虫歯や歯周病を予防!家族みんなで口腔ケア

皆さんは普段、口の中の健康について考えていますか?年代別に気をつけたいトラブルは異なり、思春期までは虫歯に、思春期以降は歯周病にかかりやすくなってきます。歯周病菌は口の中だけではなく、生活習慣病など全身に悪影響を及ぼすため、毎日の歯磨きできちんと細菌の温床となるプラーク(歯垢)を取り除きましょう。

まずは口の役割と、唾液の大切な働きを知っておこう

口は体に必要な栄養を摂取するための、最初に通る消化器官であると同時に、顔の印象をも左右します。

口の役割は、「かむ」「味わう」「表情をつくる」

●唾液には様々な働きがある
 唾液には様々な成分が含まれており、消化作用の他、粘膜保護作用、粘膜修復作用、抗菌作用、再石灰化作用などの働きがあります。唾液は、耳の下辺りや下あご、舌の下の大きな唾液腺の他、唇の内側など口の中に無数にある小さな唾液腺から、1日に約1.5L分泌されています。

唾液の働き「消化作用」「粘膜保護作用」「粘膜修復作用」「再石灰化作用」「抗菌作用」

年代別に起こりやすい口の中のトラブルとは?

口内環境は、年代やライフスタイルと共に変化します。各年代によって起こりやすいトラブルは次の通りです。

●乳幼児期……乳歯は生後6カ月頃から生え始め、3歳頃に生えそろう。まだ歯質が弱いため虫歯になりやすく、進行も早い。保護者のケアの仕方が重要。

●学童期……6歳から12歳頃にかけて、乳歯から永久歯に生え替わる。生えたばかりの永久歯は弱く、中でも初期に生える4本の奥歯が最も弱い。さらにこの年代は歯茎が永久歯にかぶっていたり、歯並びががたついていたりするため磨き残しが多く、虫歯や歯肉炎になりやすい。

●思春期……ホルモンバランスの乱れにより、歯肉炎が起こりやすい。外食や間食の増加など生活の変化により、虫歯にもなりやすい。

●青年期……仕事や家事の忙しさ、不規則な生活などで、ケアを怠りがちになる。歯肉炎が増加し、歯周炎にもなりやすくなる。

●壮年期……ストレスなどで唾液の分泌量が減少しやすい。唾液が減ると口の中の細菌が増えて歯周炎が進行し、歯を失うリスクが高まる。

●老年期……歯周炎の進行により歯を失うと、かむ力が弱まる。唾液の分泌はかむことで促されるため、分泌量も減少。食べ物をうまくかむことや飲み込むことが困難になる(嚥下障害)。

年代別に気を付けたい口の中のトラブル

口のトラブル(1)「虫歯」 のメカニズム

口の中には、300~700種類もの細菌が生息しています。虫歯の原因菌もその中の1つです。

食事を摂ると、糖質と口の中の細菌によりプラーク(歯垢)がつくられ、歯の周りにつきます。プラークの中の細菌は、食事に含まれる糖質を材料に酸を放出。するとプラークは酸性になるため、付着している歯の表面のエナメル質からカルシウムとリン酸が溶け出します(脱灰)。この段階では、まだセルフケアにより再石灰化が可能な初期虫歯です。

しかし脱灰が進むとエナメル質が減って穴が開き、虫歯は一気に進行します。こうなると歯科での治療が必要です。

歯にプラークが付着→プラークが酸性に傾く→初期虫歯が発生→虫歯が進行

また、唾液に含まれるカルシウムやリン酸は、日常的に歯の表面のエナメル質を修復し、脱灰による虫歯の進行を防いでいます(再石灰化作用)。そのため、初期虫歯であれば、日頃のケアによって健康な歯に戻すことが可能です。

唾液に含まれるカルシウムやリン酸は、日常的に歯の表面のエナメル質を修復し、脱灰による虫歯の進行を防いでいます(再石灰化作用)

口のトラブル(2)「歯周病」 のメカニズム

歯周病は、歯周病菌が原因で歯茎など歯の周りに起こる病気です。歯肉炎や歯周炎などの歯周病は次のように進行します。

①歯と歯茎の間にプラークがたまり、その中の歯周病菌が炎症を起こし、歯茎が腫れる(歯肉炎)。
②炎症が広がると、歯と歯茎の間にすき間(歯周ポケット)ができ、そこにプラークがたまって炎症が悪化し、血や膿が出たり、歯を支える歯槽骨が溶け始めたりする(軽度の歯周炎)。
③歯槽骨の破壊が進むと歯がぐらつき、最終的には抜け落ちる(進行した歯周炎)。

歯周病の進行により現れる症状

●歯周病セルフチェック
 次のような症状があれば歯周病の可能性が!セルフチェックしてみましょう。

歯周病のセルフチェック項目

歯周病が全身に悪影響を及ぼすって本当?

