生活環境や習慣、運動不足などを背景に、男女問わず冷え性に悩む人が増えています。ただ、「夏でも体全体が冷える」「手足が冷たい」「冷房の中にいると体がだるくなったり、むくんだりする」といった悩みを訴える人の割合は、やはり女性のほうが圧倒的に多い傾向があります。冷え性の主な原因としてストレスによる自律神経の乱れがありますが、女性に冷え性が多い理由の一つに、男性に比べて筋肉量が少ないことが挙げられます。原因が違えば、対策の仕方も異なるのは当然のこと。まずは自分の冷え性のタイプを知り、自分に合った効果的な対策でセルフケアを実践してみましょう。
1954年生まれ。東邦大学医学部卒業。医学博士。内科・小児科医、循環器専門医。神奈川県南足柄市にある緑蔭診療所で、西洋医学に漢方やアロマセラピー、ハーブを取り入れた診療を実践。セルフケアの指導も行う。著書に「補完・代替医療 ハーブ療法」(金芳堂)、「アロマ&ハーブセラピー手帖」(マイナビ出版)、「専門医が教える 体にやさしいハーブ生活」(幻冬舎)、「40歳からの幸せダイエット」(講談社)など。
冷え性を対策するには、冷え性の原因を知ることが大切です。
冷え性の原因には、ストレスや生活習慣に起因する自律神経の乱れと、加齢ややせ過ぎによる筋肉量の減少、基礎代謝の低下があります。近年、体温は平熱なのに、冷えを感じる人が増えており、特に若い世代の冷え性の原因のほとんどは、過剰なストレスや生活習慣による自律神経の乱れです。
まずは、自分がどちらのタイプの冷え性なのか、AとBそれぞれにチェックしてみましょう。
□手先や足先が冷たい
□肩こりがひどい
□生活が不規則である
□運動はほとんどしていない
□ストレスを感じやすい
□夏は冷房の利いた場所で長時間過ごす
□冷たい飲み物や食べ物をよく摂る
□入浴はシャワーだけで済ませる
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Aの項目にチェックが4つ以上ついた人は……「自律神経の乱れタイプ」
ストレスや生活習慣が原因の現代型冷え性
□体温が36℃未満である
□ダイエットをしていないのに、年々体重が減っている
□最近転びやすくなった
□朝方に足がつりやすい
□肉や魚、乳製品をあまり摂らない
□運動はほとんどしていない
□65歳以上である
↓
Bの項目にチェックが4つ以上ついた人は……「加齢・筋肉量の減少タイプ」
筋肉量の減少や基礎代謝の低下で全身が冷えやすい
原因が「自律神経の乱れタイプ」の冷え性は、過剰なストレスや過労、不規則な生活、睡眠不足、夏場の過剰な冷房などによって自律神経のバランスが乱れ、冷えが生じている、いわば現代型の冷え性です。冷えを訴えて緑蔭診療所を受診する働き世代の実に8割がこのタイプに当てはまります。
このタイプの人は、自律神経のバランスが乱れて交感神経が優位にあるため、末梢血管の血行が悪くなり、手や足先が冷えやすいのが特徴です。こうしたストレスが原因の冷え性対策には、温めるよりもリラックスの時間を意識的につくるほうが効果的な場合があります。
原因が「加齢・筋肉量の減少タイプ」の冷え性は、熱をつくる筋肉が衰えたり、筋肉量が減少したりすることから、冷えを感じやすくなります。筋肉量は何もせずにいると加齢と共に減少するため、65歳以上の人にこのタイプの冷えが増える傾向があります。ただし、若くても筋肉量の少ない女性や、過度のダイエットで筋肉をつくるタンパク質が不足している人では、このタイプの冷え性が起こることもあります。
自分が「自律神経の乱れタイプ」の冷え性か、「加齢・筋肉量の減少タイプ」の冷え性かが分かったら、それに合わせた対策をしていきましょう!
