片頭痛を「いつものこと」と放っておかないで!夏の片頭痛の原因と予防・対処法

日本では4000万人以上、およそ3人に1人が悩まされているという慢性頭痛。仕事や日常生活にも支障を来し、日本における経済損失は約2,600億円とも予測されています。今回は慢性頭痛の1つである片頭痛の原因や特徴を紹介すると共に、夏ならではの片頭痛の原因と予防・対処法について、日本初の頭痛専門クリニックを開設した丹羽潔先生にお話をうかがいました。

あなたのその頭痛、本当に片頭痛ですか?

あなたのその頭痛、本当に片頭痛ですか?

片頭痛は慢性頭痛の1つで、ストレスや睡眠、ホルモンバランスなど様々な原因で起こるといわれています。慢性頭痛には、片頭痛の他に首や肩のコリが原因の緊張型頭痛や、激しい痛みを引き起こす群発頭痛があり、この3つは「三大頭痛」と呼ばれています。最近では、パソコンやスマホの長時間使用による不良姿勢が引き起こす後頭神経痛も注目され、「第四の頭痛」とも呼ばれています。


片頭痛が起こるメカニズムとは?

片頭痛は脳の血管が拡張し、脳神経が刺激されることによって起こります。脳の血管が拡張する要因は、人によって様々ですが、以下のような「平常時から急激な変化が起きた時」に誘発されやすくなります。

<脳の血管が拡張する要因>
◆ストレスがかかった時や、ストレスから解放された時
◆寝不足の時や、睡眠をとり過ぎた時
◆空腹(血糖値の低下)状態
◆光・騒音・においなどの環境における外的要因
◆アルコールなど特定の飲食物の過剰摂取
◆気候・気圧の変化
◆女性ホルモン(エストロゲン)の変動
◆遺伝的要素

このような変化によって脳内の神経伝達物質で、通称、幸せホルモンといわれるセロトニンが消費されると、自律神経や三叉神経の興奮がコントロールできなくなり、CGRP(カルシトニン遺伝ペプチド)という血管を拡張させる物質が放出され、拡張した血管の周りに炎症を起こすことで片頭痛が起こるのです。

片頭痛は、緊張型頭痛を併発している場合も多く、実は医師でも診断が難しい頭痛。病院に行く前に、ご自身で片頭痛かどうかを見極めるポイントをご紹介します。

<片頭痛を見極めるポイント>
①   歩く、階段を上るなど日常的な動きをしても痛む
②   悪心または嘔吐を伴う
③   光・音・においに敏感になる
④   光のようなものが見え、視界が欠ける「前兆」がある
⑤   頭痛の数時間前から2日前に首や肩が張る「予兆」がある
⑥   痛みの持続は短く、4時間から長くても3日間


片頭痛には「暗い場所での休息」と「缶コーヒー」

片頭痛には「暗い場所での休息」と「缶コーヒー」

片頭痛は「動くと痛い」「光や騒音の影響を受ける」という特徴があるため、片頭痛を和らげるには室内を暗くして、体を休めることが大切です。また軽い症状であれば、片頭痛の原因である血管周囲の炎症を抑えてくれる市販の解熱鎮痛剤を携帯しておくと安心です。

薬がない場合は、冷たい缶コーヒーを2本買ってみましょう。冷たい缶で喉ぼとけの両端にある太い血管(頸動脈)を上から冷やせば、脳の血管の拡張が抑えられるため症状が軽減することも。またカフェインには血管を収縮させる効果もある上に、砂糖入り(人工甘味料を除く)の物を選べば、脳血管を拡張させる低血糖状態を緩和することもできます。


併発しやすい片頭痛と緊張型頭痛

肩や首のコリからくる緊張型頭痛には動いた方が楽になるという特徴があり、動くと痛い片頭痛とは全く逆の病態です。しかし、片頭痛をもつ方の8割は緊張型頭痛を併発しています。片頭痛は首の前側にある頸動脈を冷やすことで症状が和らぎますが、緊張型頭痛はこってしまった首の後ろ側にある筋肉を温めて血流を促すことで痛みが緩和されます。

暑くなったら要注意!夏の片頭痛とその予防・対処法

暑くなったら要注意!夏の片頭痛とその予防・対処法

片頭痛は季節を問わず起こりますが、強い日差しや急激な温度差、気圧や湿度が変化する夏は特に注意が必要です。また、夏休みで遠方へ出かける機会が増え、環境の変化が片頭痛を招くことも。ここでは夏ならではの片頭痛の原因と、適切な予防・対処法をご紹介します。


