乾燥が気になる更年期世代。正しい対策とケアで、トラブルを回避しよう!

「たくさん汗をかく季節でも、乾燥を感じる…」その乾燥、もしかしたら更年期特有の症状かもしれません。更年期世代に起こる乾燥の対策とケア方法について、産婦人科医で女性のメンタルヘルスも専門とする小野陽子先生にうかがいました。

監修プロフィール
対馬ルリ子女性ライフクリニック/Addots GINZA おの・ようこ 小野 陽子 先生

聖路加国際病院女性総合診療部、東邦大学医療センター大森病院心療内科を経て、対馬ルリ子女性ライフクリニック勤務。Addots GINZA「女性のこころとからだのオンライン相談室」開設予定。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本心身医学会心身医療専門医、日本女性心身医学会認定医、日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医。心療内科、婦人科両面からのケアを行う。

更年期が原因?女性ホルモンの減少が肌の乾燥を招く!

更年期が原因?女性ホルモンの減少が肌の乾燥を招く!

一般的に更年期は、閉経の前後5年ずつ、計10年間をさします。日本人の閉経の平均は50.5歳とされ、45から55歳くらいの時期を更年期世代といいます。この世代になって、「スキンケアには気をつけているのに、最近以前よりも乾燥しやすくなった」と感じることはありませんか? 更年期を迎えると、徐々に女性ホルモンのエストロゲンが減少し、体や心に様々な変化が現れます。エストロゲンは肌の弾力や水分を保つために重要な女性ホルモンで、減少すると肌のコラーゲンや水分を保つ力が低下するだけではなく、ターンオーバーのサイクルの乱れを引き起こします。その結果、肌が乾燥しやすくなってしまいます。

自覚していない人が多い?更年期にはフェミニンゾーンの乾燥にも要注意!

自覚していない人が多い?更年期にはフェミニンゾーンの乾燥にも要注意!

更年期のフェミニンゾーンの乾燥はGSMの症状の1つ

更年期世代になりエストロゲンが減少することで、フェミニンゾーンの皮膚は萎縮し、粘膜の潤いも失われます。その結果現れる様々な不調が、GSM(Genitourinary syndrome of menopause:閉経関連泌尿生殖器症候群)と呼ばれるもの。フェミニンゾーンのかゆみや痛み、灼熱感、におい、頻尿・尿もれ、性交痛・性交後出血、再発性膀胱炎など、多岐にわたる症状があり、性交痛や出血、炎症が起こりやすくなる腟の乾燥もその1つです。顔や手足などと比べると、なかなか相談しづらい人も多いといえるでしょう。

「これも更年期の乾燥?」その答えと対策を知るために、婦人科を受診しましょう

小さな刺激に過敏に反応するようになったら、要注意!

更年期以降に起こりやすい肌の変化やフェミニンゾーンの乾燥は、体がもつバリア機能を低下させ、様々なトラブルを引き起こします。例えば、「気温や湿度の変化を肌で敏感に察知する」「以前から使っている化粧品やソープがしみるようになった」「衣服が擦れただけで痛む」などの変化があると、そこからかぶれや湿疹といったトラブルに発展してしまう場合もあります。エストロゲンの低下に伴い外陰部や腟の潤いが損なわれると、外陰部の乾燥、かゆみ、灼熱感、性交痛などの症状を認め、外陰腟萎縮という状態になることも。違和感があったら、早めのケアが大切です。


不快な症状の軽減や改善が見込める治療があります

肌の保湿など自分でできるケアもありますが、婦人科を受診して乾燥の原因を明確にし、適切な治療を受けることも一案です。例えば、更年期の不調を緩和する治療として「HRT(Hormone replacement therapy:ホルモン補充療法)」があります。これはエストロゲンを補充する治療で、肌やフェミニンゾーンの乾燥を和らげGSMの症状を緩和させる他、突然顔が熱くなったり汗が止まらなくなったりするホットフラッシュや、疲れやすさやだるさといった倦怠感、イライラ、息苦しさなどを改善させる効果が期待できます。

HRT(ホルモン補充療法)の治療薬は症状によって用法・用量が異なります。

■フェミニンゾーンのみの症状の場合

エストロゲン製剤の腟への局所投与

■フェミニンゾーンの症状に加えて、ホットフラッシュや倦怠感などの更年期症状がある場合

全身症状に効果のある内服薬や、塗り薬・貼り薬といった外用薬

漢方薬も乾燥を和らげます。HRTと併用が可能ですが、体質に合わせて処方されるものですので東洋医学の専門医にご相談することをおすすめします。


ドライアイ、ドライマウスは自己免疫疾患の可能性も!

