首こり

首こり

首がこわばった感じがする、首が痛くて回らない、といった「首こり」の症状に悩まされていませんか? 「首こり」は、前かがみの姿勢が常態化した結果、首に過剰な負担がかかり、筋肉の収縮が続くことで発症し、痛みや重だるさを感じます。スマートフォンやパソコンの長時間にわたる利用によって、ついつい前かがみの姿勢になりがちな現代人ですが、首こりの症状を放置してしまうとストレートネックや頸椎症、頸椎椎間板ヘルニアといったさらにつらい痛みを伴う不調にもつながりかねないため、注意が必要です。今回は日常生活の姿勢や動作の注意点、効果的なストレッチをご紹介します。

監修プロフィール
竹谷内医院院長 たけやち・やすのぶ 竹谷内 康修 先生

2000年に東京慈恵会医科大学卒業後、福島県立医科大学整形外科へ入局。2003年、米国のナショナル健康科学大学へ留学し、2006年に首席で卒業。2007年に手技療法専門のクリニック(現竹谷内医院)を開設する。『最新版 首を伸ばして自分で治す! 頸椎症』(宝島社)、『首の痛みは、自分で簡単に治せる!』(三笠書房)など著書多数。

首こりについて知る


首こりの原因

首こりの主な原因は姿勢の悪さ

首こりの主な原因となるのは、首に負担がかかる姿勢や動作を長時間続けることです。では首に負担がかかる姿勢や動作とは具体的にはどんなものなのか? 首こりの症状が起こるメカニズムから解説していきます。


首に最も負担がかかるのは「前かがみ」の姿勢

スマートフォンをのぞき込んだり、パソコンを長時間使用したりすると、ついつい頭が前に出て、前かがみの姿勢になりがちです。一般的に人の頭は約5kgの重さがあるといわれており、首の真上に乗っていれば首への負担は最小限にとどまります。しかし頭を前に傾けると首に負担がかかり、30度傾けただけで通常の約4倍、重さは約18kgに。つまり、前かがみの姿勢は首に大きな負担がかかってしまうのです。

首に最も負担がかかるのは「前かがみ」の姿勢

こりが生じるメカニズムとは?

首は7つの椎骨の重なり=頸椎で構成されており、頸椎の周囲の筋肉が収縮した状態で頭を支えています。この筋肉同士が収縮した状態で引っ張り合う力を「張力」といいます。前かがみの状態になると、重い頭を支えようと首に強い張力が発生し、その状態が長く続くとリセットできなくなって首だけではなく肩や胸、背中にもこりが発生します。


「ストレートネック」も首こりの原因に

通常、頸椎は緩いカーブを描いており、重い頭を支えながら、骨や筋肉への負担を和らげるサスペンションのような役割を担っています。ストレートネックとは、その名の通り頸椎がカーブを失い、前方に真っすぐ伸びている状態を指します。常に前かがみと同じ状態になるため、首こりが生じます。頸骨や首の椎間板に影響することもあるので、注意が必要です。

正常な首の頸椎とストレートネックの頸椎

こんな人は要注意!あなたも首こり予備軍かも?

① 首が細く、筋肉量が少ない
重い頭を支えるには首の筋肉が必要なため、一般的に男性よりも首が細く筋肉量が少ない女性のほうが首こりになりやすいといわれています。
② 猫背で、背中の丸みが強い
猫背など背中に丸みがある姿勢だと、頭が常に前に出た状態になるため首がこりやすくなります。
③ 日常的にストレスがある、ストレスをためやすい
ストレスがかかり筋肉を緊張させる交感神経が優位な状態が続くと、首にこりや痛みが生じやすくなります。
④ 食いしばりや、歯ぎしりをする
食いしばりや歯ぎしりでは、無意識に首に強い力がかかってしまうので、知らぬ間に首こりを起こしてしまうことがあります。

他にも、むち打ちの症状があったり、首が冷えたりすると、自然と首に力が入って首こりの症状が出ることも。首は体の他の部位に比べて重さに対する感覚が鈍いため、負担がかかっていても気がつかずにそのまま過ごしてしまうことも多く、「気がついたらすでに重症だった」という方も少なくありません。上記の①~④の項目に当てはまる方は、首こりになりやすいと自覚し、日々の生活に注意してみてください。


