子宮内膜症が進行すると、強い下腹部の痛みに悩まされます。月経が来るたび、鎮痛剤が手放せない、または鎮痛剤が効かないくらいの痛みや排便痛、性交痛があるという人もいます。また月経があるうちはずっと進行していく病気ゆえ、子宮内膜症による痛みが月経のたびに強くなっていくことも。こうした症状があるにもかかわらず、それを「誰にでもある月経痛だ」と我慢してしまった結果、進行しとりかえしがつかなくなるまで子宮内膜症に気づかない人が意外に多いのです。下記に当てはまる症状のある人は、早めに婦人科で診てもらいましょう。
月経時に、腰痛、頭痛、吐き気といった症状が現れることもあれば、ほとんど自覚症状がないこともあります。子宮内膜症はできる場所によって痛みを感じる場所や痛みの度合いが違いますので、症状がなければ子宮内膜症がない、とはいえません。
その他、卵管や膀胱表面、子宮周囲の腸表面なども子宮内膜症ができやすく、これらは全てがお互いに癒着を起こして、最後には全ての臓器がひとかたまりになる凍結骨盤(フローズンペルビス)になります。
痛みの他、進むと不妊になりやすいことも子宮内膜症の特徴です。例えば卵巣チョコレートのう腫の場合、進行すると卵巣が腫れ上がって破れたり、周囲の組織と癒着したり、卵管がふさがってしまったりして、妊娠しづらくなることがあります。ダグラス窩に発症した子宮内膜症は性交痛を招き、性生活の妨げとなります。また、腹膜にできた子宮内膜症が腹腔内の全ての臓器の動きを阻害し、炎症の持続によって組織を弱くし、排卵―受精―着床の一連の機能を落としてしまうので、妊娠しづらくなるのは自明のことなのです。
さらに、子宮内膜症の慢性的な炎症が血管を脆弱化させ、心筋梗塞の頻度を上げることも最近分かってきました。
産婦人科医・医学博士。1984年弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産婦人科学教室助手、東京都立墨東病院総合周産期センター産婦人科医長などを経て、2002年に「ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック」を開院。女性のための総合医療を実現するためにNPO法人「女性医療ネットワーク」を設立(現理事長)。様々な情報提供、啓発活動、政策提言などを行っている。