現在の治療法では、神経節の中に入り込んだヘルペスウイルスを取り除くことはできませんが、適切な治療により、ヘルペスの症状の悪化を抑えて再発を軽症化することができます。処置が早いほど症状は軽く回復も早まりますので、チクチク、ピリピリといった再発の前兆が現れたらすぐに皮膚科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。治療は、ヘルペスウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬を基本として、症状により抗生物質や鎮痛剤、ビタミン剤を使用する場合もあります。抗ウイルス薬は数種あり、症状の程度によって使い分けられます。症状の悪化を防ぐためには、患部を清潔に保ち、強い紫外線を避け、十分な休養を。炎症を悪化させるアルコールは控えましょう。
ヘルペスの原因である水痘ウイルスに対して、水痘ワクチンが有効です。免疫力が低下している方、帯状疱疹を繰り返す方など、予防的に水痘ワクチンを接種することで、重症化を防ぐことができます。
単純ヘルペスの発症時にできる水ぶくれの中には膨大な数のウイルスがいるため、人から人、またはウイルスが付着した物から人への接触感染によって、非常に感染しやすいことも特徴です。特に皮膚に傷や湿疹ができていたり、抵抗力が落ちていたりする人がウイルスに接触すると感染する率は高くなります。症状が出ている時は特に、他人への感染を予防するために次のことを心がけましょう。
ヘルペスウイルスは、他のウイルス性の病気と異なり、一度感染すると症状がなくなった後もウイルスが神経節の中にじっと潜み、免疫力が弱まった時に症状が再び現れます。口唇ヘルペスの再発頻度は平均年約2回。2型の性器ヘルペスでは女性で平均年7回、男性で平均年12回と頻繁に繰り返すのが特徴です。再発してもやがて自然に治りますが、症状が悪化してウイルスが極端に増殖すると再発頻度が高くなり、症状も重くなります。また、再発を繰り返すと水ぶくれの部分がただれて痕が残ってしまうことがあるので、早めにケアを行うことが大切です。
主にストレスや疲労、睡眠不足、発熱などがヘルペス再発のきっかけになりますが、次のようなことで免疫力が低下した時にも再発しやすくなるので注意しましょう。
口唇ヘルペスの場合は、病院でも処方されている外用の抗ウイルス薬が市販されています。ただし、過去に病院で口唇ヘルペスと診断されたことがあり、同じ症状である場合に限り使用が可能な再発治療薬です。購入の際には、薬剤師から使い方や副作用など、服用に関する説明を受けてください。唇やその周辺にピリピリ、チクチクとした再発の兆しが現れたらすぐに塗布を開始することがポイントです。
症状が出ている範囲が広い場合や、5日間使用しても症状が改善されない場合は使用を中止し、受診するようにしましょう。
1988年藤田保健衛生大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室助手、同大学医学部漢方医学センター助教、WHO intern、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、北里大学薬学部非常勤講師、首都大学東京非常勤講師などを経験。2013年芝大門 いまづクリニック開設。北里大学薬学部非常勤教員。著書に『風邪予防、虚弱体質改善から始める 最強の免疫力』(ワニブックス)など。