髪や頭皮に必要な紫外線対策とは

髪や頭皮の紫外線対策はしていますか?

肌同様、もしくはそれ以上に紫外線の影響を強く受けている髪や頭皮。ダメージヘアで憂鬱な秋を迎えないためには、夏にしっかり髪や頭皮の紫外線対策を行うことが大切です。紫外線が髪の成長を妨げるメカニズムや、紫外線を浴びた日に行いたいアフターケアも紹介します。

監修プロフィール
順天堂大学医学部・大学院医学研究科教授、順天堂東京江東高齢者医療センター皮膚科科長 うえき・りえ 植木 理恵 先生

順天堂大学医学部卒業。順天堂大学医学部附属順天堂医院皮膚科に入局し、ロンドン大学王立医科大学院ハマースミス病院皮膚科、越谷市立病院皮膚科医長などを経て現職。共著に『薄毛の科学』(日刊工業新聞社)がある。

髪や頭皮が日焼けするとどうなるの?

髪や頭皮が日焼けするとどうなるの?

頭頂部は顔と同じぐらい日光を浴びやすい部位ですが、顔や体と比べると髪や頭皮の紫外線対策は見落とされがち。無防備になりやすい髪や頭皮は、実は、顔よりも紫外線の影響を大きく受けているのです。

肌が老化する最大の原因は、紫外線による「光老化」だといわれています。紫外線には2種類あり、そのうち波長の長い「UV-A」は、真皮に到達するのでシワやたるみにつながりやすく、波長の短い「UV-B」は、表皮に炎症を起こすのでシミをつくる原因になります。顔の皮膚の延長線にある髪や頭皮も、同じように紫外線のダメージを受けています。

紫外線を浴び続けた髪は、主にUV-Bの影響によってパサつきや変色を引き起こします。紫外線により髪を守っている最外層のキューティクルがダメージを受け、髪の内部の水分保持力が低下して乾燥し、柔軟性を失い、枝毛・切れ毛の一因となります。さらに、メラニン色素を分解して髪を変色させたり、白髪の生成につながったりすることもあります。

一方、頭皮への影響が大きいのはUV-Aです。波長が長いUV-Aは、髪の成長にかかわる毛根の先にある毛球内の毛母細胞にまで達し、髪の正常な成長を妨げ、抜け毛や薄毛の一因になるとされています。また、頭皮が日焼けすると乾燥するだけでなく、体内に活性酸素を生じさせ、皮脂分泌が不安定になりがちです。夏は大量に汗をかくため頭皮の細菌叢(さいきんそう)が変化してかゆみを引き起こしやすく、紫外線と皮脂分泌という2つのダメージが重なって、髪や頭皮の健康をより一層脅かしてしまうのです。


紫外線による髪・頭皮への影響

波長の短いUV-Bは、髪のパサつきや変色を引き起こす。波長が長いUV-Aは、髪の成長にかかわる毛根の先にある毛球内の毛母細胞にまで達し、髪の正常な成長を妨げる一因になる。

紫外線による髪・頭皮への影響

髪や頭皮に必要な紫外線対策とは?日焼け止めはUV-Aを意識

髪や頭皮に必要な紫外線対策

降り注ぐ紫外線から髪や頭皮を守るには、直接紫外線を浴びないことが何よりも大事。外出時にはUVカット加工のされた帽子をかぶったり、日傘をさしたりと、紫外線対策をしましょう。汗をかいて帽子の中が蒸れると、かゆみを引き起こして頭皮トラブルにつながります。汗をかいたらこまめに拭き取るようにしましょう。

さらに、髪や頭皮を紫外線にさらさないよう、顔と同様に日焼け止めを活用した紫外線対策も行いましょう。髪には専用のスプレータイプの日焼け止めを使うのも一案。髪の生え際や分け目には顔用の日焼け止めを使ってもいいでしょう。ただし、頭皮に塗る日焼け止めには選び方にポイントが。頭皮への影響が特に大きいのはUV-Aなので、UV-A防止効果の高いPA値の「+」の数が多いタイプを選ぶようにしましょう。

意外に大事!紫外線を浴びてしまった髪や頭皮は、しっかりクールダウンを

紫外線を浴びてしまった髪や頭皮は、しっかりクールダウンを

やむを得ず髪や頭皮に長時間紫外線を浴びてしまった時は、アフターケアを心がけて。髪や頭皮が熱を帯びている状態の場合は、まず冷水や冷やしたタオルなどでクールダウンしましょう。紫外線のダメージを受けた髪はキューティクルが剥がれやすい状態になっています。洗髪時はゴシゴシと髪同士をこすり合わせたり、頭皮をこすったりせず、優しく洗うようにしましょう。髪を乾かす時は、はじめは熱風のドライヤーでキューティクルの凸凹を滑らかにし、最後に冷風を当ててキューティクルを引き締めるのがポイント。ドライヤーを当てる時は、キューティクルが開いてダメージを与えないよう髪の根元から毛先にそって風を当てるようにしましょう。

保湿ケアもしっかりと。髪にはトリートメントやオイルなどを、頭皮には専用の保湿剤を使用するとよいでしょう。なお、頭皮が日焼けすると数日後に表皮がむけてくることがあります。こうした場合は顔などの皮膚と同様、無理に剥がしたりせず、自然に剥けてくるのを待ちます。市販の頭皮用治療薬を使用するのも一案ですが、効果がない場合は皮膚科へ受診しましょう。

