口内炎は、ウイルスや菌の感染によるものや外的刺激によるものなど様々な種類があり、痛みや不快感から、QOL(生活の質)が低下します。「舌がん」など、口内炎によく似た別の病気もあるため、状況に応じて病院を受診することも必要です。また、食生活の乱れや睡眠不足、ストレスや疲労が蓄積などで免疫力が低下している時に起こりやすいため、生活習慣を見直し、予防・改善を図りましょう。
※この記事は2014年5月のものです。
1980年鶴見大学歯学部卒業。同大学附属病院 口腔機能診療科。日本口腔外科学会認定口腔外科専門医・指導医。著書『チェアサイド・介護で役立つ口腔粘膜疾患アトラス』(クインテッセンス出版)など。
口内炎は、口内の粘膜に起こる炎症の総称。頬や唇の裏の粘膜、のど、舌など、口内のあらゆる粘膜にでき、痛みや不快感からQOL(生活の質)を低下させます。
ストレスや疲れがたまって抵抗力が低下した時などに起こりやすいので、口内炎ができた場合は生活習慣を見直すことが必要です。まずは下の表で当てはまるものがないかチェックしてみましょう。
口内炎は、外的刺激、ウイルスや菌の感染など、原因によって種類が異なります。症状としては、いずれも初期から痛みを伴います。主なものは次の通りです。
口内炎の多くは数日~10日ほどで自然に治りますが、口内炎と間違えやすい別の深刻な病気もあり、放置したために治療が遅れてしまうこともあります。間違えやすいのは、主に次の病気です。
口内炎と異なり、舌がんや白板症は自然に治ることはなく、徐々に大きくなることもあります。また、口内炎が度々でき、粘膜の組織の損傷と修復が繰り返されると、その部位ががん化することもあります。2週間以上経っても治らない、大きくなる、再発を繰り返す、といった場合は、口腔外科などを受診し、原因を確かめましょう。
口内炎の多くは、食生活の乱れや睡眠不足、疲労やストレスの蓄積によって、免疫力が低下している時にできます。口内炎ができた時は体の不調のサインと捉え、次のようなことを参考に生活習慣を見直しましょう。
その他、肉や魚を食べる時は骨を外す、口内の粘膜をかまないようゆっくり咀嚼するなどの工夫をする。
食生活の乱れが口内炎を引き起こすこともあります。バランスのとれた食事を心がけましょう。特に、ビタミンB群が口内炎の予防や改善に効果があるといわれています。また、粘膜の潤いを保つビタミンA、ウイルスや菌に対する免疫力を向上させるビタミンCも積極的に摂るようにしましょう。
口内炎を早く治すには、市販薬を用いることも有効です。患部に直接使用するタイプの市販薬には、パッチ(貼り薬)、軟膏、スプレーの3種類があります。部位や状態に合わせて、使いやすい物を選びましょう。パッチや軟膏は、使用する前に口内の水分をティッシュなどで軽く取り除くと、より付着力が高まります。
その他、次のような薬も有効です。
ウイルスや細菌感染ではない、アフタ性口内炎の症状を早く改善するには、炎症を抑える副腎皮質ホルモン剤(ステロイド性抗炎症薬)のパッチや軟膏が効果的です。最近では、病院での処方薬に使われる抗炎症成分トリアムシノロンアセトニドを配合した口内炎治療薬も市販されています。薬の説明書をよく読み、使用期間や使用量を守って上手に活用しましょう。
口内炎の痛みで食事をするのがつらくなったり、人と会話をすることもおっくうになったりすると、気持ちが落ち込み、QOLを低下させることがあります。また、口内炎の痛みによるストレスがさらなる口内炎を引き起こし、再発を繰り返すといった悪循環に陥ることも珍しくありません。
大多数の口内炎は深刻なものではありませんが、痛みで食事や飲み物がのどを通らない、口内炎が何度も繰り返しできるという場合は、病院を受診するとよいでしょう。
また、口内炎が2週間以上経っても自然に治らない、再発を繰り返す、患部が徐々に大きくなる、市販薬を5~6日用いても改善されない、などといった場合は、別の病気が疑われます。病院を受診して原因を明らかにし、適切な治療を受けるようにしましょう。
口内炎で受診する場合、口内の粘膜疾患を専門に診る口腔外科がおすすめです。口内炎の原因を突き止めたり、別の病気と口内炎の違いを見極めたりすることを得意とし、迅速な診断が可能です。他にも、歯科や耳鼻咽喉科、皮膚科、内科でも治療が受けられる場合があるので、事前に確認の上、受診するとよいでしょう。
病院では、主に次のような治療が行われます。
口内炎ができたら「免疫力」が低下しているサイン。まずは生活習慣や栄養バランスを見直しましょう。また、再発を繰り返したり、改善しない場合は別の病気が隠れていないかどうか、受診して確かめることも大切です。