筋肉痛は運動によって引き起こされる筋肉の痛みです。運動を行った時に、筋肉にその運動を長くし続けられるだけの耐久性がなかったり、普段よりも大きな負荷がかかったり、運動時の水分補給が不足したりすると、筋肉に痛みが生じて筋肉痛が起こってしまうのです。一般に運動した翌日以降に筋肉が痛む「遅発性筋痛」のことを「筋肉痛」といいます。
1988年藤田保健衛生大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室助手、同大学医学部漢方医学センター助教、WHO intern、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、北里大学薬学部非常勤講師、首都大学東京非常勤講師などを経験。2013年芝大門 いまづクリニック開設。北里大学薬学部非常勤教員。著書に『風邪予防、虚弱体質改善から始める 最強の免疫力』(ワニブックス)など。
筋肉は、筋線維と呼ばれる直径0.1mm前後の細胞が何重にも束ねられた構造になっています。普段使っていない筋肉をいきなり使ったり、同じ筋肉に大きな負荷をかけ続けたりすると筋線維にミクロの傷がつきます。すると傷ついた周囲に白血球やリンパ球などが集まり、傷ついた細胞を修復する「炎症反応」が起こります。この時、生産される痛みの原因物質が、知覚神経を刺激するので筋肉痛を感じてしまうのです。
運動すると発汗によって水分が失われ、血行が悪くなり筋肉組織が酸素不足になります。さらに、周りの細胞から放出された代謝産物が蓄積して、筋収縮・弛緩がうまくいかずに一部が凝って硬くなってしまい、他の筋肉に引っ張られて違和感や痛みが生じて筋肉痛が起こります。代謝産物の刺激もまた、痛みの原因となります。
運動を行う日は、筋肉痛予防のためにも朝食をしっかりと摂り、活動に必要なエネルギーを蓄えておきましょう。日本の典型的な朝ご飯は、エネルギーとなる炭水化物、筋肉の合成に必要なたんぱく質が豊富で理想的なメニューです。筋肉の働きをよくするためにはアミノ酸やカルシウム、リンといったミネラルを摂ることも重要。食べる量は腹八分目が目安。
脱水による循環不全を改善し、筋肉痛を予防するために、運動前は必ず水分を摂り、運動中も200ml程度をこまめにゆっくり飲むのが効果的だとされています。運動後は失った水分を取り戻す必要があるため、のどの渇きを感じていなくても、水分を摂りましょう。
筋肉が疲労、損傷すると血流が悪くなり、酸素や栄養を十分に運べなくなります。そこで、筋肉の疲労を感じたらストレッチやマッサージなどでやさしくもみほぐし、血液やリンパ液の流れを促します。入浴中やその後にマッサージをすることは特に有効です。
また、運動で損傷した筋肉を修復してくれる成長ホルモンは、睡眠中に分泌されるため、十分な睡眠をとるようにします。寝具などにも気を使い、快適で質のよい睡眠を心がけます。
筋肉痛の痛みがつらい場合には、炎症を抑え、痛みを和らげる成分が配合された、湿布薬やローション剤、スプレー剤など、外用鎮痛消炎薬を使用します。かぶれが心配な場合は、ローション剤やスプレー剤を使用するとよいでしょう。
日々使っている筋肉は、筋肉痛になりにくいもの。毎日行う「歩く」という動作も筋肉を鍛える運動として捉えるとよいでしょう。背筋を伸ばして、大股・速歩きで、体幹筋を意識することがポイントです。目安は厚生労働省が提唱している「1日8000歩」。15分以上続けて歩く「しっかり歩行」も取り入れて、運動効果をアップしましょう。
日常的に様々な筋肉を使っていれば、それぞれの部位で血行もよく、筋肉痛になったとしても早く回復します。また、毎日同じ運動をしていれば、自分の筋肉のコンディションが分かるようになります。そこでおすすめしたいのが、ラジオ体操第一。時間はわずか3分程度ですが、その中には全身のあらゆる筋肉を使う動きが組み込まれているので、自分の筋肉の状態のチェックをするのに最適です。
体幹を鍛える時に重要なのが、骨盤から背骨についている「多裂(たれつ)筋」、背骨と両脚をつなぐ「大腰(だいよう)筋」、コルセットのようにお腹を覆う「腹横(ふくおう)筋」などのローカル筋と呼ばれる筋肉です。ローカル筋を鍛えることで、背骨を真っすぐ保ち体幹を安定させ、姿勢の改善やけが予防にもつながります。