専業主婦から、女性をウェルネスへ導く オーガナイザーに 自分にできることを模索し続けた先に 開かれた未来を見つけた40代

専業主婦から、女性をウェルネスへ導く

オーガナイザーに

自分にできることを模索し続けた先に

開かれた未来を見つけた40代


専用のポールを持ってウォーキングをすることで、効果的な全身運動をかなえるノルディックウォーキング。運動レベルに関係なく誰でも自分のペースで楽しめると、幅広い世代から注目をされているスポーツです。

このノルディックウォーキングのインストラクターになり、女性のためのクラブを主宰する黒木公美さんは、漢方の資格も有し、心身のバランスが取れたヘルシーライフについて発信しています。


黒木 公美さん  「IHANAノルディックウォーキング」代表。漢方養生指導士アドバンス、漢方養生指導士漢茶マスター。

黒木公美(くろき・くみ)
「IHANAノルディックウォーキング」代表。漢方養生指導士アドバンス、漢方養生指導士漢茶マスター。1974年生まれ。23歳と19歳の息子の母。子育てがひと段落したのを機にランニングを始め、心身ともにアクティブになったことから、運動の魅力を伝えるべく、自らノルディックウォーキングのインストラクターに。2015年、女性限定クラブを立ち上げ、世田谷、横浜、鎌倉などでのプログラムや、十勝やフィンランドへのツアーを開催。


現在はたくさんの女性たちから支持されるオーガナイザーの黒木さんですが、専業主婦だった30代は、運動不足から頭痛や体の重さなどの不定愁訴に悩まされていたそう。

人生を変えたきっかけは、思い切って始めたランニングでした。

今を生きる40代女性の新たなロールモデルとして、黒木さんに、自分の人生の舵を握る意義、そして喜びをうかがいました。


運動不足と“正解のない”
子育てに悩んだ30代


23歳で結婚、その後出産し、子育てに追われている間はしょっちゅう風邪をひき、気分のアップダウンがとても激しかったです。同時に、同年代の女性たちが会社で昇進したり、転職をしたりしてキャリアを積んでいくのを横目で見ながら「自分には何もない」という焦りもあって。「今は子育てに専念しよう。ひと段落したら、絶対に何かをするぞ」と決めていました。

まずはすっかり落ちてしまった体力を取り戻すことから始めよう。そう考えて取り組んだのがランニングでした。初めは本当に5分走ったら歩いて(笑)。そのうち、20分、30分と走れるようになってきたんです。

子育ては、親が頑張っても子どもにとっては正解でないこともあり、悩むことが多かったのですが、ランニングはメニューに従って練習をすれば、走れる距離も伸びるというシンプルなところも気に入って。1年半後にはフルマラソンにも出場するようになり、8回ほど完走しました。体力がついたことで、子どもにも前向きにかかわれるようになり、よい循環が生まれました。


ノルディックウォーキングとの出会い


ランニング仲間も増えたので、平日にコーチを招いてレッスン会を企画するようになりました。レッスンコミュニティができあがって、パークヨガなども行い、4年ほど運営していました。

ところが、年齢が上がってくるに従って、私を含め「ランニングはハード」という人が増えてきたんです。「走るより、歩く方がいい」という意見も寄せられました。どうしよう、いったん解散しようか……そう考えていたときに、ランニングのコーチとヨガの先生が「今度はあなたが教える側になったら?」と背中を押してくださったんです。

とはいえ、ただ歩くだけのレッスンでは物足りなさそう。一般女性でも無理なくできて、効果がある運動ってなんだろう……?
そこでふと、ノルディックウォーキングの体験クラスを受けたことを思い出しました。ハードではないのに、体を使ったという実感があって、楽しかった。これだ!と思いインストラクター資格を取りにいったのです。それが、ちょうど40歳のことでした。


女性にぴったりのノルディックウォーキング

女性にぴったりの
ノルディックウォーキング


ノルディックウォーキングは、ポールで地面を押して歩きます。普通に歩くよりもスピードが出て、爽快感があります。背中、お尻といった背面の筋肉を使うので、姿勢の改善も期待できます。でも、苦しさや痛み、能力の優劣や勝ち負けもない。みんなで和やかに朗らかに楽しめるスポーツなので、心にも体にも優しく、女性にぴったりなんです。

