水虫は、カビの一種である白癬(はくせん)菌によって引き起こされる皮膚の感染症です。水虫は主に足に発症しますが、手やその他の体の部位にできることもあります。日本人の5人に1人、60歳以上では実に2人に1人が水虫だといわれています。
1988年藤田保健衛生大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室助手、同大学医学部漢方医学センター助教、WHO intern、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、北里大学薬学部非常勤講師、首都大学東京非常勤講師などを経験。2013年芝大門 いまづクリニック開設。藤田医科大学医学部名誉教授。著書に『風邪予防、虚弱体質改善から始める 最強の免疫力』(ワニブックス)など。
水虫の原因となる白癬菌は、皮膚に付着すると24時間以上かけて皮膚の一番表面にある「角質層」に侵入し、角質層にあるケラチンというタンパク質の一種を栄養源にして増殖します。白癬菌がすみついた角質層は新陳代謝によってはがれ落ち、それを媒介としてバスマットやスリッパ、畳から感染が広がっていきます。銭湯や温泉などの公共の施設だけでなく、家族に水虫の人がいる場合も感染に注意が必要です。
白癬菌に触れただけではすぐに水虫に感染するわけではありません。白癬菌が角質層の中に侵入するまでに24時間以上はかかります。白癬菌が角質層の中に入った場合、高温多湿(気温15℃以上、湿度70%以上)という環境になった時に増殖を始め水虫になります。水虫は梅雨から夏にかけて多発する感染症ですが、最近は住環境の変化やブーツの流行などにより、1年中、水虫に悩む人が増えています。
水虫は「かゆみを伴う症状」と思われがちですが、実は自覚症状がない水虫も多く、知らず知らずのうちに自分が感染源となっている場合もあります。次の症状が見られたら、水虫を疑いましょう。
水虫の症状は足裏以外にも股部や顔、胸、背中、腕、太もも、手のひらなどに現れることもあります。
ただれが起こっている場合や「角質増殖型」「爪白癬」が疑われる場合は皮膚科専門医を受診しましょう。それ以外の場合は、毎日石けんで足を洗うと共に市販の水虫薬を使用するとよいでしょう。市販されている水虫薬には様々な種類があります。以下を参考に使用感や症状に合わせて選ぶとよいでしょう。
使用のポイントは、皮膚が軟らかいうちに塗ると浸透しやすいので、お風呂上りに水気をよく拭き取り、清潔な状態で塗ります。また、白癬菌は症状が出ている部分だけでなく、周りにも潜在しているので、足裏全体に広範囲に塗りましょう。毎日忘れずに塗ることが大切です。
水虫の市販薬を2週間くらい使い続けても症状が改善されなかったり、かぶれが見られたりした場合は、他の疾患の可能性もあるので、皮膚科専門医の診察を受けましょう。
湿疹やかぶれ、皮膚がはがれる「角質剥離」など水虫と間違えやすい皮膚疾患もあるため、医療機関では皮膚の一部を削って顕微鏡検査を行い、水虫であることを確認してから治療を行います。主に抗真菌薬の外用薬を用いますが、「角質増殖型」や「爪白癬」、塗り薬にかぶれる人には内服薬を使用します。
通常の水虫であれば、外用薬の塗布開始後、数日~2週間以内に症状は治まります。しかし、この時点で白癬菌が全て死滅したわけではありません。ここで使用を止めてしまわずに、皮膚の組織が入れ替わるまで、最低1カ月は使用を続けることが大切です。
家庭内の床や畳、バスマットやスリッパ、旅館や銭湯などの脱衣場、素足で歩く公共施設など、水虫の原因となる白癬菌が付着する場所は実に様々。そして、人間の足は、1日にコップ1杯もの汗をかくので、1日履き続けた靴の中は水虫が好む湿った状態です。
白癬菌が足の裏に付いても感染するまでに1日以上はかかりますから、次のことを心がければ水虫を予防することができます。
・毎日入浴する。
・足の裏、指と指の間を1本1本石けんで優しく丁寧に洗う。
・ナイロンタオルや軽石でごしごしこすらない。傷をつけるとそこから白癬菌が侵入しやすくなる。
・入浴後は足の裏、指と指の間をタオルで十分に拭き、乾かす。
・スリッパやサンダルは共有しない。
・蒸れにくい靴を選ぶ。
・2足の靴を交互(1日おき)に履くなど、湿気の多い靴を履かない工夫をする。
・床や畳の掃除、バスマットの洗濯をこまめに行う。(家族に水虫の人がいる場合は、バスマット等の共用は避ける)
足の健康を保つため、また水虫の再発予防には、足の血行や足指の間の通気性をよくすることも大切です。そこでおすすめしたいのが足指体操です。毎日5分程度、お風呂上がりに「足じゃんけん」や「いも虫歩き」「タオルたぐり」を行うと、足の健康度がアップします。
水虫は男性だけの病気ではありません。水虫の悩みを抱える女性は増加傾向にあります。その原因は、ハイヒールやブーツ、ストッキングなどによるむれや、足の裏をごしごしこすることによる間違った角質ケアなど。通気性の悪い環境は、水虫にとって絶好の繁殖場所になり、傷ついた皮膚は水虫の感染を助長するので、気をつけましょう。