鼻血、鼻血の止め方

鼻血

鼻血は、医学的に「鼻出血(びしゅっけつ)」といい、鼻の血管や鼻粘膜が何らかの原因で損傷することで生じます。多くは鼻をほじったり、何度も鼻をかんだりといった物理的な刺激によって突発的に起こりますが、中には鼻の疾患や全身の疾患が原因の場合もあります。
鼻血は突発的に起こりやすいため、原因を理解すると共に、「正しい鼻血の止め方」を知っておくことが大切です。間違った鼻血の止め方は誤嚥のリスクがあります。いざという時に慌てないよう、正しい対処法を覚えておきましょう。

監修プロフィール
新潟大学大学院医歯学総合研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野教授 ほりい・あらた 堀井 新 先生

医学博士。1989年、徳島大学医学部医学科卒業、大阪大学耳鼻咽喉科学教室入局。94年、日本耳鼻咽喉科学会専門医取得。大阪大学耳鼻咽喉科学教室、ニュージーランド・オタゴ大学、徳島大学医学部非常勤講師などを経て、2015年4月より現職。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会理事、日本頭頸部外科学会理事、日本めまい平衡医学会理事。

鼻血について知る


鼻血の原因

鼻血の原因は、物理的な刺激によるものと病気によるものに大きく分かれます。
病気によるものはさらに、アレルギー性鼻炎などの鼻の病気と、高血圧や動脈硬化などの全身に関係する病気の影響とに分けられます。その他、薬の作用が鼻血の原因になっていることもあります。


鼻血の原因① 鼻粘膜への物理的な刺激

鼻を強く何度もかむ、くしゃみを連発する、鼻をほじるなどの物理的な刺激により鼻の粘膜が傷ついて、鼻出血の原因になることがあります。顔面にボールなどがぶつかる、鼻を骨折するといったケガによるものや、小さなお子さんに多い、鼻に物を入れることによるものも含まれます。物理的な刺激は、鼻出血の中で最も多くを占める原因です。


鼻血の原因② 鼻の病気や異常

鼻の病気が原因で、鼻出血が起こることもあります。比較的多いのが、鼻の左右を分ける仕切り(鼻中隔:びちゅうかく)の軟骨が、成長に伴って弯曲する「鼻中隔弯曲症」です。これは、軽度のものを含めると大人のほとんど(8~9割)に見られるもので、症状がなければ治療の必要のないものです。しかし、中には弯曲の度合いが大きく、鼻炎・副鼻腔炎、嗅覚障害などを生じているケースがあります。その場合、弯曲している部分の鼻の粘膜がこすれて傷つき、鼻血が出ることが多々あります。

まっすぐな鼻中隔と湾曲した鼻中隔(鼻中隔湾曲症)

他に、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎、鼻腔や副鼻腔にできる腫瘍(しゅよう)、上顎洞(じょうがくどう)がんという鼻の横にある空洞にできるがんなどは、鼻血を生じさせることが多い病気です。


鼻血の原因③ 全身にかかわる病気

白血病や血友病などの血液疾患、肝不全、腎不全、高血圧、動脈硬化などが、鼻血を生じさせる原因になることもあります。これらの病気によって、血液が固まりにくくなったり、血管が弱くなったりした結果、鼻の血管が傷つき、出血しやすくなるケースがあります。特に、高血圧を伴う人の鼻出血は、血が止まりにくく重症になることもあり、注意が必要です。


鼻血の原因④ 薬の影響

心筋梗塞や脳梗塞などの治療に使われる、血栓予防のための抗凝固薬や抗血小板薬など、いわゆる「血液をサラサラにする薬」をのんでいると鼻血が出やすくなることがあります。薬の影響による鼻出血は、鼻の奥のほうで起こることもあり止血しにくく、医療機関の受診が必要になることが多いです。


乾燥が鼻血の原因になることも

空気が乾燥する冬場などには、鼻の粘膜も乾燥します。それが鼻血の原因のひとつになることも少なくありません。皮膚が乾燥すると、ひび、あかぎれなどが起こりやすくなるように、鼻の粘膜も乾燥すると傷つきやすく、出血しやすくなります。


