雨の日こそ、運動不足解消のチャンス?今こそ運動習慣を身につけよう

外出するのがおっくうになる梅雨の時期は、日常生活における運動量も減ってしまいがちです。そこで今回はそんな時期だからこそ、見直してほしい運動の重要性と、運動を継続させるためのコツをフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一先生にうかがいました。

監修プロフィール
PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー・米国スポーツ医学会認定運動生理学士 なかの・じぇーむず・しゅういち 中野ジェームズ修一 先生

数多くのトップアスリートやチームのトレーナーを歴任。2014年からは青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化も担当。ランニングなどのパフォーマンスアップや健康維持増進のための講演、執筆など多方面で活躍。東京神楽坂に自身が技術責任者を務める会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」がある。主な著書に『医師に運動しなさいと言われたら最初に読む本』(日経BP)などベストセラー多数。

運動がもたらす「メリット・効果」と、運動不足が引き起こす「リスク」とは?

運動がもたらす「メリット・効果」と、運動不足が引き起こす「リスク」

まず運動をするメリットと効果はたくさんありますが、その中でも大きなポイントとなるのは、「筋肉量が増える」ことです。

<筋肉量が増えると>
□消費カロリーがアップし、太りづらい体質になる
□免疫力がアップし、病気になりづらい健康的な体になる
□筋肉が姿勢の維持を助け、肩こり、腰痛の軽減・予防になる
□血行がよくなり、肌の水分量もアップすることで、肌つやがよくなる

他にも、運動をすることで心肺機能や抵抗力が向上するため、疲れにくく、病気にもかかりにくい体を維持できるようになります。

運動すると筋肉量が増えるということは、当然運動量が足りなければ、筋肉量が減少していきます。筋肉量の減少は、血液の流れや糖・脂質などのエネルギーを消費する基礎代謝の悪化、さらには筋力や筋肉の柔軟性の低下につながり、様々なリスクを引き起こします。

運動不足は疲れやすくなったり、肩こりや腰痛を引き起こす

<運動不足が引き起こすリスク>
□疲れやすくなる
□肩こりや腰痛を引き起こす
□基礎代謝が悪くなり、肥満になりやすくなる
□高血圧や脂質異常、がんや糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まる
□(高齢になるほど)転倒しやすくなり、けがのリスクが高まる

現代人の「運動不足」は‶便利過ぎる環境“が原因?

インターネットで買い物

最近はインターネットでなんでも買える世の中になりました。また、リモートワークを導入する企業も増えているので、家から一歩も外出せずに1日を過ごすという方も多いのではないでしょうか?世の中が便利になると同時に「体を動かさずに済む環境」になり、日常の運動量が低下することで筋肉量が減り、体力も衰えていってしまうのです。

暑さ寒さで運動効果と免疫力がアップ!

いざ運動をしよう!となっても「暑いから」「寒いから」とサボってしまった経験はありませんか?でもその状況下における運動は、実は体によい効果をもたらすのです。

例えば暑い時や寒い時、体は外気温に適応しようとして、急激に温度を下げたり、上げたりするために、通常より多くのエネルギーを消費します。これは、「環境に合わせて体温を一定にする」という体の機能によるもので、より高い運動効果が得られるということです。またこの機能は自律神経が司っているため、体が自らの体温の調整を頻繁に行うことで、自律神経が鍛えられ、免疫力の強化にもつながっていきます。

また、運動が苦手な方にとっては、雨の中のランニングやジム通いは、ハードルが高いという方も多いはず。次の項目からは、雨の日でも自宅で無理なくスタート・継続していける「筋トレ」「有酸素運動」「ストレッチ」をご紹介していきます。

自宅でできる筋トレ「片脚立ち上がり」

筋トレは、全身バランスよく行ったほうがよいですが、運動に苦手意識のある方なら、まず下半身の筋力を鍛えましょう。年齢を重ねると必ず衰えていくのが下半身の筋肉です。しかも脚の筋肉量が減ると基礎代謝が下がり、全身に脂肪が付きやすくなります。よくお腹周りが気になって腹筋運動を頑張る方がいますが、実は上半身の筋肉量は年齢を重ねてもさほど減りません。つまりお腹周りの脂肪を燃焼させるには、腹筋よりも、脚の筋肉を鍛えるほうがより効果的だということ。脚の筋肉を鍛えることは、全身に脂肪がつかないようにするために一番重要なトレーニングなのです。

下半身の筋力を鍛える「簡単な方法」とは?

