感神経の働きを高めよう

40~50代は体力が落ちる上に、仕事や家事と忙しい毎日の中で、子どもの進学や親の介護など、精神的にも落ち着かないことが多い年代です。時間に追われて急ぐことや慌てること、心配や不安、ストレスなどで交感神経が優位な状態が続くと、自律神経のバランスが乱れます。

副交感神経の働きが低下してくる40代以降、自律神経を整えるカギを握るのは副交感神経です。そのため、副交感神経の働きを高める習慣を身につけることが重要になります。ただ、生活習慣を大きく変える必要はありません。人と話をする時や食事をする時、仕事や家事の仕方、休みの日の過ごし方など、全てにおいて“ゆっくり”を意識するだけで副交感神経の働きは高まり、自律神経が整います。

自律神経に影響する腸内環境も整えて

腸内の善玉菌が増えると、副交感神経の働きが高まることが近年の研究で明らかになってきました。つまり、悪玉菌が多く、腸内環境が悪いと、自律神経のバランスも乱れやすくなるというわけです。
普段から、発酵食品や食物繊維を多く含んだ食材を積極的に摂り、腸内環境を整えるよう心がけましょう。また、腸内環境を整えるサポートをする市販の整腸剤を取り入れるのも一案です。

ささいなことでイライラしたら、深呼吸やため息で、怒りの感情を吐き出そう

イライラやガミガミなど、怒ると交感神経が急激に高まり、自律神経は一気に乱れます。呼吸が浅くなり、血管が収縮して血流が悪化。思考力や判断力、集中力が著しく低下し、体にも心にもよくありません。
感情の乱れに気づいた時はまず、黙って深呼吸することです。5秒間息を吸って、10秒間で吐く「1対2の呼吸」を取り入れてみましょう。2~3分間続けると、副交感神経の働きが高まって血流がよくなり、不思議と気持ちも落ち着いてきます。

また、「はぁ~」と大きくため息をつくのも、乱れた自律神経を整えるのに有効です。しっかりと息を吐くことで、息を十分に吸うことができ、自然と深い呼吸に。すると、副交感神経の働きが高まってリラックスでき、感情や思考の安定につながります。言いたいことがある場合は、自律神経を整えてから相手に伝えるようにしましょう。
副交感神経の働きが低下してくる40代からは、怒りをうまく回避し、笑顔を忘れないことです。たとえつくり笑いでも、口角を上げるだけで副交感神経の働きは高まります。

40代からの怒りマネジメント

毎日予定がぎっしり……。意識して “何も入れない”時間を設けて

体や心が疲れ切った状態では、仕事や家事の生産性も下がってしまいます。40~50代は体力的にも無理が利かなくなってくる世代なので、頑張り過ぎないことです。理想は1日30分、少なくとも週に1日は予定を入れない、“ブランク時間(日)”をつくりましょう。

例えば、今日の午後5時から30分は予定を入れない、水曜日はブランク日と決め、自分のためだけに自由な時間を使うのです。ダラダラと過ごすのではなく、好きな音楽を聴く、お気に入りのカフェでお茶をするなどして過ごすとよいでしょう。
心に余裕を取り戻せると自律神経が整い、また前向きに取り組もうという気持ちが湧いてきます。

日頃から整理整頓・断捨離をするのもおすすめ

机の上や部屋などが散らかっていたり、使っていない物をため込んだりしていませんか?たくさんの物に囲まれた乱雑な環境は、集中力や判断力を鈍らせ、ストレスを生みます。もちろん自律神経を乱す原因にもつながります。不要な物は潔く捨て、身の回りを整理しましょう。本当に必要な物だけに囲まれていると自律神経も安定しやすく、仕事や家事のパフォーマンス向上にもつながります。

整理整頓

よいコンディションで1日を過ごすには、「余裕のある朝」がポイント

朝の“心の余裕”が、その日1日を決めるといってもよいくらい、朝の過ごし方は重要です。急いだり、慌てたりすると交感神経が急激に高まります。1日の始まりに自律神経のバランスを乱すと、その後、仕事のミスや人間関係を損ねる原因にもなりかねません。
朝は副交感神経から交感神経へと、ゆっくり切り替えるのが理想です。そのため、慌ただしく朝を過ごしている人はいつもより30分早く起き、時間に余裕をもつことをおすすめします。朝寝坊した時でも、ゆっくり歯磨きをする、ゆっくり着替えるなど、何か一つでも動きに“ゆっくり”を取り入れるだけで自律神経の乱れを防げます。

余裕のある朝

少し意識を変えるだけで自律神経は劇的に整います。この春から“ゆっくり”生きることを心がけてみましょう。


この記事はお役に立ちましたか?

今後最も読みたいコンテンツを教えてください。

ご回答ありがとうございました

健康情報サイト