耳鳴り

耳鳴り

耳鳴り(耳鳴:じめい)とは、実際には周囲で音がしていないにもかかわらず、「音が聞こえる」と感じてしまう現象のこと。耳鳴りは難聴が引き金になることが多く、病気や加齢などで難聴になると、耳鳴りを感じやすくなります。
日常生活の中で慢性的に耳鳴りを感じている人の割合は人口の約10~15%だといわれ、その中でも耳鼻咽喉科を受診するほどの耳鳴りに悩まされている人は、人口の2~3%(日本全体では約300万人)とされています(※)。耳鳴りは主観的な症状のため個人差が大きく、耳鳴りがあっても気にならない人もいれば、ひどく苦痛に感じてしまう人もいるのです。耳鳴りについて、原因から治し方・予防法まで専門医が解説します。
※日本聴覚医学会「耳鳴診療ガイドライン 2019年版」

監修プロフィール
防衛医科大学校 耳鼻咽喉科学講座 准教授 まつのぶ・たけし 松延 毅

医学博士。耳鼻咽喉科・頭頸部外科専門医。慶應義塾大学卒業後、北里研究所病院、日本医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 准教授などを経て現職。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会ヘッドホン・イヤホン難聴対策WG委員長。

耳鳴りについて知る


耳鳴りの原因

●耳の働きと、音が聞こえる仕組み
耳は、外耳・中耳で、音の波(音波)としての空気の振動を伝え、内耳で電気信号(パルス)に変えて脳に音を伝達しています。この電気信号を脳が知覚して初めて「音が聞こえる」という状態になるのです。
音が聞こえる仕組みを見てみましょう。
耳介で集められた音波は外耳道から入り、鼓膜に達すると鼓膜が振動します。鼓膜の振動は中耳にある耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)という3つの小さな骨を介して増幅され、内耳の蝸牛へと伝達されます。
蝸牛の中には音を感知する「有毛細胞」があり、有毛細胞が振動を電気信号(パルス)に変換して聴神経を通じて脳に送り、脳が音として知覚することで、音が聞こえます。
この経路のいずれかの箇所が障害されると耳鳴りが発生しますが、最も多い耳鳴りの原因は蝸牛の障害です。

耳の構造のイラスト。耳の一番奥にある蝸牛の中に、音を感知する「有毛細胞」があり、有毛細胞が振動を電気信号に変換して聴神経を通じて脳に送り、脳が音として知覚することで、音が聞こえる。最も多い耳鳴りの原因は蝸牛の障害である。

●耳鳴りのほとんどは、難聴に伴って起きる
一般的に耳鳴りは、難聴に伴って起こります。耳鳴り発生の仕組みについてはさまざまな説があります。ここでは最も一般的であるとされている説を紹介します。本来、耳からは様々な音が入り、蝸牛を通して脳に伝わっています。しかし、耳の聞こえが悪くなって蝸牛から脳に伝わる電気信号が減ってしまうと、脳が電気信号をキャッチしようとして過剰に反応するようになり、実際には音がしていなくても、脳が音を知覚してしまうのです。このように耳鳴りは、難聴によって不足してしまった音を補おうとして、脳が過剰に働くことで起きていると考えられます。

耳の聞こえが悪くなって蝸牛から脳に伝わる電気信号が減ってしまうと、脳が電気信号をキャッチしようとして過剰に反応するようになり、実際には音がしていなくても、脳が音を知覚してしまう。このように耳鳴りは、難聴によって不足してしまった音を補おうとして、脳が過剰に働き過ぎるくことで起きていると考えられる。

●耳鳴りの原因となる疾患は様々
耳鳴りの原因となる疾患には、主に次のようなものがあります。耳鳴りと難聴の原因が同じであるように、これらの疾患が改善すると、それに伴って耳鳴りも改善されていくケースが多くあります。
・内耳の病気…加齢性難聴、騒音性難聴、突発性難聴、メニエール病など。
・中耳の病気…中耳炎など。
・頭蓋内の病気…聴神経腫瘍など。


耳鳴りの症状

●耳鳴りの感じ方は個人差が大きい
耳鳴りの症状は、実際には周囲で音がしていないのに「音が聞こえる」と感じてしまうことです。耳鳴りは難聴に伴って起きることがほとんどですが、全ての難聴の人が耳鳴りに悩まされるわけではありません。耳鳴りを感じない人もいますし、耳鳴りを感じてもその状態に慣れて、耳鳴りが気にならなくなる人もいます。
このように耳鳴りは本人の主観的な症状なので、強さや不快感には個人差があります。例えば、検査で同程度の耳鳴りがあったとしても、ほとんど意識することなく日常生活を送れる人もいれば、かなり気になってしまう人もいます。
また、「耳鳴りへの不安が大きくなる→余計に耳鳴りを感じやすくなる→耳鳴りがさらに気になる→不安になり、悪化する……」という負のスパイラルが形成されやすいのも耳鳴りの特徴で、抑うつや不安、ストレスなどの心理的な背景がある場合は、難聴などに耳鳴りを合併しやすく、治りにくい傾向にあります。


