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更年期ケアで「ワクワクできる未来」を切り拓いていく永田京子さん

更年期ケアで「ワクワクできる未来」を 切り拓いていく永田京子さん(前編)

産後ケアの活動をしていた永田京子さんは30代の初め、世の中にほとんど更年期のためのサポート体制がないことに驚き、使命感をもって更年期ケアに取り組み始めました。現在は「更年期対策メソッド」を開発し、女性・男性の更年期の正しい知識とケア方法を広く伝えています。更年期をごきげんに、快適に過ごすヒントについてうかがいました。

永田 京子(ながた・きょうこ)さん

永田 京子(ながた・きょうこ)

母の更年期うつをきっかけに、2014年「ちぇぶら」を設立。現在は愛知県を拠点に活動。ピラティス・整体・経絡など幅広い健康メソッドを学び、体と心の両面からの更年期ケアを提案。1000名超の女性や医師の声をもとに「更年期対策メソッド」を開発し、講演・研修の受講者は累計8万人以上。2018年にはカナダの国際閉経学会で研究を発表。米バブソン大学 "Leadership program for women & allies"修了。著書に、台湾・韓国でも翻訳出版されている『ふりまわされない!更年期』(旬報社)の他、『はじめまして更年期』(青春出版社)、『女40代の体にミラクルが起こる! ちぇぶら体操』(三笠書房)がある。


「誰かがつくらなければ。私がつくろう!」使命感に燃えた30代

明るく元気で、姿勢もシャキッ。永田京子さんは、その場の空気をパッと変えてしまう、チャーミングな女性です。聞けば、演劇学校のご出身で、ダンスからアクションまでを学び、全国の舞台を回っていた経験があるそう。表現力を磨くうちに、体の仕組みそのものに興味が湧き、整体やリフレクソロジーなど体についての様々な勉強をするように。その流れから産後セルフケアインストラクターとなり、エクササイズ指導をしながらコミュニティをつくっていきました。

「産後ケアの活動をしているうちに、特に40代で出産した女性たちから様々な不調の声を聞くようになって、『これは産後だけの問題ではないかもしれない』と、更年期について考えるようになったんです」

更年期は、永田さんにとって大きな課題でした。永田さんが高校生の頃、更年期だったお母様がうつ状態に。症状は深刻で、別居を余儀なくされたことがあったのです。

「それはとてもショッキングな体験でした。でも、さすがにあれから10年以上経っているのだから、更年期のサポートも何かしら整っているんだろうと思って調べてみると、これがほとんどない。『誰かがつくらなければ』という、勝手な使命感に燃えて『ちぇぶら』の活動を始めたのが2014年、当時私は30歳でした」

更年期サポートを始めたきっかけを語る永田 京子(ながた・きょうこ)さん

毎日駅前に立って、街頭アンケートを実施

困っている人はたくさんいて、ニーズはきっとある。しかし、当時世間には更年期サポートという発想がほとんど広まっておらず、更年期そのものもあいまいなイメージでした。永田さんは潜在ニーズを引き出すために、まず女性たちにアンケート調査をすることを思いつきます。

「当時は今ほどSNSが広まっていなかったので、紙面でのアンケート調査に取り組みました。駅前に立って、通りかかる人にお願いするんですが、これが全然協力してもらえないんですよ。夜中にうなされるくらいつらかったです(笑)。でも一度決めたことだからと、諦めずに毎日続けていたところ、見かねた友人たちが手伝ってくれるようになって。街頭だけでなく、郵送でもアンケートが集まり始め、結果的には1カ月半くらいの間に、全国から1000名以上のアンケートを集めることができました」

アンケートには、「ホットフラッシュ」や「不眠」といった典型的なお悩み以外にも、「肌の老化」、「髪質の変化・薄毛」、「肩こり」、「手足のしびれ」などなど、ありとあらゆる症状が記載されていました。

「私の母の更年期症状の始まりは、『目が渇く」という不調からだったんですよ。眼科へ行ったら目薬と粉薬をもらった、でもその飲み薬が喉に張りついて飲みづらい、だから耳鼻科へ行く、今度は錠剤をもらって帰ってくる……実はこれは更年期症状の1つで、粘膜の潤いの低下が原因だったんですね。本当に大きな病気である可能性もあるので、症状に応じて診てもらうことは大事なんですが、40代に入ったら、頭の隅のほうに『更年期の可能性』も置いて、婦人科へ行ってみるのもいいと思います」

過剰なイライラ、やる気の低下……更年期には、体の不調だけでなく、精神的な症状に悩む人も多くいます。

「具体的な症状だけでなく、周りに理解してもらえないという二重のつらさがあるんですよね。家族や職場での理解が得られず、『怠け者だ』と思われてしまう。また、自分自身でも何が起こっているか分からないから、自己嫌悪に陥ってしまうという声もとても多くありました」

