近視

近視

「近視」とは、近くの物が見えやすく、遠くの物は見えにくい状態です。目は角膜と水晶体で光を屈折させ、網膜(もうまく)の上にピントを合わせることで、物をはっきりと認識します。しかし、近視は網膜より手前でピントが合ってしまうため、遠くの景色や文字が見えにくくなります。

正常な目(角膜と水晶体で光を屈折させ、網膜(もうまく)の上にピントがあっている)と近視のイメージイラスト
近視の目(網膜より手前でピントが合っている)のイメージイラスト

近視は主に学齢期(小学生~高校生)に進行しやすいとされています。多くの場合、体の成長に伴って、眼球の奥行きである眼軸長(がんじくちょう)が伸びることが関係しています。ただし、強度の近視では成人後も進行することがあり、白内障などに伴う屈折変化によって、近視が進んだように感じる場合もあります。
近年では、スマートフォンやタブレットの普及により、近くを見る作業時間が幅広い世代で増加しています。近視が強くなると、将来的に網膜剥離(もうまくはくり)や緑内障、黄斑部(おうはんぶ)の異常など目の病気のリスクが高まることがあるため、早めに適切な対策を講じることが大切です。

監修プロフィール
久喜かわしま眼科 副院長 かわしま・もとこ 川島 素子 先生

1998年慶應義塾大学医学部卒業。同大学医学部研修医、東京都済生会向島病院、慶應義塾大学医学部助手を経て2012年より久喜かわしま眼科勤務、18年より現職。日本眼科学会専門医。専門は、角膜、ドライアイ、および眼表面を中心とした前眼部疾患。

近視について知る


近視の原因

近視の原因には「遺伝要因」と「環境要因」の両方が関与すると考えられています。

<遺伝要因>
近視の原因の一つは遺伝要因です。両親が近視の場合、子どもも近視になりやすい傾向があります。特に両親ともに近視の場合は、子どもの近視リスクが高くなることが知られています。ただし、遺伝要因だけで必ず近視になるわけではなく、日常生活の過ごし方(環境要因)も影響します。
幼少時から強い近視がみられる場合には、遺伝要因の関与が強いことがあります。また、「病的近視」と呼ばれる状態では、将来的に網膜や視神経の病気を合併しやすくなることもあるため、早めに専門医の診断を受けましょう。

<環境要因>
もう一つの近視の原因は、環境要因です。学童期以降に起きる一般的な近視は、眼球の奥行き(眼軸長)が長くなり過ぎることで、ピントが網膜より手前で合ってしまう状態です。視機能障害を伴わず眼鏡レンズなどで容易に矯正できるものを「単純近視」といい、子どもの近視の多くが単純近視で、環境の影響が大きいことが分かっています。
近視を引き起こす主な環境要因は以下の4つです。

●スマートフォンやタブレットなどの長時間使用
画面を近い距離で、長時間見続けると、目は常に近くにピントを合わせた状態になり、目に大きな負担がかかります。特に、画面の小さいスマートフォンやタブレット、携帯ゲーム機などは、無意識のうちに画面との距離が近くなりやすいため、目に負担がかかりやすいと考えられています。

無意識のうちにスマートフォンの画面と目の距離が近くなっている女子学生のイメージイラスト

●近距離作業(読書・勉強)の増加
読書や勉強などの近距離作業も同様に、近視の進行要因の1つです。

●屋外活動の不足
子どもの近視が増加する背景には、屋外活動の低下も大きく関与しています。日光を浴びると目の成長が調整され、近視リスクが低減することが明らかになっています。近年では、1日2時間以上の屋外活動が、近視進行抑制に有効である可能性が示唆されています。

屋外活動が減少しているイメージイラスト。近年では、1日2時間以上の屋外活動で日光を浴びることが、近視進行抑制に有効である可能性が示唆されている。

●姿勢や目の使い方、生活習慣
暗い場所での読書やスマートフォンの使用、姿勢の悪さ、睡眠不足といった生活習慣も、目に負担をかける要因になります。


近視の症状

近視の代表的な症状は「遠くが見えづらい」ことです。それにより、他の症状も現れます。

<近視の主な症状>
●遠くが見えにくくなる
以前に比べて遠くが見えにくくなるのは、近視の症状の代表的なサインです。学齢期では「学校の黒板の文字が見えにくくなった」という自覚症状があれば、近視を疑いましょう。

近視の症状の代表的なサインのひとつ、学校の黒板の文字が見えにくくなった男の子のイメージイラスト

●無意識に目を細めて見ようとする
「無意識に目を細めて見ようとする」「物に顔を近づけて見るようになる」、これらも近視の症状の一つです。無意識のうちにこうした行動をとっている時は、本人は気づかなくても、周囲が気づくきっかけになります。