耳鳴りの診断・治療・対処法

●耳鳴りの診断
耳鳴りが気になる場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。耳鳴りの診断は、主に以下のような検査を経て行われます。
①問診
耳鳴りのきっかけや発生時期、症状、難聴などの耳鳴り以外の症状の有無、騒音にさらされた経験や薬の服用など、様々な角度から問診します。
②診察
耳だけではなく、鼻、のどの診察も行い、耳鳴りの原因となる疾患がないかどうか確認します。
③検査
耳鳴りの検査では、主に次のような検査が行われます。
・標準純音聴力検査…難聴の有無や程度を調べる検査です。125Hz(ヘルツ)の低い音から8000Hzの高い音まで、7種類の高さの異なる音の聞こえを検査します。
・ピッチマッチテスト…耳鳴りの音の周波数(音の高さ)を調べる検査です。11段階の周波数の音を聞き、耳鳴りの音に近い高さを特定します。
・ラウドネスバランステスト…耳鳴りの音の大きさを調べる検査です。ピッチマッチテストで把握した周波数の音を使って音量を徐々に上げ、耳鳴りの音量を特定します。
・THI(耳鳴苦痛度質問票)…耳鳴りによる心理的苦痛や日常生活への支障の度合いなどを25問の質問でチェックし、その苦痛度を判定します。

耳鳴りの検査のイメージイラスト

●耳鳴りの治療の目標
耳鳴りに対する治療は、まずは「耳鳴りの原因である疾患」の治療を行うことです。中耳炎なら中耳炎を治す、鼓膜が破れているならそれを治す手術をする、突発性難聴やメニエール病なども、疾患の治療をすることで聞こえが回復し、同時に耳鳴りも改善されていきます。
ただし、聞こえが悪い状態で治らなくなってしまった突発性難聴など、完全に治すことが難しい難聴に伴って起きる耳鳴りの場合は、「耳鳴りが気にならないようにする」ということを目標にします。例えば、聞こえが治らない難聴でも、補聴器のサポートがあれば聞こえやすくなるなら、補聴器の使用によって耳鳴りも気にならなくなっていきます。

●耳鳴りの治療法
耳鳴りの治療法には、主に次のようなものがあります。
・カウンセリング
耳鳴りに対する理解を深めるカウンセリングです。耳鳴りの苦痛の程度や不安の状況に応じて行われます。
・薬物療法
耳鳴りの原因として何らかの病気があり、薬物治療によって回復が見込める場合に行われます。
・音響療法
耳鳴りを軽減させる基本は、耳鳴りが際立つような「静寂」を回避することです。補聴器を使用して背景の雑音が聞こえやすくなると、相対的に耳鳴りの感じ方が弱くなります。同様に、環境音や音楽などを聞いている時は耳鳴りを感じにくくなるため、このような音を利用して、耳鳴りの感じ方を弱めていく治療もあります。
また、補聴器を使っても聞こえが回復しないほど重度の難聴の場合は、人工内耳手術を行うこともあります。

音響療法のイメージイラスト

・心理療法
通常の耳鳴りの治療では十分な効果が見られない場合、抑うつ・不安などの改善のために行われます。


耳鳴りの予防法

●難聴を予防することが、耳鳴りの予防にもなる
耳鳴りは、難聴に伴って起きることが多いため、難聴を防ぐことが耳鳴りの予防につながります。
私たちの耳は、加齢によって徐々に聞こえが悪くなりますが、その進行には個人差があります。聴力を早く衰えさせてしまう原因には、騒音にさらされ続けた経験や生活習慣病、睡眠不足、ストレス、喫煙などが影響することが分かっています。
近年では、長時間、大音量の音楽をイヤホンなどで聞き続けることで起きる「ヘッドホン・イヤホン難聴」も世界的に問題になっています。ヘッドホンやイヤホンを使う場合は「デバイス(スマートフォン)の最大音量の60%以下」の音量を目安に、必要以上に音を大きくしないようにしましょう。また、1時間に10分程度は耳を休ませるようにしてください。
このように生活習慣を変えることで、聞こえの低下を遅らせることができる可能性があり、結果的に耳鳴りを防ぐことにつながります。

ヘッドホン、イヤホンのイメージイラスト

●補聴器を使用する
既に聞こえが悪くなっている場合は、早めに補聴器の装用を検討しましょう。補聴器によって周囲の音が再び聞こえやすくなることで、耳鳴りを予防できます。

●ストレスをためない
ストレスや不安、抑うつは耳鳴りを招く原因になります。リラックスできる環境を整え、ストレスをためないようにしましょう。

耳鳴りは、難聴と深い関係にあります。「聞こえ」を維持・改善する対策を行うことで、耳鳴りは予防・改善できます。


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