熱中症と夏バテの違いとは

熱中症と夏バテの違いとは

熱中症と夏バテは、違いが分かりにくいという声が聞かれます。どちらも夏の気候によって引き起こされる体調不良です。
●熱中症は「病気」
熱中症は、応急処置や治療が必要な病気です。様々な症状が数時間のうちに急激に現れ、対処を怠ると命にかかわる場合もあります。
●夏バテは「不調」
夏バテは、生活習慣の見直しや休息で回復を目指せる慢性的な不調のことで、病気ではありません。様々な症状が、数日から数週間かけて現れます。

自分の命を守るために、熱中症と夏バテの違いや適切な対処法を知ることが、これまで以上に大切になっています。春から取り組みたい体の準備なども含め、解説します。

監修プロフィール
せたがや内科・神経内科クリニック 院長  くでけん・つかさ 久手堅 司 先生

医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本神経学会神経内科専門医、日本頭痛学会頭痛専門医、日本脳卒中学会脳卒中専門医。東邦大学医学部卒業後、東邦大学医療センター大森病院、済生会横浜市東部病院を経て、2013年8月にせたがや内科・神経内科クリニックを開設し、「自律神経失調症外来」「気象病・天気病外来」などの特殊外来を立ち上げる。著書に『低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア 気象病ハンドブック』(誠文堂新光社)、『不調がデフォな私たちの背骨リセット』(主婦と生活社)、監修に『面白いほどわかる自律神経の新常識』『毎日がラクになる! 自律神経が整う本』(宝島社)などがある。

熱中症と夏バテの大きな違いは「病気」か「不調」か

近年、春と秋がない「二季」という言葉が生まれるなど、夏の訪れが早まり、しかも長く続くようになってきています。気候の変化に伴い熱中症になる人も増加しており、暑い日が続いた2025年の5~9月では、全国で熱中症により救急搬送された人数の累計が、調査開始以降で最多の 100,510 人に上りました(※)
(※)消防庁「令和7年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」
「病気」である熱中症と、「不調」である夏バテには大きな違いがあり、対処を誤ると、症状が悪化したり重篤な状態に陥ってしまったりする場合があります。

「体温調節機能がうまく働かなくなる」のが原因の熱中症、「自律神経の乱れ」が原因の夏バテ

●熱中症の原因は「体温調節機能の低下」
熱中症は、高温多湿の環境によって体温調節機能がうまく働かなくなり、体の熱が放散できなくなって起こります。熱中症になりやすい環境としては気温の高さばかりに気を取られがちですが、湿度の高さと、日差しや地面、建物などから浴びる熱(輻射熱)も大きく影響します。また、体が暑さに順応していない時期に急激に気温や湿度が上昇したり、体調がよくなかったりした時にも起こりやすいです。

気温計や湿度計のイメージ画像

●夏バテの原因は「自律神経の乱れ」
夏バテは、高温多湿の環境や強い紫外線、生活リズムの変化、冷房による冷えや屋内と屋外の寒暖差、ストレス、過労などによる、自律神経のバランスの乱れが原因になります。

症状が急激に悪化する熱中症、徐々に悪化する夏バテ

●熱中症は急激に悪化
熱中症では体調が急激に悪化します。体温が上がりやすく、脱水症状も見られます。症状は、その重さで4段階に分類されます。

重症度

主な症状

Ⅰ度(軽症)

めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直

Ⅱ度(中等症)

頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下

Ⅲ度(重症)

中枢神経症状、肝・腎機能障害、血液凝固異常のいずれか

Ⅳ度(最重症)

深部体温が40℃以上、重症の意識障害

(参考)日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」
熱中症の症状が現れている時の対処法については、大正健康ナビ「疾患ナビ 熱中症」をご覧ください。

●夏バテは徐々に悪化
体調は徐々に悪化していきます。主な症状は、慢性的なだるさや疲れやすさ、体の冷え、食欲不振や胃腸の不調など。頭痛やめまいを起こすこともありますが、熱中症とは異なり体温は平熱であることが多く、脱水症状はあっても軽微です。

熱中症と夏バテでは発症時の対処も違うので要注意!

