女性の飲酒は健康への影響大。コロナ禍のお酒とのつき合い方をアップデートしよう!

長引くコロナ禍のストレス、そして「家飲み」というオン・オフを切り替えにくい飲酒スタイルによって、今、女性にも「アルコール依存症」など、飲酒による健康被害が増えてきています。女性は体質的に男性よりもアルコールの影響を受けやすいことをご存じですか?アルコールが女性の心や体に与えるリスクを知り、お酒と賢くつき合っていきましょう。

アルコール依存度をチェックしてみましょう!自覚がなくても注意信号!?

アルコール依存症は早期には自覚に乏しく、病状がかなり進んでから周囲の人に指摘されて受診に至るケースが少なくありません。日頃のお酒とのつき合い方をチェックしてみましょう。

 

●最近6カ月間に次のようなことがありましたか?

□ 1. 酒を飲まないと寝つけないことが多い。

□ 2. 医師からアルコールを控えるようにと言われたことがある。

□ 3. せめて今日だけは酒を飲むまいと思っていても、つい飲んでしまうことが多い。

□ 4. 酒の量を減らそうとしたり、酒をやめようと試みたことがある。

□ 5. 飲酒しながら、仕事、家事、育児をすることがある。

□ 6. 私のしていた仕事をまわりの人がするようになった。

□ 7. 酒を飲まなければいい人だとよく言われる。

□ 8. 自分の飲酒についてうしろめたさを感じることがある。

 ↓

●チェック項目が3つ以上:アルコール依存症の疑い群

●チェック項目が1~2つ:要注意群(質問項目6番のみの場合は正常群)

●チェック項目が0:正常群

※正確な診断は専門医の診察が必要です。(久里浜式アルコール症スクリーニングテスト女性版より)

男性は酒離れが顕著でも、女性の飲酒者は増えている

国税庁の統計によると、日本人のアルコール消費量は1996年度をピークに下降しており、全体的には日本人の酒離れが進んでいます。

飲酒習慣率(週3日以上、1日あたり日本酒換算1合以上飲酒する人の割合)を調べた厚生労働省のデータでは、男性の飲酒習慣率は明らかに減少しています。一方、女性の飲酒習慣率には男性ほどの大きな変化はないものの、微増してからは高止まりの状況にあります(グラフ参照)。

男女別飲酒習慣者の割合の年次推移

このように女性の飲酒者が増えた理由としては、「女性の社会進出」「女性の飲酒に対する社会の偏見の減少」「女性をターゲットにしたマーケティング」が挙げられます。女性だから、母親だからといった固定観念にとらわれることなく、女性が自由にお酒を楽しめるようになったのは好ましいことです。しかし同時に、飲酒には健康リスクが伴うことも忘れてはなりません。これまで男性に圧倒的に多かったアルコール依存症などの病気にかかる女性は増えており、将来的に飲酒者の男女差はさらに小さくなっていくと考えられます。

女性の飲酒者

女性は体質的に男性よりもお酒に弱く、アルコールの影響を受けやすい

飲酒によって摂取されたアルコールは体内で分解されますが、女性はアルコールの分解速度が男性よりも遅いことが分かっています。男性は1時間に平均約8グラムのアルコールを分解できるのに対し、女性は約6グラム。例えば500ミリリットルのビール(アルコール20グラム)を飲んだ場合、分解にかかる時間は男性2.5時間、女性3.3時間です。

また、女性は体脂肪が多く体の水分量が男性よりも少ないため、体内のアルコール濃度が高くなりやすいこともあります。他にもホルモンなどいろいろな要素が関係し、女性は体質的にアルコールが体内に留まりやすいため、男性と同じ量を飲んだとしても、お酒に酔いやすく、影響を受けやすいのです。

厚生労働省の飲酒のガイドラインでは、健康な成人男性の「節度ある適度な飲酒量」は、1日あたりアルコール20グラム程度。女性はその2分の1から3分の2程度が適当と考えられています。つまり、1日10グラム、ビールなら250ミリリットルくらいが摂取の目安量です。

浅く考える機能が低下すると
男女の「節度ある適度な飲酒量」

●お酒に強い人、弱い人の違いは?

