コロナ禍から考える、子どもの心のケア方法は?子どもの心に寄り添う親のケアスキル

コロナ禍での子どもたちを取り巻く環境は少しずつ落ち着きを取り戻しつつあります。しかし依然としてストレスや不安を抱えた子どもも少なくはありません。また外出自粛を経験して、家族の絆を深める良い影響があった一方で、親子が向き合う難しさも浮き彫りとなりました。

コロナ禍をきっかけに、「子どもの心への寄り添い方」を親が学ぶことは、これからのスキルとしても活かせます。日本における認知行動療法の第一人者、大野裕先生に子どもの心に寄り添う親のケアスキルについてうかがいました。

(インタビューは2022年4月20日に行い、内容はその時の状況に基づいています。)

コロナ禍3年目の、今の子どもたちの心の状態は?

コロナ禍3年目の、今の子どもたちの心の状態は?

コロナ禍の子どもの心について継続的に調査を行っている、国立研究開発法人国立成育医療研究センター「コロナ×こどもアンケート」の第7回調査報告書(調査期間2021年12月8日~12月31日: 保護者 3,282人、こども487 人)によれば、子どもたちのQOL(生活の質)には少しずつ改善傾向が見られました。

しかし、小学1~3年生のこどもによる回答全体では、34%が「コロナのことをかんがえるといやなきもちになる」を選択。また、「コロナのことはかんがえないようにしている」は33%、「すぐにイライラする」は25%。いずれか1つ以上のストレス反応を選択したこどもは、こども回答全体で71%と、それまでの第5回調査(調査期間:2021年2月19日~3月31日)、第6回調査(調査期間:2021年9月13日~9月30日)とほぼ変わらない結果となっています。

出典:国立研究開発法人国立成育医療研究センター「コロナ×こどもアンケート」第7回調査報告書 P32

大野先生は「現在のコロナに関する不安やストレスは、個人差や年齢差が大きくなっているのではないか」といいます。

「例えば小学校低学年の子は、コロナ禍の“新しい生活様式”が入学当初から当たり前の日常になっているため、不安やストレスを感じずに過ごしている子も少なくないでしょう。それに比べて、小学校高学年や中学生など思春期の子どもたちは、修学旅行などのイベントがなくなるなどの大きな影響を受け、それまでの学校生活との違いを肌で感じている世代なので、ストレスや違和感をもっている子も多いと考えられます」

コロナ禍は「不安にどう向き合い、どう対処したらよいか」「人と人とのつながりの大切さ」を皆が認識する機会になったと大野先生。この機会を活かし、コロナの不安に限らず、親が子の不安にどう気づき、サポートしていけばよいのか、また親自身もストレスや不安を抱えた時に、どのように対処すればよいのかを学んでいきましょう。

親が気づきたい、子どもの不安のサインとは?

親が気づきたい、子どもの不安のサインとは?

子どもは不安に思った時、それをすぐに口に出せるとは限りません。子どもの不安や心の不調はどのようなサインとなって現れるのでしょうか。

「子どもの性格というものは、急激に変わることはありません。しかし一見、急に性格が変わったように見えることがあります。そんな時はストレスを体験し、心の変調が起きていると考えるのが自然です。子どもに限らず大人でもそうですが、“今までと違う変化が起きている”というのがポイントになります」と、大野先生。具体的には、以下のような変化が挙げられるといいます。

●急に元気がなくなった
●急に口数が減った
●急に怒りっぽくなり、わがままや口ごたえが増えた
●急に興奮して物を壊したりするようになった
●急にぼんやりしていることが多くなった
●体調不良や睡眠不足を訴える
●食欲の急な低下や増加
●生活リズムの乱れ

子どもの性格が急に変わったように感じたら、それは心の不安や不調のサインかもしれません。そのようなサインを見つけたら、親はどのようにケアをしていけばよいのでしょうか。

まずは耳を傾けることから!子どもの不安に向き合うポイント

まずは耳を傾けることから!子どもの不安に向き合うポイント

「まず子どもは何を不安に思っているのか、耳を傾けることがいちばんの基本です」という大野先生。子どもの話を聞くというのは当たり前のことでありながら、案外難しいものです。子どもの話を上手に聞くポイントをうかがいました。

①子どもと一緒にいる時間を増やす
まずは子どもと一緒にいる時間を増やすことで、子どもが自然に話しやすくなるような環境をつくりましょう。コロナ禍によって、なかなか友達と話せない寂しさがあるなら、家族との関係の中で寂しさの穴埋めをしてあげることも大切です。

②子どもが不安を口にした時、すぐに「心配しなくて大丈夫」と励まさない
子どもが不安を口にした時、つい「心配しなくて大丈夫だよ」とすぐに励ましてあげたくなりますが、実はこれはNG。子どもは不安な気持ちを否定されたように感じてしまいます。まずは「こういうことが不安なんだね、話してくれてありがとう」と不安な気持ちを肯定し、共感を示しながら対話につなげましょう。

新型コロナウイルス感染症に罹患することを不安に思っている子どもに対しては、不安な気持ちを受け止めた上で、きちんと手洗いをしてマスクをつけるなど、感染対策をすれば、罹患する確率を減らすことができるということを一緒に考えるといいでしょう。

③問いかけは「WHAT(なぜ)」ではなく、「HOW(どうやって)」で
人は不安になると「なぜ、こうなってしまったんだろう?」と原因を考えがちです。しかし「なぜ?」と原因を探る問いかけは、自分や相手を責める言葉に転じてしまいがち。それよりも「どうしていけばよいだろう?」と問いかけることで、これからやるべきことが見えてきます。「原因探しよりも、手立て探し」の問いかけを意識しましょう。