日常にも取り入れやすくておすすめなのは、「片脚立ち上がり」の動きです。単純な動きですが、ちょうどよい強度で脚に負荷をかけることができます。

自宅でできる筋トレ、下半身の筋力を鍛える「片脚立ち上がり」

不安な人は転倒しないように支えのあるところで行うようにしましょう。 

<How To>
①座っている状態から片脚で立ち上がる。
②立った状態から片脚で座る。

<回数>
1日に20回×3セット

5回×3セットから始めて、徐々に数を増やしましょう。
連続して行えば、成長ホルモンの分泌量が増え、若返り効果も期待できます。

忙しくて時間が取れないという方は、まずは飲み物を取りに行く時やトイレに行く時などの「何かのついで」から、始めてみましょう。

自宅でできる有酸素運動「踏み台昇降」

有酸素運動は、筋トレのように短時間で強い力をかける運動とは異なり、筋肉への負荷が比較的軽く、長時間継続して行う運動です。長時間運動を続けるため、体脂肪の燃焼効果が高く、肥満の防止に役立ちます。また大量の酸素を取り入れながら運動をするため、呼吸循環器系の機能の向上、さらに最近では認知症や糖尿病予防の効果なども認められています。

消費カロリーはランニングとほぼ同レベル!

運動が苦手な方にぜひトライしてほしい有酸素運動は「踏み台昇降」です。踏み台昇降の大きなメリットは、ランニングと同じくらいのカロリーを消費できる上に「脚の筋肉量」も着実に増やすことができるという点です。

自宅でできる有酸素運動「踏み台昇降」

不安な人は転倒しないように支えのあるところで行うようにしましょう。

<How To>
①踏み台の前で足を肩幅より狭めに開き、背筋を伸ばす。
②片脚を踏み台にのせ、脚の付け根から持ち上げるように力強く踏み込む。
③もう片脚を踏み台にのせる。体が傾かないように、天板の上に真っすぐ立つ。
④最初に踏み台にのせた脚から降り、踏み台の後ろに、真っすぐ脚を下ろす。
⑤もう片方の脚も下ろし、①に戻る。30秒繰り返す。
※逆の脚でも30秒繰り返す。

<ここがポイント!>
□踏み台には、足の裏全体をつける
□足の裏や関節を痛めないように、室内シューズを履く
□低めの踏み台から始め、慣れてきたら徐々に高くする
□踏み足と逆の腕を大きく振ると、運動効果が高まる
□慣れてきたら、真っすぐ前を見て姿勢を意識する

<時間>1日15分(2~3回に分けて行ってもOK)
踏み台昇降は単純な動きなので、好きなドラマや映画を見ながら行うと飽きずに済むでしょう。長く続けるのがつらい場合は、踏み台の高さを低くして負荷を減らしてみましょう。

<おすすめのタイミング>
食後30分~1時間に行えば、太りづらい体質になります。今ある体脂肪を減らしたい(やせたい)という場合は、空腹時に行うほうが効果も高まります。

ストレッチは、運動効果を高めて若さもキープ!

年齢を重ねると筋肉が硬くなる感じがありますが、これは筋肉の長さが短くなることで筋肉が引っ張られている状態です。疲れやすくなるだけでなく、筋肉が硬くなって背中も丸くなり、「老化姿勢」になるため、年齢よりも老けて見えてしまいます。逆に普段から運動をして筋肉量をキープできれば、背筋や姿勢がしゃきっとして若々しい印象を与えることができるのです。ストレッチは、この短くなっていく筋肉を伸ばして長くしてあげる作業です。毎日ストレッチを行って筋肉を伸ばしてあげれば、脳が「伸ばした筋肉の長さ」を記憶し、その長さに筋肉を伸ばすように体に指示を送ります。すると細胞分裂が始まり、実際に筋肉の長さが伸びていくのです。

腰痛防止にもなるお尻のストレッチがおすすめ!

