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脂肪燃焼の仕組みとは?代謝との関係と効率よくやせる方法

脂肪燃焼の仕組みとは?代謝との関係と効率よくやせる方法

体に過剰な脂肪がつくと、見た目が気になるだけではなく、糖尿病や脂質異常症、動脈硬化など様々な健康上のリスクを招きやすくなります。そこでよく「脂肪を燃やして減らそう」といわれますが、脂肪を燃やすとはどういうことなのでしょうか。今回は、脂肪燃焼の仕組みについて解説し、併せて脂肪燃焼に効果的な運動や食生活のポイントを紹介します。

監修プロフィール
結核予防会 総合健診推進センター所長・日本肥満症予防協会理事長 みやざき・しげる 宮崎 滋 先生

1971年東京医科歯科大学医学部卒業。医学博士。糖尿病、肥満症、メタボリックシンドロームの治療に従事。東京医科歯科大学医学部臨床教授、東京逓信病院外来統括部長・内科部長・副院長を経て2015年より現職。日本内科学会認定医・指導医、日本肥満学会名誉会員など。編著に『ダイエットの方程式』(主婦と生活社)、『肥満症教室』(新興医学出版社)など多数。 

脂肪燃焼の仕組み「太る・やせる」を理解しよう

脂肪燃焼の仕組み「太る・やせる」についてのイメージ画像

「太る」とは、そもそもどういうこと?
人間は、飢餓などで栄養を摂取できない状況に備えて、「脂肪」という形でエネルギーを蓄えています。このように体の中に存在する脂肪は総称して「体脂肪」と呼ばれますが、そのほとんどが「中性脂肪」です。「太る」とは、単に体重が増えることではなく、体の中に過剰な中性脂肪が蓄積されることをいいます。

私たちが食事で摂る栄養素のうち、エネルギーとして使える栄養素に、糖質、脂質、タンパク質の「三大栄養素」があります。これらは体内で生命維持や活動のためのエネルギー源となる物質に変えられ、貯蔵されます。

三大栄養素の中でも、メインのエネルギー源となるのが糖質です。糖質を摂取すると消化の過程で「グルコース(ブドウ糖)」と呼ばれる、吸収が速い単糖(糖の最小単位)に分解されて血液中に入り、即効性のエネルギーとして使われます。そして余った分はインスリンというホルモンの働きで「グリコーゲン」という物質につくり変えられ、肝臓や筋肉に一時的に蓄えられます。

ところが、糖質はすぐにエネルギー源として使える一方で、貯蔵できる量がそれほど多くありません。そのためエネルギーとして消費される以上に糖質を摂り続けると、グリコーゲンとして貯蔵されずに余ったグルコースは、体内で中性脂肪に変えられて脂肪細胞に蓄積されていきます。これが太る、つまり「肥満」になるプロセスです。


それでは逆に「やせる」とはどういうこと?
「やせる」とは、体に蓄えられていた中性脂肪が減っていくことです。これが「脂肪が燃える」の正体であり、脂肪がエネルギー源として使われることを意味します。

体を動かすためにエネルギーが必要になると、まず血液中のグルコースが使われます。そしてグルコースを使い切ってしまうと、次に肝臓や筋肉中のグリコーゲンが、最後に脂肪組織に蓄えられた中性脂肪をエネルギー源として使い始めます。

脂肪代謝の仕組みは①脂肪脂肪から脂肪酸とグリセロールに分解され②脂肪酸は全身に運ばれ③骨格筋、心臓、肝臓などの細胞に取り込まれる。細胞内のミトコンドリアで酸素と結びつき、二酸化炭素と水にまで完全に分解されることによって大きなエネルギーを放出=脂肪が燃える状態となるイメージ図

①分解
グルコースが足りなくなると、脳から「脂肪を分解せよ」という指令が出て、それを感受した脂肪分解酵素のリパーゼが、体に蓄えられていた中性脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解します。
②運搬
脂肪酸は血液に乗って全身に運ばれ、骨格筋、心臓、肝臓などの細胞に取り込まれます。
③燃焼
脂肪酸は細胞内のミトコンドリアで酸素と結びつき、二酸化炭素と水にまで完全に分解されることによって大きなエネルギーを放出します。これが「脂肪が燃える」という状態です。燃えた後の脂肪は、最終的に水や二酸化炭素となって、息や汗、尿の中に含まれて体の外へ出ていきます。エネルギーとして消費されなかった脂肪酸は、また中性脂肪に合成されて蓄積されていきます。

