肌荒れとは、乾燥やカサつき、赤み、かゆみ、吹き出物など、肌に何らかの不調が現れている状態の総称です。原因は乾燥や摩擦、紫外線、肌に合わない化粧品、生活習慣など様々で、皮膚疾患が隠れている場合もあります。特に30代以降は、肌の水分量や皮脂量などが変化し、肌荒れを感じやすくなることがあります。
「若い頃は数日で回復した肌荒れがなかなか治らない」「乾燥や吹き出物、赤みが気になるようになった」そんな変化を感じていませんか?しかし、「年齢のせい」と諦める必要はありません。肌荒れの原因を知り、自分に合ったケアをすることで、改善や予防につながる可能性があります。今回は、30代以降に起こりやすい肌荒れの原因や対策、スキンケアのポイントを皮膚科医が分かりやすく解説します。
2015年愛媛大学医学部医学科卒、同年愛媛県立中央病院に入職。20年湘南美容クリニック入職、21年には湘南美容皮フ科内科クリニック六本木院 院長就任。22年、痩身エキスパートドクター就任。25年からは湘南美容クリニック新宿本院副院長に就任に加え、痩身エキスパートドクターに。26年より皮膚科教育担当としても活躍。日本美容外科学会(JSAS)正会員、日本美容皮膚科学会正会員、日本抗加齢医学会正会員。
健康な肌は、キメが整い、十分な潤いと弾力が保たれています。一方、肌荒れとは、特定の病名ではなく、乾燥やカサつき、吹き出物、赤みなど、肌に何らかのトラブルが起きている状態を指します。
この肌荒れの大きな原因の一つが、肌の「バリア機能」の低下です。バリア機能とは、肌の最も表面にある「角質層」が、体内の水分の蒸発を防ぎ、紫外線や乾燥、花粉、ほこりなどの外部刺激から肌を守る働きのこと。肌の水分や皮脂のバランスが崩れると、このバリア機能が十分に働かなくなり、様々な肌トラブル(肌荒れ)が起こりやすくなります。
30代以降は加齢や女性ホルモンの変化などの影響で、徐々に肌のバリア機能が低下しやすくなっていきます。さらに、空気の乾燥や過度な洗顔、クレンジング、肌への摩擦などの外的要因も、バリア機能を低下させます。こうした内的・外的要因が重なり、30代頃から肌荒れが起こりやすくなると考えられます。
●肌のバリア機能が低下しやすくなる
30代以降は、加齢や女性ホルモンの変化などの影響により、肌の潤いを保つ働きが少しずつ低下していきます。その背景にあるのが、肌の保湿に欠かせない3つの成分「皮脂膜」「天然保湿因子」「細胞間脂質」の減少です。
<肌の潤いを守る3つの保湿成分>
・皮脂膜
皮脂膜は、肌の表面をベールのように覆い、水分の蒸発を防ぐと共に、乾燥や外部刺激から肌を守る役割があります。
・天然保湿因子(NMF)
天然保湿因子は角質細胞の中に存在し、水分を取り込んで保持することで、肌の潤いを保ちます。
・細胞間脂質(セラミドなど)
細胞間脂質はレンガをくっつけるモルタルのように、角質細胞同士のすき間を埋め、水分が逃げるのを防ぐ働きがあります。セラミドやコレステロールなどが含まれています。
これらの保湿成分が減少すると、肌のバリア機能が十分に働かなくなり、水分が失われやすくなるだけでなく、紫外線や乾燥、花粉、摩擦などの刺激を受けやすい状態になります。その結果、乾燥や赤み、吹き出物などの肌荒れにつながることがあります。
●ターンオーバー(肌代謝)周期が遅れる
・ターンオーバーとは?
