快眠のコツを身につけてすっきりと目覚めたい!

快眠のコツを身につけてすっきりと目覚めたい!

今日からスタートできる快眠対策をご紹介します。
私たちは、人生のおよそ3分の1もの時間を、睡眠に費やすといわれています。先進国の中で、トップクラスで睡眠時間が短いといわれている日本。さらに、日本人は睡眠時間が長くても、睡眠の質に満足していない人が多く、日本は「睡眠不足大国」といわれています。睡眠中は意識がないため、ついその間の時間を軽視してしまいがちですが、寝ている時間も人生の一部です。この時間も有意義なものにして、よりよい人生を送りましょう。
※林田健一:日米仏3カ国における睡眠に関する意識と行動の実態調査 新薬と臨牀2012;61:1354-1369

監修プロフィール
医療法人社団SSC理事長 スリープ・サポート クリニック院長 はやしだ・けんいち 林田 健一 先生

日本睡眠学会評議員・総合専門医、日本精神神経学会専門医、精神保健指定医、日本医師会認定産業医、医学博士。1996年東京慈恵会医科大学卒業。同精神医学講座へ入局、睡眠医学を専門とし、臨床研究と治療に取り組み、2007年スリープ&ストレス クリニック(大崎院)を開設。13年医療法人社団SSC理事長に就任、18年スリープ・サポート クリニック(鮫洲院)を開設。著書に『朝、スッキリ目覚め「いい眠りだったな」とつい言ってしまう本』(主婦の友社)など。


しっかりとらなければ損をする!? 睡眠の意外な役割とは?

睡眠の主な役割は、日中にたまった疲労を回復させることです

睡眠の主な役割は、日中にたまった疲労を回復させることですが、実は眠っている間も、脳や細胞は私たちの心身を健康に保つために、常に様々な活動をしています。睡眠中に体の中で起きている現象と、睡眠の役割についてご紹介します。

●エネルギーの蓄積
人間の脳は、他の器官や運動機能、言語機能、自律神経、ホルモンなどをコントロールし、日々莫大なエネルギーを使っています。睡眠中もエネルギーは消費していますが、起きている時に比べて代謝を40%程度にまで下げ、活動のためのエネルギーを蓄えています。

●記憶の整理や定着
睡眠は、日中にインプットされた情報や感情を整理し、脳内に定着させ、ストレスを和らげると考えられています。しっかり寝た後、頭がクリアになる気がするのは、この機能のおかげです。良質な睡眠をとると、作業能力をアップさせる効果もあります。

●自律神経を整える
自律神経は、眠っている時に働く「副交感神経」と、活動している時に働く「交感神経」で成り立っています。この2つの神経がバランスよく交互に働くことで、自律神経は正常に保たれますが、睡眠不足が続くと、交感神経の働く時間が続き、バランスが崩れてしまいます。自律神経を整えるには、十分な睡眠をとることが大切です。

●美肌づくりや心身の修復に必要なホルモンを分泌
睡眠中に体内で作つくられる主なホルモンは、古くなった細胞を新しい細胞に変え、美肌づくりなどをサポートする「成長ホルモン」と、体内に蓄えられたブドウ糖や脂肪を代謝することにより、活動エネルギーを調達する「コルチゾール」です。この成長ホルモンとコルチゾールの分泌は、睡眠のリズムと同調する性質をもっています。

●健康や美容の大敵「酸化ストレス」の改善
呼吸をすると、空気中に含まれている酸素の一部が「活性酸素」に変化するといわれています。この活性酸素は、規則正しい生活をして、適正な量を生成している分には問題ありません。ただ、心理的・肉体的ストレス、紫外線や食品、過度な運動などにより、過剰に生成されることがあります。過剰に増えた活性酸素が、細胞などに障害をもたらして体内を酸化させてしまうのが「酸化ストレス」です。酸化ストレスは、健康や美容の大敵。睡眠中は、活性酸素の発生が減るといわれており、酸化ストレスの改善には十分な睡眠をとることが有効です。

●アルツハイマー型認知症の発症を遠ざける
アルツハイマー型認知症に関与するとされる「アミロイドβ」という物質は、脳が活動した時に発生する老廃物の一種で、蓄積すると認知機能を低下させるといわれています。一方でこの物質は、睡眠中、特にノンレム睡眠(脳も体も眠っている状態)の時に脳内から排出されると考えられており、睡眠がしっかりとれていると、アルツハイマー型認知症を遠ざけると期待されています。

●睡眠不足は、免疫力の低下を引き起こす
免疫とは体の外部から侵入した細菌やウイルスなどに対し、免疫細胞などが攻撃し、体を守る自衛システムです。免疫細胞は、睡眠中に活発に活動する性質があるため、睡眠不足が続くと免疫力を低下させる要因になります。

