インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる感染症で、原因となるインフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3種類があります。インフルエンザに感染すると1〜3日間の潜伏期間を経て、急激に高熱や、足腰・関節の強い痛み、悪寒、倦怠感などの全身症状が現れるのが特徴です。通常は寒い季節に流行しますが、近年は散発的に流行することもあるため、1年を通じてインフルエンザに対する感染予防、対策が必要です。
自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器病学会認定専門医、日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医、日本抗加齢医学会専門医、米国消化器病学会国際会員。『新しい腸の教科書』(池田書店)他著書多数。
インフルエンザの感染経路は大きく分けると、感染者の咳やくしゃみによりインフルエンザウイルスを吸い込む「飛沫感染」、インフルエンザウイルスが付着した物に触れた手で、自分の目、口や鼻の粘膜に触れる「接触感染」の2つがあります。
年によって流行の大小はありますが、インフルエンザは毎年冬に罹患率が高まります。その理由ははっきりしていませんが、鼻やのどの粘膜が乾燥することでインフルエンザウイルスがとりつきやすくなったり、気温や湿度が低くなると抵抗力が低下したりして、発症しやすくなると考えられています。
インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型の3種類があり、流行の原因となるのはA型とB型。いずれも、毎年少しずつ変異して形を変えるという特徴があるため、以前インフルエンザにかかったことがある人でも、再びインフルエンザに感染する可能性があります。
インフルエンザに感染すると、どのような症状があらわれるのでしょうか?インフルエンザに感染後、平均2〜3日の潜伏期間を経て、38℃以上の急激な発熱に加え、筋肉や関節の痛み、倦怠感、頭痛、悪寒などの症状が現れます。かぜの症状が鼻やのどなど局所的なのに対し、強い全身症状が急激に現れるのがインフルエンザの特徴です。症状の目安として、38℃以上の熱が突然出たら、インフルエンザを疑いましょう。下表のような症状には特に注意しましょう。少しのどが痛い、頭が重い、といった症状から始まる場合もあります。
インフルエンザは強い全身症状が現れ、肺炎などの合併症を招きやすいため、早めの受診・治療が必要です。特に、免疫力の弱い乳幼児や妊婦、高齢者、糖尿病や、呼吸器、腎臓、心臓に慢性疾患のある人は重篤化しやすいため、インフルエンザが疑われる症状が現れたらすぐに受診しましょう。
受診の際には、医療機関には高齢者や免疫力が低下した人などが多くいるため、人にうつさないようにマスクを着用しましょう。事前に医療機関に電話し、受診時間や受付場所などを確認することも一案です。
医療機関ではインフルエンザが疑われる場合、インフルエンザの検査を行います。検査の方法は、鼻やのどの粘液を採取しインフルエンザウイルスの有無を判定します。その結果によって、インフルエンザウイルスの増殖を抑える抗インフルエンザ薬、また、対処療法としてインフルエンザに伴う熱や痛みなどのつらい症状を抑える解熱鎮痛剤などが処方されることもあります。抗インフルエンザ薬は、発熱後48時間以内の服用で効果がより高まるといわれているため、早めの受診が大切です。
解熱と共にインフルエンザウイルスは減少しますが、解熱後2日以内もインフルエンザウイルスは体内に残っていると考えられています。症状が軽くなり元気になっていても、学校や職場でインフルエンザの感染を広げないためにも、登校や出勤は解熱後3日目以降からにしましょう。自宅療養の際は、家族間でのインフルエンザ感染を防ぐため次のことに気をつけてください。
インフルエンザと診断されたら、十分に睡眠をとり、安静に過ごしましょう。体内の水分が足りないと体液が循環せず、解熱しづらいため、こまめに水分を補給します。少し物が食べられるようになったら炭水化物、タンパク質、ビタミンA、Cなどを栄養のある物を食べ、体力をつけることも大切です。
インフルエンザの予防で効果的なもののひとつは、インフルエンザのワクチン接種です。ワクチンによる感染予防効果は50%程度と言われています。もし発症しても、インフルエンザの重篤化を防げるため、接種を心がけましょう。ワクチンの効果が持続するのは6カ月程度で、接種してから体内で免疫がつくられるまでに個人差はありますが2〜4週間かかります。インフルエンザの流行は例年11月頃に始まり、1〜3月にピークを迎えることから、流行前のワクチン接種を心がけてください。
ワクチン接種だけでは発症を防ぐことはできません。また、例年と異なるタイミングでインフルエンザが流行することもあるため、1年を通して次のようなケアでインフルエンザの予防を心がけるとよいでしょう。
ウイルスを目で確認することはできませんが、共有して使う場所や物には多くのウイルスが付着しています。ウイルスが付着している場所は、あまり汚れが目立たないため、普段は掃除をしない所でもあります。インフルエンザが流行する期間、家庭内にインフルエンザ感染者が出た場合は、特に念入りに掃除するよう心がけましょう。
また、インフルエンザウイルスが付着しやすい場所に触れた後は、石けんで入念に手洗いしましょう。
インフルエンザワクチンは、ウイルスの感染力をなくした不活化ワクチンです。胎児に直接影響を及ぼすことがないため、妊婦でも接種することができます。妊娠中は免疫力が低下しウイルスや細菌に感染しやすく、感染すると、高熱や咳などにより母体の状況が悪化し、胎児にも悪影響を及ぼします。また妊娠中は、抗インフルエンザ薬が使いにくいことからも、インフルエンザの予防にインフルエンザワクチンの接種がすすめられています。