子どもの病気とセルフメディケーション

大人の縮小版じゃない!
子どもの体を知っておこう

子どもは身体機能や精神、全てにおいて発達途上にあります。
大人とは違う子どもの体の特性を理解しておきましょう。

子どもの体は15歳ぐらいまでは発達段階子どもの体は15歳ぐらいまでは発達段階

子どもは大人よりも心拍数が多い

幼児の心拍数は、毎分110回前後と標準的な大人の約1.5倍。子どもの心臓は大人よりも小さく、1回の心臓の収縮で送り出せる血液量が少ないため、心拍を速めて送り出す血液量を増やしているのです。6歳以降になると毎分90回程度になります。

目に見えないけれど心も発達途上

情緒や言葉、知的な要素など、精神的な部分も体の成長と共に形成されていきます。子どもは大人と比べ、心の悩みが体と直結しやすく、体調不良として現れやすい傾向があります。

成長ホルモンの分泌が盛ん

体の細胞を活性化させたり、代謝を促進させたりする成長ホルモンの分泌は、子どものほうが盛ん。思春期の後半にピークを迎え、成長期を過ぎると減少していきます。

子どもは熱を取り込みやすい

体温は脳の視床下部(ししょうかぶ)にある体温調節中枢が指令を出し、皮膚の毛細血管を収縮させたり、拡張させたりすることなどで調節されています。子どもはこの機能が未熟な上、体重当たりの体表面積が大きいため、暑い環境では大人以上に熱を取り込みやすく、体温調節がしにくくなります。

免疫力が弱く病気にかかりやすい

母親からもらった先天的な免疫力がなくなってからは、様々なウイルスや細菌に感染しながら免疫力をつけていきます。幼児期が終わるくらいまでは急ピッチで病原体に感染して抗体をつくるため、病気にかかりやすく、長引きやすいのですが、その時期が過ぎると落ち着きます。

子どもの骨はしなやかにできている

大人は硬い骨をもっていますが、一方で、強い衝撃が加わるとポキッと折れやすい面が。骨を木に例えると、子どもの骨は若木の小枝のよう。軟らかくしなやかにできているため、大人の骨のような折れ方はしません。硬い骨になるのは思春期を過ぎてからです。

腎臓機能が未熟で脱水症状を招きやすい

大人は脱水状態になると、濃縮した尿をつくることで尿量を減らし、体内に水分を保持します。しかし子どもはこの機能が未熟。体が脱水状態でも体内の水分や塩分を排泄してしまうため、脱水症状を招きやすいのです。
子どもの発育期の分類
新生児期…
出生後4週間まで
乳児期……
満1歳まで
幼児期……
満1歳から小学校入学まで(1~6歳)
学童期……
満6歳から12歳まで(小学校在学期間)
思春期……
二次性徴の始まりから完成まで。便宜上、中学校在学期間を指すことが多い

月日と共に成長する体と免疫力

子どもの体は単純に大人を小さくしたものではありません。大人は既に臓器や体の機能の発達が終わり、体ができ上がっている状態。一方、子どもは15歳くらいまでは発達途上の段階にあり、体は未完成の状態といえます。

腎臓を例にしてみましょう。大人の腎臓は体に水分や塩分が足りなくなると、濃縮した尿をつくることで尿量を減らし、老廃物を排泄しながら体内の水分を保持することができます。

子どもの場合、体内水分量が多く新陳代謝も活発で、大人よりも多くの水分が必要です。にもかかわらず、腎臓の尿を濃縮する力が未熟なため、体内の水分や塩分をどんどん排泄してしまいます。子どもが脱水症状になりやすいのはこういった理由によるものです。

免疫力も大人とは大きく異なります。生後6カ月くらいまでは、お腹の中で母親からもらった免疫力(抗体)に守られていますが、10カ月を過ぎる頃にはその抗体はほぼ消滅。以降は、ウイルスや細菌に感染することで、体の中に抗体をつくり出します。このように免疫力が途上の段階にあるため、病気にかかりやすいのです。

子どもの臓器や体の機能は、体の成長と共に発達していくもの。子どもの健康を守る上で、大人は自分の体を基準にするのではなく、こうした子どもの体の特性を理解することが大切です。

15歳未満の子どもと薬

子どもの体は大人のように
薬を分解できない!?

子どもは身体機能が未熟で、薬を吸収する力、分解する力、排泄する力は大人とは異なります。脳に有害な物質が入り込まないように制御する「血液脳関門(のうかんもん)」の仕組みも未発達なので、脳へ薬が入ってしまう心配も。たとえ子どもが大人並みの体格に見えたとしても、大人用の薬を服用するのはNGです。 大人用の解熱鎮痛薬(げねつちんつう)で使用されるアスピリンは、脳障害を起こし、死に至る危険もあるライ症候群の恐れがあるため、子どもの服用が禁止されているといったことがあります。子どもに使ってよい薬には子どもの用法・用量があります。必ず確認して、正しく使いましょう。