首こりの症状

首や肩のこりは腕の痛みやしびれを起こす「頸椎症」の入り口

「こり」とは、筋肉が硬くなったりこわばったりした状態のことをいいます。首と肩はつながっており、首こりと肩こりの違いは、自覚症状が首に出ているか肩に出ているかだけです。そのため、首こりといっても肩や肩甲骨(けんこうこつ)付近も含めた広い範囲に症状が現れると考えてよいでしょう。
こりと痛みは、別物だと考える方も多いかもしれませんが、実はこりが高じたものが痛みです。痛みを起こす病気や病態には、寝違え、ストレートネック、頸椎症、頸椎症性神経根症、頸椎椎間板ヘルニア、頸椎症性脊髄症など様々なものがあります。これらは「頸椎症」と呼ばれ、それぞれ症状が異なるもののつながった関係にあり、その入り口の症状となるのが首こりや肩こりです。病気ではないと侮らずに、症状の経過を注視する必要があります。


自律神経の乱れから首こりが起こることも

自律神経が乱れると、神経系に負荷がかかり様々な不調が生じます。例えば、眼精疲労も自律神経の乱れからくる不調の1つ。これは目の筋肉に過剰に力が入って疲労を起こしている状態です。首こりも眼精疲労と同様、自律神経の乱れから首の筋肉に力が入って引き起こされる場合があることから、自律神経と首こりは密接なかかわりがあるといえます。


首こりの治療・対処法・ストレッチ

「寝違え」の症状があれば整形外科へ

首のこりが気になっていても、「こんな症状で病院に行ってもいいのか?」「どのくらいの痛みで病院に行くべき?」と迷う人も多いでしょう。そんな時、病院を受診する1つの目安となるのが「寝違えのような痛み」です。寝違えのような痛みが出ている人のレントゲンを撮影すると、ストレートネックであるケースが多いです。自分の首の状態を知らないままでいるよりも、「なぜ首がこるのか?どうしてなかなか治らないのか?」を病院で明らかにし、日常的な姿勢の見直しやストレス解消に意識が向けば、首の負担も軽くなり、首こりも改善に向かっていきます。寝違えの症状以外でも、「首に急に痛みが起きた」「振り返って真後ろのものが見えない」「左右のどちらかに頭を向けにくい」など、首の可動域が狭くなっている場合は、ぜひ一度、お近くの整形外科を受診してください。


【病院での首こりの具体的な治療方法】

・薬物療法
整形外科での首こりの治療は薬物療法が中心です。まず痛みの原因である炎症を抑えるために、内服の消炎鎮痛薬や解熱鎮痛薬、湿布薬(貼り薬)などが処方されます。他に、関節や椎間板にかかる圧力を弱める目的で筋弛緩薬が処方されることもあります。これは、痛みに対する薬ではなく、首こりの根本的な原因である筋肉の収縮を緩めるものです。薬物療法はあくまで対症療法なので服用は3カ月を目安とし、医師からの指導を受けながら、生活習慣や姿勢の改善にも努めていくことが大切です。
・理学療法
理学療法とは、温熱や電気、牽引などによって改善させる治療方法です。首こりを含む頸椎における理学療法で一般的なのは、頭をベルトで支えて垂直方向に引き上げる「牽引療法」です。首こりを入り口とする頸椎症は、頸椎と頸椎の間が狭くなっていることが多いので、そのすき間を広げ、神経への圧迫を和らげる目的で行います。他にも筋肉の緊張を和らげて血行を促進する「温熱療法」や「電気療法」があります。


簡単ストレッチでセルフケアを

寝違えのような痛みがないなど痛みが強くない首こりの状態であれば、まずは簡単なストレッチによるセルフケアに取り組んでみましょう。首こりの状態では、首と肩が前に出て肩甲骨が左右に広がり、胸側にある筋肉が縮んでいます。この状態を正しい位置に戻す簡単なストレッチをご紹介します。


【ゼロ筋トレ】…首から背中、胸の筋肉を緩めて、首にかかる張力を減らす

① 頭上で両手を組んで0(ゼロ)の形をつくる。
② 0の形を保ったまま、胸を張ってひじをやや後ろに引き、肩甲骨を背骨に寄せる。
③ 腕が下がり過ぎないように注意しながら、肩甲骨をそのまま下げる。
④ ③の状態を10~15秒キープした後、力を抜いて②の姿勢に戻す。
※①~④を3回繰り返す(1日に何セット行ってもOK)。

首から背中、胸の筋肉を緩めて、首にかかる張力を減らす首こり対策ストレッチ。ゼロ筋トレ

【背骨ストレッチ】…胸の筋肉を伸ばし、背骨のS字カーブを回復する

① 足を肩幅に開いて立つ。
② 両腕を背後に回し、お尻の位置で手の甲を外側にして手を組む。
③ ひじを伸ばして胸を張り、腕を後ろに持ち上げて伸ばす。
④ ③の状態を10~15秒キープした後、力を抜いて②の姿勢に戻す。
※①~④を3回繰り返す(1日に何セット行ってもOK)。

