中耳炎

中耳炎

中耳炎は耳の中耳の部分に炎症が起こる病気です。
耳の構造は大きく「外耳」「中耳」「内耳」に分けられます。中耳は、鼓膜とその奥にある鼓室と呼ばれる空洞から成り、鼓室は耳管という管で鼻の奥にあるのどとつながっています。

耳の構造

中耳炎には大きく分けて次の4つがあります。

①急性中耳炎
最もよく起こる中耳炎。中耳に急性炎症が起こる。約60~70パーセントの子どもが小学校入学までに一度はかかるといわれ、特に2歳未満の乳幼児に多く、繰り返しやすいのが特徴。
②滲出性(しんしゅつせい)中耳炎
耳管の機能が低下して、中耳に液体(滲出液)がたまる。6歳頃までの子どもに多く、10歳を超えると少なくなる。また老化によって、耳管の機能が衰えた高齢者にも起こりやすい。
③慢性中耳炎
急性中耳炎を繰り返したり、急性中耳炎が完全に治らなかったりして炎症が慢性化したもの。鼓膜が破れたまま穴が残ったり、耳だれ(耳の穴から出てくる分泌物)を繰り返したりする。
④真珠腫性(しんじゅしゅせい)中耳炎
鼓膜の一部が内側に陥入して炎症が起こり、陥入した鼓膜が増殖し真珠のような腫瘍をつくる。

急性中耳炎を繰り返し起こしたり、完治しなかったりして鼓膜が破れたままになり、耳だれが3カ月以上続くと、慢性中耳炎となります。急性中耳炎が長引くと滲出性中耳炎が起こりやすく、滲出性中耳炎や慢性中耳炎が完治しないと真珠腫性中耳炎に移行することがあります。

中耳炎が慢性化する流れ

中耳炎は、痛みなどの症状が和らいでも鼓膜や鼓室の状態が回復するまでには時間がかかります。自己判断で治療をやめると繰り返したり慢性化したりする場合があるため、医師の指導のもと治療を続けましょう。

監修プロフィール
名古屋市立大学付属 東部医療センター 特任教授 むらかみ・しんご 村上 信五 先生

医学博士。80年愛媛大学医学部附属病院、愛媛県立中央病院、89年米国スタンフォード大学研究員、92年愛媛大学医学部耳鼻咽喉科講師、98年より名古屋市立大学大学院医学研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学教授、2012年より同大学学長補佐、14年より名古屋市立大学病院副病院長を経て、18年より東部医療センター病院長、21年より現職

中耳炎について知る


中耳炎の原因

中耳炎は、かぜをきっかけに起こりやすい

中耳炎は、細菌やウイルスが中耳に感染することで引き起こされます。かぜはそのきっかけになりやすく、かぜで鼻やのどが炎症を起こした時に、細菌やウイルスが耳管を通って中耳に侵入します。そのためかぜにかかりやすい冬場は、中耳炎にかかりやすい季節といえます。


中耳炎は、2歳未満の乳幼児に起こりやすい

中耳炎は2歳未満の乳幼児がかかりやすく、繰り返しやすい病気です。その理由は以下の2つが考えられます。

  • 2歳児未満に多い理由①:耳管が未発達
     通常、耳管は閉じているが、子どもの耳管は鼓室につながる部分が開放ぎみ。また大人に比べて太く短いため、細菌やウイルスが中耳に入り込みやすい。
  • 2歳児未満に多い理由②:免疫力が弱い
     母親から受け継いだ免疫は、生後約半年で低下。そのため免疫力がまだ弱い2歳頃までの間は、かぜをひきやすく中耳炎にかかりやすい。

中耳炎を繰り返しやすい子どもの特徴

鼻の奥に炎症が起こる副鼻腔炎や、アデノイド肥大といった鼻やのどの病気がある子どもや、集団保育の子ども、兄弟がいる子どもは、中耳炎に繰り返しかかりやすい傾向があります。これらの子どもは、親からもらった免疫が切れ、まだ自分の免疫がつくられない頃に集団生活をしているため、かぜを互いにうつし合い中耳炎にもかかりやすいのです。子どもが中耳炎を頻繁に繰り返す場合は、一時的に集団生活から引き離すのも一案です。