④アドバイスは押しつけず、別の見方を示す対話のきっかけに
子どもの話を聞いてアドバイスをする時は、「こうするといいよ」「こうしなさい」と一方的な押しつけにならないように注意しましょう。「私はこうするといいと思うけれど、あなたはどう思う?」と、対話につなげる形にします。特に不安な時は、いつもの考え方のクセにはまり込んだり、極端な考えになったりしがちです。アドバイスとして別の見方や考え方を示し、対話をしていくことで、子どもも冷静に現実に向き合うことができます。

また、ポジティブシンキングが必ずしも正しいとは限りません。現実を見ないポジティブ思考は子どもを追い詰めてしまうことも。現実に目を向けた対話から情報を収集し、適切な糸口を見つけていきましょう。

⑤子ども自身が解決する心の力を奪わない
子どもが不安になったり悩んでいたりするのを見ると「何とかしてあげたい」とあれこれ手助けしたくなるものです。しかし、手を出し過ぎることは、「あなたの力では不安や問題を解決できない」というメッセージとして伝わってしまう場合があり、自らの不安や問題を解決する自信を失い、親に依存してしまう可能性も。あくまでも子どもが主役です。

⑥行動が意識を変える!一緒に体を動かしたり、趣味の時間を共有したりしてみよう

行動が意識を変える!親子で一緒に体を動かしたり、趣味の時間を共有したりしてみよう

外に出て体を動かすことも心の不安の解消に役立ちます。不安から離れて、「今ここ」に集中し、家族でコミュニケーションを取りながら体を動かしてみることで、気持ちが明るくなり、様々な可能性に気づく意欲が湧いてきます。運動に限らず、子どもの好きなことを親が一緒に行うことも効果的です。

専門家に相談したほうがよい場合とは?

子どもの不安が2週間以上続き、家族だけで対処が難しい場合には、まずは子どものことをよく知る学校の担任の先生や、スクールカウンセラー、養護教諭などに相談してみましょう。そこから医療的な支援につながる道も開けます。親も抱え込み過ぎず、誰かに相談することが大切です。

親自身のストレスケアはどうすればいいの?

親自身のストレスケアはどうすればいいの?

子どものことばかりではなく、親が自分自身の心のケアをすることも忘れないようにしましょう。親のストレスが子どもの虐待につながるケースも残念ながら否定できません。親である大人が孤立せずに、家族や友人・知人など話せる相手をもつことが大切です。

気持ちを話せる相手がすぐに見つからない時は、「自分自身との対話」を通して心を整理してみることもおすすめです。次の「7つのコラム」の質問を参考に、自分の考えを書き出してみましょう。書くことで気持ちが整理されてきます。

違う視点がみえてくる!?「7つのコラム」の書き方

このような自分との対話を、AIとのチャットボットで気軽に行える大野先生監修の「こころコンディショナー(https://www.cocoro-conditioner.jp/)」というサイトもあります。そのようなツールを活用してみることも一案です。

不安は人間にとって必要な感情!上手につき合おう

不安は人間にとって必要な感情!上手につき合おう

「現実の受け取り方」や「ものの見方」を認知といいます。環境の変化や新しい出来事に遭遇すると、人はまずマイナス面を認知する習性があります。なぜなら、進化の歴史の中で、新しい出来事に慎重になることによって、自分を脅かす存在を回避し、生命を維持してきたから。そのため、新しいことが不安なのは当然で、不安というのは人間にとってなくてはならない「アラーム(警報)」のような感情なのです。

しかし、不安な気持ちに押し潰されてしまわないためには、マイナス面を認知した後に、現実の中から別の情報や見方がないかどうかを整理し、自分が期待した現実に近づくために行動してみることが大切。脳は行動をして初めて、次のことをする意欲が湧くようにできています。気分を意識的に変えるのは難しくても、行動はすぐにでも変えられます。「まず行動をすれば、心は後からついてくる」と大野先生。まずは次のような簡単な行動から始めてみるのも十分に効果的です。

【行動すると】    →         【心の変化が起きる】
●深呼吸をする    →         心が落ち着く
●笑顔をつくる    →         気分が明るくなる
●背筋を伸ばす    →         目線が前を向き、気分も前向きになる
●体を動かす       →         気分がすっきりする

コロナ禍によって、私たちは「大きな社会変化が急に訪れる」ということを経験しました。社会変化による心の不安は避けられないことです。しかしながら、具体的な心のケアスキルを使って親子で対話・行動していけば、決してそこから抜けられないものではありません。コロナ禍の体験は、子どもや自分自身が、目まぐるしく変化する時代を、心の健康を守りながらしなやかに、元気に生きていく貴重な糧になるはずです。


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監修プロフィール
精神科医 おおの・ゆたか 大野 裕 先生

1978年慶應義塾大学医学部卒業と同時に、同大学の精神神経学教室に入室。コーネル大学医学部、ペンシルべニア大学医学部を経て、慶應義塾大学教授を務めた後、2011年より独立行政法人(現・国立研究開発法人) 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター センター長に就任。現在は顧問。一般社団法人認知行動療法研修開発センター理事長などを務める。著書に、『こころが晴れるノート』(創元社)など。

監修プロフィール
精神科医 おおの・ゆたか 大野 裕 先生

1978年慶應義塾大学医学部卒業と同時に、同大学の精神神経学教室に入室。コーネル大学医学部、ペンシルべニア大学医学部を経て、慶應義塾大学教授を務めた後、2011年より独立行政法人(現・国立研究開発法人) 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター センター長に就任。現在は顧問。一般社団法人認知行動療法研修開発センター理事長などを務める。著書に、『こころが晴れるノート』(創元社)など。

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