歯茎には毛細血管が密集しています。歯周病になると、歯周病菌は毛細血管に移動し、血流に乗って全身に運ばれ、体内の各部位に次のような影響を及ぼすと考えられています。

●脳血管疾患……歯周病菌が脳の血管壁に付着し、動脈硬化を進める。血管が詰まると脳梗塞を、血管が詰まって破裂すると脳出血を引き起こす。

●心血管疾患……歯周病菌が心臓の血管壁に付着し、動脈硬化を進める。血管が詰まると心筋梗塞を引き起こす。また、歯周病菌が心臓の内膜に感染すると、心不全を引き起こす。

●糖尿病……歯周病菌により歯周病が進行すると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きを低下させる物質が増加。糖尿病の改善を妨げたり、糖尿病を引き起こしたりする。また、糖尿病の人は動脈硬化が進むため、歯茎の血行が滞り、歯周病になりやすく進行しやすい。歯周病は糖尿病の第6の合併症といわれる。

●早産・低体重児出産……歯周病の炎症により、子宮を収縮し陣痛を起こす物質が産生される。歯周病がある妊婦の早産リスクは、そうでない妊婦と比べて約7倍ともいわれる。

また、食べ物や飲み物、唾液などが誤って気管に入ると、歯周病菌が肺に入り肺炎を引き起こすこともあります。

歯周病菌が全身に及ぼす悪影響

●女性ホルモンと歯周病菌の関係とは?
 女性が歯肉炎や歯周炎といった歯周病になりやすい原因の1つにホルモンがあります。女性ホルモンには歯周病菌を増やしたり、歯周炎を悪化させたりする作用があることが分かってきました。そのため、女性ホルモンがつくられ始める思春期や大量に分泌される妊娠期には、歯周病が発症したり、進行しやすくなる傾向があります。特に妊娠期はつわりで歯磨きが十分にできないことがあるため、注意が必要です。

女性ホルモンと歯周病菌の関係

虫歯や歯周病予防のための「デンタルケア」の基本

虫歯や歯周病を予防するためには、これらの原因菌の温床となるプラークを、次のようなケア用品を使ってこまめに取り除くことです。子どもの頃から正しいケア習慣を身につけ、口の中を清潔に保ちましょう。

●歯ブラシ……自分の口の中の状態により使い分ける。健康な歯の人や歯肉炎の段階の人は、普通の硬さの歯ブラシを使用する。歯周炎の人は、歯周ポケットの中も磨けるよう、毛先が細く柔らかい物を選ぶ。

●デンタルフロス・歯間ブラシ……ブラシと併用することで、歯ブラシの毛が入りにくい歯間の汚れを除去できる。健康な歯の場合のみ使用可能。

●歯磨き剤……歯ブラシだけでは取り除けない頑固な汚れの一部を取る。口の中の菌を洗い流し、口臭を防いだりする効果もある。ビタミンCや生薬、殺菌剤など、歯周病の予防や改善に有効な成分が含まれる物もある。ミントなどの香味剤が入った物もある

デンタルケア用品の選び方

「歯磨きのコツ」を知り、磨き残しを防ごう

歯磨きのクセは、磨き残しにつながります。磨き残しがあると細菌が増殖し、虫歯や歯周病の原因となります。歯磨きのコツは次の通りです。

●磨く順番を決める……利き手側の歯の内側や奥歯は磨きにくく、磨き残しやすいため注意が必要。また、磨く順番が毎回違うと磨き残しやすい。そのため、利き手側の奥歯の内側から磨き始め、一筆書きのように磨くとよい。

●歯ブラシは歯に垂直に当てる……歯は1本1本形が異なるため、1本ずつ歯ブラシの当て方や持ち方を工夫して磨く。

●毛先を小刻みに動かす……小刻みに動かすことでプラークが歯ブラシの毛の間に入り、取れやすくなる。また、歯間や歯と歯茎の間に毛先が届きやすい。

●毎食後に磨く……プラークは、ついてから時間が経つほど取れにくくなる。食前ではなく食後、できれば間食の後も30分以内に磨く。就寝中は唾液の分泌量が減るため、口の中に細菌が増えやすい。夕食後は特に念入りに磨く。

磨き残しのない歯磨きのコツ

●「8020運動」は、50%以上の人が達成!
 「8020運動」とは、生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるようにとの願いを込めて、「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という国と日本歯科医師会が推進する運動です。毎日のブラッシングによる虫歯と歯周病予防をすすめています。80歳以上で20本の歯を有する人の割合は、運動開始前の1987年では7%でしたが、1999年には9.9%、2011年には25.1%、2016年には51.2%(※)と確実に達成率が上がってきました。