更年期世代になると、エストロゲンの減少やストレスなどが唾液や涙の分泌量に影響し、ドライマウスやドライアイといった症状が出ることがあります。これらの症状と間違いやすい疾病がシェーグレン症候群です。シェーグレン症候群は、更年期世代である50代女性に発症する人が多く、自身の臓器に炎症などを起こす膠原病の1つ。初期症状として目や口の渇きがあります。また腟が乾燥するために起こる性交痛、唾液腺の腫れや痛み、全身症状として疲労感や関節痛も生じます。進行すると、肺、甲状腺、肝臓、腎臓などの臓器にも障害が起こり得ます。もしドライアイやドライマウスの症状があり、一般的なケアで改善しない場合は、医療機関を受診するようにしましょう。


更年期に気になる症状があれば、ためらわずに婦人科へ

気になる症状があれば、ためらわずに婦人科へ

フェミニンゾーンのケアや治療に関しては、まだまだ日本では認知が低く、婦人科を受診することに抵抗を感じる人もいるかもしれません。以前はGSMの症状についても「更年期にはよくあること、仕方がない」と諦められてしまう人がほとんどでした。しかし、最近では更年期医療の中でもGSMが注目されてきており、「我慢せずに、積極的に治療しよう」という意識が生まれています。また、フェミニンゾーンのケアの重要性について女性誌や様々なメディアで特集されることも増えてきていることから、婦人科はより身近な存在になりつつあります。乾燥やトラブルの原因を知り、効果的な治療を行うことは、症状の緩和や改善を目指すだけでなく、その陰に隠れている病気の予防や、その後の人生の質を高めることにもつながります。「こんな症状でも診てもらえるかな……」など、少しでも気になる症状があった時に、気軽に相談できる婦人科のかかりつけ医をつくることから始めましょう。


介護脱毛をするなら肌トラブルに注意

ところで、自分が介護される立場になった場合の備えに、Vライン、Iライン、Oラインといったデリケートゾーンを脱毛するいわゆる「介護脱毛」を行う更年期世代の人が増えています。しかし、肌が乾燥しやすくなっている中で負担がかかる脱毛をすると、かゆみや痛みが出る可能性が少なからずあります。脱毛を希望するのであれば、肌トラブルが起きることも想定して、医師の診察や薬の処方が可能な医療機関で施術を受けるようにしましょう。

更年期に実践したい「3つの乾燥対策」

更年期に実践したい「3つの乾燥対策」

更年期による乾燥や不調は、生活習慣の影響も受けます。セルフケアとして「やったほうがいいこと」はたくさんありますが、その全てを今日から始めましょう!といっても、なかなか難しいものです。そこで今回は、日常生活に取り入れやすく、手軽に続けられる3つの対策をご紹介します。

更年期の乾燥対策①   屋内でも日焼け対策を

肌の乾燥の予防に、日焼け対策は必須です。たとえ室内にいても窓から紫外線は入ってきます。外出時はもちろん、日当たりのよい部屋にいたり窓際で家事を行ったりする時に、うっかり紫外線を浴びてしまうこともあります。屋外に出る予定がなくても、朝の洗顔後はすぐに日焼け止めを塗る習慣を身につけましょう。

更年期の乾燥対策②   フェミニンゾーンは専用ソープで洗浄

一番おすすめしたいのは、フェミニンゾーン専用のソープを使うことです。腟内のpH値は弱酸性であるのに対して一般的な石鹸やボディソープはアルカリ性のものが多く、炎症が起こっている状態で使用すると、刺激が強く、しみたり痛みの原因となったりします。pH値が酸性寄りのフェミニンゾーン専用のソープを使えば、刺激も少なく、清潔な状態に保つことができます。

更年期の乾燥対策③   肌もフェミニンゾーンもしっかり保湿

肌はいつものケアに加え、特に保湿を意識したケアを行いましょう。フェミニンゾーンの外陰部の保湿にはワセリンがおすすめです。薄く塗るだけでも乾燥やダメージを緩和する効果があります。また、かゆみやかぶれがある時に、市販のフェミニンゾーン専用軟膏を使う人もいますが、市販の軟膏は根本的な治療薬ではなく、症状を和らげるための薬です。ワセリンや市販の軟膏を使ってみても症状が改善しない、トラブルが悪化しているといった場合は、医師に相談しましょう。


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