●熱中症では体の熱を冷まし水分を補うことが大切
熱中症の症状が見られたら、日陰など涼しい場所に移動し、衣類を緩め、体を冷やして経口補水液などで水分と電解質(塩分など)を摂取することが大切です。Ⅱ度(中等症)で医療機関の診察、Ⅲ度(重症)以上は入院治療が必要になります。自力で水を飲めなかったり、意識障害や運動障害が見られたりする場合は迷わず救急車を呼びましょう。
●夏バテでは生活習慣の見直しと体を休めることが大切
夏バテでは、日常生活の中での生活習慣の見直しと十分な休息が基本的な対処になります。規則正しい生活やバランスのよい食事、軽い運動、質の高い睡眠を心がけましょう。暑い時期は体にこもった熱を冷ます必要がありますが、体の冷えや屋内外の大きな寒暖差は自律神経を乱し、夏バテの症状改善には逆効果になってしまうので、冷房の利かせ過ぎには注意してください。胃腸の不調や疲れ、だるさが続いて日常生活に支障を来すようであれば、かかりつけの内科や、自律神経の乱れや寒暖差疲労を専門とする医療機関に相談するとよいでしょう。

熱中症と夏バテは互いにリスクを高め合う関係
熱中症と夏バテは互いにリスクを高め合う関係にあります。
熱中症の原因となる体温調節機能は自律神経によってコントロールされているため、自律神経の乱れた夏バテの状態では体温調節機能も低下し、熱中症のリスクが高まります。夏バテによる疲労の蓄積や胃腸の不調で、体力が低下しやすくなることも影響します。また、体温調節機能がうまく働いていない熱中症の状態では、自律神経にも負担がかかっているため、熱中症の症状が改善した後に夏バテを起こしやすくなる場合があります。

熱中症を見極めるポイント

次のような体調の変化があった場合は、熱中症の可能性が高いと考えられます。ただし、該当しないからといって熱中症の可能性がないとは限りません。夏に体調不良が生じた場合は、夏バテと楽観視せず、まずは熱中症を念頭に置いて対処するとよいでしょう。
<熱中症のチェックポイント>
・急に体調が悪くなった。
・発熱がある。
・大量の発汗がある。
・めまいや立ちくらみがある。
・頭痛や吐き気がある。
・筋肉のけいれんがある。
・意識がはっきりしていない。
・顔が真っ赤になっている。

熱中症や夏バテを起こした人のイメージ画像

●熱中症かと思ったら感染症だったということも……
熱中症で見られる発熱や頭痛、筋肉痛、だるさなどは、かぜやインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの症状とも重なるものです。インフルエンザはこれまで冬に流行することが多かったのですが、訪日外国人の増加などの影響で近年は夏にも流行するようになりました。炎天下での運動を控えたり冷房を適切に使っていたりするにもかかわらず熱中症のような症状が現れた場合や、のどの痛みや咳、鼻水などの症状がある場合は、感染症の可能性が高いと考えましょう。

熱中症や夏バテを起こしやすいのはどんな人?

熱中症も夏バテもリスクが高い人
●子ども
自律神経の働きや体温調節機能が未発達なことに加え、体重当たりの体表面積が大きく、暑い環境では熱を取り込みやすいことが影響します。
●シニア
自律神経の働きや体温調節機能が低下していたり、暑さやのどの渇き、発汗に気づきにくくなっていたりします。
●朝食を食べない人
体内時計をリセットして自律神経を整えるのに役立つ朝食。抜いてしまうと、自律神経の乱れにつながるだけでなく、就寝中に失った水分を補えなかったり、体が必要とする栄養やエネルギーが不足したりします。
●アルコールやカフェインを多く摂る人
アルコールやカフェインには利尿作用があるため、飲むと体内の水分が失われやすくなります。また、どちらも交感神経を刺激し、自律神経の乱れの原因になります。適量なら問題ありませんが、摂り過ぎないようにしましょう。
●十分な睡眠がとれていない人
睡眠不足になると疲れが回復せず、自律神経の乱れや体温調節機能の低下をもたらします。日常の忙しさやシフト勤務、ストレス、生活習慣の乱れなど、睡眠が十分にとれない理由は様々ありますが、いびきをかく男性も注意が必要です。いびきは睡眠時無呼吸症候群のサインでもあり、睡眠時間が十分であっても睡眠の質が低下している可能性があります。
●天気が変化すると体調が悪くなる人
気温や湿度、気圧の変化によって様々な不調が現れる「気象病」は、自律神経の乱れとも関係が深いため、気象病の人は熱中症や夏バテのリスクも高くなります。

