腰痛

腰痛

「腰痛」は病名ではなく、腰周囲の痛みや不快感を指す症状の総称です。腰痛は日本人の8割以上の人が一生に一度は経験するといわれる身近な症状ですが、検査により原因となる病気が分かる腰痛(特異的腰痛)より、原因がよく分からない腰痛(非特異的腰痛)の方が圧倒的に多いのが現状です。また最近では、安静は腰痛の再発や慢性化を招くことも分かっており、できるだけ体を動かすことがすすめられています。

監修プロフィール
芝大門 いまづクリニック院長 いまづ・よしひろ 今津嘉宏先生

1988年藤田保健衛生大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室助手、同大学医学部漢方医学センター助教、WHO intern、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、北里大学薬学部非常勤講師、首都大学東京非常勤講師などを経験。2013年芝大門 いまづクリニック開設。北里大学薬学部非常勤教員。著書に『風邪予防、虚弱体質改善から始める 最強の免疫力』(ワニブックス)など。

腰痛について知る


腰痛の原因

腰痛は悪い姿勢による腰への負担や心理的ストレスが主な原因

腰痛の多くは、心配する異常や病気のない腰痛です(非特異的腰痛)。原因と考えられるのは、長時間のよくない姿勢や動作による腰への負担や血行不良、心理的ストレスです。

  • 腰痛の原因①:姿勢による脊椎の髄核(ずいかく)のずれ
     背骨(脊椎)は「椎体(ついたい)」が積み重なったもので、その間にはクッションの役割をもつ「椎間板」がある。椎間板は外側が硬い繊維状の軟骨で、中央はゲル状の「髄核」でできている。髄核は姿勢によって前後に移動しやすく、腰を反らすと少し前にずれ、前かがみになると少し後ろへずれるが、悪い姿勢が続くと、髄核が後ろへずれたままとなり、腰に違和感や痛みが生じる。また大きな負荷が瞬間的にかかると、髄核が大きくずれ「ぎっくり腰」を起こすこともある。
姿勢により前後する「髄核」の位置
  • 腰痛の原因②:心理的なストレスは痛みの悪循環を招く
     長期間の心理的ストレスが続くと、痛みの抑制や快の感情にかかわる脳内物質「ドーパミン」が分泌されなくなる。その結果、自律神経のバランスが崩れたり、痛みを軽減する物質の分泌が低下しやすくなったりする。すると、めまいや耳鳴り、頭痛、動悸、胃腸の不調といった自律神経失調様の症状が現れたり、筋緊張が高まることによって腰の痛みが現れやすくなったりする。また、痛みがよくならないことが、さらなるストレスとなって痛みを悪化させる、という悪循環にも陥りやすくなる。
  • 腰痛の原因③:腰への負担による血行不良
     上半身の重みを支える腰は、特に負担がかかりやすい部位。背骨が緩やかなS字カーブを描き、体の前面と背面の筋肉をバランスよく引っ張り合うことで体の重みを分散させている。しかし、猫背反り腰など悪い姿勢が続いたり、運動不足で筋力が低下したりすると、S字カーブが崩れて特定の筋肉に負担がかかり、血行不良(筋肉疲労)から背中や腰に張りや痛みが生じてしまう。

腰に強い痛みやしびれを伴う場合、病気が原因のことも

腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、圧迫骨折、がんの脊椎転移などが原因となって腰痛が起こることもあります(特異的腰痛)。これらはMRIなどの画像検査で、腰痛の原因となる病気が特定できると考えられています。 特異的腰痛では、早急な治療が必要な場合があります。以下「腰痛の見極めチェック」を参考に、受診が必要な腰痛かどうかを確認しましょう。


腰痛の対策

まずは「腰痛の見極めチェック」で受診が必要かどうかを確認

腰痛の見極めチェック

腰痛の見極めチェック

腰痛の原因となる病気が無い場合、安静にし過ぎは禁物

これまで腰痛の治療として安静がすすめられてきましたが、現在、安静のし過ぎはかえってよくないとされています。痛みがつらい場合は、一時的な対処法として解熱鎮痛剤を利用して痛みを軽減させ、早めに体を動かせれば、腰痛の回復と再発の予防につながります。ぎっくり腰も例外ではありません。「安静のし過ぎ」や「心配のし過ぎ」は禁物と心得ましょう。


鎮痛・消炎剤で腰痛の痛みを軽減し、体を動かすほうが早期回復につながる

腰痛の痛みの軽減には、鎮痛・消炎効果のある市販のパップ剤も効果的。皮膚が弱い場合は、かぶれを起こしにくいローション剤やゲル剤、スプレー剤などを利用するのもよいでしょう。それでも痛みが治まらず、「激しい運動をした」「寝具を変えた」など原因となる心当たりがない場合は、自己判断で市販薬を続けるのではなく、早めに整形外科を受診しましょう。

腰痛の予防法

腰痛予防には中腰や前かがみの姿勢を避け、こまめに体を動かそう

特に、デスクワークや、介護・看護、長距離ドライバーなど、同じ姿勢が長時間続いたり重たい物を持ったりする職業の人は、腰痛になりやすいため気をつけてください。

腰痛予防のために歩いて買い物に行く、なるべく階段を使うなど日常生活の中でこまめに体を動かすことも大切です。腰痛予防には、ラジオ体操や太極拳なども有効。日頃から次のことも意識しましょう。

  • 長時間のパソコン作業や運転をする際は、30分に一度は休憩をとって軽く体を動かす。
  • 重たい物を持ち上げる時は、中腰を避け、膝を曲げて腰を落とした姿勢で行う。
  • 顔を洗う際は、前かがみの姿勢を避け、脚を開き軽く膝を曲げる。

体を反る姿勢、体をかがめる姿勢が続いたら、ずれた背骨(脊椎)の位置を元に戻すことをイメージして、「腰をかがめる、反らす」体操を行いましょう。

「腰をかがめる、反らす体操」

腰をかがめる、反らす体操

上半身の筋肉を鍛える運動が腰痛予防に有効

腹筋と背筋を強化することで、背骨をしっかりと支える筋力がつき、正しい姿勢を保ちやすくなります。腰痛対策に効果的な、レベル別の腕立て伏せをご紹介します。強度が低い「レベル1」から始め、慣れてきたらステップアップしましょう。

・腰痛対策 レベル別腕立て

レベル1: 1日20回×3セット

  1. 壁から30cm離れて立ち、両手を胸の高さで壁につける。
  2. かかとを床につけたまま、両ひじを曲げ伸ばす。

レベル2: 1日10回×3セット

  1. しっかりと安定した机の前に50〜60cm離れて立ち、両腕を机につける。
  2. 両ひじを曲げ伸ばす。

レベル3: 1日10回×3セット

  1. 両手は肩幅、両足は腰幅ぐらいに広げ、床につける。
  2. 両ひじを曲げ伸ばす。
腰痛対策 レベル別腕立て

※無理をせず、自分のペースで行いましょう。腰痛の痛みが悪化している場合や、治療中の病気やけががある場合、運動中に痛みを感じた場合は、まず医師に相談してください。


お役立ちコラム

腰痛を防ぐ寝具の選び方

腰痛がある場合、寝具を見直すだけで痛みが改善されることもあります。枕が高過ぎて頭が持ち上がったり、敷布団が柔らか過ぎて腰が沈み込んだりすると、背骨のS字カーブが崩れて腰に負担がかかり腰痛を招くことに。寝具は、自分の体にあった高さ・硬さのものを選ぶことが大切です。枕は頭が持ち上がらない程度の低さのもの、敷き布団は腰が沈み込み過ぎない程度のものを選びましょう。


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