片頭痛の原因① 強い日差し

片頭痛の理由:強い紫外線が「自律神経」「脳神経」「網膜細胞」を刺激し、痛みを引き起こす。

片頭痛の予防・対処法:頸動脈を冷やす。暗い場所で休む。サングラスをかける。サングラスは薄緑色がよい。


片頭痛の原因② 冷房の利いた室内と屋外の温度差

片頭痛の理由:急な温度変化により、自律神経が乱れて頭痛を招く。

片頭痛の予防・対処法:羽織物や腹巻きなどを活用して、体をあまり冷やさないようにするとよい。


片頭痛の原因③ 冷房による体の冷え

片頭痛の理由:肩や首の筋肉が収縮し、血流が悪くなり自律神経も乱れ、緊張型頭痛と片頭痛が起こる。

片頭痛の予防・対処法:冷房と併せて除湿器やサーキュレーターを使い、室温を下げ過ぎない。軽い運動や湯船に浸かるなど体を温めることを習慣にして、基礎代謝と平熱を上げる。

体の冷えによって起こりやすくなる「むくみ」も、片頭痛の大敵となります。利尿作用の高い夏野菜を積極的に摂って、体の余分な水分を排出するとよいでしょう。おすすめはそら豆や枝豆、パクチーやミョウガ、大葉、トマト、キュウリなどです。


片頭痛の原因④ 汗をかくことによる脱水・熱中症

片頭痛の理由:体が暑さに対応できず、体内の水分も不足して血流が悪くなる。マスクの着用でマスク内に熱がこもり、熱中症から片頭痛になることも。

片頭痛の予防・対処法:体(特に首)を冷やし、水分補給を行う。普段からこまめに水分補給を心がけ、外出前には簡単なストレッチなどで体をほぐしておく。

脱水の状態では血圧が下がりますが、市販の解熱鎮痛剤を使うと、必要以上に血圧を下げてしまう可能性があります。服用前に水分をしっかり摂るなど対策をしましょう。


片頭痛の原因⑤ 気圧や湿度の変化

片頭痛の理由:急激な気圧の変化によって自律神経が乱れ、交感神経が活性化し、後頭神経痛を発症する。また、湿度が70%以上になると体温調節のための汗が蒸発できなくなり、体内に熱がこもることでサウナのような状態となり、脳の血管が拡張し片頭痛も起きる。

片頭痛の予防・対処法:正しい生活のリズムを保ち、自律神経を整える。除湿器やエアコンのドライモードを活用し、適切な湿度を保つ。

「お腹が痛い!」は子どもの片頭痛のサインかも?

「お腹が痛い!」は子どもの片頭痛のサインかも?

発熱していないお子さんが頭痛を訴える場合は、片頭痛であることが多く、大人のような典型的な症状が出にくい上に前兆もありません。短時間で回復することが多く、突然「頭が痛い…」と言い出したかと思うと数時間でケロっと元気になってしまうので、大人から見れば仮病に思えてしまうことも。また「腹部型片頭痛」といって、お腹が痛い、食欲がない、吐き気や嘔吐などの症状が出る片頭痛もあるなど、子どもの片頭痛の見極めは大人以上に困難です。


子どもの片頭痛の特徴と対処法

子どもの片頭痛には以下のような特徴がみられます。

◆平日や、朝の時間に起こりやすい
◆両側の前頭部に起こりやすい
◆突然症状が現れ、短時間(10分以下の場合も)で回復することが多い
◆一度発症すると毎日繰り返す傾向にある
◆顔面蒼白、悪心、嘔吐、腹痛を伴いやすい
◆車酔いしやすい
◆運動後によく症状が出る
◆親が片頭痛持ちである
(両親の場合は75%、どちらかの場合は50%の確率で遺伝)

短時間で回復することが多いので、病院に行く前に暗めの部屋で温かな飲み物を摂り、少し様子をみるとよいでしょう。血行を促して体を温めるカカオポリフェノールや生姜、神経の過敏性を和らげるカルシウムを含む物などがおすすめです。

<おすすめの飲み物>
◆ホットココア
◆ホットハニーレモンティー
◆ホットミルク
◆生姜入りホット甘酒(米麹から作ったノンアルコールの物)

それでも症状がつらそうな場合は解熱鎮痛剤を与えても問題ありませんが、子どもが服用できるものを選び、用法・用量を守りましょう。

セロトニンで片頭痛を防ごう

セロトニンで片頭痛を防ごう

セロトニンは、楽しいことをして、幸せな気分を味わっている時に分泌されます。セロトニンが減少すると、片頭痛を引き起こす原因になります。日々の生活習慣で、セロトニンの分泌を促し、片頭痛を予防していきましょう。


セロトニン分泌量をアップさせる夏の生活習慣

夏は長期の休みやイベントなどもある楽しい季節。そのため、生活習慣が乱れてしまうことも多いでしょう。夏に心がけたい生活習慣のポイントをご紹介します。

◆質のよい睡眠を心がける
日中に眠気を感じない程度にしっかり睡眠をとる

◆起床したら朝日を浴びる
日焼けが気になるなら、外に出ず、カーテンを開けて朝日を体に感じるだけでOK!