●眼精疲労、頭痛
見えにくい状態を補おうとして目に負担がかかると、眼精疲労や頭痛といった症状を伴うこともあります。長時間、画面を見た後に目の奥が重く感じたり、ピントが合いにくくなったりするような違和感も、近視のサインの1つです。

眼精疲労、頭痛、肩こりのイメージイラスト

●強度近視は合併症が起きやすい
近視の眼球は、風船が少し縦に伸びたような状態に例えられます。眼球が前後方向に引き伸ばされることで、眼球の壁が薄くなり、網膜や視神経に負担がかかりやすくなります。そのため、将来的にさまざまな眼の病気を発症するリスクが高くなります。
一般的に、眼鏡やコンタクトレンズの度数がマイナス6ディオプター(-6D)を超える場合は「強度近視」に分類されます。強度近視では、緑内障や網膜剥離、黄斑部の異常などが起こりやすくなることが知られています。さらに、軽度の近視でも、まったく近視のない人と比べると、こうした病気のリスクがやや高くなることが報告されています。


近視の治療・対処法

近視を診断するための検査は主に、ランドルト環を使った視力検査と、オートレフラクトメーターを用いた屈折検査で行われます。

<近視の検査>
●ランドルト環
ランドルト環は、視力検査で最も一般的に使用される視標です。5m離れた場所から、 「C」に似た図形の切れ目の方向を、上下左右の4方向で答えます。どれくらいの大きさの輪の切れ目を見分けられるかで、視力を測定します。
1888年にフランスの眼科医ランドルトが考案したこの検査は、国際的な規格(ISO)として採用されています。ちなみに、視力「1.0」の定義は、5mで1.5mmの切れ目が見分けられることとされています。

ランドルト環で視力検査をする男性のイメージイラスト

●オートレフラクトメーター
気球の映像をのぞき込み、近視・遠視・乱視などの屈折異常や度合いを、自動的に測定する装置です。気球のイラストは遠くの風景として認識しやすく、目のピントが自然な状態になりやすくなります。

オートレフラクトメーターで視力検査をする男性のイメージイラスト

<近視の矯正法>
近視の主な矯正法には、「眼鏡」や「コンタクトレンズ」を用いて、光の入り方を調整し、網膜上の正しい位置に像が結ばれるようにする「屈折矯正」があります。他にも、成人向けのレーシックや眼内コンタクトレンズ(ICL)などの屈折矯正手術、軽度から中程度の近視に対して進行抑制効果が期待されるオルソケラトロジー、学童期の子どもの近視の進行を抑える低濃度アトロピン点眼など、近年は治療の選択肢の幅が大きく広がっています。

●視力矯正
・眼鏡
眼鏡のレンズは大きく分けて“凹レンズ”と“凸レンズ”の2種類があります。近視で使用するのは凹レンズです。凹レンズで光の屈折を調整し、見えにくさを改善します。取り扱いやすく、子どもでも安全に装用することができる点がメリットです。

・コンタクトレンズ
レンズを目の表面に装着して屈折力を調整します。コンタクトレンズは目に貼りついているため、視界が広く、激しい運動をしても外れにくいことが利点です。一方、費用面や取り扱いには慣れが必要。目に直接装着するため、使い方によっては目のトラブルの原因になることもあります。

眼鏡もコンタクトレンズも、眼科を必ず受診し、専門医による処方箋を元につくることが大切です。また、30歳以降は徐々に目の調節力が低下するため、定期的に眼科で検査し、自分に合った度数に調節するようにしましょう。

眼科を必ず受診するイメージイラスト

●外科的治療
成人の場合、屈折矯正手術によって視力を回復させる選択肢もあります。

・LASIK(レーシック)
レーシックとは、眼鏡やコンタクトレンズの代わりに角膜を削って形を変えることで、目の屈折力を調整する手術です。18歳以上が行うことができ、手術時間は短く、回復は早いとされています。
しかし、一度角膜を削ると元には戻せません。また、近視が強い人ほど、角膜を削る量も増えるため、近視の戻りが生じるリスクがあるとされています。他にも、手術後に光がにじむ、眩しさを感じやすくなる、ドライアイが生じやすくなる場合があります。さらには、眼圧が低く測定されることがあるため、緑内障の評価に注意が必要になります。このため、レーシック手術を受けたことを医師に伝えることが大切です。
レーシックは健康保険が適用されない自由診療です。

レーシックの手術は、点眼麻酔後に、角膜フラップを作成、エキシマレーザーを照射し、フラップを戻すという手順で行われる。レーザーで角膜を削り、屈折力を調整し視力を矯正する。