更年期症状について語る永田 京子(ながた・きょうこ)さん

また更年期は、女性だけの問題ではありません。永田さんは企業研修などで、男性向けの更年期講座も行っています。

「講座に際しては、男性からも事前アンケートを取るんですが、それを見ると本当にたくさんの男性が悩みを抱えているんですね。現在の更年期世代、40、50代の男性は特に、『男なんだから、しっかりしろ』と教えられ、家族を養う存在という、昭和の価値観の下で育っているので、しんどくても周りに言えない、理解もされないという面があると思います。デリケートな問題も多いので、男性の更年期についてもきちんと周知させたいと考えています」


忙しくても面倒でも続けられる“ちぇぶら体操”

その後永田さんは、心と体の両面から男女の更年期にアプローチする「ちぇぶらメソッド」を開発。講座、講師の育成、執筆、イベント開催など、幅広い活動をスタートさせました。ちぇぶらは、更年期を表す英語“the change of life”を元に名づけられています。

「ちぇぶらメソッドは、3つを柱にしています。まず、知識。自分の体そのものと、更年期とは何なのか、そして具体的な対策方法を知ること。そして運動すること。運動をすると、更年期の不調はかなり緩和されることが分かっています。もう1つは、コミュニティの機会をもつこと。『しんどいのは私だけ』という孤独が、つらさを倍増させてしまうんです。仲間をつくって悩みを共有することは、更年期をうまく乗り切る助けになります」

メソッドの柱の1つ、「運動」。40代以上になると、習慣のない人にとってはなかなか続けるのが難しいものですが、永田さんが考案した“ちぇぶら体操”は、「運動嫌いでも、忙しい人でも続けられる」ことを目的につくられた、とても簡単な運動法です。

「習慣化のコツは、『三日坊主を何度でも!』です(笑)。また三日坊主になってしまった、という時でも『三日坊主最高!』と言って、何度でもやり直せばいいんですよ。音楽に合わせてやってもいいし、飽きたらラジオ体操やウォーキングでもいい。『これを絶対続けなければ』という思い込みはやめて、自分に合った方法で、細く長く続けていけばいいと思います」

体操もできなかったら、せめて深呼吸だけでも! と永田さん。

「深呼吸には、内臓を内側からマッサージする効果があります。代謝も上がりますし、エネルギーが湧いて、気持ちの切り替えのきっかけにもなりますから、とてもおすすめですよ」


“しっかりご飯”と運動習慣が永田さんの元気の秘訣

「運動は、更年期を乗り切るためだけでなく、将来的にもメリットが大きい」と永田さん。人生100年時代に元気な老後を過ごすためにも、動ける体を更年期のうちにつくっておきたい、と力強く語ります。

運動は、更年期を乗り切るためだけでなく、将来的にもメリットが大きいと語る永田 京子(ながた・きょうこ)さん

「私が心がけているのは、やっぱり早寝早起き。なるべく毎朝散歩して、朝日を浴びるようにしています。朝日を浴びると、幸せホルモンのセロトニンがつくられて、本当に1日元気で過ごせるんですよ。5分くらいでも効果があると実感しています。時間があれば、近くの山に登ります。基本的にはジムなどへ行くのではなくて、自然の中で運動していますね。木や土の香りに癒やされますし、お金もかからないし、元気になって、メリットはたくさんありますよ」

また、食事もしっかり。大きめのお茶碗でご飯をきちんと食べているそうです。

「実は3年前まで、ご飯をたくさん食べられなかったんです。でも、マラソンを始めたら、ちゃんと食べられるようになって。今は高校生の息子に負けないくらい食べますね(笑)。野菜を初めに食べて、おかず、最後にご飯、と順番には気をつけています。マラソンにすっかりはまってしまって、昨年はアフリカ、ケニアのサバンナを5日間かけて230km走るというウルトラマラソンにも参加したんですよ!」


自分自身も楽しみながら、みんなを笑顔にしたい

「講座は、ただ座学だけを提供するのではなく、参加したらスキップして帰れるような、心が軽くなるような時間にしようと心がけています」

若い頃には演劇を学び、その後導かれるように更年期サポートに突き進んできた永田さん。これまでの経験を活かして、更年期を絡めた「漫才」や「芝居」にも意欲的に取り組んでいます。

「更年期について関心がない人たちにも理解をしてもらうためにはどうしたらいいか、と考えて、『そうだ、漫才だ!』と(笑)。昨年はM-1グランプリで1回戦通過。浜松の漫才大会でも、決勝まで進出しまして、最近は芸人になってきています。秋には、更年期をテーマにした新喜劇にも挑戦します!」

これからの展望は? とたずねると、永田さんはにっこりと笑顔を見せました。

更年期のサポートを広げながら、もっとたくさんの人たちを笑顔にしたいと語る永田 京子(ながた・きょうこ)さん

「以前から、隣にいる人、周りの人が1人でも多く笑顔になってくれたら、私は幸せに感じてきたんです。更年期のサポートを広げながら、もっとたくさんの人たちを笑顔にしたい。そして自分自身も楽しんで、ちょっとワクワクできるような未来を切り拓いていきたいです」

永田さんの活動と、気になる「新喜劇」の情報は、ちぇぶらのHPをチェックしてみてください。

取材・文/山野井春絵  写真/後藤渉


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