かぜ

かぜ

かぜは、一般に鼻やのど(上気道)がウイルスに感染して炎症を起こし、のどの痛みや咳、鼻水などの症状を引き起こす病気の集合体のことで、正式には「かぜ症候群」といいます。かぜは、誰もが経験する最も身近な病気ですが、かぜと似た症状のために見落とされやすい病気も多く、さらに、かぜをこじらせると思わぬ合併症を招くこともあるので、軽く考えるのは禁物です。

監修プロフィール
江田クリニック院長 えだ・あかし 江田 証 先生

自治医科大学大学院医学研究科修了。日本消化器病学会認定専門医、日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医、日本抗加齢医学会専門医、米国消化器病学会国際会員。『新しい腸の教科書』(池田書店)他著書多数。

かぜについて知る


かぜの原因

ウイルスが鼻やのどに感染し炎症を起こすことがかぜの原因

かぜは8〜9割がウイルス感染により起こります。原因となるウイルスは200種類以上といわれ、ウイルスによって好む環境や季節、現れる症状が異なります。ウイルスは、細菌やカビなど様々な病原微生物の中で最も小さな存在です。目には見えませんが、空中に浮遊したり、物などに付着したりして、私たちの周りに存在しています。主な原因ウイルスには次のものが挙げられます。

ライノウイルス 秋から春に流行し、鼻づまり、鼻水、くしゃみ、のどの痛みなどが現れる。かぜの大半を占める。
コロナウイルス 主に冬に流行し、鼻水、鼻づまりなどが現れる。
RSウイルス 秋から春に流行し、鼻水、咳、発熱などが現れる。ほとんどの幼児が感染し、乳児は重症化することもある。
パラインフルエンザウイルス 春から秋に流行し、鼻水、のどの痛みなどが現れる。
エンテロウイルス 夏に流行し、のどの痛み、発熱、下痢・腹痛などの腸の症状が現れる。
アデノウイルス 夏に流行し、発熱、激しい咳、のどの痛みなどが現れる。プール熱の原因はこのウイルスである。

かぜの症状

かぜの症状はウイルスに対抗するための防御反応

かぜの原因となるウイルスが鼻や口から体内に侵入し、鼻やのどの粘膜に付着して増殖すると、体はこれに対抗するために様々な防衛反応を起こします。この時に現れるのが、くしゃみや咳、鼻水、のどの腫れ、発熱といったかぜの症状です。感染すると一般的には次のような順で症状が現れます。

  • 鼻やのどの不快感
     ウイルスが鼻やのどに侵入すると、鼻やのどの不快感が現れる。この時点で適切にケアすれば、2〜3日で治ることもある。
  • くしゃみ、鼻水
     ウイルスが鼻やのどの粘膜に付着すると、これを排除しようと、くしゃみや鼻水が出る。
  • 鼻づまり、のどの腫れ・痛み
     ウイルスの増殖を抑えるために血液中の白血球が集まり、毛細血管から血液成分が染み出ることなどで鼻やのどの粘膜が炎症(腫れ)を起こし、鼻づまりや痛みを生じる。
  • 咳、痰
     ウイルスが下気道(気管、気管支、肺)にまで侵入すると、粘液でからめ取って排出しようとして、痰や、痰を伴う咳が出る。
  • 発熱、頭痛、倦怠感
     炎症が広がると、ウイルスの増殖を抑えたり、白血球の働きを高めたりするために体温が上がり、発熱、頭痛、倦怠感などの全身症状が現れる。ウイルスとの闘いが激しくなっている証拠。その後徐々に炎症が治まり、発症から1週間程度で回復する。

通常のかぜ症状は1週間程度で回復する

ウイルスが体内に侵入しても、かぜをひくかどうかは、その人の抵抗力とウイルスの量などのバランス次第。十分な抵抗力があれば感染を防げますが、抵抗力が弱かったり、ウイルスの量が多かったりすると感染しやすくなります。現れる症状や程度は、ウイルスの種類やその人の抵抗力などによって異なりますが、かぜの原因となるウイルスに感染すると上記のような症状を経て、大抵は1週間程度で回復するとされています。


かぜと似た症状が現れる病気との見極めは、「初期からの咳」

くしゃみ、鼻水、咳、発熱など、かぜと似た症状が現れる病気は数多くあります。かぜと、かぜと似ている病気を見分けるポイントは、“最初にどのような症状が現れたか”。通常のかぜは、鼻水や鼻づまり、のどの痛みなど上気道を中心として症状が現れ、最初に咳が出ることはほとんどありません。咳の症状が最初に出たら、肺炎や肺結核、百日咳、気管支ぜんそくなどの可能性があります。

その他、鼻水やくしゃみの症状でも、目のかゆみを伴ったり、くしゃみが連続したりする場合は、アレルギー性鼻炎の可能性があります。

病気の進行や悪化を避けるために、できるだけ早い段階でかぜ症状との違いにきづき、医療機関を受診することが大切です。


「かぜは万病のもと」症状悪化による合併症に注意

かぜをこじらせると合併症を引き起こすこともあります。主な合併症は、気管支炎や肺炎、中耳炎、副鼻腔炎など。特に肺炎は高齢者と子どもに多く見られ、命に関わることもあるので注意が必要です。

