群発頭痛(ぐんぱつずつう)とは、片側の目の奥や眼球の周辺に、じっとしていられないほどの激しい痛みが周期的に現れる頭痛で、一定期間の毎日ほぼ同じ時間に15~180分痛みが続きます。原因となる病気がないのに繰り返し起こる「慢性頭痛」の代表的なものの1つです。
患者は20~30代の働き盛りの男性に多く、男女比は3:1とされます。発生率は人口10万人当たり5~53人で有病率は約0.12%と、片頭痛や緊張型頭痛に比べると患者数は少ないものの、ある日突然発症し、痛みがあると生活への影響が大きい疾患です。また、まれな疾患のためなかなか診断がつかなかったり、誤診されたりすることもあります。
医学博士。日本頭痛学会専門医・指導医・代議員。東海大学医学部卒業後、ドイツ・米国の大学にて脳神経内科を学ぶ。東海大学脳神経内科専任講師を経て、05年、にわファミリークリニックを開設。15年、専門医のみによる日本初の頭痛専門クリニックを開く。著書に『日本初の頭痛専門クリニックが教える最新頭痛の治し方大全』(扶桑社)などがある。
群発頭痛が起こる原因についてはまだ解明されていない部分も多く、諸説ありますが、現在有力視されているのが、「視床下部(ししょうかぶ)、特に視交叉上核(しこうさじょうかく)説」です。
<群発頭痛の主な原因と考えられるもの>
●群発頭痛の原因と考えられる「視床下部、特に視交叉上核説」
脳には、顔面の感覚をつかさどる三叉神経(さんさしんけい)や自律神経を調節する、視床下部という組織があります。この視床下部が何らかのトリガー(きっかけ)によって異常を来し、その影響で目の奥を通る内頸動脈(ないけいどうみゃく)という血管が拡張して周辺に炎症が生じ、頭痛や頭痛に付随する様々な症状を起こすと考えられています。
視床下部は男性ホルモンの分泌の司令塔でもあることから、男性ホルモンの過剰分泌の関与も指摘されています。また、視床下部には体内時計(サーカディアンリズム・概日リズム)をコントロールする視交叉上核があり、群発頭痛が定期的に同じ時間帯に起こることや、視床下部の異常による体内時計の乱れでメラトニンなどのホルモンの分泌異常が起こることから、この視交叉上核も群発頭痛の発症に影響すると考えられます。
●視床下部を刺激する主なトリガー
視床下部の働きに異常を来すトリガーには、次のものがあります。
・アルコール(ビールや赤ワインなど)
・カプサイシンなどを含む刺激の強い食べ物
・喫煙
・血管拡張薬
・サウナや炎天下での行動
・夜更かしや睡眠不足、昼寝など睡眠リズムの乱れ
・急激な気圧変動
・強い光やにおい
・ストレス
・性生活
●自律神経が乱れやすい春と秋は要注意
季節の変わり目は自律神経のバランスも乱れやすく、群発頭痛のリスクが高くなります。特に、春と秋は、気圧の変化が激しかったり、環境が変わってストレスがたまりやすくなったりするため注意が必要です。
●遺伝や他の頭痛の関与は?
群発頭痛は、家族に患者がいる場合に発症する割合が約6%といわれており、遺伝的な要因の関与は高いと考えられます。一方、片頭痛や緊張型頭痛などがあることで、群発頭痛のリスクが高くなることはありません。
群発頭痛の症状には次のような特徴があります。
<群発頭痛の主な症状>
●群発頭痛の痛みが起こる場所は「片方の目の奥や眼球周辺」
痛みが起こるのは、片側の目の奥や眼球周辺で、一度発症すると、同じ側にだけ痛みが起こり、反対側に起こることはありません。
●群発頭痛の痛みの強さは「じっとしていられないほどの激しい痛み」
激しい痛みがあり、尿路結石、心筋梗塞と並ぶ三大激痛に数えられることも。死に至ることはありませんが我慢できる痛みではなく、あまりの痛さに体が痛みから逃れようと自然に動いてしまったり、自律神経が乱れて興奮状態になったりすることから、じっとしていられない、壁に頭をぶつけたくなるという人が多く見られます。
●群発頭痛は周期的に訪れ、毎日決まった時間に起こる
痛みは周期的に訪れ、一定期間中、毎日決まった時間に起こります。
・群発頭痛が起こる周期は年に1~2回という人が多い
群発頭痛には、痛みが起こる「群発期」と痛みがない「寛解期(かんかいき)」があり、この群発期と寛解期を繰り返すものを反復性群発頭痛といいます。群発期は、主に1~2カ月程度続きます。年に1~2回群発期がやってくる人が多いのですが、その間隔には個人差があり、中には数年おきの人も。大まかな周期は把握できますが、実際にいつ痛みが起こるかは分かりません。また、群発期が1年以上続き、寛解期がほぼ認められない慢性群発頭痛の人もいます。