1.リラックスの時間を意識してつくる
自律神経の乱れによる冷えの一番の原因はストレスです。冷え性対策はリラックスすること。日頃から、リラックスする時間を意識的につくって、心身の緊張を解きほぐしましょう。リラックスすることで自律神経の働きが整い、血行がよくなって冷え性の改善につながります。
2.リラックス効果の高いハーブティーを活用
リラックスタイムに最適な飲み物は、鎮静作用のあるハーブティーです。コーヒーや紅茶、緑茶などのカフェイン飲料は血管を収縮させ、手足の冷えを悪化させます。冷え性対策には、カフェインの代わりに好きな風味のハーブティーを取り入れるとよいでしょう。特に、仕事の後や緊張した後にはハーブティーがおすすめです。
高ぶった気持ちを鎮めたい時には、鎮静作用があり、リラックス効果が高いジャーマンカモミールや、リンデンフラワーなどを選ぶとよいでしょう。ハーブティーを入れる際に香りも一緒に楽しめば、よりリラックスできます。
3.入浴やストレッチで全身を温める
全身を温めることも冷え性対策になります。秋冬は41~42℃、春夏は40~41℃の湯に胸まで浸かって5分、次に首まで5分浸かる入浴法がおすすめです。また、入浴時にストレッチをして全身の筋肉をほぐすと血行がよくなるので、‟おふろでストレッチ“を習慣にしましょう。冬場は、湯に浸かっていない部分が冷えないよう、シャワーの蒸気や温風機能なども利用して、浴室を温めておくとよいでしょう。
1.筋トレで筋肉量をアップ
筋肉を動かさないと血行が悪くなり、冷えを助長することにつながります。加齢や筋肉量の減少が原因のタイプは、冷え性対策として適度な運動で筋肉量の低下を防ぐことが重要です。また、筋肉量を増やすには、体の中でも大きな筋肉がある下肢を鍛えるのが効果的で、おすすめは自宅で気軽にできるスクワットです。毎日続ければ足腰が鍛えられ、転倒予防にも役立ちます。
普段から運動の習慣がなく、スクワットをきついと感じる人は、いすにつかまって行ってもOKです。スクワットの他にも、ふくらはぎを動かして血行を促すかかとの上げ下げや、外出先では日頃から階段を使うだけでも、よい筋トレになります。
【スクワットのポイント】
① 肩幅より少し広めに足を広げ、つま先は30度くらい開く。
② 膝がつま先より出ないように気をつけながら、お尻を後ろに引くようにゆっくりと体を沈める。
③ ①と②を5~6回繰り返す。1日3回行うのがベスト。
2.タンパク質を効果的に摂る
筋肉量の減少が冷え性の原因の場合、冷え性対策は筋肉をつけることが効果的です。その筋肉をつくるためには、タンパク質の摂取が必要不可欠です。男性は1日60g、女性は50gを目安に、肉や魚などの動物性タンパク質と、豆類などの植物性タンパク質をバランスよく組み合わせて摂りましょう。また、タンパク質を含む食品と一緒に、山椒やショウガ、唐辛子などのスパイスや、にら、しそ、玉ねぎなどの薬味を摂るのもおすすめです。
スパイスは体を温める血行促進作用だけでなく、消化を促す作用も期待できます。少量で効果を発揮してくれる優れものですから、上手に活用しましょう。例えば、生薬にも使われる八角やシナモンをカレーやシチューなどの煮込み料理に加えると、胃腸の働きがよくなり、温め効果がアップします。紅茶に干しショウガを加えて煮て、はちみつやシナモンを加えれば、体の芯から温まります。
3.3つの首やお腹周りはしっかり覆って、体温を逃さない
加齢や筋肉量の減少が冷え性の原因の場合、寒い冬場は、太い動脈が皮膚のすぐ下を通っている「首」「手首」「足首」の3つの‟首“を隠して、体温を逃さないことが大切です。例えば、首はネックウォーマーやタートルネックのセーター、マフラー、ストールなどを活用。手首は手袋やアームウォーマーをつけて、袖が短いトップスは避けましょう。足首にはレッグウォーマーがおすすめです。また、腸や子宮のあるお腹周りは、腹巻やカイロを使って温めると効果的です。
以上タイプ別に冷え性対策の方法をご案内しました。
冷え性にも2つのタイプがありますので、まずは自分が「自律神経の乱れタイプ」の冷え性なのか、「加齢・筋肉量の減少タイプ」の冷え性なのかを知り、タイプに合わせた冷え性のセルフケアを行っていきましょう。