●睡眠不足は病気のリスクを高める
十分な睡眠がとれていないと、ホルモン分泌や神経の機能の調節に支障を来し、血圧や血糖値などに影響を及ぼすと考えられています。そのため慢性的に寝不足の人は、糖尿病や心筋梗塞、狭心症などの様々な病気を発症しやすい傾向にあるといわれています。

睡眠は、毎日を元気に過ごすためのエネルギーをつくる大事な時間。日々の仕事や勉強、家事のパフォーマンスを上げ、休日の余暇や趣味を楽しむ人生を送るためには、とても重要な要素なのです。


睡眠で大切な3大要素は「量(時間)」・「質」・「リズム」

理想的な睡眠時間の目安は、7時間といわれています。しかし重要なのは「量(時間)」だけではありません。例えば睡眠時間が短くなっても、「質」や「リズム」が保たれていれば、翌朝すっきりと目覚めることができます。それでは睡眠の「質」や「リズム」とはどんなものなのでしょうか。

●睡眠の「質」とは?
「何時間寝ても起床時に体がだるい」「眠りが浅く何度も目覚める」などの悩みをもつ方も多いのではないでしょうか。それは質のよい睡眠ができていないから。睡眠の質とは、寝つきの良し悪しや、睡眠中の覚醒の有無、深くぐっすり眠れているか、気持ちよく目覚められるかといったことから判断されます。
睡眠の質を測る基準となるのが、「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」のバランスです。人は、入眠直後に深い睡眠に入り、約90~110分間のサイクルで深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠を繰り返します。このサイクルが正しく働き、眠りが浅いレム睡眠のタイミングで起床できれば、たとえ睡眠時間が短かったとしても、「熟睡できた」「朝すっきり目覚めた」と実感することができるでしょう。

かぼちゃを加えて炒め合わせ【A】を加える

(参考:厚労省e-ヘルスネット)


●睡眠の「リズム」とは?
自然と眠くなり、自然と目が覚める入眠と覚醒のリズムのこと。このリズムを一定にすることが重要なので、睡眠が不規則にならないように、寝る時間と起きる時間を調整し、自分なりのリズムを整えることが大切です。リズムをコントロールするのが体内時計です。体内時計は、覚醒と睡眠の規則正しいリズムをつくる体の内部の体温である深部体温の調整や、睡眠ホルモンといわれるメラトニンの分泌に影響します。
人の体温は、一定のリズムで上がったり下がったりします。深部体温は19時頃に1日の中の最高温度に達し、4時頃に低くなり、朝に向けて上昇していくことで、体内時計はスムーズな睡眠・覚醒を促すように調整されています。つまり入眠前に深部体温を下げることができれば寝入りをよくすることができ、逆に深部体温が高い状態では眠りにくくなるということになります。
その一方で、睡眠ホルモンといわれるメラトニンは、22時頃から分泌が増え、夜中から明け方まで分泌量を維持します。朝日を浴びると、その分泌量が抑えられ14~15時間後にまた増え始めるという強いリズム性をもっています。メラトニンが分泌されると、その作用で深部体温が低下し、入眠しやすい状態になります。質の高い睡眠と安定した睡眠リズムを得るには、朝しっかりと光を浴びて夜間のメラトニン分泌を促すことが大切なのです。

「すっきりしない目覚め」には2つの理由があります

自分ではしっかり寝ているつもりでも、「なんだか疲れが取れない」「すっきりしない」と感じることはあるでしょう。その「すっきりしない目覚め」には、主な理由が2つあります。

① 睡眠時間が足りない
1つ目の理由は、単純に睡眠時間が足りていないことです。睡眠時間を増やせばいいということになりますが、かといって「平日に眠れない分、休日にたっぷり寝ればいい」というわけでもありません。睡眠不足の具体的な対策としては、2週間~1カ月、じっくり時間をかけて「睡眠負債」の解消を行うことが必要です。睡眠負債とは、睡眠不足による身体への悪影響を指します。例えば、本来7時間の睡眠が必要な人が、毎日5時間しか睡眠時間を確保できないとなると、2時間の睡眠負債がたまります。その生活を1週間続けると、トータルで14時間の睡眠負債を抱えることになります。
睡眠負債が蓄積していくと、集中力が低下し、仕事や勉強のパフォーマンスが下がってしまいます。蓄積した睡眠負債は、毎日少しずつ解消するのが現実的です。というのも、「寝だめ」に効果があるのは、2〜3時間が限度で、それ以降は効果がないとされているからです。睡眠負債の解消には、まずは毎日の習慣として、今よりも少し長めの睡眠時間を設定し、平日も休日も同じ睡眠時間にキープすることから意識してみましょう。

②不規則な生活で、体内時計が乱れている
仕事や学校で、寝起きする時間が決まっている人でも、休日の前は深夜まで起きていたり、翌日は昼近くまで寝ていたりするなど不規則な生活になりがちです。こうした生活は、体内時計を狂わせ、疲れやストレスをためることにつながります。体内時計を狂わせないためには、休日でも平日と同じ時間に寝て、起きられるように生活のリズムを変えないことが大切です。

良質な睡眠を妨げるNG習慣とは?