私たちのクラブには、運動をしにきてはいるけれど、仲間とおしゃべりをするのも楽しい、という人もたくさんいらっしゃいます。毎回参加しなければという縛りもないので、ご都合に合わせて、細く長く続けてくださっています。


漢方の資格を取得したことで、
有益なアドバイスも


ノルディックウォーキングをしながら皆さんと歩いていると、自然とお悩み相談室になります。冷え症や更年期など、年齢を重ねるといろいろな悩みが出てきます。次第に、「運動してください」だけでなく「どうしたらもっと有益なアドバイスができるんだろう」と考えるようになったんです。

調べていくうちに、漢方にたどり着きました。

漢方養生指導士アドバンスは、体の症状や悩みを聞いて、適した漢方薬、食事、運動、休息、心の持ち方までのアドバイスができる資格です。
また、漢茶マイスターは、食薬(漢方や栄養学などに基づき心身を整える食材)を体調や季節に合わせてブレンドし、オリジナルの漢方茶を作ることができます。


漢茶マイスターは、食薬(漢方や栄養学などに基づき心身を整える食材)を体調や季節に合わせてブレンドし、オリジナルの漢方茶を作ることができます

漢方は、ただ漢方薬を飲めばいいというものではなく、自然の中で運動することも大切に考えているため、ノルディックウォーキングとの相性もぴったりでした。漢方を学び、深く知ることで、その方のタイプに合わせて多角的なアドバイスができるようになりました。


試行錯誤してたどり着いた現在の道


専業主婦からスムーズに現在の活動にシフトしたように見えるかもしれませんが、実際は、大きなイベントやお料理のワークショップを企画してみるなど、試行錯誤の繰り返しでした。自分自身、何が向いているのか分からず、模索している時期というのは今振り返ってみてもしんどかったですね。

それでも、やっぱり「いつかは」という思いを持ち続けて、皆さんの心身の健康に役立って、自分も長く続けられることを探し続けてきたことが、現在につながっているのだと思います。

今はフリーランスなので、「自分で人生の舵を握っている」という自覚があります。決して大きなことをやっているわけではありませんが、何歳まで、どれくらいのペースで働くか、すべて自分で決めていて、誰かに止められることもない。自分が大好きな「歩く」ということを生涯の仕事にでき、皆さんから「ありがとう」と言っていただく、こんなハッピーな人生はないな、と我ながら思うのです。


これからは年齢を重ねても
活躍できる時代


これからは年齢を重ねても活躍できる時代

キャリアチェンジをしたいけれど踏み出せない場合、まず何に不安を感じているのかを探ってみるといいと思います。スキルなのか、経験なのか、お金なのか、生活スタイルが変わることなのか。まず今の自分でできること、今の自分に足りないことを整理して、何から始めるべきかを考える。それだけでも、大きな一歩です。

これからの少子高齢化時代、年齢を重ねても活躍できるチャンスが増えると私は考えています。大きな変化には勇気がいりますが、小さな変化を起こす選択肢は増えています。オンラインで学んだり、販売したり、短い時間から仕事を再開したり。自分の生活リズムや力量に合わせて、まずは小さく始めてみてはかがでしょう。私も参加者は友人2〜3人、レッスンは週1回からのスタートでした。100年時代、人生は長いですから、もし違ったと思ったり、失敗してしまったりしても、軌道修正する時間の余裕があるということ。気負うことなく、始めてみてから考えるくらいの気持ちでいいと思うのです。

私も、もうすぐ50代。30代は子育て、40代は自分育てで精一杯でしたが、これからは仲間育て。今までの経験を活かしてノルディックウォーキングインストラクターの養成に取り組んでいきたいと考えています。そして個人的には、100km以上のロングトレイルに挑戦してみたい。仕事も、プライベートも、一歩一歩確実に歩みを進めていくのが私らしいと思っています。


取材・文/山野井春絵 写真/後藤 渉 ヘアメイク/佐々木博美