抜け毛が気になり始めたら、積極的な抜け毛ケアで対策を始めよう

この秋から始める抜け毛ケア

秋は夏場の強い紫外線によって、毛髪にダメージが現れやすくなる時期です。抜け毛が気になり始めたら、体の内側と外側から、積極的な抜け毛ケアを始めましょう。髪の健康と生活習慣は密接な関係にあります。加齢による生理的な要因や男性ホルモンが影響する壮年性脱毛症などの他に、誤った生活習慣によっても抜け毛の量は増えます。毛髪の生え変わりのメカニズムから、髪によいライフスタイルまで解説します。

監修プロフィール
西新宿サテライトクリニック 理事長・院長 つぼい・りょうじ 坪井 良治 先生

1980年防衛医科大学校卒業、87年順天堂大学大学院(皮膚科学)修了。ニューヨーク大学医学部研究員(細胞生物学)、順天堂大学医学部皮膚科助教授、東京医科大学皮膚科主任教授、東京医科大学病院病院長(兼務)を経て現職。壮年性脱毛症、円形脱毛症など毛髪のトラブルをはじめ、水虫、爪のトラブル、スキンケア、床ずれ、アトピー性皮膚炎、皮膚がんなど専門は幅広い。

毛髪の構造と、髪の生え変わるメカニズムとは?

毛髪は、頭皮内を「毛根」、頭皮から出ている部分を「毛幹」といいます。毛根を包む「毛包」は毛を産生する役割を担い、その根っこにある「毛球」の奥には「毛乳頭」があります。この毛乳頭の毛細血管から「毛母細胞」に十分に栄養が行きわたると、毛母細胞の細胞分裂が活発化し、髪の成長が促進されます。

毛髪の構造

髪の寿命は、2~6年。その間に一定のヘアサイクルがあり、次のような過程を経て自然に抜けていきます。

健康な髪の寿命は2~6年

●初期成長期、成長期……2~6年。古い毛が抜け、新しい毛が生える。その後、太く長く成長する。
●退行期……2~3週間。毛根が退縮する。
●休止期……3~4カ月間。成長が止まっている期間。

正常なヘアサイクル

このように、1つの毛穴で成長期、退行期、休止期のサイクルを繰り返し、毛髪は何度も生まれ変わります。1日に伸びる長さは0.3~0.35ミリメートル、1カ月で1センチメートル程度です。

髪が1カ月に伸びる長さは約1センチ

毛を産生する役割を担う毛包(もうほう)は胎児の頃に完成するため、髪の本数は生まれた時に決まっています。個人差はありますが、日本人の髪の本数の平均は約10万本。1日に自然と抜ける毛は70~80本程度といわれ、100本を超えなければ問題ない範囲と考えられます。


健康な髪がダメージを受けると、どうなる?

健康な髪は毛幹の外側の層「キューティクル(毛小皮)」の模様がきれいな波状で密に重なり合っています。しかしパーマやカラーリング、ドライヤーなどによってダメージを受けるとキューティクルは浮き上がり、内部を保護する能力が低下します。すると髪にツヤがなくなり、枝毛などの原因にもなります。
秋は夏場の強い紫外線によって、毛髪にダメージが現れやすくなる時期。傷みが気になる場合は十分なケアをしたいところです。また、毛髪の成長は気温が高いほど早いことが分かっています。そのため、気温が下がる秋以降は夏に比べ、毛髪の成長が遅くなります。このことも、秋冬に毛髪が一段と気になる要因の1つかもしれません。

気温が下がる秋以降は夏に比べ、毛髪の成長が遅くなり、抜け毛が気になる

抜け毛が起こりやすい生活習慣をチェック

あなたの髪の健康状態と生活習慣をチェックしてみましょう。以下に当てはまることはありませんか?
<その抜け毛は大丈夫?セルフチェックしよう>
□髪を手ですくと、2回目も10本以上抜ける
□抜けた髪の太さが他の髪より細い
□髪のハリ・コシがなくなった気がする
□パーマやカラーリングをよく行う
□頭皮が脂っぽい
□ストレスを感じている
□喫煙している
□不規則な生活が続いている
□シャンプー剤の使い過ぎ・頻繁にシャンプーをしている