スマホなどから出る強い光は、メラトニンの分泌や寝つきを阻害し、深部体温のリズムにも影響します。

体は疲れているのになかなか寝つけないのは、もしかしたら自分のせいかも? 意外と見落としがちな、普段ついやってしまう、睡眠を妨げるNG習慣についてご紹介します。

●夜、強い光を浴びる
蛍光灯の明るい光やスマホなどから出る強い光は、メラトニンの分泌や寝つきを阻害し、深部体温のリズムにも影響します。深部体温が下がっていく22時以降はなるべく部屋の光を抑えるようにし、スマホやパソコンを控え、もし使用する場合も画面をナイトモードに切り替えるなど対処しましょう。逆に深部体温が上がる朝は、朝日などの明るい光を浴びてメラトニンの分泌を抑え、体内時計のリズムを整えましょう。

●15時以降のうたた寝・うっかり寝
夕方や夕食後などに、うたた寝やうっかり寝をすると、寝つきが悪くなったり、睡眠が細切れになったりして、深い睡眠が得られなくなります。もし夕食以降、眠くなりそうになったら、体を動かしたり楽しいことをしたりして気を紛らわせ、眠気を覚ましましょう。午後の眠気をやり過ごすなら、15時までの間に20分程度(シニアは30分程度)の昼寝をするのがおすすめです。昼寝は横になってしまうと必要以上に寝てしまうので、机に突っ伏したり、いすをリクライニングしたりしてするとよいでしょう。

●眠くないのにベッドに入る
寝つきが悪いのにベッドに入って無理に眠ろうとすると、プレッシャーを感じてかえって眠れなくなる場合があります。30分経っても寝つけない場合は、一度ベッドを離れてリラックス時間を設け、再度眠気を感じたらベッドに入るようにしましょう。

●就寝前の食事や寝酒
食後、すぐに寝ると胃腸の活動によって眠りの質が低下してしまいます。特に消化に時間がかかるこってりとした料理や、覚醒作用のあるスパイスを多用した料理を食べる場合は、睡眠の質に影響が出ないように普段よりも早めの時間帯に食べるようにしましょう。またアルコールは、レム睡眠を抑制し睡眠のサイクルを乱してしまうため、寝酒はNG。寝つきが悪いからといって寝酒を飲むと、酔いが覚めた後に目も覚めてしまい、またお酒に手が伸びてしまうという悪循環に陥ることもあります。

「快眠」のコツでぐっすり眠り、すっきり目覚める

快眠を得るには、「よく眠るために何をするか」を意識するよりも、「睡眠を妨げるものをいかに排除するか」を考えることが大切です。そこで具体的な「睡眠を妨げるもの」とその「排除方法」を併せてご紹介します。

入眠儀式からの快眠

●睡眠前の気忙しさ → 入眠儀式をつくる
就寝前に「寝る前にあれをやろう、これをやろう」と思わないように、寝る前に行う自分なりのルーティンをつくりましょう。ルーティンを決めると、リラックスしやすくなると同時に「こうすれば眠れる」という自己暗示がかかり、眠りに入りやすくなります。

●ベッドや寝室は生活の場 → ベッドや寝室は眠る時にだけ使う
本を読んだりゲームをしたりする時にベッドや寝室を使うと、「ベッド・寝室=生活の場」となり、眠るための場所と認識できなくなります。ここで活用したいのは、「条件反射」です。ベッドや寝室は、あくまで就寝のための場所と改めて認識するために、ベッドや寝室に向かうのは、必ず眠気が出てきてからという習慣をつけます。これを繰り返し行うことで「ベッド・寝室=就寝」という条件づけが完成し、眠りにつきやすくなります。

●就寝前の考え事 → 眠る時はポジティブ思考で
夜は脳が疲れているため、考え事をしても悪い方向に傾いてしまいがちです。就寝時に悩んでいることや嫌なことを考えると、さらにネガティブになって眠れなくなったり、眠りの質が低下したりすることに。考え事をするなら、脳がすっきりクリアになっている朝がおすすめ。夜は前向きな気持ちでリラックスすれば、心地よい睡眠につくことができるでしょう。

