疲れやすい、肩がこる、頭が重いなど、鉄分不足の自覚症状が出ていませんか? 鉄欠乏性貧血が続くと、舌の表面がツルツルになって食べ物がしみたり、爪がスプーン状になったり、物が飲み込みにくくなるなどの症状が現れることがあります。不快な症状が続くときは、専門医に受診することをおすすめします。
女性の場合は、思春期に鉄分の必要量が増大したり、月経によって鉄分不足がおこったり、妊娠・出産・授乳で胎児や赤ちゃんに必要な鉄分を与えるために鉄分が不足したりすることがあります。また、年をとると赤血球を作るスピードが遅くなるので貧血になりがちです。日ごろの食生活で、鉄分を補給することを心がけましょう。
鉄欠乏性貧血の予防として、食事では、肉や魚などの動物性食品に含まれるヘム鉄と、緑黄色野菜や豆類などに多く含まれる吸収率のよくない非ヘム鉄を組み合わせて摂るようにしましょう。ビタミンCやタンパク質といっしょに摂ると鉄分の吸収が高まります。ビタミンCは果物だけでなく、カリフラワー、ブロッコリーなどの野菜にも豊富に含まれていますから、それらを鉄分の多い食品といっしょに調理するのもよいでしょう。さらに、濃い緑の野菜なら葉酸という血をつくるビタミンも含み、鉄分の働きを助けます。
また見直していただきたいのが、鉄製のフライパンや鍋を調理に使うこと。いつもの料理をこれらで調理するだけで鉄分が溶け出し、知らず知らずのうちに補給できます。
適度な運動も鉄欠乏性貧血や冷え性の改善に効果があります。ウォーキングや有酸素運動など、長続きできるものを習慣づけましょう。ただし、貧血がひどいときに運動をすると、心臓に負担がかかるので避けるようにしてください。
自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器病学会認定専門医、日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医、日本抗加齢医学会専門医、米国消化器病学会国際会員。『新しい腸の教科書』(池田書店)他著書多数。