胸の筋肉を伸ばし、背骨のS字カーブを回復する首こり対策ストレッチ。背骨ストレッチ

【首倒し】…首の後ろ側にある筋肉の緊張を緩めてこりをほぐす

① リラックスしていすに座り、猫背にならないように注意しながら左手でいすのヘリを持つ。
② 首を右斜め前に倒す。
③ 右手を左耳の後ろのあたりに当て、頭を右斜め前に押す。
④ ③の状態を10秒キープした後、力を抜いて①の姿勢に戻す。反対側も同様に行う。
※①~④を3回繰り返す(1日に何セット行ってもOK)。

首の後ろ側にある筋肉の緊張を緩めてこりをほぐす首こり対策ストレッチ。首倒し

ストレッチは無理をせず、自分のペースで行いましょう。首に強い痛みがある場合や、治療中の病気やけががある場合、運動中に痛みを感じた場合は、まず医師に相談してください。


コンタクトスポーツを行う人は、首の不調に注意!

ラグビー、アメリカンフットボール、レスリング、ボクシング、柔道など人との接触が多い「コンタクトスポーツ」は、無意識に首に力が入りやすくなるものです。コンタクトスポーツをしている人は、首の不調をそのままにせず、セルフケアを行いながら、必要に応じて整形外科を受診しましょう。


首こりの予防法

根本的な解決方法は、「あらゆる姿勢」の見直しです。

これまで、首こりの原因や症状、対処についてお伝えしましたが、根本的な改善や解決を目指すには、日々の生活における「あらゆる姿勢」の改善が必要です。最後に、日常生活で意識すべき、姿勢の改善方法についてご紹介します。


まずは座る姿勢を見直そう!

長時間にわたっていすに座ることが多い人は、次の5ステップを通じて、首に負担のかからない座る姿勢を覚えましょう。
① 骨盤を起こした状態で座る
自分の体に合ったいすの座面に深く腰掛け、骨盤を立たせることを意識する。
② 背中を伸ばす
肩甲骨の一番下あたりに力を入れながら、背筋を伸ばして胸を張る。
③ 両肩を引く
両腕が自然に下に降りるように、両肩を軽く後ろに引く。
④ 頭を引く
あごを軽く引き、首を真っすぐにして頭を気持ち後ろにする。
⑤ 背もたれに寄りかかる
正しい姿勢を長時間キープするために、背もたれにもたれて力を抜く

首こりを解消する、座る姿勢の基本

床に座るのはどのような姿勢でも首に負担がかかるため、短時間にとどめるようにしましょう。やむを得ずあぐらや長座、正座をしなければいけない場合は、お尻の下にクッションや二つ折りにした座布団を挟んで、骨盤を立てるようにすると首への負担が軽減できます。


毎日座るいすを見直そう!

首への負担を減らすには、座る姿勢と共にいす選びも重要です。首にやさしく、よい姿勢を保ちやすいいす選びのポイントをご紹介します。
① 背もたれの高さと角度に注意 
背もたれは肩甲骨の一番下よりも高く、適度な反りがあり、やや後ろに倒れているもの。座った時に自然と背筋が伸びた状態をキープできる。
② ひじ掛けがない
ひじ掛けがないほうがいすを机に近づけやすい。
③ 十分な奥行きと、クッション性のある座面
もたれやすく、長時間座っていてもリラックスできる。
④ 木やプラスチックなどの硬い素材を避ける
長時間座る場合は、体や首が自然と緊張してしまう硬い素材のいすはなるべく避け、体が沈み過ぎない程度のクッション性のある素材のいすを選ぶ。

首こりを解消する、椅子の特徴

背もたれの高さや座面の奥行きなど、自分の体のサイズに合ったものを選ぶことも大切です。特に小柄な方は、大き過ぎるいすを使っているケースも多くあるでしょう。家にあるもので簡単に作れる「補正具」を使って、今使っているいすを理想のいすに近づける方法をご説明します。
・背もたれが自分の体に合わない場合
腰の部分にクッションや巻いたタオルを当てて適度な反りをつくる。
・沈み込みやすいソファの場合
沈み込む部分にクッションなどを当て、外れないようにひもで結ぶなどして固定する。


パソコンを使う時の姿勢を見直そう!

日常生活の中でも、長時間にわたるパソコン作業は首に負担がかかりやすくなります。以下のポイントに注意して、首への負担をできる限り減らす座り方を心がけてみましょう。

① 正しい姿勢を意識して座る
② いすと机を寄せる
③ 画面の高さは目線からやや下になるようにする
④ ひじは肩の真下にくるようにして、手が自然に机に乗る位置にキーボードを置く
⑤ 足が床にしっかりつき、太ももへの圧迫感が少ない高さに調整する

パソコンを使う時の正しい姿勢

首の負担を減らすためにデスクトップ型を選ぼう!