●深部体温の低下 → 夕方から20時頃までの間に全身運動を行う
1日で最も体温が高くなるこの時間帯に運動を行うことで、より体温が高まり、体温の落差で入眠しやすくなります。特に体が冷える寒い季節は高い効果を得ることができます。筋トレのようなハード過ぎる運動や一部の筋肉だけを使う運動では体温が下がるのに時間がかかってしまうので、ウォーキングや自転車、水泳のようなゆっくりと心拍数が上がる運動や全身をバランスよく動かす運動がおすすめです。

●体内時計の乱れ → 朝日を浴びる
朝日には、体内時計をリセットするのに加え、メラトニンの分泌を抑制する働きもあり、すっきりと目覚めるのに有効です。朝が弱い人は、就寝時にあらかじめカーテンを開けておいたり、自動でカーテンを開閉するスマートカーテンを活用したりして、部屋に朝日が入るようにするとよいでしょう。部屋に朝日が入らないという場合は、朝日と同様の効果がある照明を上手に活用するのも一案です。

●睡眠を妨げるものが何かを知りそれを排除する →「睡眠ダイアリー」をつけてみる
自分がどれくらい眠れていて、どのような問題があるのかを確認し、改善するために、「睡眠ダイアリー」をつけるのもおすすめです。起床や就寝の時間、日中に眠気を感じた時間の他、食事や運動、体調なども記録すると、現状を把握することができます。最近は、睡眠を記録できるデバイスやアプリもあるので、気軽に始められるでしょう。注意したいのは、睡眠の記録を気にし過ぎること。気にし過ぎると逆にストレスになってしまうので、あくまでエンターテインメントとして、ポジティブに続けることが大切です。

自分にとってのベストな睡眠「テーラーメイド睡眠」という考え方

睡眠において大切なことは、「早寝早起き」にこだわるのではなく、すっきりと目覚めること

睡眠において大切なことは、「早寝早起き」にこだわるのではなく、すっきりと目覚めることで、毎日を生き生きと過ごすことです。仕事やライフスタイルによって、睡眠時間の長さや質、リズムは人によって異なり、睡眠に関する課題も人それぞれです。

快眠を手に入れるには、まずは自分がすっきりと目覚めるために何をすればいいのかを考え、生活を見直して自分なりの対処法を実践していくことが重要です。

 

〈睡眠時間が確保しづらい方の対処法〉

●シフトワークで働く人の対処法
決まった時間に睡眠がとれないシフトワークの場合は、可能な限り日勤・夕勤・夜勤と勤務時間を後ろ倒しにしていくと、体内時計がつかさどる生体リズムに無理が生じにくくなります。

●夜勤で働く人の対処法
夜勤のある人は、日勤の生活のペースをなるべく崩さないようにします。可能であれば最も眠い時間帯に仮眠をとり、夜勤明けもすぐ寝るのではなく、仮眠をとるなどしてしっかり眠るのを夜まで我慢すると、日勤の生活のペースが崩れにくくなります。

●育児や介護で多忙な人の対処法
育児や介護によって、自分のペースで睡眠ができない、睡眠が細切れになってしまうという人は、家族などと協力しながらできる限り睡眠時間を確保するようにしましょう。家庭の事情などでどうしても難しい場合は、対処法をかかりつけ医や睡眠外来、心療内科などに相談してください。

●睡眠障害を抱える高齢者の対処法
高齢者で、夜中に何度も起きてしまう人もいますが、一度起きてもその後すぐに眠れて、日中の活動に影響が出なければ、問題はありません。日中に疲労や倦怠感、意欲の低下、集中力の欠如などの症状が出たり、その他の行動に支障があったりするようなら、睡眠障害を解決するために、かかりつけ医や睡眠外来、心療内科などに相談しましょう。
「いくら眠ってもすっきりしない」「今の睡眠に課題を感じている」という人は、まずは自分に合った睡眠時間を知ることから始めましょう。7時間を目安に、起きる時刻から逆算して、就寝時刻を設定してみてください。まずはその設定時間で、就寝することを続けてみて、それでもすっきりと起きられないようなら就寝時刻を早めてベストな時間を探っていきましょう。同時に睡眠の質やリズムを向上させるためにも、「睡眠ダイアリー」などで自分の睡眠の状況を把握し、あなたのライフスタイルに合った「テーラーメイド睡眠」を手に入れてください。


この記事はお役に立ちましたか?

今後最も読みたいコンテンツを教えてください。

ご回答ありがとうございました

健康情報サイト