手のかゆみ

手のかゆみ

仕事や家事、手洗いなどで、日常的にダメージを負いやすい手の皮膚。乾燥やひびわれといった手荒れに悩まされている人も多いでしょう。そんな手の皮膚症状の中でもかゆみはごく身近なものですが、その原因は様々で、判別するのが困難な場合や適切に対処しないと悪化してしまう場合もあります。手のかゆみにはどのようなものがあり、どのような対処をすればよいのかを知り、早めの症状改善を目指しましょう。

監修プロフィール
若松町こころとひふのクリニック院長 ひがき・ゆうこ 檜垣 祐子 先生

1982年東京女子医科大学卒業後、同大学皮膚科に入局。84年よりスイス・ジュネーブ大学皮膚科に留学。その後、東京女子医科大学皮膚科助教授、同附属女性生涯健康センター教授を経て、17年より現職。医学博士。専門はアトピー性皮膚炎、皮膚科心身医学。著書に『皮膚科専門医が教える やってはいけないスキンケア』(草思社)など。

手のかゆみについて知る


手のかゆみの原因

手のかゆみといっても、その原因は様々です。主な原因には次のようなものがあります。

●手湿疹
手湿疹は、家事での水仕事で起こりやすいことから「主婦手湿疹」とも呼ばれるもので、その名の通り、手にできる湿疹を指します。洗剤やシャンプーからの化学的な刺激や、家事による手への摩擦などといった物理的な刺激によって、手の皮膚のバリア機能が低下し、かゆみが生じます。皮膚が乾燥しがちな人やアレルギー体質の人、アトピー性皮膚炎のある人は、皮膚のバリア機能が低下しているため手湿疹を起こしやすくなります。

皿洗い、家事での水仕事のイメージ画像

●汗疱(かんぽう)
汗疱は汗腺が詰まって起こる小さな水疱で、汗疱に炎症が起きてかゆみや痛みを伴うようになった状態が汗疱状湿疹(かんぽうじょうしっしん)です。汗をたくさんかく夏や、緊張した時などに手に汗をかきやすい人に多く見られます。

●掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
掌蹠膿疱症は、原因は明らかにはなっていませんが、喫煙や金属アレルギー、扁桃腺や歯の根元などに潜む慢性炎症が、発症や悪化の要因として考えられています。

●接触皮膚炎(せっしょくひふえん)
接触皮膚炎は、皮膚に触れた物質が刺激となって起こる炎症です。アレルギー反応によって起こる「アレルギー性接触皮膚炎」や、何らかの原因物質に接触した皮膚が太陽などの光にさらされることで起こる「光接触皮膚炎」などがあります。
アレルギー反応の原因となる物質は様々で、人によって異なります。育てている植物や調理する野菜、アクセサリーや革のなめしなどに用いられる金属、炊事用手袋に使われる天然ゴム、衣類、洗剤、化粧品やジェルネイルなど、日常的に接する物で発症します。
接触皮膚炎については、こちらもご覧ください。
かぶれ(接触皮膚炎)

●その他の手のかゆみの原因
カンジダ菌という皮膚などに棲む常在菌が異常増殖して発症する「カンジダ性指間びらん症」や、ヒトヒゼンダニというダニが皮膚に寄生して起こる「疥癬(かいせん)」によってかゆみが起こることもあります。
「カンジダ性指間びらん症」は水仕事などで手に湿り気が残ることで生じやすく、「疥癬」は高齢者福祉施設などで感染が広がるケースが多く見られます。


手のかゆみの症状

手のかゆみの症状を、原因別に紹介します。これらの症状は原因が異なっていても、似ていたり、幾つかの症状が重なって現れたりします。

手のひらのかゆみのイメージ画像

●手湿疹
手湿疹は夏と冬で症状が異なります。夏は手全体の皮膚にかゆみや赤み、水疱(汗疱状湿疹)が現れます。また、冬は指先や指の関節がかさついたり白く粉っぽくなったりし、進行すると手のひらまで広がって、皮がむけたりかゆみや赤みが生じたりします。

●汗疱
汗疱は、手指や手のひらなどに1~2mmほどの透明で小さな水疱ができ、かゆみが生じます。水疱は、複数個が散らばって現れることもあれば、一度にたくさん現れることも。春から初夏にかけての時期に発症が多く見られ、汗で蒸れると悪化します。また、手湿疹と同時に起こることもあります。水疱は自然に破れて乾燥し、やがて薄い膜のようになって剝がれ落ちていきますが、故意に破ったり刺激を加えたりすると、症状が悪化するので注意しましょう。1~2カ月で症状は改善しますが、再発することも多いのが特徴です。

●掌蹠膿疱症
掌蹠膿疱症は、両手の指先や小指球(しょうしきゅう:手のひらの小指側の膨らんだ部分)などに膿疱(のうほう:うみがたまった膨らみ)が重なり合うように次々とでき、皮膚が厚くなってひび割れたり、剝がれ落ちたりします。症状が長引きやすい傾向があります。

