交感神経を刺激することで気管支を広げて呼吸を楽にし、咳を鎮める成分です。この作用を利用して、総合感冒薬(かぜ薬)や鎮咳去痰薬、鼻炎用内服薬などを中心に広く使用されています。また、局所の血管を収縮させることで出血を抑える効果により、痔疾用外用薬にも配合されています。
病気の治療中の人、甲状腺機能亢進症、高血圧、心疾患、糖尿病、脳出血などの既往歴のある人、薬を服用中の人、妊娠中または授乳中の人、高齢者は、使用前に医師または薬剤師に相談してください。
交感神経刺激作用に伴う血圧上昇、心悸亢進(動悸)、指や手のふるえ、頭痛、不眠、めまい、吐き気、食欲不振、口の渇き、イライラ感、不安感などの副作用が報告されています。こうした症状に気づいたら、医師または薬剤師に相談してください。
dl-メチルエフェドリン塩酸塩は、「エフェドリン」という成分をもとにつくられています。エフェドリンは、日本の薬学の先駆者である長井長義博士が、1885年にマオウ(麻黄)から初めて単離したものです。マオウは漢方で用いられる重要な生薬の1つで、鎮咳、去痰、抗炎症、発汗、解熱などの作用が知られています。このマオウを配合した「葛根湯(かっこんとう)」や「麻黄湯(まおうとう)」は、かぜのひき始めなどに処方される漢方薬として有名です。
気をつけたいのは、かぜ薬と漢方薬との“のみ合わせ”。葛根湯などに含まれるマオウの主成分エフェドリンはdl-メチルエフェドリン塩酸塩と働きが重なるため、かぜ薬にdl-メチルエフェドリン塩酸塩を含む場合は、併用により作用が増強され、副作用が起こるおそれがあります。天然の植物や鉱物などが由来となるため漢方薬は一般的に安全性が高いと思われがちですが、ほかの医薬品との併用には十分注意しましょう。