ストレッチは全身行うのが理想的ですが、時間がない場合はお尻だけでも毎日伸ばしてみましょう。お尻(大殿筋)は体の中でも大きな筋肉で、長時間座っていたり、動かない生活をしていたりすると、負担がかかり硬くなりがちです。お尻が硬くなると、骨盤が動きにくくなるため、腰痛になりやすくなります。腰を痛めると活動量が減る傾向があるので、お尻だけでもストレッチをしてみましょう。

お尻のストレッチで腰痛防止

<How To>
①いすを用意して腰掛ける。
②左の足首を右膝に置く。左脚の膝に左手、足首に右手を置く。背筋を伸ばす。
③上体を前傾させて左のお尻を伸ばす。呼吸をしながら20~30秒キープ。
④右も同様に行う。

<ベストタイミング>
筋肉の線維は体の温度が上昇している時に伸ばしやすいという性質があります。体が温まっていないうちに筋肉を伸ばそうとすると、痛めてしまうこともあるので、運動の後やお風呂上がりのタイミングに行うのがベストです。

たまにはサボってもOK!運動を続けるためのコツ

個人差はありますが、定期的に行っていた運動を2週間ほど休むと、心肺機能が運動する前の状態に戻ってしまいます。さらにその期間が4週間以上になると、筋肉量も落ち始めていきます。一定期間運動をしないと、運動効果は落ちてはいくのですが、また運動を再開すれば、「以前運動に費やした期間」よりも短い期間で、筋肉が回復できるという「マッスルメモリー」という機能が私たちには備わっています。よく「3日やらないと元に戻る」と聞きますが、全くそんなことはなく、2週間以内に運動を再開することができれば、多少サボっても大丈夫です。

「サボる」なら、計画的にサボろう!

人は一度サボると「サボってしまった」という失敗体験が、ネガティブな気持ちとなり、次の行動に移せなくなってしまうことがあります。その対策として効果的なのが、あらかじめ「サボる日」を決めることです。例えば「この日は帰宅が遅くなるから休もう」といったように、計画的にサボる日を決めます。そうすれば、同じ「サボる」でも、計画的に行動できているため、ネガティブになることもなく、常にポジティブな気持ちで運動を続けられるようになります。

継続に大切なのは、運動を「楽しめる環境」

運動することを継続する上で大切なのは、運動する時間を「楽しむ」ことです。運動を続けていくために効果的かつ簡単な方法をご紹介します。

①時間は自分の都合を優先
理論的には16~18時が効果の高い時間帯といわれていますが、それはトップアスリートの話です。一般の方にとって大切なのは、どの時間なら自分が楽に、無理なく続けていけるかということ。自分の生活リズムの中で取り入れやすい時間帯で行いましょう。

②一人ではやらない          

運動を続けるためには、誰かと一緒に運動をする

運動は一人で行うと、モチベーションを維持しづらく、継続率も低いといわれています。できれば、誰かと一緒に運動をスタートするのがおすすめです。また、最近は運動やランニングのプロセスや結果を共有できるアプリなどもありますから、そういったものを活用するのも一案です。

現在、世の中が便利になったこともあり、多くの方が運動不足の状態になっています。皆さんが感じる体力の衰えは、年齢のせいだけではなく、今の環境のせいであることも多いのです。この便利な環境の恩恵を受ける代わりに、運動不足を解消するためには、運動する時間をあえてつくる必要があります。WHOでは1週間に150分(週5日×30分)の運動を推奨しています。今回紹介した自宅でできる筋トレや有酸素運動は、単純な動きなので、好きなテレビや好きなアーティストのライブDVDを見ながらでも楽しく、簡単に行うことができます。あなたの「好き」を取り入れながら、運動を習慣化してみましょう。


この記事はお役に立ちましたか?

今後最も読みたいコンテンツを教えてください。

ご回答ありがとうございました

健康情報サイト