肌の細胞が生まれ変わる仕組みのことです。表皮の最も内側にある基底層で生まれた新しい細胞は徐々に表面へと押し上げられ、角質層に留まった後、古い角質となって自然に剝がれ落ちます。このサイクルを「ターンオーバー」と呼びます。
・原因は加齢や女性ホルモンの変化
30代以降は加齢によって肌の新陳代謝が少しずつ低下し、ターンオーバーの周期が長くなる傾向があります。その結果、本来は自然に剝れ落ちる古い角質が肌表面に残りやすくなり、ごわつきや乾燥、毛穴詰まり、吹き出物などの肌トラブルを招きやすくなったりします。また、肌の回復にも時間がかかるようになるため、肌荒れが長引いたり、繰り返したりすることも。30代から肌荒れが増えるのは、肌そのものが変化しているからなのです。
それに加えて毎日の生活習慣も肌のコンディションを左右します。肌荒れを改善・予防するためには、肌の変化を理解すると共に、毎日の生活を見直すことも大切です。
「忙しいから仕方ない」とか「お肌にいいかも」と思っているその習慣が、実は肌荒れを繰り返す原因になっているかもしれません。30代は仕事や家事、育児などで生活リズムが乱れやすく、肌への負担も積み重なりやすい年代です。睡眠不足やストレスだけでなく、何気なく続けているスキンケアやメイク習慣が肌荒れを招いていることもあります。まずは毎日の生活を振り返り、肌に負担をかける習慣がないかチェックしてみましょう。
<こんな習慣はありませんか?>
☐ 最近は睡眠不足が続いている
☐ メイクを落とさず寝てしまうことがある
☐ ストレスを感じることが多い
☐ 食事の栄養バランスが偏りがち
☐ 紫外線対策は夏だけ
☐ マッサージやスクラブをよく行う
☐ 話題の成分や、新しい化粧品をよく試している
当てはまる項目がある方は要注意! これらの習慣は、知らないうちに肌へ負担をかけ、肌荒れを招く原因になることがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
<肌荒れにつながる習慣とその理由とは?>
●睡眠不足
眠りが深い時に多く分泌される「成長ホルモン」は肌のダメージを修復し、ターンオーバーを促します。睡眠不足はこの成長ホルモンの分泌を妨げ、肌のバリア機能を低下させる原因となります。
●メイクをしたまま寝てしまう
皮脂や汚れが肌に残り、毛穴が詰まりやすくなります。また、メイク汚れが肌への刺激となり、かぶれや炎症などの肌トラブルを引き起こすことも。
●ストレス
ストレスが続くと、ホルモンや神経系の変化によって皮脂分泌やニキビに影響することがあります。また、ストレスホルモンの「コルチゾール」などの影響で、肌のバリア機能の回復が遅れたり、炎症が悪化したりすることもあります。
●偏った食生活
タンパク質やビタミン、ミネラルなど、肌を健やかに保つために必要な栄養素が不足すると、肌のターンオーバーやバリア機能に影響を及ぼし、肌荒れにつながることがあります。
●紫外線対策不足
紫外線は夏だけでなく、1年を通して肌に影響を与えます。紫外線を浴びるとバリア機能が低下しやすくなり、乾燥や肌荒れの原因になります。年間を通じて紫外線対策を続けることが大切です。
●過度なマッサージや摩擦
「肌によい」と行っているマッサージやスキンケアも、やり過ぎると肌への刺激になることが。過度な摩擦はバリア機能を低下させてしまいます。
●肌に合わない化粧品を使う
SNSなどで話題の化粧品や美容成分を取り入れること自体は、悪いことではありません。しかし、自分の肌に合わない化粧品を我慢して使い続けると、炎症やかぶれなどの肌トラブルを招くこともあります。まずは2つのポイントに注意して試してみましょう。
<新しい成分・化粧品を試す時のポイント>
・肌トラブルが現れたらすぐやめる
赤みやかゆみ、ヒリつきなどの症状が出たり、何か違和感を覚えたりした場合は、無理に使い続けず、すぐに使用を中止しましょう。症状が続く場合や悪化する場合は、皮膚科を受診することをおすすめします。
・まず1カ月以上は使ってみる
化粧品は医薬品とは異なり、効果を実感するまでに時間がかかる場合があります。肌に異常がなければ、1~数カ月程度を目安に使い続けながら様子を見ることも大切です。焦って判断せず、自分の肌の状態を観察しながら、自分に合った化粧品を見つけていきましょう。
30代以降の肌は、バリア機能の低下やターンオーバーの変化により、乾燥や刺激の影響を受けやすくなっています。肌荒れを防ぐためには、まずは肌への負担を減らし、バリア機能を守るスキンケアを心がけることが大切です。