・ICL(眼内コンタクトレンズ)
ICL(Implantable Contact Lens「眼内コンタクトレンズ」)は、眼内に特殊なレンズを挿入し、視力を矯正する手術です。18歳以上の人が行うことができます。
レーシックができない強度近視の人も手術が可能です。角膜を削らず、万が一の場合、ICLを取り出して元に戻せる点はICLの特徴のひとつです。ただし、ICLにも適応条件が定められており、誰もが受けられるわけではありません。既に老眼が始まっている人は、ある程度時期を待って多焦点眼内レンズを用いた白内障手術を受けるという選択肢もあります。
術後、まれに白内障や緑内障などの合併症を起こすこともあります。ICLも健康保険が適用されない自由診療です。

ICL(眼内コンタクトレンズ)の手術は、点眼麻酔後、角膜の際を約3㎜切開し、切開部分からICLを挿入、レンズと虹彩を水晶体の間に固定するという手順で行われる。虹彩の裏側にコンタクトレンズを挿入することで視力を矯正する。

●近視の進行を防ぐ治療
一度伸びてしまった眼軸は基本的に元には戻せませんが、伸びの進行を遅らせる治療法があります。近年では、近視ができるだけ進まないようにする研究が進み、新たな治療法も続々と開発されてきています。近視が進行する学齢期に行うと、より効果が期待できます。

・低濃度アトロピン点眼
低濃度アトロピン点眼薬には、眼軸長の伸びを抑え、近視の進行を抑制する効果があることが報告されています。低濃度アトロピン点眼薬は、学童期の子どもを対象とした近視進行抑制治療として、近年、国内初の子ども用点眼薬が承認・発売されています。以前は健康保険が適用されない自由診療でしたが、2026年6月からは診療は保険適用、点眼薬のみ自費となりました。
ただし、近視の進行を完全に抑えられるものではありません。また、既に進行した近視の症状を回復するものではないことも、理解しておきましょう。

・オルソケラトロジー
「角膜(ケラト)矯正(オルソ)」を意味する治療法。特殊なコンタクトレンズ(ナイトレンズ)を就寝中に装用し、眠っている間に角膜の形を一時的に変えることで、日中は裸眼でも視力が改善されます。元々はサーフィンのように裸眼でスポーツをしたい人などの大人に向けた治療法でしたが、近年は大人に比べて角膜が柔軟な小中学生に対して、近視の進行抑制に有効な方法として用いられることが増えています。日中は裸眼で過ごせるメリットもあり、子どもの間で普及が進んでいる治療法です。
オルソケラトロジーは外科的な手術ではないため、治療をやめれば視力は元に戻ります。また、ある程度の睡眠時間を確保しなければ、期待した効果が得られないことや毎日のメンテナンスが必要なことも知っておきましょう。
オルソケラトロジーは軽度から中程度の近視に向いていますが、強度の近視や強い乱視がある場合は適応になりません。眼科医の診断を受けて、治療が可能かどうかを確認しましょう。なお、健康保険が適用されない自由診療です。

オルソケラトロジーは、就寝中にレンズを装用して、角膜の形を矯正する治療法

近視治療は日進月歩です。今回紹介した治療法以外にも、次のような治療法もあります。
・レッドライトセラピー
デバイスをのぞきこみ、レッドライト(赤色光)を見ることで眼軸長の伸びを緩やかにして近視の進行を抑制する
・バイオレットライト眼鏡
目に必要といわれる光、バイオレットライトを取り込み、近視の進行を抑える
・近視抑制眼鏡
・近視抑制コンタクトレンズ
など、次々に新しい治療法の開発が進められてきています。まさにこれから選択肢が大きく広がっていくところですので、眼科の専門医などに相談し、新しい情報を得るように心がけるとよいでしょう。


近視の予防法

近視を完全に防ぐことは難しいですが、近視の進行には環境要因も大きく影響するため、以下のような工夫を日常生活に加えてみましょう。

●画面との距離を保つ
近視を予防するために、スマートフォンやパソコンを使用する際は、画面との距離を30cm以上保ちましょう。手持ちタイプのゲーム機は目との距離が近く、まばたきが減って目が疲れやすくなります。また、集中するあまり、目を休める時間がなくなりがちに。同じゲームをするなら、ゲーム機をテレビなどの大きな画面に接続して映し、1m以上離れた場所から行うようにすると、近視予防の対策になります。

●こまめな休憩
また、近視の予防にはこまめな休憩も有効です。デジタル機器を20分使用するごとに、20秒間、20フィート(約6m以上)離れた場所を見る「20-20-20ルール」を覚えておきましょう。目を休める目安になります。

