口唇(こうしん)ヘルペスとは?原因・症状・対処法を知って正しく付き合おう

単純ヘルペスの中でも口唇ヘルペスはよく起こる疾患(しっかん)で、経験者は意外と多いもの。他人事と思わず内容をよく知っておきましょう。口唇ヘルペスの原因から対処法まで詳しくお伝えします。

口唇ヘルペスセルフチェック

こんな症状があれば、口唇ヘルペスの可能性があります。セルフチェックしてみましょう。

□ 唇やその周りの一部に小さな水ぶくれができることがある。

□ 唇やその周りにチクチク、ピリピリといった違和感を覚える時がある。

□ 水ぶくれができる前に、口の周りの一部が赤く腫(は)れる。

□ 同じ症状を年に1~2回のペースで繰り返している。

□ 強い日射しを浴びた後に水ぶくれができやすい。

□ かぜをひいた時や疲れ気味の時に水ぶくれができやすい。

口唇ヘルペスとは、唇周辺に発症するウイルス感染症です

ヘルペスとは、皮膚や粘膜に小さな水ぶくれが集まった状態のことで、一般にはヘルペスウイルスによる感染症のことを指します。一度ヘルペスウイルスに感染すると、症状が治まった後もウイルスは神経節の中に潜伏し、免疫力が弱まった時などに再発します。

人に感染するヘルペスウイルスは8種類あり、唇やその周辺に発症する口唇ヘルペスの原因となるのは単純ヘルペスウイルス1型です。単純ヘルペスウイルスの初感染時は体(主に粘膜)のどこにでも症状が出ますが、再発以降は種類によって出る場所が違います。

●1型……上半身に出る。口唇ヘルペス、角膜ヘルペス、カポジ水痘様発疹(すいとうようほっしん)症など。

●2型……下半身に出る。主に性器ヘルペス。

口唇ヘルペスの原因、単純ヘルペスが発症する場所

これらの他に、水ぼうそうや帯状疱疹(たいじょうほうしん)の原因となる水痘帯状疱疹ウイルス、生後半年~2歳の子どもの突発性発疹を引き起こすヒトヘルペスウイルス6型、7型などがあります。

●アトピー性皮膚炎とヘルペス
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が壊れてしまっている状態。炎症がある時はウイルスへの感染も起こしやすくなっています。アトピーの湿疹(しっしん)ができている皮膚にヘルペスウイルスが感染すると、水ぶくれが広がり、高熱やリンパ節の腫れなどを伴う「カポジ水痘様発疹症」を起こすこともあります。ヘルペスをアトピー性皮膚炎の湿疹の悪化だと思い込んでステロイド剤を使用してしまうとかえって悪化するので、自己判断せず、早期に受診をしましょう。

口唇ヘルペスの症状は様々。水ぶくれと共に、全身に症状が現れることも

口唇ヘルペスの症状は、初感染時と再発時、年齢などによっても症状は異なります。大人になってから初めて感染した場合、通常4~7日後に感染した場所が赤く腫れ、水ぶくれが多数現れます。感染部位付近のリンパ節の腫れや痛み、発熱、だるさ、頭痛など強い症状を伴うこともあり、治まるまでには2~4週間かかります。幼少期に感染した場合は、症状がなく気づかないほど軽度なケースがほとんどです。

口唇ヘルペス初感染の時の症状(頭痛・発熱・だるさ・水ぶくれ・リンパ節の腫れや痛み)

一方、再発時は次のような症状が現れます。

●前兆……チクチク、ピリピリしたかゆみやほてりが出る。

●前兆から半日以内……赤く腫れる。

●1~3日後……腫れた場所に水ぶくれができる。発熱など全身症状を伴うこともある。

●約1週間後……かさぶたになり、数日で自然に治る。

口唇ヘルペス再発の時の症状(チクチク・ピリピリしたり、かゆみやほてりの前兆から、赤く腫れ、水ぶくれができる。1週間後程度で、かさぶたになり、その後数日で自然に治る。)

一度感染すると一生のつき合いに

ウイルスは自身で繁殖することができないため、体内に入り込み、人の細胞を利用して増殖していきます。さらにヘルペスウイルスの場合は、初感染後に神経節の中に潜り込み、一生そこにすみつくという、他のウイルスにはない特性があります。

初感染時にヘルペスウイルスに対する免疫がつくられるため、普段はその活動が抑制され、症状は出ません。しかし、過労などにより体の免疫力が低下するとウイルスは再び活性化し、痛みや水ぶくれなどの症状を引き起こします。

口唇ヘルペス再発を引き起こす過程

このようにヘルペスは、たとえ症状がなくなったとしてもウイルス自体が消滅したわけではなく、一生つき合っていかなくてはならないものです。ただし、症状が出た時に適切な処置を行っていれば、再発の度に軽症化していきますので、上手につき合っていくことが大切です。

口唇ヘルペスは免疫力が低下した時に再発し、症状が現れます

口唇ヘルペスの再発頻度は、平均すると年に1~2回、主に体の免疫力が落ちた時に起こります。特にかぜをひいて熱が出た時に再発しやすいため、「かぜの華(はな)」や「熱の華」とも呼ばれています。