・群発頭痛の痛みが続く時間は15~180分
群発頭痛の痛みが起こる頻度は、2日に1回から1日8回程度で、15~180分続いて自然に治まります。なお、痛みの時間が15分より短かったり、180分より長かったりする場合、群発頭痛とは異なる疾患になります。
・群発頭痛の痛みが起こりやすい時間帯は明け方
群発頭痛は、就寝中、特に明け方に痛みが起こることが多く、群発期は同じ時間に激痛で目覚めてしまいます。
●群発頭痛では痛み以外の症状が顔面や目、鼻にも現れる
群発頭痛の痛みは、側頭部(こめかみ)や下あご、歯などに広がることもあります。また、多くの場合、痛みが起こる側の顔面や目、鼻に、次のような症状を伴います。
・顔面
額や顔面の発汗、紅潮など
・目
涙、結膜の充血、まぶたのむくみや垂れ下がり、瞳孔の縮小など
・鼻
鼻水、鼻づまりなど
これらの症状が起こるのは、涙腺や鼻腔などに関与する副交感神経節(翼口蓋神経節:よくこうがいしんけいせつ)が、視床下部の異常によって活性化するためです。この他に、女性は吐き気を伴いやすい傾向があります。頭痛と頭痛に付随する症状は、徐々に起こるのではなく一気に起こります。
●片頭痛や緊張型頭痛と群発頭痛の見分け方
同じ慢性頭痛である片頭痛や緊張型頭痛とは、症状や痛みが現れる場所、痛む時間などが異なります。
|
片頭痛 |
緊張型頭痛 |
群発頭痛 |
頭痛の症状 |
60%はズキズキ 40%は非拍動性 (ズキズキではなく締めつけられるような痛み) |
頭重感 側頭部絞扼感 (孫悟空の頭の輪っかのような締めつけられる痛み) |
激痛 |
頭痛のイメージ |
側頭部を押さえて動かないでじっとしていたくなる |
頭を振ったり動かしたりすると楽になる 首回りを自然ともみたくなる |
頭を殴りたくなる 壁にぶつけたくなる 髪の毛を抜きたくなる |
頭痛の部位・ 左右差 |
片側性:60% 両側性:40% |
後頭部や側頭部を中心にどの部位にも |
眼窩・顔全体だが必ず片側のみ |
頭痛が続く時間 |
4~72時間 |
30分~7日 |
15~180分 |
頭痛が起きている時の特徴 |
動くと痛い 暗い場所が楽 |
動くと楽 |
動かないといられない |
●50~60代になると群発頭痛は起こらなくなる
群発頭痛は、発症してしまうとずっとつき合っていかなければいけない病気かと思われますが、そうではありません。50~60代になると脳の過敏性が低下するため、痛みが起こらなくなっていきます。
<群発頭痛の主な治療・対処法>
●群発頭痛は市販の薬を飲んでも治らない。早めに頭痛専門医を受診する
群発頭痛の痛みには、市販の鎮痛薬は全く効きません。痛みが生じたらできるだけ早く、頭痛外来や脳神経内科、脳神経外科を受診し、頭痛の専門医の治療を受けましょう。
日本頭痛学会のホームページで最寄りの認定頭痛専門医を調べることができます。
日本頭痛学会認定頭痛専門医一覧
●群発頭痛が起きている時の主な治療法
痛みが起きている場合、発作後10分以内に処置できるなら、フェイスマスクによる純酸素の吸入が有効です。また、トリプタンの皮下注射、神経ブロック注射も即効性があります。
電気による刺激で症状を緩和する神経刺激療法(ニューロモデュレーション)は、即効性は酸素吸入やトリプタンに劣りますが、発作の頻度を低下させる効果があり、薬を使わないため妊婦も治療を受けられます。ただし、保険適用外(2026年4月現在)です。
●吐き気がある急な頭痛は「クモ膜下出血」の危険性も。迷わず救急車を
急に激しい頭痛が起こる疾患には、クモ膜下出血や、クモ膜下出血を引き起こす脳動脈解離(のうどうみゃくかいり)があります。クモ膜下出血の場合は頭全体に痛みがあり、けいれんや吐き気を伴ったり、意識を失ったりすることも。また、脳動脈解離は後頭部や首すじに痛みが起こるもので、症状は主に頭痛のみです。このように群発頭痛とは痛みの起こる場所や症状が異なりますが、特に初めて群発頭痛を発症した時に見分けるのは難しいでしょう。我慢できない頭痛が起きたら、迷わず救急車を呼ぶようにしてください。
●突然やってくる群発頭痛は備えが大切