◆夏休み中やリモートワーク時にも生活リズムを一定にする
普段と同じ就寝・起床時間や食生活を心がける

パソコンやスマホの見過ぎ、ストレスなどもセロトニンの分泌を鈍らせてしまうので、片頭痛が気になる方は、生活習慣を見直してみましょう。


生活に”リズム運動”を取り入れよう

生活に”リズム運動”を取り入れよう

繰り返し行うリズム運動も、セロトニンの分泌を促します。一定のリズムを保って行うウォーキングや、意識して行う腹式呼吸、食事の時に咀嚼(そしゃく)を意識的に行うことも、リズム運動として効果的です。仕事などの関係で生活のリズムが乱れがちだったり、朝日を浴びることが難しかったりする場合は、このリズム運動を取り入れてみましょう。

◆ウォーキング・ジョギング・自転車こぎ・座禅など
これらのような、リズミカルに呼吸をしながら反復して行う動きはおすすめです。なかなか運動の時間が取れない場合は、通勤・通学の時間にウォーキングや自転車を取り入れるのがおすすめです。

◆5~15分間、ガムをかむ
ガムをよくかんで顎を動かすことも、リズム運動にあたります。朝の準備をしている時や、人と会わない時などにかむのがおすすめです。

◆管楽器・吹奏楽器などの演奏
楽器を吹く時の腹式呼吸が自律神経を整え、セロトニンの分泌を増加させます。楽器がない場合は、ゆっくり5秒ほどかけて鼻から深く息を吸いながらお腹を膨らませ、口から息を吐きながらお腹をへこませるだけでも効果があります。

カフェでのおしゃべりでストレスを発散するのも、セロトニンの分泌には効果的です。また、リラックスできる相手と仲良くコミュニケーションをとれば、愛情ホルモンと呼ばれる「オキトシン」という物質が発生します。このオキシトシンもセロトニンの分泌を促し、オキシトシン自体も片頭痛を緩和します。

たかが頭痛と侮らないで!病院に行くタイミングは?

頻繁に起こる頭痛の場合、「いつものことだから」と市販の解熱鎮痛剤でやり過ごしてしまうこともあるでしょう。女性の中には、片頭痛もちで生理痛も重く、月に10日以上解熱鎮痛剤を服用している人もいます。そのようなペースで服用したり、仕事や遊びなどのスケジュールに合わせて予防的に薬を服用したりしていると、気がつかないうちに薬物乱用頭痛という別の頭痛を発症することも。服用する際は、用法・用量を守り、長期間続けて服用しないことが大切です。

病院を受診する目安は、「月に6日以上解熱鎮痛剤を服用している」もしくは「いつもと違う痛みや日ごとに痛みが増すような頭痛」です。また、50歳は脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などの疑いが高まる年齢です。50歳以上で初めて強い痛みを感じた方や頭痛が続いている方は、脳神経内科や脳神経外科、もしくは総合内科専門医に診てもらうことをおすすめします。


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監修プロフィール
にわファミリークリニック院長・東京頭痛クリニック理事長 にわ・きよし 丹羽 潔 先生

医学博士。日本頭痛学会専門医・指導医・代議員。東海大学医学部卒業後、ドイツ・米国の大学にて脳神経内科を学ぶ。東海大学脳神経内科専任講師を経て、05年、にわファミリークリニックを開設。15年、専門医のみによる日本初の頭痛専門クリニックを開く。著書に『日本初の頭痛専門クリニックが教える最新頭痛の治し方大全』(扶桑社)などがある。

監修プロフィール
にわファミリークリニック院長・東京頭痛クリニック理事長 にわ・きよし 丹羽 潔 先生

医学博士。日本頭痛学会専門医・指導医・代議員。東海大学医学部卒業後、ドイツ・米国の大学にて脳神経内科を学ぶ。東海大学脳神経内科専任講師を経て、05年、にわファミリークリニックを開設。15年、専門医のみによる日本初の頭痛専門クリニックを開く。著書に『日本初の頭痛専門クリニックが教える最新頭痛の治し方大全』(扶桑社)などがある。

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