脂肪を燃やしてやせるには、「消費エネルギー>摂取エネルギー」にするのが大前提
私たちは食事によるエネルギー摂取と、体を動かすことで使われるエネルギー消費の収支バランスによって健康な身体を保っています。「太る」とは、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り、このバランスが崩れてしまうことです。逆に摂取エネルギーが消費エネルギーを慢性的に下回ることで、やせていきます。

肥満の原因が、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることを表すイメージ図

バランスが「摂取エネルギー>消費エネルギー」になってしまう主な原因
➀食べ過ぎ…消費エネルギー以上のエネルギーを摂れば、中性脂肪として体内に蓄積されます。
➁運動不足…糖質の約80%は筋肉(骨格筋)で消費されます。そのため運動不足で筋肉が減ると消費エネルギーが減ってしまいます。
③加齢…個人差はありますが、誰でも加齢によって筋肉量が減っていきます。30歳以降何もしなければ、筋肉は毎年1%ずつ減るといわれ、30歳から80歳の50年間に、筋肉量はほぼ半分に。すると、消費エネルギーもそれに合わせて減ってしまうことになります。また、次に述べる「基礎代謝」も年齢と共に低下するため、太りやすくなります。

脂肪を燃やすために知っておきたい「基礎代謝」「活動代謝」とは

基礎代謝のイメージイラスト

人が1日に消費するエネルギーの内訳は、大きく分けて「基礎代謝」、「活動代謝」、「食事誘発性熱産生」の3つです。

●基礎代謝
…呼吸、体温維持、心拍など、生命維持のために特別な活動をしていなくても無意識に行われるエネルギー消費のことをいいます。1日の総エネルギー消費量の60~70%を占め、筋肉量や年齢、性別などによって変動します。体内で最もエネルギーを使うのが骨格筋(筋肉)なので、筋肉量が増えれば、基礎代謝量も上がります。

●活動代謝
…体を動かすことで消費されるエネルギーのことをいい、1日の総エネルギー消費量の20~30%を占めます。日常生活の活動(家事や仕事など)や、運動などによって消費されるエネルギーがこれに当たります。

●食事誘発性熱産生
…咀嚼、消化、吸収など食事行為に使われるエネルギーを指します。

まずは自分に最適なエネルギー量を確認しよう
健康的に脂肪を減らすための第一歩は、自分にとって適切なエネルギー(カロリー)量を知り、摂取量をそれ以下に抑えることです。

1日に必要なエネルギー量を推測した値を「推定エネルギー必要量」といい、基礎代謝量に身体活動レベルを掛けて求めることができます。

推定エネルギー必要量(kcal/日)=①基礎代謝量(kcal/日)×②身体活動レベル
例)
50歳男性で徒歩と電車通勤、デスクワーク中心のAさんの場合
基礎代謝量:1510kcal
身体活動レベル:レベルⅡ(ふつう)
1510×1.75≒2643→1日の推定エネルギー必要量は2643kcal

①基礎代謝量
基礎代謝量は、健康維持のために確保すべきエネルギー量です。脂肪を減らすためにダイエットに取り組む場合には、基礎代謝量以上で推定エネルギー必要量以下に摂取エネルギーの目標値を設定するとよいでしょう。

年齢・男女別に見た基礎代謝量の表(男性)
年齢・男女別に見た基礎代謝量の表(女性)

②身体活動レベル

身体活動レベルは、日常の身体活動を強度に応じて「低い」「ふつう」「高い」の3段階に区分し数値で表したものです。年齢に応じて数値が異なります。

レベルⅠ
…生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合
レベルⅡ…座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤・買物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合
レベルⅢ…移動や立位の多い仕事への従事者。あるいは、スポーツなど余暇における活発な運動習慣をもっている場合

年齢階層級別に見た身体活動レベルの群分けの表

脂肪を減らす方法は? 効率のよい脂肪燃焼方法を習慣化しよう

脂肪を減らす食事のコツ

脂肪を減らす食事のコツのイメージ画像

中性脂肪を減らすために最も効果的なのは、食事制限によるアプローチです。ダイエット方法にはいろいろありますが、基本的に「一品だけ」「○○抜き」「短期やせ」は好ましくありません。極端な食事制限は長続きしないだけでなくリバウンドを招きやすく、リバウンドを繰り返すとダイエット前より筋肉が減って逆に脂肪が増え、さらにやせにくくなる「ウエイトサイクリング」に陥りやすくなります。

健康的でしかも確実な減らし方は、一過性ではなく、持続可能な減らし方です。食事制限といっても、これまでの食生活を大きく変える必要はありません。「ご飯を少なめに盛ってもらう」「かむ回数を増やす」「食事の最初に野菜を食べる」といった習慣は、回りくどいようですが、長い目で見れば確実に結果となって現れます。