お酒を飲むと、肝臓でアルコールが分解されてアセトアルデヒドという有害物質が発生します。このアセトアルデヒドを分解する酵素の有無や活性度の違いが、お酒に強いか弱いかを決定する要因です。酵素をもっている人はお酒に強く、もっていないか、活性が弱い人はお酒に弱いことになります。お酒を飲んで顔が赤くなったり、二日酔いになったりするのは、アセトアルデヒドが分解しきれておらず体内にたまっている証拠です。飲酒経験を重ねることで分解酵素が誘導されて次第にお酒に強くなる人もいますが、そうでない人もいます。「鍛えればお酒に強くなる」は、全ての人に当てはまるわけではありません。

お酒に弱い人

女性は、「適度な飲酒量」の範囲であれば問題ない・・・というわけではない!?

飲酒には様々な健康リスクが伴います。その中でも代表的なものが、「アルコール性肝疾患」と「アルコール依存症」です。この2つは長期の多量飲酒が原因で起こりますが、いずれも顕著な男女差があります。

アルコール性肝疾患とは、アルコールを原因とした「脂肪肝」「アルコール性肝炎」などの様々な肝障害の総称で、進行すれば、「肝硬変」「肝がん」など命にかかわる疾患につながることも少なくありません。女性はアルコール性肝疾患の進行が男性よりも早く、男性より8年早く肝硬変に進行してしまうという報告もあります。アルコール依存症では、患者の年齢のピークが女性は男性よりも20歳も若いという特徴が見られます。これは、女性の方がお酒に弱く、早く依存症に進んでしまうためです(グラフ参照)。

アルコール依存症患者の年齢分布

このように飲酒は女性にとって、健康を損なうリスクが高いことを知っておきましょう。また、アルコールを摂取すれば、内臓の病気や精神疾患だけでなく、飲酒運転や転倒によるけがなどのリスクも確実に上がってしまうため、適正摂取量なら安心とは限りません。最近では、お酒は全く飲まないのが最も健康によいという調査結果も出ています。

飲酒は乳がんにも関係しているって本当?

 飲酒が関係するがんとしては、口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、大腸などが挙げられていますが、乳がんもその1つです。女性は飲酒量が増えるほど乳がんのリスクも高まり、1日あたりの飲酒量がアルコール10グラムずつ増えると、発症リスクが7.1パーセント増えるという報告もあります。特に近親者に乳がん患者がいる人は、飲酒によってそのリスクが高まるのでより注意が必要です。

 また、多量飲酒は骨密度を低下させることが知られています。女性は閉経を迎えると骨密度が急激に低下するため、閉経と多量飲酒が重なると、骨粗鬆症のリスクがいっそう高まることになります。この他にも、月経不順や不妊などにつながることも指摘されています。アルコールがホルモンの働きに影響を及ぼすためと考えられていますが、詳しいことはまだ研究段階です。

女性は気をつけたい!飲酒による病気のリスク

●妊娠中の飲酒はNG!

妊娠期にアルコールを常用すると、特徴のある顔つきを伴う「胎児性アルコール症候群」の子どもが生まれる可能性を高め、低体重児や難聴、歩行障害、知的障害などのリスクも高くなります。飲酒は量や時期にかかわらず、胎児に悪影響を与える恐れがあるので絶対に避けること。できれば妊娠を望んだ時点で飲酒をやめるようにしましょう。授乳中の飲酒も母乳を通して赤ちゃんに悪影響を与える危険があるのでNGです。

妊娠中の飲酒はNG!

