口臭は、体臭と同様に個人差はありますが、誰にでもあるものです。口臭には様々な原因がありますが、強い口臭は、体の不調のサインの1つにもなります。また、加齢により唾液の量や質が低下すると口臭がきつくなることもあります。口の中を清潔にし、唾液の力を高めるケアを習慣にしましょう。
1988年藤田保健衛生大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室助手、同大学医学部漢方医学センター助教、WHO intern、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、北里大学薬学部非常勤講師、首都大学東京非常勤講師などを経験。2013年芝大門 いまづクリニック開設。藤田医科大学医学部名誉教授。著書に『風邪予防、虚弱体質改善から始める 最強の免疫力』(ワニブックス)など。
口臭が起こりやすいのは、朝の起床直後、空腹時、緊張時などのタイミングです。唾液の分泌が少ないと細菌が増殖し、口から臭いが発生しやすくなります。これは「生理的口臭」と呼ばれるもので、食事や歯磨きをすることで唾液分泌量が増えてくれば自然と治まります。
また、臭いのきつい食べ物や酒、たばこ等が体内に入った時に、臭い成分が血液に取り込まれて肺に運ばれ、吐き出される息ににおいが移って口臭を感じることもあります。これも時間と共に治まるものです。
口の中の病気や口の中の状態が、口臭を起こしていることも少なくありません。口臭の原因には、主に歯周病、虫歯、舌苔(ぜったい:舌の表面に付着する白っぽい細菌などのかたまり)、唾液の減少、入れ歯の清掃不良などがあります。特に歯周病との関連は深く、歯と歯茎の間にすき間(歯周ポケット)ができると、そこに付着した細菌が悪臭成分を発生させ、口臭のもととなります。
口の中の病気以外では、鼻やのどの病気、呼吸器系の病気、消化器系の病気などが口臭と関連していると考えられていますが、口の中の原因が口臭全体の90%以上を占めているとされています。
唾液には、抗菌作用や消化作用、食べかすやプラーク(歯垢)を洗い流す自浄作用があります。唾液の量が低下するとこれらの働きも低下し、雑菌が口の中に繁殖。口臭のもとになる悪臭成分がつくられてしまうのです。
他にも、実際は口臭がないのに、自分には強い臭いがあると思い込んで、それがストレスとなり(心理的口臭症)、実際に口臭が起こることもあります。
口臭が気になる場合は、「臭う」という症状が現れているかどうか、舌の色でチェックしてみましょう。健康な人の舌はピンク色をしていますが、舌の表面が白っぽいと口臭が起こりやすくなります。この舌苔と呼ばれる白い汚れは、口の中のはがれた粘膜や細菌の死骸、食べかすなどが付着したものです。口の中が唾液で潤っていると、舌の表面の汚れを洗い流してくれますが、唾液が少ないと汚れが蓄積しやすくなり、口臭につながります。
ポリフェノールには、臭いのもとと結びついて口臭を抑える作用があります。食後の口臭対策として、ポリフェノールを含む緑茶や紅茶などを摂ることは理にかなっています。
また、殺菌・消毒作用があるトローチやドロップなどをなめることも有効です。なめることで唾液が分泌され、口内を洗い流すことでも口臭予防となります。職場なら机の引き出しの中に、外出先でも鞄やポーチの中に1つ入れておくだけで、何かと安心です。
口臭を指摘されたり自分で感じたりした場合は、まずは口の中をチェックしてみましょう。歯や歯茎が健康的な状態か、口内が清潔に保たれているかを確認します。
毎日のブラッシングをしっかり行うと共に、マウススプレーやマウスウォッシュなどの口腔ケア用品を使うとよいでしょう。舌苔があるようなら、舌磨き用の柔らかいブラシを使って優しくこすり取ります。舌の粘膜は繊細なので傷つけないよう、多くても1日1回朝食後のみに留めましょう。入れ歯を使用しているのであれば、洗浄剤などを使って念入りにケアします。
口臭の9割は口の中の状態が原因とされています。セルフケアでも改善できない場合は、歯周病、虫歯、唾液の減少(ドライマウス)などの可能性もあるので、まずは歯科医院を受診しましょう。定期的に3カ月に1回程度は歯科医院へ行って歯垢、歯石を取り除くと共に、口の中をチェックしてもらうことも大切です。
唾液の分泌量が低下すると口臭が発生しやすくなります。対策「口の中を清潔に保つ」でケアすると同時に、日頃から唾液の分泌を意識することも口臭の予防につながります。唾液の分泌を促す4つのポイントを紹介します。
唾液の分泌量が低下するドライマウスは病気としての認識が低く、「ただ口が乾くだけ」と軽視されがちですが、放置すると口臭がきつくなったり、虫歯や歯周病、口内炎などの口腔内疾患のリスクが高まったりします。その他、食べ物を飲み込めなくなる、味を感じなくなるなどQOL(生活の質)の低下にもつながります。女性は更年期を迎えると女性ホルモン分泌の低下によりドライマウスが増える傾向にありますが、最近では、慢性的なストレスを抱える若年層にも見られるようになってきました。乾きの症状が気になる場合は、まずは歯科医院またはドライマウス専門外来を受診しましょう。