チェックの数が多い人は要注意!生活習慣を整えて、早めのセルフケアが大切です。抜け毛が増える生活習慣としては、次のようなものが挙げられます。

<抜け毛が増える生活習慣>
●過度なダイエット……髪の成長に必要な栄養素が不足すると、毛髪が細く、抜けやすくなる。
●ストレス、睡眠不足……自律神経が乱れて血行が悪くなり、毛母細胞に栄養が行きわたらなくなる。結果、抜け毛が増える。
●喫煙……ビタミン、ミネラルなどを消耗したり、毛細血管の血行を悪くしたりして、毛髪の成長を妨げる。
●パーマやカラーリング……髪を形成するタンパク質やキューティクル、線維が壊れやすくなる。ダメージによって毛髪が弱くなり、抜け毛の原因になる。
●シャンプーのし過ぎ……頻繁なシャンプーは頭皮を守る保護膜である皮脂を洗い流し、毛髪の成長を妨げる。

抜け毛、薄毛を招く生活習慣

男性の3人に1人が抜け毛に悩む。「壮年性脱毛症」とは?

加齢により自然に毛量は減少していきますが、男性の場合、早ければ10代後半から徐々に額の生え際が後退し始めたり、頭頂部が薄くなったりする症状が見られる場合があります。
これは、壮年性脱毛症といって、主に男性ホルモンの働きが関係する抜け毛、脱毛の症状です。毛髪の成長は毛乳頭からの指令によってコントロールされています。しかし、血液中を流れる男性ホルモンが毛乳頭に入り込むとその指令が制御され、脱毛の症状が起こります。血液中の男性ホルモンの量が多い人ほど症状が起こるということではなく、毛乳頭にある男性ホルモンを受け入れるレセプター(受容体)の感受性の高い人が壮年性脱毛症になり、その程度は主に遺伝に関連すると考えられています。
その他、ストレスや食生活といった生活環境も、抜け毛と複雑に関係しています。脱毛の進行には下表のようなパターンがあり、日本人の男性では3人に1人が薄毛に悩んでいるといわれています。

壮年性脱毛症の進行パターン

壮年性脱毛症に働きかける、発毛成分「ミノキシジル」

壮年性脱毛症が発症すると毛を産生する役割を担う毛包が小さくなり、ヘアサイクルにおける成長期が2~3年と短くなります。すると、コシがなく、軟らかくて短い毛が多く見られるようになります。進行するとその期間はさらに短くなり、産毛のような状態で抜けていきます。最終的には、毛包が消滅して毛髪をつくることができなくなります。
発毛成分「ミノキシジル」は壮年性脱毛症によって小さくなった毛包に直接働きかけて、次のように作用します。
① 毛包を活性化して、休止期から初期成長期への移行を促進する。
② 成長期を維持し、太い毛髪(硬毛)を増加させる。

ミノキシジルは、休止期から初期成長期への移行を促進する効果と毛髪の成長期を維持する効果がある。

毛包が完全になくなってしまった箇所の発毛は期待できませんが、小さくても残っていれば、毛包を本来の状態に近づけるように大きく成長させ、発毛を促進することができます。
髪にコシがなく、細く短くなってきたと感じたら、早めに使用を開始することが大切です。

●「ミノキシジル」配合の発毛剤の、1%と5%の違いとは?
市販されている「ミノキシジル」配合の発毛剤には、濃度が1%の物と5%の物があります。男性の場合、どちらも使用できます。男性でより早く、より大きな効果を期待する人、多くの発毛を望む人、1%の発毛剤では変化が分かりにくかったという人は、5%の発毛剤を使用するとよいでしょう。
肌が敏感な人が使用した場合に、「ミノキシジル」の濃度が高くなると塗布時にかゆみが現れることがあります。これは薬効成分によるものではなく、基剤により起こるもので、通常は時間と共に治まります。
5%の物を使用してかゆみが気になる場合は、1%の物に変更したり、塗布後にオリーブオイルや保湿成分を含む化粧品を頭皮に塗ったりするのも一案です。かゆみがなかなか引かない場合は、かぶれ(接触皮膚炎)の場合があるので、早めに医師に相談してください。
また、初めて使用する人、症状があまり進行していない人、1%で効果に満足している人は、1%の発毛剤を使用するとよいでしょう。

※女性では5%の臨床試験が行われていないため、1%のみ市販されています。


「ミノキシジル」配合の発毛剤の効果的な使い方

「ミノキシジル」は、直接毛包に働きかけて発毛を促進するため、壮年性脱毛症の改善に大変有効な発毛成分です。ただし、毛髪は1カ月に1センチメートルしか伸びないことからも、目に見える効果を実感するまでには期間が必要です。
「ミノキシジル」5%の発毛剤であれば4カ月以上、1%であれば6カ月以上使い続けましょう。なかなか効果が現れなくても焦らずに、継続することが大切です。
また、「ミノキシジル」は塗布後4~6時間をかけて吸収されて効くといわれています。効果的に使用するためにも1日2回、定期的な塗布を心がけましょう。