鼻血がよく出るのは? 年代によって主な原因は異なる

子どもは鼻をほじるなどの物理的な刺激で鼻血が出やすく、成人すると鼻中隔弯曲症などが原因になりやすくなります。また、高齢者は高血圧や血液サラサラの薬の影響などによっても鼻血が出やすくなりますので、年代や基礎疾患の有無等によっても、鼻血の主な原因は異なります。気になる場合は耳鼻科を受診しましょう。
なお、傷ついて出血した部位は刺激に弱くなり、出血しやすい状態がしばらく続きます。片方だけ鼻血が出やすいという場合は、刺激に弱くなった部分からの出血が続いていることが考えられます。ただし、数日間、様子を見ても出血が治まらないときは、①の物理的刺激以外の原因によって鼻出血が起きている可能性があるため、耳鼻科など医療機関の受診をおすすめします。


鼻血の症状

鼻血の症状は、もちろん鼻から出血することですが、出血が起こる場所によって、大きく以下の三つに分かれます。

鼻血は起こる場所によって、キーセルバッハ部位からの前鼻出血、上鼻出血、後鼻出血に分けられる

前鼻(ぜんび)出血

鼻の前方から生じる出血で、鼻血の約9割が前鼻出血にあたるといわれています。「キーゼルバッハ部位」と呼ばれる、多くの血管が集まった部位からの出血が最も多いです。頻度が多い一方で、セルフケアでも止血しやすいという特徴もあります。


後鼻(こうび)出血

鼻腔の後ろ側にある蝶口蓋(ちょうこうがい)動脈およびその分枝が何らかの原因で傷ついて起こる出血です。鼻出血の1割程度を占めるといわれています。後方の出血のため圧迫しにくく、血が止まりにくいのが特徴です。止血には、耳鼻科専門医での処置が必要となります。


上鼻(じょうび)出血

眼の動脈から枝分かれした、前篩骨(ぜんしこつ)動脈または後篩骨(こうしこつ)動脈が傷ついて出血することが、ごくまれに起こります。鼻の上のほうで生じるため、セルフケアでは止血がしにくいことが多々あります。


5~10分ほどで止まるなら受診は不要なことが多い

前鼻出血の場合、鼻血が出ても応急処置で10分以内に止まることがほとんどです。セルフケアで止血ができていれば、鼻血を理由に医療機関を受診する必要はないと考えてよいでしょう。出血した部位は弱くなっているため、いったん止まってもちょっとした刺激で何度か出血を繰り返すこともありますが、少し様子を見て、次第に出なくなっているようであれば問題ないでしょう。鼻出血の量が多い場合、血のかたまりのようなものが出ることがあり、びっくりするかもしれませんが、止血ができていれば問題ないことがほとんどです。
ただし、10分以上しても鼻血が止まらないという場合は、耳鼻科(時間外の場合は救急外来)を受診しましょう。


鼻血の対策(鼻血の止め方)

鼻血の正しい止め方

鼻血を止めるには、「鼻翼(びよく)圧迫法」が有効です。キーゼルバッハ部位からの出血であれば、ほとんどがこの方法で止血できます。

鼻血の止め方は、座って下を向き小鼻を5~10分圧迫する

鼻血の止め方① 慌てずに座って、下を向く

まずは鼻血が出ても慌てずに、落ち着いて座りましょう。そして、血液がのどに入らないように下を向きましょう。上を向くと、血液がのどのほうに流れます。そのまま胃や肺に流れ込んでしまうと嘔吐(おうと)や誤嚥(ごえん)につながってしまうため、大変危険です。上を向くのは絶対にやめましょう。血液で服が汚れてしまうのが気になる場合は、タオルなどを利用するとよいでしょう。のどのほうに流れた血液は、飲み込まずに吐き出すようにしてください。
高齢者など体力が弱っていて座ることが難しい時は、鼻血の出ているほうを上にして、横向きになってもよいです。この時、絶対に仰向けにならないようにしてください。