心身の障害や生活の破たんを招く、「アルコール依存症」とは

アルコール依存症は、飲酒のコントロールができなくなる病気です。長期におよぶ多量飲酒を原因に身体的、精神的、社会的問題が現れ、それでもやめることができずに飲み続けた挙句、最終的には病気、事故、自殺などで死に至る、「慢性進行性致死性の病気」といえます。

単なる「お酒好き」とアルコール依存症との境界を見極めるのは難しいのですが、社会生活に支障を来すかどうかは1つの指標となります。また、酒量が増えてきた、強いお酒を飲むようになった、健康診断で肝機能の異常を指摘されたといった場合は注意が必要です。

一度アルコール依存症になると自然に治ることはなく、治療は断酒が主流となっています。そのため自分や周囲の人にアルコール依存症が疑われた場合は、必ず専門病院を受診してください。地域の保健所などでも相談を受け付けています。

アルコール依存症の治療は、精神療法、自助会への参加、心理社会的な支援など様々な角度からアプローチし、補助的に薬物療法を取り入れることもあります。再発するケースが多いので、根気よく治療を続けることが大事です。

女性のアルコール依存症の実態は?

久里浜医療センターに初診で訪れた女性のアルコール依存症の患者は1990年には62名でしたが、2019年は99名と増加しています。そのほとんどは、ごく普通に働いていたり、家事や育児をしたりしている人です。依存症はお酒を飲んでいれば誰でも発症する可能性はあるので、特別な人がかかる病気といった偏見をもたないことが大切です。

男性は仕事のつき合いなどの社交飲酒を経て依存に至るケースが多いのに対し、女性の場合は家事や育児、介護のストレスや不安を解消するためにお酒を飲み、依存に至るケースが多く見られます。また、女性のアルコール依存症者はうつや摂食障害(特に過食症)など他の精神疾患の合併率が高いのも特徴。確かな理由は不明ですが、ストレスや不安が依存症の根っこになっていると考えられます。

女性のアルコール依存症の実態

治療では、既存の治療プログラムが男性向けのものが多い、男性に比べて家族の協力が得にくい(家族がいる人は治療に専念しにくい、家族の理解が進まない)といった問題があります。そのため、いかに女性に適した治療を提供するかは大きな課題です。久里浜医療センターでは、家族だけでなく、地域や自助会にも援助を求めるよう心がけ、女性スタッフによるチームで治療を進めています。

●お酒をやめたらうつが治った!?

女性は不安解消のための飲酒からアルコール依存となり、うつなどの精神疾患との合併を起こす特徴があります。こうした人の中には、お酒をやめるとうつが治ってしまう人がかなりいます。うつだと思っていたら、単にお酒で誘発されたうつ状態だったというケースです。抗うつ剤もお酒を飲んでいると効きにくくなるため、まずはお酒をやめることが一番です。

女性が上手にお酒とつき合っていくには?

一番大切なのは、お酒について正しく知ること。先に述べたように、一般に生活習慣病予防の観点でお酒の「適量」とされているものは、男性の適量です。女性のお酒の適量は男性よりも少ないことをしっかり認識してください。厚生労働省の提唱する「健康を守るための12の飲酒ルール」も参考にしましょう。

最近ではノンアルコール飲料が人気ですが、場合によっては飲酒の引き金になることがあるので注意が必要です。未成年者にも決してすすめないようにしましょう。

「酒は百薬の長」という言葉があり、少量たしなむ分には問題はない、むしろ健康によいと思い込んでいる人もいます。しかし、ひとたびアルコールのデメリットに目を向ければ、実はお酒は「万病のもと」ともいえるのです。日本ではスーパーやコンビニでも簡単に手に入りますが、お酒も一種の薬物であり、取り扱いには注意が必要です。お酒に関する正しい知識を身につけ、自分や周囲の方々の健康を守っていきましょう。


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監修プロフィール
白峰クリニック いわはら・ちえ 岩原 千絵 先生

精神科医。1998年信州大学卒業、東京女子医科大学精神神経科、成増厚生病院、久里浜医療センター等を経て現職。専門領域はアルコール依存症、認知症、一般精神医学。病棟では女性スタッフのみによるアルコールユニットを担当。厚生労働省健康局健康課参与アルコール対策担当も務めた。

監修プロフィール
白峰クリニック いわはら・ちえ 岩原 千絵 先生

精神科医。1998年信州大学卒業、東京女子医科大学精神神経科、成増厚生病院、久里浜医療センター等を経て現職。専門領域はアルコール依存症、認知症、一般精神医学。病棟では女性スタッフのみによるアルコールユニットを担当。厚生労働省健康局健康課参与アルコール対策担当も務めた。

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