群発頭痛はいつ起きるか分からないので、備えが大切です。寛解期にもトリプタン(点鼻または自己注射)を常備しておくと、安心できるでしょう。
群発頭痛は次の群発期が来るのを防ぐ方法は今のところ存在しませんが、痛みの頻度や強さを抑える薬の使用など様々な予防療法があるので、医師に相談しながら自分に合った予防療法を見つけてください。また、薬などによる予防療法だけでなく、生活習慣を見直すことも大切です。
<群発頭痛の主な予防法>
●薬などによる群発頭痛の予防療法
・反復性群発頭痛の場合
群発期と寛解期を繰り返す反復性群発頭痛の場合は、最も有効な副腎皮質ステロイドや、第一選択薬のカルシウム拮抗薬、エルゴタミン製剤、炭酸リチウム、トピラマートなどの薬で、頭痛の回数や痛みの強さを抑える予防療法がとられます。これらの薬を組み合わせて使用する場合もあります。
・慢性群発頭痛の場合
頭痛が長期間続く慢性群発頭痛の場合は、主にカルシウム拮抗薬や炭酸リチウムによる予防療法になりますが、近年は頭部や顔を支配する上位頸神経の手術や、翼口蓋神経節の刺激療法も研究されています。
●群発期は痛みを誘発する行動を避ける
・アルコールやたばこを控える
群発期はアルコールを飲むと痛みが激しくなるので、飲まないようにしましょう。また、たばこも控えてください。
・脳の血管を拡張させない
熱いお風呂やサウナ、刺激の強い食事(特にカプサイシンを多く含む唐辛子系)、激しい運動は、脳の血管を拡張させるので控えましょう。入浴後に痛みが出やすい人はなるべくお湯に浸からず、シャワーで済ませるようにしてください。また、血管拡張薬を服用中の人は医師に相談を。
・決まった時間に起き、就寝するなど規則正しい生活を心がける
群発頭痛は自律神経や体内時計、メラトニンなどのホルモン分泌ともかかわりが深いことから、これらを乱さないために、夜更かしをせず、起床や就寝の時間を一定にして規則正しい生活を送ることが大切です。睡眠のリズムを乱し、痛みを誘発するとされる昼寝や時差のある海外渡航もできるだけ控えましょう。夜勤やシフト勤務も避けたほうがよいのですが、業務上やむを得ない場合は、診断書を提出して職場の理解と協力を得ましょう。
・気圧の低下に注意し、飛行機の利用やスキューバダイビングなどは控える
気圧の低下は血管の拡張を招き、痛みを誘引します。天気予報をチェックし、台風の接近などで気圧の低下が予測される時は外出を控えるなど、事前の備えをしておきましょう。また、群発期は飛行機の利用やスキューバダイビングなども控えてください。
・20~30代の男性
群発頭痛の患者には20~30代の男性が多いため、この年代の男性は、他の年代の人や女性に比べて群発頭痛になりやすい傾向があります。
・家族に患者がいる人
群発性頭痛は遺伝的な要因が指摘されていることから、家族に患者がいる場合もリスクがあるといえるでしょう。
・生活のリズムが乱れている人や飲酒や喫煙の習慣がある人
夜更かしや昼寝をすることが多かったり、仕事で昼夜が逆転していたりシフト勤務だったりするなど生活のリズムが乱れている人、飲酒や喫煙の習慣がある人も群発頭痛を発症しやすいと考えられます。
痛みが起こるのは夜明け前が多いのですが、外出時などに起こる場合も。群発頭痛は市販の頭痛薬では痛みを和らげることはできませんので、日頃から医師から処方された薬を携帯しておくと安心です。
もし発症時に薬を携帯していなかったら、冷たい缶コーヒーを購入しましょう。冷たい缶を首の太い血管(頸動脈)に当てると脳の血管の拡張が抑えられるため、痛みを和らげる効果が期待できます。コーヒーに含まれるカフェインには血管を収縮させる効果がある上に、砂糖入り(人工甘味料を除く)の物を選べば、脳血管を拡張させる低血糖状態を緩和することもできるので、首に当てて少しぬるくなったコーヒーは、ぜひ飲んでください。
・急激に痛みや症状が消えていく
激しい痛みに襲われる群発頭痛ですが、終息時にはスーッと抜けるように、急激に痛みやその他の症状が消えていきます。
・痛みが消えた後はぐったり……
痛みが消えた後は、強い疲労感や消耗感があってぐったりとしてしまい、中にはそのまま寝てしまう人もいます。
・完全にすっきりするわけではない
痛みが消えていくとはいえ、完全に痛みやその他の症状がなくなるわけではなく、鈍い違和感や頭重感が残る場合があります。