熱中症のリスクが高い人
●皮下脂肪が多い人
体からの熱の放散を、皮下脂肪が妨げてしまいます。また、熱を放散しようと汗をたくさんかくため、体内の水分も不足しやすくなります。
●筋肉量が少ない人
筋肉はその70~75%が水分で構成されており、体内の水分貯蔵庫のような役割をもちます。筋肉量が少ない人は体内に水分を保つ機能が低く、脱水症状を起こしやすくなります。
●運動不足の人
筋肉を動かさないと、血流が低下して体内の熱を放散しにくくなります。また、汗をかく機会が少ないことも汗腺の機能低下につながり、体温調節に影響します。
●体調がすぐれない人
二日酔いや下痢などの状態では、体内の水分が不足しやすくなります。
●高温多湿な環境での長時間労働や、通気性の低い作業着が欠かせない仕事に従事している人
体に熱がこもりやすくなったり、大量の汗をかいたりします。

高温多湿な環境での長時間労働や、通気性の低い作業着が欠かせない仕事に従事している人のイメージ画像

●服薬をしている人
発汗を抑える抗コリン作用をもつ薬(頻尿や過活動膀胱、パーキンソン病の治療薬、向精神薬など)、体からの水分排出を促す利尿薬や糖尿病の治療薬であるSGLT2阻害薬などは、体温調節機能を低下させる場合があります。
●持病がある人
糖尿病では、神経障害によって暑さや喉の渇きを感じにくくなったり、汗がかきにくくなったりします。また、尿量が多く水分不足にもなりやすくなります。また、甲状腺機能亢進症では代謝が活発になるため、体内で熱を産生しやすくなったり汗をたくさんかいたりします。

夏バテのリスクが高い人
●食生活が乱れている人
栄養のバランスが悪かったり、冷たいものを摂り過ぎたりすると、体の冷えや胃腸の不調、疲労などが起こりやすくなります。
●睡眠の質が低い人
睡眠時間の不足や眠りが浅いなど、睡眠の質が低いと自律神経が乱れやすくなると共に、疲労が改善しにくくなります。
●ストレスを抱えている人
ストレスは交感神経の働きを高め、自律神経のバランスを乱します。
●デスクワークに従事している人
1日中冷房の利いた室内で、あまり汗をかかず座りっぱなしでいると、姿勢のゆがみや筋肉のこわばり、血流の滞り、冷えなどが起こり、自律神経が乱れやすくなります。また、涼しい室内と暑い屋外の行き来を繰り返すことも、自律神経に負担をかけます。
●持病がある人
心臓や腎臓、肝臓、胃腸の疾患がある人、自律神経失調症などの人は、自律神経の乱れや体力の低下、栄養不良を起こしやすい傾向があります。
●20~50代の女性
筋肉量が少なく、運動習慣がないという人が多く見られます。筋肉量不足や運動不足の状態では、疲労が回復しにくく冷えにも悩まされやすくなります。生理周期や更年期の女性ホルモンの変動も、自律神経を乱す一因に。

熱中症と夏バテの予防法

熱中症にも夏バテにも有効な予防法
●外出をできるだけ控える
気温の高い時期は外出や屋外での活動をできるだけ控えましょう。外出時には、日傘や帽子などで強い日差しを避けることも大切です。
●冷房や除湿器を適切に使う
屋内では冷房や除湿器を適切に使い、快適な環境を整えましょう。羽織る物やひざ掛けなども活用して、屋内と屋外の寒暖差を和らげる工夫も忘れずに。
●体を休める
無理をせずに体を休めることも有効です。冷房や除湿器を夜間も使用し、質のよい睡眠を心がけると、体調だけでなく生活リズムも整います。
●のどが渇く前から、こまめに水分を摂取する
のどが渇いたと感じた時には、体はもう水分不足に陥っています。水分は一度に大量に摂れないので、少量ずつこまめに摂取することを習慣づけておくのがおすすめです。水分を摂る際には汗で失われがちな電解質も忘れずに。

熱中症の予防法
熱中症の予防のため、「熱中症にも夏バテにも有効な予防法」に加えて次のことにも取り組みましょう。
●衣類や冷却グッズで体の熱を逃がす
衣類は、速乾性や吸水性、通気性に優れた生地の物がおすすめです。携帯扇風機やネッククーラーなどの冷却グッズも活用して、体の熱を逃がすようにしましょう。

