多くの女性を悩ませる頭痛。痛みのケアにはまず、自分の頭痛タイプを知ること。そして、頭痛タイプに応じた対処法を身につけることが大切です。頭痛はセルフケアで改善・予防できる場合も多いことから、痛みのタイプ別のセルフケアを知り、頭痛の発生頻度を減らしていきましょう。
1979年北里大学医学部卒業。医学博士。北里大学医学部内科学講師、宮内庁病院第二内科医長、富士通南多摩工場健康推進センター長、神奈川歯科大学附属横浜クリニック内科学講座教授を歴任。81年より頭痛医療に携わり、現在に至る。日本頭痛学会理事・専門医。『頭痛女子バイブル』(世界文化社)などを監修。
痛みは、体に何かしらの異常や異変が起こっていることを知らせる重要なサインです。女性を悩ませる様々な痛みの中でも多いのが頭痛。ひと口に頭痛といっても、その原因は様々です。病院での治療はそれを突き止めることから始まります。しかし、症状が比較的軽い場合は市販の頭痛薬で対処する方法もあります。
市販薬は、痛みを感じたら早めに服用するようにしましょう。服用後、数時間で回復すればよいのですが、1日に2回以上服用しても痛みが治まらない場合や、月に10日以上服用している人は、受診が必要です。
薬を服用する日数が増えると、脳や神経が痛みに敏感になり、少しの刺激でも痛みを感じるようになります。また、痛みそのものが強くなったり、治りにくくなったりするなど、痛みの慢性化にもつながりかねません。そのため、1日の服用回数や服用してよい日数を守ることが大切です。
頭痛には様々な種類があり、どんな頭痛かによって適切な治療も異なります。また、頭痛の種類や原因は、検査の数値によって判定できるものではないため、正確な診断をするのが難しいのです。そのため、できれば専門医の診察を受けることをおすすめします。
受診の際は、正確な診断を受けるためにも、自身の症状をしっかりと医師に伝えることが大切です。痛みの程度や頻度、どんな痛みが、どんな時に起こりやすいかなどを説明できるよう、メモをとっておいたり、頭痛ダイアリーをつけておいたりするのも一案です。
繰り返す頭痛には代表的なものとして片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛の3つのタイプがあり、そのうち女性に多いのが、片頭痛と緊張型頭痛です。
片頭痛は、10代後半から多くなり、最も多い30代では5人に1人が片頭痛もちといわれています。痛みを引き起こす要因には、女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌量の変動が挙げられており、エストロゲンの血中濃度が低下する生理前や生理中は頭痛が起こりやすくなります。
また、更年期に頭痛が悪化する場合もあります。エストロゲンの変動に加え、子どもの独立や夫の定年退職、親の介護といった生活環境の変化が重なり、頭痛が多くなるのです。しかし、閉経し、エストロゲンの変動がなくなると頭痛の頻度が減り、痛みも軽くなる傾向があります。
一方、年代に関係なく起こるのが、緊張型頭痛です。人間関係や家庭で問題を抱えている、長時間同じ姿勢でいるなど心身のストレスが重なると、首や肩の筋肉が収縮。血行不良から痛みが起こると考えられています。
・片頭痛……20~40代の女性に多く、脳を覆う硬膜(こうまく)の血管を取り巻く三叉(さんさ)神経が何らかの刺激を受けることで起こります。
・緊張型頭痛……幅広い年代に見られ、筋肉の収縮による血行不良などから起こります。
・群発頭痛……男性に多く、体内時計を司る視床下部の機能的異常が原因と考えられています。
自分の頭痛タイプは、痛み方や痛み以外の症状から推測できます。
片頭痛は、こめかみから目の辺りにかけて片側または両側に、ズキンズキンとした強い痛みが発作的に起こり、動くと痛みが強くなります。一方、緊張型頭痛は、頭全体がギュッと締めつけられるような痛みで、体を動かしても痛みが強くなりません。群発頭痛は、片側の目の奥がえぐられるような激痛で、じっとしていられません。発作が起きたら、病院に行くようにしましょう。
また、痛み以外の症状もタイプを見極めるポイントになります。片頭痛は吐き気や嘔吐、光と音に敏感になるといった症状を伴います。その他、痛みが起こる前に生あくびがよく出る、イライラするなどの予兆や、目の前に稲妻のような閃光が見えるといった前兆が現れることもあります。緊張型頭痛は肩や首のこり、群発頭痛は痛む側の目が充血して涙が出るなどの症状を伴います。
頭痛の種類により対処法が異なるため、自分の頭痛タイプを知っておくことはとても大切です。
片頭痛 | 緊張型頭痛 | 群発頭痛 | |
痛み方 | ズキンズキンとした強い痛み | ギュッと締めつけられるような痛み | 目の奥がえぐられるような激痛 |
痛む部分 | 片側または両側のこめかみから目の辺りにかけて | 頭全体または後頭部 | 片側の目の奥から側頭部にかけて |
動いた時の痛み | 強くなる | 強くならない | 痛みでじっとしていられない |
痛み以外の症状 | 光と音、においが気になる、吐き気や嘔吐がある | 肩や首のこり | 痛む側の目が充血し、涙が出る。鼻水・鼻づまり |
痛みが続く時間 | 4~72時間 | 30分~7日間 | 15分~3時間 |
痛みの頻度 | 月に2~4回 | 時々または毎日 | 2週間~2ヵ月の間ほぼ毎日 |
痛む部分を冷やすと痛みが軽減することが多いです。また、光や音などの刺激によって痛みがひどくなりやすいため、暗い静かな部屋で横になるようにしましょう。
筋肉の血行が悪くなることで痛みが起こるため、首や肩を温めて血行をよくすると痛みが和らぎます。また、ストレッチなどで首や肩を動かすと、血流が促されて痛みの緩和に有効です。
寝不足や寝過ぎ、朝食や昼食を抜くといった生活リズムの乱れは頭痛の引き金になります。まずは、普段の生活を意識して変えていきましょう。
毎日決まった時間に起床・就寝。食事は抜いたりせずにしっかり摂ることが大切です。また、ストレッチやヨガなど、軽めの運動をするのもおすすめです。体を動かすと血流がよくなり、心身のリフレッシュになります。
片頭痛の人は光やにおいに敏感なため、部屋の灯りは蛍光灯よりも電球の光にしたり、消臭剤や洗剤はなるべくにおいがきつくない物を選んだりするといったことも、頭痛の予防につながります。
さらに、頭痛ダイアリーをつけると、どんな時に頭痛が起こりやすいか、何が頭痛の引き金になっているかなど、自分の頭痛パターンを知ることができるので、頭痛の予防に役立ちます。
例えば、生理周期に連動して頭痛が起こりやすい場合は、生理の時は無理をしないようにする、飲酒を控えるなどで、頭痛の要因を減らすことができるのです。そして、空腹な状態が続き頭痛が起こるような場合は、対処法としてあめをなめ、血糖値の低下を防ぐとよいでしょう。
規則正しい生活は、頭痛の予防につながります。
<頭痛予防のポイント>
・起床……毎日決まった時間に起きましょう。
・食事……食事の時間を変えず、バランスの良い内容を心がけましょう。
・就寝2時間前……ストレッチなどで血行を促し、リフレッシュしましょう。
頭痛は、自分に起こりやすいタイプを知っておけば適切なケアができるようになります。さらに、生活リズムを整えることが、頭痛の予防につながります。つらい時は我慢せずに専門医の力を借り、すっきりとした毎日を送りましょう。