また口唇ヘルペスの場合は、強い紫外線を浴びることによって皮膚の免疫力が低下すると発症しやすくなるため、スキーや海水浴、登山などの後に現れることもよくあります。その他、次のことも再発のきっかけとなります。

●ストレスや疲労、睡眠不足……免疫力が低下し、ウイルスへの抵抗力が落ちる。

●月経前……排卵後、女性ホルモンの乱れにより体調が崩れ、ウイルスへの抵抗力が落ちる。

●薬剤の服用……抗がん剤、副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤、免疫抑制剤などにより抵抗力や免疫力が低下する。

口唇ヘルペス再発のきっかけ

口唇ヘルペスは、患部に直接、間接的に触れることで感染します

口唇ヘルペスをはじめ、単純ヘルペスウイルスは他人への感染力が非常に強く、全身どこからでも感染します。口唇ヘルペス発症時にできる水ぶくれの中では膨大な量のヘルペスウイルスが増殖していて、患部に直接触れる以外にもウイルスが付着した物を触ることでも感染します。

特に、皮膚に傷や湿疹などがあり、抵抗力が落ちている人が接触すると感染率は高くなります。ほとんどの場合、感染は症状が出ている時に起こります。主な感染のルートは次の通りです。

●水ぶくれに触れてウイルスが付着した手から、もしくはその手で触れた物から。

●発症している人が使用したコップやタオルから。

●キスをした時に触れた水ぶくれや唾液から。

口唇ヘルペスの感染ルートは、水ぶくれを触れた手やウイルスが付着した手で触れたもの、コップやタオル、キスなど。症状が出ている時に感染がおこる。

●幼少期の感染ルート
幼少期の感染のほとんどは、頬ずりやキスなど家族間によるもの。かつては1~4歳で多くが感染する病気で、感染してもほとんど症状が出ず、その後も潜伏したまま自覚症状がないこともありました。ところが最近では核家族化や衛生観念の発達などの影響で、幼少期の感染が減少し、大人になってから初感染して重症化するケースが増えています。

幼少期の口唇ヘルペスの感染ルート

●性器ヘルペスの感染ルート

性器ヘルペスは性行為などによって感染します。20~30代の女性に多く、口唇ヘルペスに感染した人とのオーラルセックスや、逆に性器ヘルペスの人とのオーラルセックスによって、性器やのどの粘膜に感染するケースもあります。性器ヘルペスは梅毒(ばいどく)やエイズなど、他の性感染症にもかかりやすくします。これらを防ぐためにも、必ずコンドームを使用しましょう。

性器ヘルペスの感染ルート

口角炎や接触性皮膚炎など、間違いやすい疾患に注意

唇周辺の赤みやかゆみ、水ぶくれといった症状は、他の感染症や皮膚疾患でもよく見られる症状です。特に間違いやすい疾患として、次のようなものが挙げられます。

●口角炎……口角の皮膚または粘膜にただれやひび割れ、潰瘍(かいよう)ができ、口を開けた時に痛む。細菌の感染やビタミンの欠乏、鉄欠乏性貧血などが原因。

●接触皮膚炎……かゆみを伴う赤みや水っぽいぶつぶつ。ひどい時は腫れが出る。化粧品や医薬品、洗剤、植物などとの接触時のアレルギー反応が原因。

●固定薬疹(やくしん)……抗生物質や消炎鎮痛(ちんつう)薬、総合感冒(かんぼう)薬など薬剤を服用するたびにアレルギー反応が起こり、同じ場所に赤みや水ぶくれができる。何度も繰り返すと次第に色素沈着が生じ、黒っぽいあざのようになる。

症状によって治療法は異なります。自己判断せずに、症状が出たら早めに皮膚科を受診しましょう。

病院では、抗ウイルス薬による治療を行います

一度感染したヘルペスウイルスを体から完全に取り除くことはできませんが、適切な治療により症状の悪化を抑え、再発時に軽症化することができます。適切な処置が早ければ早いほど、症状は軽く、回復も早まりますので、症状の兆しが現れたらすぐに皮膚科を受診するようにしましょう。

治療は、ヘルペスウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬が基本となり、症状によって次のように使い分けられます。

●外用薬…… 軟膏(なんこう)またはクリーム。皮膚に現れている症状がそれ以上広がらないようにする。ごく軽症で再発が頻繁ではない場合に処方される。

●内服薬……錠剤または顆粒。皮膚の症状だけでなく、神経節の細胞内にいるウイルスの増殖を抑える効果がある。5日間服用する。

●点滴……初感染で重症化している場合や免疫不全の基礎疾患がある場合、アトピー性皮膚炎の人でカポジ水痘様発疹症を合併している場合など。

口唇ヘルペスの薬物療法は、外用薬・内服薬・点滴の3種類。病院で処方される抗ウイルス薬は、アシクロビル、バラシクロビル塩酸塩ファムシクロビル、ビタラビン。

内服薬は、予兆が出た段階ですぐに服用することで回復が早まるだけでなく、神経節に戻るウイルス量を減らすことができるため、再発しにくくする効果もあります。

●再発性ヘルペスは、「PIT(患者の判断で始められる治療)」 も可能に
年に3回以上再発を繰り返す口唇ヘルペスには、PIT(Patient Initiated Therapy)と呼ばれる治療法が保険適用になっています。PITとは、あらかじめ再発に備えて病院で薬を処方してもらい、再発症状に気づいたら患者の判断ですぐに服用することで、1日だけ(2回の服用のみ)で終了する治療法です。