携帯扇風機やネッククーラーなどの冷却グッズも活用して、体の熱を逃がすイメージ画像

●温湿度計を使う
温度や湿度は体感だけでは分かりにくいため、リビングなど目につきやすい場所に温湿度計を置いて、チェックする習慣をつけておきましょう。室温28℃、湿度70%以下が熱中症予防の目安となりますが、環境や自身の体調に合わせて調整してください。また、環境省発表の「暑さ指数(WBGT)」も参考にするとよいでしょう。

夏バテの予防法
夏バテの予防のため、「熱中症にも夏バテにも有効な予防法」に加えて次のことにも取り組みましょう。
●食生活を見直す
体に負担をかける暴飲暴食や冷たい物の摂り過ぎを控え、バランスのよい食事を心がけて、体をつくるタンパク質や疲労回復に役立つビタミン、胃腸の働きを整える食物繊維の多い食品や発酵食品などを積極的に摂るとよいでしょう。
●入浴やマッサージで自分をいたわる
ぬるめのお湯にゆっくりと浸かったり、マッサージをしたりしてみましょう。血行がよくなって体が温まり、心身がリラックスして自律神経が整いやすくなります。
●こまめに体を動かす
体を動かすことも、自律神経を整えたり、血行や疲労回復を促したりするのに有効です。その際は暑さ対策を忘れずに。きちんとした運動でなくても問題ありません。エスカレーターではなく階段を使う、時間を決めてお茶をいれたりトイレに行ったりするなど、日常生活の中でこまめに体を動かすことを意識してください。

熱中症や夏バテを起こした人のイメージ画像

夏バテの予防に役立つ栄養素や生活習慣については、大正健康ナビ「疾患ナビ 夏バテ」もご覧ください。

炎天下で活動する場合に気をつけること
仕事などのため炎天下で活動する場合は、次のことに留意しましょう。
・活動前に手足を冷やしたり、深部体温を下げるアイススラリーを活用したりして、体温の上昇を抑える。
・休息を心がけ、決して無理をしない。
・冷却グッズや飲み物を携帯する。
・通気性のよい服装を心がける。
・UVカット機能のある衣類や帽子、サングラス、日傘、化粧品などを活用し、強い紫外線を避ける。

炎天下で活動する場合に気をつけること。UVカット機能のある衣類や帽子、サングラス、日傘、化粧品などを活用し、強い紫外線を避ける人物のイメージ画像

熱中症と夏バテ、どちらの予防にも有効な「暑熱順化」

暑熱順化とは、暑さに体が慣れること。暑熱順化ができていると、熱を放散しやすくなり、体温が上がりにくく、汗で失われる塩分(ナトリウム)も少なくなります。近年は春でも真夏日(最高気温30℃以上)になることがあるため、本格的な夏が訪れる前から汗をかきやすく熱を逃しやすい体をつくっておくことは、熱中症にも夏バテにも有効です。
暑熱順化を促す方法としては、次のようなものがあります。
●運動
ウォーキングなど軽い有酸素運動を30分程度行い、汗をかきやすい体をつくりましょう。運動の頻度は週4~5回を2~3週間続けるのが目安ですが、運動が苦手な人は1週間に行う回数を減らして1カ月程度続けるとよいでしょう。筋トレやストレッチも併せて行って、筋肉量を増やしたり筋肉をよい状態に維持したりすることも有効です。
●入浴
38~41℃位のお湯に10~15分間、首までしっかり浸かる入浴も、汗をかきやすい体づくりに役立ちます。就寝の1時間半~2時間前に入浴すれば寝つきがよくなり、睡眠の質向上による疲労回復や自律神経の調整にもつながります。サウナも、慣れていて正しく利用でき、かつ体調に問題がなければ有効です。
●水分摂取
暑くなる前からこまめな水分摂取を心がけ、水を飲める・蓄えられる体をつくっておきましょう。

暑熱順化に適した水分摂取法などについては、大正健康ナビ「コラム 熱中症対策は食べ物から。夏に備えよう!」もご覧ください。

できる対策から始めよう!

今後も、どれくらい暑い日がどの程度続くのか分からない夏が続くでしょう。熱中症は命にもかかわる病気であり、夏バテは生活に支障を来す不調です。自分や周囲の人の状況や体調をしっかりと見極めて対策することが、これからますます大切になってきます。まずはできることから取り組んで、日本の夏を乗り切っていきましょう!


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