不眠

不眠

不眠とは「寝つきが悪い」「眠りが浅く夜中に目が覚める」「早朝に目が覚める」「熟睡した感じがしない」など、満足な睡眠が得られない状態が続くことを指します。不眠によって日中に眠くなる、体調が優れない、集中できないなどの症状が現れ、生活に支障を来す場合は「不眠症」と診断されます。単に眠る時間が短い睡眠不足とは異なります。不眠は生活習慣病など様々な病気との関連も指摘されているので軽視せず、正しい対策を講じましょう。

監修プロフィール
芝大門 いまづクリニック院長 いまづ・よしひろ 今津嘉宏先生

1988年藤田保健衛生大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室助手、同大学医学部漢方医学センター助教、WHO intern、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、北里大学薬学部非常勤講師、首都大学東京非常勤講師などを経験。2013年芝大門 いまづクリニック開設。北里大学薬学部非常勤教員。著書に『風邪予防、虚弱体質改善から始める 最強の免疫力』(ワニブックス)など。

不眠について知る


不眠の原因

加齢やストレス、運動不足が不眠症の要因に

不眠の原因は様々ですが、高齢、体調不良、精神的ストレスがある、ストレス解消がうまくできない、運動不足、仕事に就いていないなどの状態にある人には、不眠になりやすい傾向があるといわれています。

また、「今夜こそは寝るぞ」あるいは「今夜も眠れないかも…」と思っていると、かえって緊張感や不安が大きくなってしまい、ますます眠れなくなります。

「不眠症」の要因としては、次のようなものが挙げられます。

  • 不眠症の原因①:生理的な要因
     夜間勤務などで明るい日中に寝なければいけない、騒音がある、暑さや寒さ、時差の影響など生活習慣や睡眠時の環境に問題があると不眠を招きやすい。
  • 不眠症の原因②:心理的な要因
     悩みがあったり、イライラしていたりと精神的なストレスが多い場合や、楽しい旅行の前に気持ちが高ぶって眠れない場合なども不眠の症状が出やすい。
  • 不眠症の原因③:身体的な要因
     高齢なほど睡眠の悩みは多くなる、女性ホルモンの揺らぎの影響で女性は月経前や更年期は不眠になりやすい。その他、咳や息苦しさ、かゆみ、頻尿などの身体的症状も不眠の原因に。
  • 不眠症の原因④:薬理学的な要因
     薬の副作用で不眠を招くことも。コーヒー・紅茶などに含まれるカフェイン、タバコに含まれるニコチンには覚醒作用があり安眠の妨げになる。
  • 不眠症の原因⑤:精神疾患による不眠
     うつ病や統合失調症、不安障害などの精神疾患は不眠を伴うことが多い。

生活習慣病が不眠症を招くことも

高血圧や糖尿病の患者さんは、不眠症になりやすいといわれています。高血圧の状態では、自律神経のうち交感神経が興奮しているため安眠が得られにくく、糖尿病では高血糖に伴い頻尿になる場合もあり、それが眠りを妨げてしまうためです。

一方で、卵が先かニワトリが先か、不眠が高血圧や糖尿病の発症リスクを高めるというデータもあります。寝ている間は自律神経のうち副交感神経が優位になり、血圧が下がるようになっていますが、眠れないことで血圧が高い状態が続いてしまうためです。また、血糖値を下げるインスリンの働きも低下させ、血糖コントロールが悪くなってしまいます。ちなみに、不眠の人は、そうでない人に比べて高血圧の発症リスクは約2倍、糖尿病は約2〜3倍といわれます。

高血圧、糖尿病

不眠の症状

不眠の症状は4つのタイプに分けられる

「なかなか寝つけない」だけではなく、「寝てもすぐに目が覚めてしまう」「朝早く目が覚めてしまう」あるいは、「熟睡感が得られない」のも不眠の症状です。次のように、4つのタイプに分類されます。

不眠のタイプ

入眠障害 寝つきが悪く、寝床に入ってもなかなか眠れずに、熟睡感が得られない。
中途覚醒 夜中に何度も目が覚め、一度起きるとなかなか寝つけなくなる。
早朝覚醒 朝早く目が覚めてしまう。高齢者に多く見られるタイプ。軽度のうつ病が原因になっている場合も。
熟眠障害 睡眠時間は足りているのにしっかり寝た気がしない。他のタイプと重なっていることが多い。