ノート型パソコンの画面は、デスクトップ型よりも小さい上に、作業する時に画面の位置が視線の高さよりも低くなり過ぎてしまいます。また、画面とキーボードが一体になっているため手を前に伸ばす形になり、ひじを肩の真下にすることができず、猫背の姿勢になりやすくなってしまいます。自宅や職場など長時間パソコンを使う場合は、できる限りデスクトップ型を選びましょう。


スマートフォンの持ち方を見直そう!

ストレートネックの症状を別名「スマホ首」と呼ぶことからも分かるように、スマートフォンの長時間利用は、首に負担をかける大きな要因の1つとされています。スマートフォンを操作する時、多くの人はお腹や胸のあたりの高さで画面を見てしまうため、自然と背中が丸まり、頭が前に出て首や肩に大きな負担がかかってしまいます。スマートフォンを操作する時には、画面を可能な限り目の高さに合わせて、顔の正面で見るようにしましょう。スマートフォンを持つ手が疲れないように、反対側の手や机、テーブルでひじを支えると、無理なく正しい位置をキープできるでしょう。

スマートフォンの持ち方を見直そう

「背中のボタン」をイメージして立ち姿を見直そう!

首や肩に負担がかからない理想の立ち姿は、耳―肩―腰―股関節―ひざ―くるぶしが、一直線になることです。背中の中心線上で、肩甲骨の一番下くらいの高さに「背中のボタン」があると想像してください。このボタンを、後ろからグッと押されているイメージで胸を起こし、背筋を伸ばせば自然と肩が後ろに引かれて、理想の立ち姿になります。

首や肩に負担がかからない理想の立ち姿は、「背中のボタン」をイメージ

枕を見直そう!

首こりの症状を悪化させないためには、枕の高さが重要です。ただし、寝ている間に無理に矯正しようとするのはNG。体に合った枕を使うようにしましょう。首こりの症状や寝る時の姿勢に合わせた枕選びのポイントをご紹介します。
・上を向くと、首や腕の痛みやしびれがある
首が反りにくい高めの枕がおすすめです。低めの枕はNG。使っている枕が低い場合は、タオルを枕の下に敷いて高さを調節しましょう。
・首を前に曲げたり、下を向いたりした時に痛みやしびれがある
首が前に傾かない低めの枕がおすすめです。
・横向きに寝る
横向きの姿勢になった時に首が真っすぐになる高さの枕を選ぶとよいでしょう。


生活習慣を見直そう!

首こりはストレスや自律神経とも密接なかかわりがあります。今日からでも実行できる生活習慣の改善により、首こりの症状を軽減・改善していきましょう。
・「30分ルール」でストレス管理
仕事や長距離移動などで、長時間同じ姿勢をしている場合は30分に1回、立ち上がったり歩いたりして姿勢を変え、リフレッシュをします。首や肩への負担を減らすと共に、気分転換になって交感神経の働きを落ち着かせる効果もあります。また、昼食後に15分程度の仮眠をとると交感神経の働きが鎮まるのでおすすめです。
・適度な運動で、筋肉と自律神経を鍛える
ウォーキングやジョギング、水泳などの適度な全身運動を継続すれば、筋肉を鍛え全身の健康状態を改善しながら、自律神経を整えることができます。こりや痛みが起きにくい体へと近づくことができるでしょう。
・毎日の入浴時間をリラックスタイムに
毎日の入浴も、こりや痛みの軽減に役立ちます。運動をした後の入浴は、交感神経を鎮めてくれるのでリラックス効果が得られます。効果を高めるため、就寝の1時間ほど前に上がるようにしましょう。10~20分程度、38~40度くらいのぬるめのお湯に浸かると、よりリラックスできます。

最近はテレワークが増えていることもあり、長時間のパソコン利用や運動不足により、首こりに悩まされる人が急増しています。しかし、その不調を病気と捉えず「しかたがない」とやり過ごしている人が多いのが現状です。首こりの症状を放置して悪化させると、日常生活に支障が出てきてしまうこともあるため、「ただの首こり」と侮ってはいけません。特に、首や肩、腕に痛みやしびれの症状が出ている人は、症状が悪化する前に整形外科の先生に相談して適切な処置を受けることをおすすめします。
軽度の症状であれば、紹介したストレッチや生活習慣の改善で悪化の予防や、症状の軽減が望めます。首こりが気になる方は、この内容を参考に、まずは姿勢と生活習慣を見直すことから始めてみましょう。

【参考】『最新版 首を伸ばして自分で治す! 頸椎症』(宝島社)、『首の痛みは、自分で簡単に治せる!』(三笠書房)


この記事はお役に立ちましたか?

今後最も読みたいコンテンツを教えてください。

ご回答ありがとうございました

健康情報サイト