●接触皮膚炎
接触皮膚炎は、刺激を受けたところに赤い斑点(紅斑)や水疱ができ、かゆみや痛み、赤み、腫れが生じます。水疱はやがて水分が皮膚内に吸収されてかさぶたになり、治っていきますが、水疱が破れるとただれてしまうこともあるため、かきむしらないようにしましょう。

●その他の手のかゆみの症状
「カンジダ性指間びらん症」は、指の中でも特に間隔が狭い中指と薬指の間に起こりやすく、皮がむけ、赤みやかゆみが生じます。「疥癬」では手に小さな水疱ができる他、体に赤い発疹ができて、特に夜間に激しいかゆみに悩まされます。


手のかゆみの治療・対処法

手のかゆみは日常的なものであり、多くの場合、保冷剤などで患部を冷やすことで緩和が可能です。手湿疹のように手の保湿で和らぐものもあります。しかし、原因が異なっていても症状が似ている場合などは判別が難しく、皮膚科の医師による診断と適切な治療が必要なこともあると覚えておきましょう。

指に塗り薬を出すイメージ画像

●手湿疹
手湿疹は炎症が起きていない軽度の状態であれば、刺激の少ないハンドクリームなどで保湿すれば症状を緩和することが可能です。炎症を起こしてかゆみがひどい場合は、抗炎症効果の高いステロイド外用薬を使用します。多くの場合、2~4週間ほどで症状は改善しますが、症状が長引く場合や、何度も繰り返す時は早めに皮膚科を受診しましょう。

●汗疱
汗疱のかゆみは冷やすと和らぎます。炎症が起きてかゆみがひどい場合は、ステロイド外用薬で炎症を抑えましょう。何度も症状を繰り返す場合や大きな水疱がある場合、症状が悪化していく場合は、汗疱でない可能性もあるので、皮膚科を受診してください。

●接触皮膚炎
接触皮膚炎は患部を水でよく洗い、ステロイド外用薬などでかゆみを抑えます。症状が軽い場合は数日で完治しますが、症状が改善しない場合や長期間続く場合は皮膚科を受診し、検査を受けて原因物質を明らかにするとよいでしょう。

●まずは受診してもらいたい「掌蹠膿疱症」「カンジダ性指間びらん症」「疥癬」
手のかゆみのうち、特に診断や対処が難しい掌蹠膿疱症やカンジダ性指間びらん症、疥癬は、早めに医師に相談し、適切な治療を受けることが大切です。疑わしい症状があったら、迷わず皮膚科を受診してください。


いずれの場合も患部への刺激は控えましょう

手のかゆみがあると、つい患部をかいたり触ったりしてしまいますが、実際にかゆみがなくても無意識に同じ場所をかいてしまう「かき癖」がある人もいます。どのような場合であっても、皮膚をかきむしったり、過度に触ったりすると、症状の悪化や痕が残る原因になります。かいてしまいそうになったら、指を組んだり深呼吸したりして、気を紛らわすとよいでしょう。

手のかゆみで掻きそうになったら、指を組んだり深呼吸をしたりして気を紛らわせるイメージ画像

手のかゆみの予防法

手のかゆみは、原因によって予防法が異なりますが、予防の基本となるのは、手を濡らしたままにせず清潔に保ち、過度な刺激を与えないことです。いずれも自分でできることなので、ぜひ日常生活に取り入れてみましょう。

●手を濡らしたままにしない

水仕事や汗をかいた後などにこまめに手を拭くイメージ画像

手を濡らしたままにしておくと、皮膚のバリア機能が低下してしまいます。水仕事や汗をかいた後などは、こまめに手を拭くようにしましょう。拭き残しのないように指と指の間まで意識して拭いてください。キッチンや洗面所にタオルを何枚も用意しておき、手を濡らす度に丁寧に水分を拭き取って、1回ごとにタオルを替えるのがおすすめです。ペーパータオルを利用してもいいでしょう。
手を洗い水分を拭き取った後は、皮膚のバリア機能を守るために、保湿効果の高い尿素やヘパリン類似物質配合のハンドクリームなどを塗り、しっかりと保湿してください。また、緊張したりストレスがかかったりすると手に汗をかきやすくなります。気の張った状態が続かないように、リラックスを心がけましょう。

●手になるべく刺激を与えない
水仕事を行う場合は手袋をしたり、洗剤などは低刺激性の物を使ったりするとよいでしょう。また、濡らしたり乾かしたりすることの繰り返しも手への刺激になります。洗い物をまとめて行ったり、食洗器を導入したりして、繰り返しをできるだけ減らしてみてください。
アレルギーによってかゆみが出る場合は、まずその原因となる物質を特定し、接触しないようにすることが予防への第一歩になります。原因物質が分からない場合は、皮膚科で調べてもらうとよいでしょう。


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