不眠の対策

不眠克服の第一歩は、眠りに対して気楽に構えること

「入眠障害」の人によく見られる傾向として、「8時間は眠らないといけない」「○時には寝ないといけない」という思いから、早めに寝床につき、なかなか眠れずに寝床で悶々としてしまうケースがあります。

「早朝覚醒」の人も、朝早く起きてしまう分、夜は早く寝ようとしがちです。

眠れないことに恐怖や不安をもってしまうと、ますます眠れなくなってしまうもの。「眠たくなったら寝ればいい」という気持ちでリラックスして過ごしましょう。眠れない時は思い切って寝室を出て本を読むなどし、眠くなってから布団に入るようにしましょう。


睡眠に適した環境づくりを

夜間の騒音や明るい光は安眠を妨げます。防音効果のあるカーテンなどを活用し、外部からの音や光を防ぐようにしましょう。また、高温多湿や寒過ぎる部屋もよくありません。冷暖房などを活用して、部屋を快適な温度・湿度に保ちましょう。冷暖房の温度設定は、夏場は25〜28℃、冬場は18〜22℃が目安です。湿度は50〜60%が理想です。

なお、スマートフォンやパソコンなどのブルーライトの刺激は、睡眠ホルモンのメラトニンの分泌量に影響を与え、睡眠の質を低下させてしまいます。就寝1時間前からは画面は見ないようにしましょう。


不眠には市販の睡眠改善薬を使うのも一案

薬局やドラッグストアなどで購入できる市販薬には、抗ヒスタミン剤を配合した睡眠改善薬などがあります。ジフェンヒドラミン塩酸塩はもともと鼻炎薬やかぜ薬に使われる成分で、服用すると眠気が起こることがあり、この眠気を利用したものです。

睡眠改善薬は寝つきが悪い、眠りが浅いなど一時的な不眠や軽度の不眠に効果を発揮します。ただし、慢性的に不眠に悩む人、薬を2〜3回服用しても改善しない場合は受診が必要です。


不眠の予防法

起きる時間を一定にし、体内時計を整えよう

眠くなることは意思ではなく、私たちの体にある体内時計によって決まります。体内時計は24〜25時間周期で時を刻んでいますが、朝、太陽の光を浴びること、食事を取ることでリセットされます。太陽の光や朝食によって1日の始まりを感知するのです。そこから14〜16時間後に睡眠ホルモンのメラトニンを分泌させて眠りの準備に入り、さらに1〜2時間後に自然に眠くなるというリズムを繰り返します。

例えば、朝7時に太陽光を浴びた場合、夜9〜11時に眠る準備ができ、12時ごろ眠りにつくことができます。夜、スムーズに眠るためには、朝、一定の時刻に起きて太陽の光を浴びる習慣をつけましょう。


「中途覚醒」の原因に。お酒やタバコ、カフェインは控えよう

少量のアルコールは緊張をほぐしたり、寝つきをよくしたりする効果があります。しかし、大量に飲んで寝るとアルコールが分解された後、中途覚醒につながりやすく、のどの筋肉が弛緩して気道を狭めるため、いびきもかきやすくなります。睡眠のリズムも乱れ、深い眠りが得られなくなります。

また、たばこに含まれるニコチンには覚醒作用があるので、不眠の原因となります。コーヒーや緑茶に含まれるカフェインには覚醒作用があるので、夕方以降は控えるようにしましょう。


お役立ちコラム

睡眠不足は昼寝でチャージ!

睡眠時間が足りないと感じたら、昼寝をするのがおすすめです。脳のリフレッシュや疲労軽減にもなり、昼寝をとることで仕事の集中力が高まるなどのよい効果も。ただし、昼寝は長くとり過ぎると夜の睡眠に影響を及ぼしてしまいます。昼寝は遅くとも15時までにとり、30分以上は眠らないことが大切です。そのためには、昼寝を摂る前にカフェインが入ったコーヒーや緑茶を飲んでからにすると、約30分後にカフェインによる覚醒作用が働き、スムーズに起きることができます。


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