●洗い過ぎない
「しっかり洗うほど肌によい」と思われがちですが、30代以降は皮脂の分泌が少しずつ減少するため、洗い過ぎるとかえって必要な皮脂まで洗い流してしまうことがあります。洗顔はたっぷりの泡で優しく行い、すすぐ時も熱過ぎるお湯は避けましょう。また、洗浄力の強い洗顔料を使い過ぎないことも大切です。
●保湿を重視する
肌荒れが気になるときは、美容成分を次々と取り入れるよりも、まずは保湿と保護を中心としたシンプルなスキンケアを心がけましょう。
保湿成分としては、次のような成分が代表的です。
・セラミド
・ヘパリン類似物質
・ヒアルロン酸
・グリセリン
・尿素
グリセリンや尿素は角質層の水分を保つ働きがある保湿成分です。さらに、保湿剤を塗った後にワセリンやスクワランなどの油分で肌表面を保護すると、水分の蒸発を防ぎやすくなります。
| 目的 | 主な成分 |
| 水分を抱え込む | グリセリン・ヒアルロン酸 |
| バリア機能を補う | セラミド |
| 保湿をサポート | ヘパリン類似物質 ※医薬品・医薬部外品などで用いられる成分 |
| 水分の蒸発を防ぐ | ワセリン・スクワラン |
●摩擦を避ける
肌への摩擦は、バリア機能を低下させ、肌荒れを悪化させる原因になることがあります。
次のようなスキンケアは控えましょう。
・スクラブ洗顔を頻繁に行う
・コットンやタオルで強くこする
・拭き取り化粧水を使い過ぎる
・ピーリングを頻繁に行う
洗顔後にタオルで水分を拭き取る際も、ゴシゴシとこすらず、優しく押さえて水分を吸い取るようにすると肌への負担を最小限に抑えられます。
●紫外線対策を習慣にする
紫外線は夏だけでなく、1年を通して肌に影響を与えます。紫外線を浴びるとバリア機能が低下しやすくなり、乾燥や肌荒れを招く原因になることがあります。季節を問わず日焼け止めを使用し、帽子や日傘なども活用しながら、毎日の紫外線対策を習慣にしましょう。
スキンケアや生活習慣の見直しを続けても、肌荒れが改善しない場合は、皮膚科を受診することも大切です。肌荒れと思っていても、その背景には皮膚の病気が隠れていることがあります。セルフケアだけでは改善が難しいケースもあるため、症状が続く場合は自己判断せず、専門家に相談することをおすすめします。
●治療が必要な皮膚疾患が潜んでいることも
肌荒れの症状の原因は様々です。例えば、次のような皮膚疾患が隠れている場合があります。
・接触皮膚炎
・脂漏性皮膚炎
・酒さ(しゅさ)
・アトピー性皮膚炎
これらの皮膚疾患は市販のスキンケアだけでは改善が難しいこともあり、適切な治療が必要です。
●皮膚科を受診する目安は?
まず保湿を中心としたシンプルなスキンケアを続けながら、1〜2週間程度セルフケアを続けてみましょう。それでも改善しない場合や、悪化している場合は、一度皮膚科を受診することをおすすめします。また、次のような症状がある場合は、1〜2週間と待たずに、できるだけ早めに受診しましょう。
・赤みが強い
・強いかゆみや痛みがある
・ジュクジュクしたり、膿が出たりしている
・急速に症状が悪化している
症状によっては、保湿だけでは改善が難しく、ステロイド外用薬などによる治療が必要になることもあります。早めに適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぎやすくなります。
●肌荒れの時は、皮膚科と美容皮膚科のどちらを受診すればいい?
症状によって受診先が異なるため、次の表を参考にしてください。
| こんな場合 | おすすめ |
| 赤み・かゆみ・湿疹・肌荒れが続いている | 皮膚科 |
| 肌荒れの原因を調べたい | 皮膚科 |
| 保険診療で改善しない | 美容皮膚科も選択肢 |
| 赤みや肌質、毛穴などをさらに改善したい | 美容皮膚科 |
まずは保険診療を行う皮膚科で原因を診断してもらうことが大切です。その上で、医師の指示通り一定期間治療を続けても改善が難しい場合や、さらなる肌質改善を希望する場合には、美容皮膚科を検討するとよいでしょう。
セルフケアを続けても改善しない場合は、一人で悩まず早めに医療機関へ相談しましょう。今は症状に合わせて様々な治療法があり、一人ひとりに合った治療を選択できる時代です。「こんなことを相談してもいいのかな」と迷わず、気になることがあれば気軽に専門家へ相談してください。