合併症の多くは、かぜで傷ついた粘膜に新たな細菌やウイルスが付着し、抵抗力が落ちた細胞に感染することで起こります(二次感染)。次のような症状が現れた場合は、合併症を疑い早めに医療機関を受診しましょう。

  • 高熱が続く
  • 咳が激しくなってきた
  • 黄色から黄緑色の膿のような痰が出る
  • 食欲がなく、食事が摂れない
  • 意識がはっきりしない

かぜの対策

かぜの原因となるウイルス対策に「乾燥を防ぐ」「マスクを着用する」「のど飴」

かぜの原因となるウイルスの活発化を防ぎ、鼻やのどの粘膜の抵抗力を高めるためにも、部屋の湿度を50%以下にならないよう保つとよいでしょう。病原体の増殖を防ぎ、のどの炎症を和らげるには、唾液の分泌を促すのどあめやトローチも有効です。マスクは周囲への感染を防ぐために必要です。また鼻やのどの粘膜を保湿する効果もあります。


かぜの発熱対策に「十分な水分補給」「体を冷やす」

熱が出ると脱水症状を起こしやすいので、こまめに水分を摂るようにします。汗をかくと体に必要な塩分も失われるため、塩分補給もできるスポーツ飲料などがおすすめです。

太い血管が通っているわきの下や太もものつけ根を冷やすと、効率よく熱を下げることができます。


体力の回復対策に「消化のよい食事」

かぜのひき始めに適切なケアをすれば、体がもっている治癒力によって1週間程度で治ります。ウイルスに対する抵抗力を落とさないよう、十分な休養、睡眠をとって、無理をせず安静に過ごしましょう。食べ物はできるだけ栄養価が高く、胃に負担をかけない消化のよい物を食べるようにします。食欲がなければ、無理に食べなくてもよいでしょう。


自己治癒力をサポートする「かぜ薬」

市販のかぜ薬は、かぜの症状を緩和して体力の消耗を防ぐことで、体本来の自己治癒力による回復をサポートするもの。かぜのひき始めなら、かぜ薬をのんでしっかり休養すれば悪化を防ぐことができます。購入する際は、薬剤師にアレルギーなど自分の体質に関する情報を伝えた上で、以下の表を参考に最も改善したい症状に合わせて選ぶとよいでしょう。

症状 薬の種類 成分・特徴
複数の症状が重なっていて、どれも同じくらいつらい 総合かぜ薬 発熱や頭痛、筋肉の痛みなどを和らげる解熱鎮痛成分、くしゃみや鼻づまり、鼻水を抑える抗ヒスタミン成分など様々な成分を配合。複数の症状がある場合や、かぜのひき始めに有効。
のどが痛い・熱を下げたい・頭痛がつらい 解熱鎮痛剤 熱を下げる作用と痛み止めの作用がある。発熱や頭痛、関節痛などを緩和するのに効果的。殺菌・消毒作用や抗炎症作用があるトローチやドロップはのどの痛みやいがらっぽさなどに有効。
鼻水・鼻づまりがつらい 鼻炎薬・点鼻薬 くしゃみ、鼻水、鼻づまりを改善する成分を配合。症状をすぐ止めたい時には、直接粘膜に薬剤が届く点鼻薬が効果的。内服薬と併用もできる。
咳がつらい 鎮咳去痰薬 咳を鎮める成分と痰を出しやすくする成分を配合。ひどい咳で眠れない時などに有効。

かぜの予防法

かぜ予防の基本は、ウイルスを体内に侵入させないこと

  • 風邪予防の基本①:石けんを使ってウイルスを流し落とす

ウイルスの多くは手を介して侵入するため、かぜ予防で最も効果を発揮するのが「手洗い」。ポイントは以下の通りです。

  • 手を水で濡らすだけではウイルスは落ちないため、石けんを使い、水で洗い流す。
  • 手のひら・手の甲全体から、手首までを15秒以上こすり洗う。
  • 指の間や爪の周り、親指のつけ根、手首は、特に洗い残しやすい部分なので注意する。
  • 手洗いの頻度を増やすほど予防効果が高まる。帰宅後や食事の前、トイレの後など、こまめな手洗いを習慣にする。
洗い残しやすい部位
  • 風邪予防の基本②:うがいとマスクでウイルスの侵入を防ぐ

外出先から戻ったら、うがいで口内に付着したウイルスや汚れを洗い流します。かぜの流行時に人混みに出る場合は、マスクをつけてウイルスの侵入を防ぐのも鉄則です。

かぜの予防

お役立ちコラム

アルコール入りジェルも有効

何度も手洗いする人や外出先などで手を洗う水がない場合は、アルコール入りジェルを使うのも有効です。水なしで簡単に使える上、消毒効果が高いのが利点。家族がかぜをひいた時などは、玄関に1つ置いておくと、ウイルスをもち込まないで済むため、感染拡大の防止に役立ちます。


体の抵抗力をつけることも有効なかぜ対策

かぜ対策として、体の抵抗力をつけることも大切です。体の抵抗力が十分にあれば、ウイルスが体に侵入してもかぜをひきにくく、ひいたとしても軽い症状ですみます。日頃から十分な睡眠と、栄養バランスのよい食事、適度な運動を心がけ、体力を高めておきましょう。またストレスは、自律神経のバランスを乱して免疫力を低下させる大きな原因。自分なりのストレス解消法を見つけて、ストレスをため込まないようにしましょう。


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