※厚生労働省「歯科疾患実態調査」より

2~3カ月に1回はプロの口腔ケアを

毎日歯磨きをしていてもプラークは少しずつたまり、約2日経つと歯石となります。歯石の表面はざらついているためさらにプラークがたまりやすく、細菌の増殖につながります。

歯石は歯磨きでは取り除くことができません。また、加齢と共にプラークや歯石はたまりやすくなります。磨き残しや虫歯などのチェックのためにも、理想は2~3カ月に1回、少なくとも半年に1回は歯科医院で歯石を除去しましょう。

定期的に歯科医院でプロのケアを

口のトラブル(3)「口臭」の原因と対策は?

健康な人で口臭がある場合、その約8割は舌の汚れ(舌苔)が原因です。

舌苔は食事をすることで洗い流されますが、口臭が気になる場合は、歯ブラシや舌ブラシ、水で湿らせたガーゼなどで優しくこすり取ります。舌の左右は取り残しやすく、それが口臭の原因となっていることがあるので、気をつけましょう。

ただし舌を強くこすったり、頻繁に行ったりすると、舌の表面にあるひだが伸びて食べかすなどが詰まりやすくなり、かえって口臭を招くことになります。多くても1日1回、朝食後のみに留めましょう。口臭がない人は特にケアをする必要はありません。

口臭の原因、舌の汚れ(舌苔)を取るポイント
歯ブラシや舌ブラシ、水で湿らせたガーゼで汚れを取る

●食事の後にすぐできる口臭対策
 ポリフェノールは、においのもとと結びついて口臭を抑える作用があります。食後の口臭対策として、ポリフェノールを含む緑茶や紅茶などを摂ることは理にかなっています。また、殺菌・消毒作用のあるドロップやトローチなどをなめることも有効です。

食後の口臭対策として、ポリフェノールを含む緑茶や紅茶などを摂る

コロナ禍のマスク着用で唾液の量が減っている!? 「ドライマウス」 にご用心

唾液の分泌量が減る主な原因は、かむ回数の減少やストレスによる自律神経の乱れ、薬の副作用などです。最近では高齢者だけでなく、軟らかい物を好む食生活の変化やストレスなどから、どの年代でも唾液の分泌量が少なく、ドライマウス(口腔乾燥症)に悩まされている人が増加傾向にあります。

さらにコロナ禍の今は、日常的なマスクの着用や会話の機会の減少で、口元の筋肉や舌をあまり動かさなくなり、唾液の分泌量も減りやすくなっています。また、マスクを着用すると口呼吸にもなりやすいため、ドライマウスに注意が必要です。

舌苔は食事をすることで洗い流されますが、口臭が気になる場合は、歯ブラシや舌ブラシ、水で湿らせたガーゼなどで優しくこすり取ります。舌の左右は取り残しやすく、それが口臭の原因となっていることがあるので、気をつけましょう。

ドライマウスの主な症状は次の通りです。

●口やのどの乾燥
●口の中の痛みや違和感
●口臭

また、ドライマウスを放置すると唾液のもつ抗菌作用が働かず、虫歯や歯周病を発症しやすくなります。よくかんで唾液の分泌を促す、鼻呼吸を心がけて蒸発を防ぐ、口の中を潤すなどを心がけるようにしましょう。

ドライマウスのセルフケア「唾液の分泌を促す」「唾液の蒸発を防ぐ」「口の中を潤す」

歯は一生のパートナーであり、口の健康は全身の健康をも左右します。家族みんなでデンタルケアを見直し、また、かかりつけの歯科医をもって定期的にケアとチェックを行っていきましょう。


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監修プロフィール
鶴見大学歯学部附属病院口腔機能診療科講師 なかがわ・よういち 中川 洋一 先生

1980年鶴見大学歯学部卒業後、同大学口腔外科学助手、講師。同大学附属病院専門外来(現口腔機能診療科)。日本口腔外科学会認定口腔外科専門医・指導医。著書『チェアサイド・介護で役立つ口腔粘膜疾患アトラス』(クインテッセンス出版)など。

監修プロフィール
鶴見大学歯学部附属病院口腔機能診療科講師 なかがわ・よういち 中川 洋一 先生

1980年鶴見大学歯学部卒業後、同大学口腔外科学助手、講師。同大学附属病院専門外来(現口腔機能診療科)。日本口腔外科学会認定口腔外科専門医・指導医。著書『チェアサイド・介護で役立つ口腔粘膜疾患アトラス』(クインテッセンス出版)など。

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