ミノキシジルは1日2回、継続的に使用しよう

その上で次の3つをポイントに、効果をチェックしましょう。
●抜け毛の量が減っているか。
●毛が太くなってきたか。
●髪にコシが出てきたか。

ミノキシジルの効果のチェックポイントは、抜け毛の量が減っているか、毛が太くなってきたか、髪にコシが出てきたかの3つ。

毎日鏡を見ていると、毛髪の変化に気づきにくいもの。効果が実感しにくいという人は、頭部を撮影して経過を比較する方法がおすすめです。使用開始時に自分の頭髪の状態を撮影し、その後、3カ月ごとに同じ条件で撮った写真と比較すると変化を実感しやすくなります。

写真を撮って効果を比較

使用開始後、一時的に抜け毛が増えるケースがありますが、これは古い毛が新しい毛に生え変わっているため。特に心配はいりません。また、効果が得られたからといって使用をやめてしまうとまた元に戻ってしまいますので、効果を実感した後も使い続けるようにしましょう。

●「ミノキシジル」配合の発毛剤の購入方法は?
「ミノキシジル」配合の発毛剤は、第1類医薬品として販売されています。第1類医薬品とは、市販薬のうち副作用、相互作用などの項目で安全性上、特に注意を要する物。薬剤師からの説明を受けてから購入することができます。これは効果的に、安全に使用する上で大切なことです。薬剤師は使用方法やケア方法に関する知識もありますので、購入後もよきサポーターとして、気になることは相談するようにしましょう。

「ミノキシジル」配合の発毛剤の購入方法は

●「ミノキシジル」配合の発毛剤は65歳以上でも使用できる?
「ミノキシジル」は安全な外用発毛成分として、世界中で使用されています。日本皮膚科学会の「男性型脱毛症診療ガイドライン」でもクラスA(使用を強くすすめる)として推薦されています。ただし、血圧や内臓などに疾患のある人は、一度かかりつけ医に相談しましょう。20歳未満の人は国内での臨床試験が行われていないため、使用できません。市販の「ミノキシジル」配合の発毛剤の説明書に「高齢者(65歳以上)の人は使用前に医師または薬剤師に相談してください」という記載があることから、高齢者が自己判断で使用をやめてしまうケースも見受けられます。これは、より安全に使用するためのガイドラインですので、医師または薬剤師に相談した上で上手に活用するとよいでしょう。

「ミノキシジル」配合の発毛剤は65歳以上でも使用できる?

毛髪によいライフスタイルにチェンジしよう

髪の健康は日々の生活習慣からも影響を受けます。抜け毛が気になったら、日常生活では、次のことを心がけましょう。

●必要な栄養を十分に摂る……髪の栄養源であるタンパク質の他、ビタミンやミネラル(特に鉄や亜鉛、銅)の不足は毛根の栄養不足を招き、抜け毛や薄毛、髪のトラブルの誘因となる。ダイエットによる過度な食事制限は避け、バランスのよい食生活を心がける。

抜け毛ケアに、髪の健康に必要な食材

●ストレスをためない……頭皮の血行にかかわる自律神経のバランスを整えるためにも、 適度に運動をしたり、趣味の時間を充実させるなど、日常生活で上手にストレスを発散させる。
●睡眠時間を十分にとる……自律神経のバランスを整えるため、睡眠時間を確保する。

その他、頭皮マッサージには血行を促進し、毛根の代謝を高めて健康な地肌をつくる効果があります。下図を参考に、頭全体をもみほぐすイメージで行いましょう。頭皮に適度な潤いを与え、マッサージに適した環境をつくるマッサージトニックなどを使用してもよいでしょう。
マッサージは発毛剤の効果を高めるのにも有効です。洗髪後に行う場合は、頭髪と頭皮をタオルドライした上でマッサージを行い、その後、頭皮が乾いてから発毛剤を塗布します。

抜け毛ケアに、頭皮マッサージの方法

髪のダメージと抜け毛に気づいた時が始め時。抜け毛ケアは、早めの対策が大切です。さぁ、今から髪によいライフスタイルに変えていきましょう。


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