中耳炎にかかりやすい子ども

中耳炎の症状

痛みや発熱、難聴などが起きるが、中耳炎の種類によって症状は異なる

中耳炎の主な症状は痛みや発熱、難聴などですが、種類と重症度によって異なります。

①急性中耳炎
急性炎症が起こって中耳に膿がたまるため、ズキズキする激しい耳の痛みや、耳だれ、37・5度以上の発熱が起こる。また難聴(耳の聞こえの悪さや、耳が詰まった感じなど)も起こる。
②滲出性(しんしゅつせい)中耳炎
中耳に液体がたまるため難聴が起こる。 耳の痛みや発熱は起こらないことが多いので、特に乳幼児がかかると気づきにくい。子どもに起こる難聴の一番の原因。
③慢性中耳炎
鼓膜が破れて穴が開いた状態になるため、耳だれ(耳の穴から出てくる分泌物)が繰り返し起こることがある。また難聴が続く。
④真珠腫性(しんじゅしゅせい)中耳炎
真珠腫が増殖して耳小骨が侵食されるため、耳が聞こえにくくなる。耳だれを伴うこともあるが進行して音を感知する蝸牛が壊されると難聴が悪化する。また平衡感覚をつかさどる三半規管が壊されるとめまいが起こり、顔面神経まで進展すると顔面麻痺が起こる。さらに頭蓋内に入ると髄膜炎を起こすこともある。

中耳炎の症状

乳幼児は症状がうまく伝えられないため、かぜの後の様子を見逃さないで

耳の痛みは急性中耳炎の主な症状ですが、乳幼児は症状をうまく訴えることができません。かぜに続き次のような様子が見られたら、急性中耳炎を疑って受診するようにしましょう。

  • 機嫌が悪い、夜泣きをする
  • 耳をよく触る
  • 首をしきりに振る
  • 粘りのある黄色い鼻水が続く
中耳炎が疑われる乳幼児のサイン

子ども自身は難聴に気づかないので、次のような行動に注意を

中耳炎で乳幼児や子どもに難聴が起こっても、子ども自身が気づくことはまれです。周囲の大人は次のような行動に注意し、気になることがあれば早めに医師に相談しましょう。

  • 呼びかけても振り向かない
  • 落ち着きがない
  • よく聞き返す
  • 言葉が少ない
  • テレビの音が大きい
  • 大きな声で話すようになる
子どもの難聴

中耳炎の対策

中耳炎の治療は、抗菌薬の処方や膿を出す処置をする

病院では、鼓膜の状態を見る「耳鏡検査」や、鼓膜の動き具合を調べる「ティンパノメトリー検査」などを行って診断します。そして、中耳炎の種類と症状に応じて次のような治療を行います。

①急性中耳炎
抗菌薬の内服や点耳薬の投与を1週間程度行い、発熱や痛みがある場合は解熱鎮痛薬を併用する。中耳にたまった膿が自然に出ない場合は、鼓膜を切開して膿を出す。
②滲出性(しんしゅつせい)中耳炎
滲出液が多く長引く場合は、鼓膜を切開して滲出液を出す処置や、チューブを鼓膜に差し込み、換気をよくする「鼓膜内チューブ留置手術」を行う。副鼻腔炎を合併している時は、マクロライド系抗菌薬を使用することもある。
③慢性中耳炎
耳だれが出る場合は、抗菌薬の内服や点耳薬を用いる。鼓膜に穴が開いて聴力が悪くなった場合、耳だれがなければ穴をふさぐ「鼓膜形成術」、耳だれを繰り返す場合は鼓室や耳小骨周囲の炎症性組織を清掃し、耳小骨の再建も含めた「鼓室形成術」を行う。
④真珠腫性(しんじゅしゅせい)中耳炎
真珠腫を取り除き、破壊された耳小骨などの組織を再建する「鼓室形成術」を行う。

中耳炎が起こったら、慢性化や再発を防ぐためにも、下イラストのようなことに注意し、医師の指示を守って完治するまで治療を行うことが大切です。

中耳炎の治療中の注意

中耳炎の予防法

中耳炎予防のためにかぜをひかないよう手洗いなどの習慣を

中耳炎はかぜに続いて起こりやすいため、できるだけかぜをひかないこと、ひいてしまったら、鼻水や咳を長引かせないことです。日頃から手洗いでかぜの原因となるウイルスを遠ざけると共に、栄養バランスのよい食事や運動で体の抵抗力を高めることが大切です。
子どもがかぜをひいて粘りのある黄色い鼻水が続く時は、中耳炎になっている可能性が高いと心得て、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
また、耳に水が入ると中耳炎になるとも思われがちですが、中耳炎の主な原因は、かぜをひいた時などに、細菌やウイルスが耳管から中耳に入ること。耳に水が入ることで、中耳炎になったり悪化したりすることはありません。ただし、慢性中耳炎で鼓膜に穴が開いている場合や、滲出性中耳炎の治療で鼓膜にチューブを入れている場合は、耳に水が入らないように注意が必要です。

中耳炎予防のためにできること

この記事はお役に立ちましたか?

今後最も読みたいコンテンツを教えてください。

ご回答ありがとうございました

健康情報サイト