ただし、再発の初期症状を判断できるなど、保険の適用にはいくつかの条件があります。詳しくは医師に相談しましょう。

口唇ヘルペスの市販薬には、再発時に使用可能な外用薬があります

病院でも処方されている抗ウイルス薬のアシクロビルを配合した外用薬が、第1類医薬品として市販されています。ただし、過去に病院で口唇ヘルペスと診断されたことがあり、同じ症状である場合に限り使用が可能な再発治療薬です。

市販の外用薬にはクリームと軟膏タイプがあります。使用感や好みで選びましょう。唇やその周辺にピリピリ、チクチクとした再発の兆しが現れたらすぐに塗布(とふ)を開始することがポイントです。塗る頻度は、適量を1日3~5回程度。毎食後、就寝前などに使用します。塗布期間は10日間程度を目安に、かさぶたができるなど患部が乾燥したら使用を止めます。

口唇ヘルペス市販薬は、できるだけ早期の使用が効果的

症状が広い場合や、5日間使用しても症状が改善されない場合は使用を中止し、受診するようにしましょう。

●なぜ口唇ヘルペスの薬は第1類医薬品なの?
第1類医薬品は、薬剤師からの説明を受けた上で購入が可能な市販薬。口唇ヘルペスの症状は他の疾患と類似しているため、医師の診断が必要です。誤った使用を避けるために、過去に病院で口唇ヘルペスと診断されたことがあり、同じ症状であることなどを薬剤師が確認した上で販売を行います。再発の頻度や日常のケア、その他気になることなど、積極的に相談しましょう。

なぜ口唇ヘルペスの薬は第1類医薬品なの?

発症時には患部を清潔に保ち、他人への感染を予防

症状を悪化させると治りが遅れたり、痕(あと)が残りやすくなります。また、ウイルスが増殖することで再発の頻度も高まるので、発症時のケアが大切です。 症状が現れた時には、次のことに気をつけましょう。

●清潔に保つ……水ぶくれの部分をそっと水で洗い、清潔なタオルで水けを拭きとる。石けんを使用してもよいが、すすぎをしっかりする。

●水ぶくれをつぶさない……水ぶくれが破れると、細菌に感染しやすくなり、治りが遅れるのでこすらないようにする。

●早期治療……ピリピリ、チクチクとした予兆が現れたらすぐに治療を行う。

●感染を防ぐ……マスクを着用する。患部を触った後はすぐに手を洗う。タオルやグラスなどを他の人と共用しない。 

口唇ヘルペス発症時のケア方法

口唇ヘルペスが発症するということは、免疫力が低下している証拠。健康のバロメーターと捉え、十分に休養をとるよう、心がけましょう

ヘルペス発症は不調のサイン

●水ぶくれが破れた時の対処法は?
水ぶくれが破れてしまったら、消毒用アルコールなどは使用せずに軽く水で洗い流し、患部を清潔に保つようにします。破れた水ぶくれからたくさんのヘルペスウイルスが放出されるので、他人への感染に注意しましょう。

水ぶくれが破れた時の対処法は?

再発予防のために、規則正しい生活を心がけましょう

口唇ヘルペスは免疫力が落ちた時に再発します。再発を防ぐには、日頃から次のようなことに気をつけるようにしましょう。

●規則正しい生活を心がける。

●月経前は無理をしない。

●強い紫外線を避ける。

●かぜ気味の時は十分に休息をとり、熱を出さないようにする。

口唇ヘルペスは日ごろのケアで再発を防ぐ。規則正しい生活、月経前は無理をしない、紫外線を避ける、かぜひいたらよく休む。

これまでどのような状況で再発したかを思い起こし、その状況をできるだけ避けるようにすることが大切です。


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監修プロフィール
若松町こころとひふのクリニック院長 ひがき・ゆうこ 檜垣 祐子 先生

1982年東京女子医科大学卒業後、同大学皮膚科に入局。84年よりスイス・ジュネーブ大学皮膚科に留学。その後、東京女子医科大学皮膚科助教授、同附属女性生涯健康センター教授を経て、17年より現職。医学博士。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚科心身医学。著書に『皮膚科専門医が教える やってはいけないスキンケア』(草思社)など。

監修プロフィール
若松町こころとひふのクリニック院長 ひがき・ゆうこ 檜垣 祐子 先生

1982年東京女子医科大学卒業後、同大学皮膚科に入局。84年よりスイス・ジュネーブ大学皮膚科に留学。その後、東京女子医科大学皮膚科助教授、同附属女性生涯健康センター教授を経て、17年より現職。医学博士。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚科心身医学。著書に『皮膚科専門医が教える やってはいけないスキンケア』(草思社)など。

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