髪や頭皮が熱を帯びている状態の場合は、まず冷水や冷やしたタオルなどでクールダウンしましょう

髪や頭皮を紫外線から守るには、食事によるインナーケアが欠かせない

髪や頭皮の紫外線ダメージの予防・改善には、食事によるインナーケアが大切

髪や頭皮の紫外線ダメージの予防・改善には、スキンケアと同様に体の内側からのケアも大切。髪や頭皮の健康は栄養状態と深く結びついているので食事に意識を向けましょう。積極的に取り入れたい栄養素は次の通りです。

●タンパク質

髪の主成分である「ケラチン」はタンパク質の一種。ダメージ回復のためにはケラチンのもととなる肉や魚などのタンパク質をしっかり摂り、ケラチンの合成に必要な鉄や亜鉛、銅などのミネラルも併せて摂るようにしましょう。1日に摂取したいタンパク質の摂取量は、成人男性(18〜64歳)で65g、女性(18歳以上)で50gです(厚生労働省「日本人の食事摂取基準」2020年版より)。主な食品のタンパク質含有量は以下の通りです。肉や魚の他、卵やチーズ、牛乳、豆類などにもタンパク質は多く含まれています。


食品別・タンパク質含有量の目安

食品名

加工状態

含有量

(可食部100g当たり)

ささみ

24.6g

鶏むね肉(皮なし)

23.3g

鶏もも肉(皮付き)

17.3g

豚ロース(赤身)

22.9g

豚ヒレ(赤身)

22.2g

牛サーロイン(赤身)

17.1g

牛もも肉(赤身)

21.9g

出典:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

 

●ビタミンA・C・E、ポリフェノール類

日焼けは紫外線によって細胞が酸化した状態です。細胞が酸化して体内で「活性酸素」が過剰に発生すると、毛母細胞にも悪影響を与え、髪の正常な成長を妨げてしまいます。活性酸素の害から身を守り、傷ついた細胞の修復と再生を促すには、ビタミンA・C・Eやポリフェノール類などの抗酸化作用に優れた栄養素が有効。紫外線ダメージが大きい夏場は特に、意識して摂るようにしましょう。中でもビタミンEは「エイジングケアビタミン」と呼ばれ、抗酸化作用が高い栄養素といわれています。

ビタミンA・C・E、ポリフェノール類が多く含まれる食材一覧
  • ビタミンAが多く含まれる食材:豚レバー、鶏レバー、ウナギ、海藻類、バター、モロヘイヤ、人参など
  • ビタミンCが多く含まれる食材:ピーマン、ブロッコリー、いちご、みかん、キウイ、パセリなど 
  • ビタミンEが多く含まれる食材:サフラワー油などの植物油、アーモンド、かぼちゃ、小麦類、ブロッコリーなど
  • ポリフェノールが多く含まれる食材:緑茶、カカオ、ブルーベリー、大豆、パセリ、ブロッコリー、ぶどうなど

しっかり眠ることが髪や頭皮の健康につながる。頭皮マッサージも習慣に

しっかり眠ることが髪や頭皮の健康につながる

髪の健やかな成長には、睡眠時に分泌される「成長ホルモン」と「メラトニン」という2つのホルモンが大きく関係しているため、質のよい睡眠をとることが大切です。また睡眠は、頭皮の血行とかかわっている自律神経のバランスを整える働きもあります。

頭皮マッサージを習慣にするのもよいでしょう。頭皮マッサージは頭皮の血行を促し、毛根の新陳代謝を高めて健康な髪を生み出すのに有効です。洗髪の前後や入浴時などに組み込んで習慣化を目指しましょう。余裕があれば、湯船に浸かりながら蒸しタオルを頭にのせるなどし、頭皮を温めて血流をよくしてからマッサージを行うとより効果的です。マッサージをする時間がない時は、頭皮を温めるだけでもよいでしょう。なお、紫外線を浴びた直後のマッサージや、マッサージのし過ぎは頭皮にダメージを与える可能性があるため控えましょう。


① 首から肩にかけてゆっくりともみほぐす。

首から肩にかけてゆっくりともみほぐす。


② 後頭部を5本の指でつまむように下から上へもむ。

後頭部を5本の指でつまむように下から上へもむ。


③ 額の生え際から頭頂部へ円を描くようにしてもみほぐす。

額の生え際から頭頂部へ円を描くようにしてもみほぐす。


④ 両手を頭の左右に置き、頭皮をつまみ上げるように圧迫。

両手を頭の左右に置き、頭皮をつまみ上げるように圧迫。


⑤ 両手を頭に置き、頭皮をつまむように圧迫し、頭全体を10本の指でポンポンとたたく。

両手を頭に置き、頭皮をつまむように圧迫し、頭全体を10本の指でポンポンとたたく。


夏は紫外線対策をしっかりと行い、髪や頭皮を紫外線から守ることが大切。暑くて寝不足になったり、食が細くなったりする人が少なくありませんが、それは髪や頭皮にも悪影響を及ぼします。しっかり眠って、バランスのよい食事をきちんと摂る生活習慣を心がけましょう。


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