まずは現体重の3%程度を3~6カ月かけて減らすことを目標にしましょう。3%やせるだけでも、血糖値や血圧、コレステロール値などが改善されることが分かっています。「急がば回れ」と心得て、焦らず、無理せず、気長に取り組むことが大切です。

脂肪を減らす運動のコツ

脂肪を減らす運動のコツのイメージ画像

運動によるエネルギー消費量は期待するほど多くありません。それでも運動がダイエットに不可欠といわれるのは、脂肪燃焼効果と基礎代謝を上げる効果があるためです。

・「有酸素運動」で脂肪を燃やす
ウォーキングや軽いジョギングなど、酸素を取り込みながら比較的ゆっくりと行う運動は「有酸素運動」と呼ばれます。脂肪を燃やすには酸素が必要なため、有酸素運動を行うことで中性脂肪が効果的に燃焼されます。

・筋肉を増やす「筋トレ」も大切
筋力トレーニングのように瞬間的に大きな力を使うものを「無酸素運動」といいます。無酸素運動は筋肉中のグリコーゲンをエネルギー源として利用し、筋肉量を増やします。基礎代謝量は筋肉量に比例するため、基礎代謝が高まり、やせやすい体になります。

ダイエットのための運動では、大きな筋肉を鍛えることがコツです。大きな筋肉ほどエネルギー消費量が多く、基礎代謝も上がりやすくなります。筋肉は全体の6~7割が下肢についているので、特に脚を動かす運動が有効です。

脂肪燃焼のために、これまで運動してこなかった人には、3秒~5秒かけてゆっくりしゃがみ、ゆっくり立つスロースクワットを、膝を伸ばし切らずに行うと効果的なことを示すイメージ画像

これまで運動をしてこなかった人には、筋肉をゆっくり長く動かす「スロートレーニング」もおすすめです。スクワットなどをゆっくり行うだけで、比較的小さな負荷で効果的に筋肉に刺激を与えることができ、一般的な筋トレと同じ効果が見込めます。

これらを踏まえると、大きな筋肉を鍛えることと有酸素運動を組み合わせることが効率的だと言えます。

時間がないなら、日常生活の中で活動量を増やして脂肪を燃焼

時間がない方は日常生活の中で活動量を増やして脂肪を燃焼のイメージ画像

スポーツ庁が実施した「令和5年度 体力・運動能力調査」によると、20~40 代の女性では、運動・スポーツを「しない」という回答が顕著に高くなっています。働き盛り世代では、忙しくて運動の時間がとれない人も多いという実態が明らかになりました。

ただし、運動をしなければ活動量が増やせないわけではありません。忙しくて運動する時間がとれない人は、日常生活の中で活動量を増やす工夫をしましょう。

例えば、通勤や買い物などの際に、いつもより歩幅を広めにして早めのスピードで歩けば、それだけでかなりの運動量になります。さらに、ゆっくり歩き(通常の速さ)と速歩き(ややきつい速さ)を3分間隔で交互に繰り返す「インターバル歩行」を取り入れれば、通常のウォーキングより脂肪燃焼効果が高まり、エネルギー消費量も増えます。

家事やデスクワーク中にできる「ながら運動」もおすすめです。ちょっとした運動を取り入れることで消費エネルギーが増え、筋肉も鍛えられて基礎代謝のアップにもつながります。

<いつもの動きに筋トレ要素をプラス! おすすめの「ながら運動」>

●洗濯物を干しながらスクワット

洗濯物を干しながらスクワットのイメージ画像

【やり方】
①両足を肩幅より少し広めに開き、ゆっくりお尻を下げて洗濯物を取り出す。
②洗濯物をつかんだら、そのままゆっくりと両足を伸ばして洗濯物を干す。

●掃除機をかけながらふくらはぎ伸ばし
【やり方】
①足を前後に開き、後ろ足のかかとを床につける。
②前脚の膝を軽く曲げ、20秒伸ばす。

●歯磨きしながらかかと上げ

歯磨きしながらかかと上げ運動のイメージ画像

【やり方】
①背筋を伸ばし、足を肩幅に開く。
②かかとを高く上げ、10秒キープしてゆっくり下ろす。

●デスクワークしながらかかとの上げ下げ
【やり方】
①椅子に浅く座り、かかとを上げ下げする。
②続いてかかとをつけ、つま先を上げ下げする。

食事で摂ったエネルギー量が活動によって使われるエネルギー量を上回ると、余った分は中性脂肪として体に蓄えられます。脂肪を燃やして健康でバランスのよい体にするためには、適切な範囲で食事をコントロールし、運動で筋肉をしっかりと維持していくことが大切です。毎日の生活で無理なく続けられる方法を見つけて習慣化し、気長に取り組んでいきましょう。


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