近視の予防に、20分デジタル機器を見たら20フィート(約6m以上)離れた場所を20秒見る「20-20-20ルール」のイメージイラスト

●子どもは1日2時間の屋外活動が推奨されている
子どもの近視の予防には、屋外で過ごす時間を意識的に増やすことも重要です。日光のもとで活動することで、近視の進行を抑える効果が期待されているからです。特に子どもは、1日2時間程度の外遊びが推奨されています。現代の子どもは外遊びの時間が少なくなりがちですが、できるだけ屋外活動を増やしましょう。

屋外活動のイメージイラスト

●正しい姿勢・明るい環境での作業
近視を予防するには、正しい姿勢で読む・書くことが大切です。猫背になると、目と机などの対象との距離が近づくので、目に負担がかかります。勉強やデスクワークの時は、室内の照明にプラスして、机の上にライトスタンドを置き、十分な明るさの環境で作業しましょう。

●定期的な視力チェック
特に近視が進行しやすい子どもは、定期的に視力をチェックし、変化に早く気づくことも大切です。学齢期の近視は早めに対処することで、その後の対策も取りやすくなります。
また、近視が強い40歳以上の人は、自覚症状がなくても定期的に緑内障などの眼のチェックをするようにしましょう。


近視Q&A

Q. 近眼とは近視と同じ意味ですか?

A. 同じ意味です。遠くのものがはっきり見えない状態です

近眼も近視も、遠くのものがはっきり見えない状態のことです。同じ意味で使用されますが、近視の定義に当てはまる状態の正式名は、学術的にも一般的にも「近視」です。

Q. 近視と遠視は何が違いますか?

A. 近視は遠くが見えにくい状態。遠視は、近くも遠くも見えにくい状態です

近視は、ピント調節のための筋肉(毛様体筋)が緊張していない状態(調節力を働かせていない状態)で、網膜の手前でピント(焦点)が合います。近いものは見えやすく、遠くのものは見えにくい状態です。これに対して遠視は、毛様体筋が緊張していない状態で、網膜の奥にピントが合っており、「近くも遠くも見えにくい」状態です。

遠視の目(眼軸長が短く網膜の奥にピントが合っている)のイメージイラスト

Q. 遠視とは何ですか?

A. 遠視は眼軸長が短いことが原因で起こる、近くも遠くも見えにくい状態のこと

遠視は、目の奥行き(眼軸長)が短いことが原因で起こります。遠視は、「遠くの物は見えやすく、近くの物は見えにくい」と思われがちですが、実は調節力を働かせない状態では、「近くも遠くも見えにくい」状態だと言えます。少し調節力を使えば遠くは見えるため、自分では遠くがよく見えると思ってしまう傾向があります。
遠視は常にピント調節をしていないとはっきり見えないため、眼精疲労を起こしやすくなります。また、加齢によってピント調節力が衰えると、遠視の人は早くから老眼を自覚しやすくなるのも特徴です。

Q. 近視と乱視は何が違いますか?

A. 近視は網膜の手前でピントが合い、乱視は複数の場所でピントが合ってしまう状態です

近視は調節力を働かせていない状態だと、網膜の手前でピント(焦点)が合うのに対して、乱視はピントが複数の場所で合ってしまう状態です。
乱視の原因は角膜や水晶体が歪んでいること。歪みによって、光が網膜上の1点に集まらず、視界がぼやけたり、二重・三重にダブって見えたり、夜間の街灯や車のヘッドライトなどの光を眩しく感じてしまいます。
距離にかかわらず常にピントが合いにくいので、眼精疲労も起こりやすくなります。

乱視の目(角膜や水晶体がゆがんでいて、複数の場所でピントが合う)のイメージイラスト

Q. 遠くが見えないのは近視が原因ですか?

A. 他に原因が隠れている可能性もあります

近視が原因のことが多いですが、他に病気が隠れている可能性もあります。自己判断せず、必ず眼科で調べることが大切です。

Q. スマホの見過ぎで近視は進みますか?

A. 目に負担をかけ、近視が進む原因になります

画面の小さいスマートフォンは、無意識のうちに画面との距離が近くなりがちです。そのため、目は常に近くにピントを合わせた状態になります。目に大きな負担がかかり、近視が進む原因の1つになると考えられます。

Q. 近視をよくする方法、いわゆる「視力回復」の方法はありますか?

A. 視力が恒久的に回復するエビデンスは、残念ながらありません

視力回復トレーニングなどで視力が回復するというエビデンスは、残念ながら現時点ではありません。子どもの場合、進行抑制効果はあっても、回復ではないことを理解しておきましょう。大人も、疲れ目や眼精疲労による一時的な視力低下が改善することはあっても、眼鏡が不要になるなど、恒久的な回復は見込めません。


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