「飛蚊症」とは、視野の中で蚊が飛んでいるように見えたり、糸くずが舞っているように見えたりする症状のこと。その様子から「飛蚊症」と名付けられました。多くの場合は目の老化現象によって現れる症状の1つなので心配はいりませんが、中には、糖尿病や高血圧、網膜裂孔(もうまくれっこう)、網膜剥離(もうまくはくり)などの重篤な病気の前兆になっていることもあるので、飛蚊症に気づいたら、眼科を受診して原因を知っておくことが大切です。また、加齢によるものだと分かっていても、不快な浮遊物が目の前にちらつくことで精神的ストレスの原因になってしまうこともあります。
1988年藤田保健衛生大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室助手、同大学医学部漢方医学センター助教、WHO intern、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、北里大学薬学部非常勤講師、首都大学東京非常勤講師などを経験。2013年芝大門 いまづクリニック開設。藤田医科大学医学部名誉教授。著書に『風邪予防、虚弱体質改善から始める 最強の免疫力』(ワニブックス)など。
飛蚊症は、目の中の大部分を占める「硝子体(しょうしたい)」に濁りができたために起こる症状です。「硝子体」とは、眼球内に詰まっている透明のゼリー状のもの。これが何らかの原因で濁ると、濁りの陰が「網膜」に映り、目の前をちらつくようになります。この濁りは目の中にあるため、目を動かすと一緒に動いて見えます。こういった現象が起こる原因は、「生理的飛蚊症」と「病的飛蚊症」の2つに分類されます。
飛蚊症を自覚しても、ほとんどは加齢による生理的なもので心配はありませんが、中には次のような目の病気の一症状として飛蚊症が起こることもあります。
飛蚊症の症状は、硝子体の濁りによって、視野の中で虫が飛んでいるように見えたり、糸くずのようなものが舞っているように見えたり、ゴマ状のツブツブが見えたりします。濁りの大きさや量、場所によって見えるものの形や大きさが異なり、見える影の数は1つから数個にまで及ぶこともあります。この浮遊物は眼球内に存在するため、目を動かすのに合わせて一緒に動いて見えます。
いつもは気づかなくても、明るい場所や白い大きな背景、青空などを見ている時にはっきりと現れることが多いといわれています。また、不快な浮遊物が絶えずちらちら見えることが精神的ストレスとなることも少なくありません。
「生理的飛蚊症」の場合は、日によって浮遊物が見えたり見えなかったりし、いつの間にか症状が解消することもあります。これは生理的なものなので特に治療法はありません。しかし「病的飛蚊症」の場合は、症状の原因となっている病気に応じた治療が必要です。飛蚊症の症状だけでは、生理的なものなのか、病気のサインなのか自己判断はできないので、飛蚊症を自覚したら、まずは眼科を受診することをおすすめします。検査の上、治療を必要とする病気がなかった場合は、心配せずに通常通りの生活を送り、医師と相談の上、時々チェックしてもらうとよいでしょう。
飛蚊症が症状として現れる「後部硝子体剥離」は、60代前半によく起こります。特に60歳前後に突然飛蚊症の症状を感じたら、早めに受診することをおすすめします。目の病気は加齢により起こるものが多いので、「後部硝子体剥離」によって起こる「網膜裂孔」や「網膜剥離」の有無を詳しく調べてもらいましょう。一般的に「後部硝子体剥離」だけの場合の飛蚊症は、突然起こり、色の濃い大型の浮遊物がいつも見えるのが特徴。また、飛蚊症の症状が現れる前後に、ぴかぴか光るものが見えたら、「後部硝子体剥離」が起こっているサインといえます。