鼻血の止め方② 小鼻(鼻翼)を親指と人差し指で挟み込むように押さえる

小鼻を親指と人差し指で挟み、しっかり押さえましょう。鼻の付け根周辺や上部の、押すと骨を感じる硬い部分を押さえても止血できません。押さえるのは柔らかい小鼻の部分と覚えておきましょう。これによりキーゼルバッハ部位を圧迫し、鼻血を止めることができます。ティッシュや綿球などはできるだけ使わず、しっかりと小鼻を押さえて止血しましょう。


鼻血の止め方③ 5~10分、そのまま圧迫し続ける

下を向き、小鼻を押さえて圧迫した状態を5~10分ほど続けると、前鼻出血であれば基本的に止血できます。5~10分は意外と長い時間に感じるかもしれませんが、時計を見ながら根気よく押さえ続けましょう。


セルフケアで鼻血が止まらない場合は耳鼻科の受診を

セルフケアでは鼻血が止まらない場合、後鼻出血や上鼻出血のように、鼻の奥や上のほうの圧迫できないところから出血が起きている可能性があります。病気や薬の影響による鼻血は、鼻の奥のほうからの出血の場合もあるので、その場合、専門医による治療の必要があります。耳鼻科を受診しましょう。
なお、受診を待っている間には、流れ出た鼻血を飲み込まないように注意が必要です。鼻血を飲み込むと、血の塊を嘔吐し窒息を招くこともあります。もしも、のどに血液が流れ込んでしまった場合は、飲み込まずに吐き出しましょう。


鼻血の予防法

鼻をほじるなど、鼻粘膜を刺激することはしない

鼻血の多くは、物理的な刺激により、鼻の粘膜が傷ついて起こります。鼻を何度も強くかむ、鼻をほじるといった鼻粘膜の刺激になるようなことは避けましょう。また、鼻をぶつけるなどのケガにも注意しておきましょう。


加湿器などを使い、空気の乾燥を防ぐ

空気が乾燥すると鼻の粘膜も乾燥し、出血しやすい状態になります。室内では加湿器を使うなどして空気の乾燥を防ぎ、鼻血を予防しましょう。鼻の中に炎症やできものなどがなければ、白色ワセリンなどの軟膏を鼻粘膜に塗るのも乾燥の予防になります。綿棒などを使って、鼻の粘膜を傷つけないよう鼻の入り口付近に、優しく薄く塗りましょう。


鼻血を繰り返す原因となっている病気を治療する

大量の鼻出血が定期的に生じる場合、病気が原因だったり、のんでいる薬が影響していたりする可能性があります。鼻血を生じさせるような病気がないかどうか検査をし、治療を行いましょう。
また、血栓予防のための抗凝固薬や抗血小板薬などの影響で鼻血が頻発し、困っている場合は、かかりつけ医に、薬を変えることができないか相談してみましょう。


お役立ちコラム

チョコレートを食べると鼻血が出る?

子どもの頃、「チョコレートを食べ過ぎると、鼻血が出るよ」と言われた経験のある人もいるのではないでしょうか。チョコレートと鼻血の関係について、明確に説明した報告はありませんが、チョコレートに含まれるカフェインによって血圧が上がることで鼻粘膜の血管が破れ、出血が起こる可能性も考えられます。カフェインの影響は個人差が大きいので、心当たりがある人は食べ過ぎないよう注意しておきましょう。


疲れやストレス、のぼせも鼻血の原因に!?

ストレスがたまった時や疲れた時などに鼻血が出やすいといわれることもありますが、関連性は分かっていません。ただし、疲れやストレスがたまっている時は、鼻血に限らず様々な体調不良が生じやすい傾向があります。持病などが悪化して鼻出血につながる可能性もあるので、注意が必要です。
入浴中にのぼせたり、更年期症状によるのぼせが生じたりすることと、鼻血との関連もよく分かっていないことが多いです。のぼせによる血圧の変動によって鼻血が出やすくなることもありますが、影響はそれほど大きいとは考えにくいです。それよりも、鼻の粘膜を傷つけないことを第一に考えて行動するとよいでしょう。


この記事はお役に立ちましたか?

今後最も読みたいコンテンツを教えてください。

ご回答ありがとうございました

健康情報サイト